- 男だけどメイドカフェでバイトしてた時の話 [無断転載禁止]©2ch.net
33 :名も無き被検体774号+@無断転載は禁止[]:2017/03/02(木) 01:50:38.93 ID:uwpFIKwR - >>32
ありがとう。 ホッとしたw
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34 :名も無き被検体774号+@無断転載は禁止[]:2017/03/02(木) 01:52:12.47 ID:uwpFIKwR - オーナーも言っていたが、メイドさんたちは、それぞれが歌手やアイドルのような活動をしていた。その合間にアルバイトとして、メイドカフェに勤めている。
メイドカフェはバイト先でもあると同時に、芸能事務所やプロダクションのような機能を持っていた。そしてユキナさんも、そこで歌手を目指す女の子のひとりだった。
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35 :名も無き被検体774号+@無断転載は禁止[]:2017/03/02(木) 01:53:42.57 ID:uwpFIKwR - 僕がいつも通り演奏の仕事を終えて、バックヤードで帰り支度をしているときだった。バタンとドアを開けて、ユキナさんが入ってきた。
「あ、ユキナさん。お疲れ様です」 「あれ?もうおかえり?」 「えぇ、もう今日はお客さんもおらんし」 「ちょっとひまなったもんなぁ。大丈夫?ちゃんと食べてる?」 「食べてますし、なんか最近体重増えた気します」 本当に増えた気がしていたのだ。 彼女は楽しそうに「増えた気って何よ!計ってないん?」と言った。 「俺、体重計持ってないですもん」
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36 :名も無き被検体774号+@無断転載は禁止[]:2017/03/02(木) 01:55:40.76 ID:uwpFIKwR - 僕はユキナさんと話している時間が好きだった。
美人なのに、気取っていなくて明るくて、開放的なひとだった。 それでいて自然と相手を気遣える彼女が、お客さんの人気者なのは頷けた。指名ランクはずっとNo.1だった。だけど店の中でも彼女へのやっかみも無く、まさしく誰からも慕われているようなひとだった。
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37 :名も無き被検体774号+@無断転載は禁止[]:2017/03/02(木) 01:58:16.98 ID:uwpFIKwR - 少し間を置いてから、ユキナさんが口を開いた。
「なぁ、前から聞きたかってんけど音楽やってるのつらくないん?」 聞かれて、僕は少し考えた。そんなこと考えたことも無かったからだ。
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38 :名も無き被検体774号+@無断転載は禁止[]:2017/03/02(木) 02:00:45.02 ID:uwpFIKwR - 「いや……僕は好きなことなんで、あんまし」
「そっかぁ。やっぱ凄いなぁ!」 やけに明るい声色だった。 「でもいつも『楽しい楽しい!』みたいな感じでもないです。つらくはないけど、習慣というか、なんか改めて考えたことなかったです。ムズイっすね」 「ごめんな、変なこと言うて。お疲れ様!」 「いえ、お疲れ様でした。なんか分からんけど、元気出して下さい」 「大丈夫。ありがとう」 ユキナさんはそう言って、いつも通りの笑顔で、手を振っていた。
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39 :名も無き被検体774号+@無断転載は禁止[]:2017/03/02(木) 02:03:53.39 ID:uwpFIKwR - 次の日、ユキナさんは店を辞めていた。
オーナーに聞いたら、彼女はアイドルになることを諦めたそうだった。
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40 :名も無き被検体774号+@無断転載は禁止[]:2017/03/02(木) 02:09:25.37 ID:uwpFIKwR - 話を聞いた僕は「あ、そうすか」となぜか平常心を装った。メイドさんたちがユキナさんの話をしていても、気にしていないポーズをとっていた。正体の分からない、とにかく誰にも知られたくない感情で、胸がいっぱいになっていた。
連絡先も知らなかったし、誰かに聞くこともできなかった。どうしようもない気持ちだった。
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41 :名も無き被検体774号+@無断転載は禁止[]:2017/03/02(木) 02:12:32.52 ID:uwpFIKwR - そしてユキナさんが辞めた後、すぐに店が摘発された。
オーナーが売春の斡旋容疑で起訴されたことが原因だった。 あの店は裏でメイドさんたちの売春の温床になっていた。僕はそのことをオーナーの逮捕で知った。 あの頃、大阪にはそういった形態の店が別の街にもいくつもあったらしい。梅田、十三、日本橋、なんば、京橋。 あらゆる地区のそれらは一斉に摘発された。
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43 :名も無き被検体774号+@無断転載は禁止[]:2017/03/02(木) 02:14:33.30 ID:uwpFIKwR - 彼女たちの所属事務所のように、違法風俗とプロダクションが提携しているケースはビジネスにしやすいそうだ。
だけど、そんなことは僕にはどうでも良かった。 僕のことかわいがってくれていたユキナさんたちは、知らない男たちに買われていて、それを知らないまま僕はあの店で働いていた。 ただ、それだけだった。
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44 :名も無き被検体774号+@無断転載は禁止[]:2017/03/02(木) 02:14:49.58 ID:uwpFIKwR - >>42
ありがとう。
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45 :名も無き被検体774号+@無断転載は禁止[]:2017/03/02(木) 02:16:18.90 ID:uwpFIKwR - 僕は彼女たちを買っていた男たちを殺してやりたいと思った。
だけど僕にはそんな権利も無いし、何よりも筋違いの怒りに思えた。 たぶん、僕は自分が何も知らなかったことが、情けなくて嫌だったのかもしれない。
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46 :名も無き被検体774号+@無断転載は禁止[]:2017/03/02(木) 02:17:41.81 ID:uwpFIKwR - 僕はあの店のことを一刻も早く忘れようとした。もう、何も思い出したくなかった。
だけど、あのバックヤードのユキナさんの「つらくないん?」という声が耳鳴りみたいに蘇る夜がある。 人間をそれなりに長くやってると、頭のなかに刻みこまれてしまった声がある。僕だけじゃなく、誰しもにあるものだ。 そして、それは消したくても、たぶん一生消えないのだと思う。
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47 :名も無き被検体774号+@無断転載は禁止[]:2017/03/02(木) 02:19:01.02 ID:uwpFIKwR - 先日、久しぶりに店があった場所へ足を向けてみた。跡地は廃墟化していて、まだ残っている。借り手もつかないらしい。
看板がひどく汚れて、無残に割れていた。触ると手のひらが真っ黒になった。 もう、なんの音もしなかった。
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48 :名も無き被検体774号+@無断転載は禁止[]:2017/03/02(木) 02:19:46.47 ID:uwpFIKwR - おしまいです。
起きてくれていた人、最後まで読んでくれてありがとうございました。
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49 :名も無き被検体774号+@無断転載は禁止[]:2017/03/02(木) 02:28:49.35 ID:uwpFIKwR - 良かったら、この後に会った人とかのこともまた書いていきます。
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