- 男だけどメイドカフェでバイトしてた時の話 [無断転載禁止]©2ch.net
10 :名も無き被検体774号+@無断転載は禁止[]:2017/03/02(木) 00:59:29.60 ID:GKlI/O1u - 「なぁ、わし、そこでメイドカフェやってんねんけど、昼間来て歌わへんか?給料も出すで」
「メイドカフェですか。聞いたことはありますけど……でも、そもそも僕いります?」 「生演奏があるカフェにしたいねん。興味無いか?」 「いえ、そんなことないです。全然やります」 興味があるというのは嘘だったが、僕はふたつ返事でOKした。
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11 :名も無き被検体774号+@無断転載は禁止[]:2017/03/02(木) 01:00:24.20 ID:GKlI/O1u - >>9
パンツは履いといて。ごめん。
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12 :名も無き被検体774号+@無断転載は禁止[]:2017/03/02(木) 01:01:07.44 ID:GKlI/O1u - プライドやこだわりなんかは完全に無くしていたので、給料が貰えればなんでも良かったというのが本音だった。
「今ひまか?店がどんなんか見に行こうや。こんな時間やったら店、誰もおらんから」 僕は男の後に着いていくことにした。歓楽街の方面に僕たちは歩いていった。
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13 :名も無き被検体774号+@無断転載は禁止[]:2017/03/02(木) 01:02:55.70 ID:GKlI/O1u - 歓楽街は相変わらず、ネオンがビカビカと光って、ひとが多かった。道のスミで倒れているひとや、手相占い師に客引き。
ネオンさえ無くなれば、このひとたちも昼起きて、夜寝る生活になるのだろうか。世の中に居場所が無いひとたちが、時差の中で身を寄せ合っているみたいだった。 そんなことを考えながら、歩いていたらすぐに店に着いた。
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15 :名も無き被検体774号+@無断転載は禁止[]:2017/03/02(木) 01:04:47.93 ID:GKlI/O1u - >>14
ありがとう。書いていきます。
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16 :名も無き被検体774号+@無断転載は禁止[]:2017/03/02(木) 01:06:35.66 ID:GKlI/O1u - その店は喫茶店の地下に無理やり作ったような狭い施設だった。
コンビニのような電灯の明るさとファンシーなつくりの店内に、誰もいないのは少し気味が悪かった。 テーブルがいくつか並んでいて、猫耳をつけたキャラクターのイラストがあちらこちらに描かれていた。
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17 :名も無き被検体774号+@無断転載は禁止[]:2017/03/02(木) 01:09:35.08 ID:GKlI/O1u - 「昼間はここでメイドさんがワイワイやってるんすね」
「そうそう、みんなアイドル志望の娘ばっかりやから、そっちの手伝いもしながらここで働いてもろてんねん」 男はそれらを統括するオーナーのようだった。「アイドルについて」をやたらと楽しそうに喋った。 このとき僕はなんとも思わなかったが、もしあのとき、あの肌の表面の油のような、ほんのわずかな粘着性を感じ取れたら、何かが違ったのかもしれない。
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18 :名も無き被検体774号+@無断転載は禁止[]:2017/03/02(木) 01:18:08.33 ID:GKlI/O1u - まだみんな起きてるかな?
