- 時には昔の話を [無断転載禁止]©2ch.net
162 :名も無き被検体774号+@無断転載は禁止[]:2017/01/31(火) 00:02:00.02 ID:e/PzyobO - 12月26日。
店内は緑と赤から、赤と白へ。 縁起物やポチ袋、年賀葉書がならび始めた。おめでたグッズに囲まれた私と彼女はやはり無言。 時計の進みが悪い。ようやく7時を回った頃、40才くらいの男性がやって来た。手には食べ掛けのおでん。 「髪の毛入ってんだけど」