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20 :名も無き被検体774号+@無断転載は禁止[]:2017/03/02(木) 01:24:50.88 ID:GKlI/O1u - >>19
ありがとう。ひとりでも起きてたら書こ。 僕は次の日から働くことになった。 朝から胡散臭いぐらいの快晴だった。
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21 :名も無き被検体774号+@無断転載は禁止[]:2017/03/02(木) 01:26:10.13 ID:GKlI/O1u - カフェに行くと、メイドさんが看板を一生懸命拭いていた。
太陽光がバケツの水に反射して、宝石みたいだった。 「おはようございます」 「あ、今日から歌うひとやろ!? よろしくね!」 陰気な僕と対照的に、「ユキナ」という名札をつけた彼女は、キラキラした笑顔で看板を磨いていた。 電灯もついていない看板は、これでもかというぐらいピカピカだった。
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23 :名も無き被検体774号+@無断転載は禁止[]:2017/03/02(木) 01:28:38.97 ID:GKlI/O1u - 「凄いピカピカですね」
「せやろ?触ってみる?音すんで!」 言われるがままに手のひらで触ってみると、キュッキュッと洗い立ての皿のような音がした。驚いた。 「これは凄い」 「看板がムチャクチャ綺麗なほうがええやろ! 掃除ってメイドっぽいし!」 「たしかに、こんな綺麗な看板見たことないかもしれません」 本心からそう思った。
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24 :名も無き被検体774号+@無断転載は禁止[]:2017/03/02(木) 01:30:45.37 ID:GKlI/O1u - オーナーに少し説明を受けて仕事が始まった。
普通のバイトと比べると、自由な仕事だった。 お客さんとメイドさんのジャンケンの歌を歌ったり、みんなが知っている歌を歌ったり、伴奏をする係だった。 お客さんを楽しませるのはメイドさんの役目だから、僕はそれをサポートすればいい。 しかし、メイドカフェというものを初めて肌で知ったが、カルチャーショックの連続だった。
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25 :名も無き被検体774号+@無断転載は禁止[]:2017/03/02(木) 01:33:58.87 ID:GKlI/O1u - オプションというやつがあって、メイドさんとジャンケンをするのに千円、同席して会話をすると二千円かかるのだ。
ツイスターとかいう身体が触れ合うゲームをするのに至っては、五千円もかかる。 (狂ってんな……)と自分の心のなかから声がしたが、すぐに聞こえないフリをした。こういう世界もある、と思い込むようにした。
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26 :名も無き被検体774号+@無断転載は禁止[]:2017/03/02(木) 01:38:25.12 ID:GKlI/O1u - 僕はその日、二時間ほど働いて五千円を貰った。当時、本当にお金が無かったので、ものすごくありがたい収入だった。
ただ、「この女の子たちとツイスター一回分か」と思うと、価値があるのか無いのかわからなくなった。
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28 :名も無き被検体774号+@無断転載は禁止[]:2017/03/02(木) 01:40:37.41 ID:GKlI/O1u - >>27
男の娘じゃないんです。 すみません!
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29 :名も無き被検体774号+@無断転載は禁止[]:2017/03/02(木) 01:43:39.40 ID:GKlI/O1u - しばらくすると、僕もメイドカフェのバイトに慣れてきた。
歌う以外の看板磨きや掃除なんかも手伝うようになった。 余談だけど、僕はバイトが全然できない19歳だった。コンビニもすぐバックれて辞めたし、マクドも駄目だった。みんなができる仕事が僕には難しすぎた。 そんな僕にとって、初めて通用した「まともなバイト」だった。正直、楽しかった。 お客さんたちはいわゆる「アキバ系」のひとたちだったが、意外にも明るくて気さくな連中で、すぐに仲良くなった。オタクは暗くて閉鎖的だと思っていたのは、僕の偏見だった。
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30 :名も無き被検体774号+@無断転載は禁止[]:2017/03/02(木) 01:45:47.42 ID:GKlI/O1u - メイドさんたちは僕が「食うのに困っている」と言ったら、いろいろなものを作ってくれたし、とても優しくしてくれた(オムライスにハートや相合い傘を描かれるのはカンベンしてほしかったが)。
あの店にいるひとたちは、毛色の違う僕を受け入れてくれた。 アルコールが無くてもハイになれる彼らはとても健全な人間に見えた。 それに、居心地のいい空間だった。
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31 :名も無き被検体774号+@無断転載は禁止[]:2017/03/02(木) 01:47:49.58 ID:GKlI/O1u - 僕のバイト初日、看板を磨いていた「ユキナさん」は指名ランクNo.1のメイドさんだった。
年がふたつ上の彼女は、僕のことを弟のようにかわいがってくれた。僕も遠慮なくユキナさんには、甘えていた。 小遣いをくれるときもあったし、家に食事を作りに来てくれることもあった。僕も調子に乗って、なんだかんだ、いろんなものを買って貰っていた。
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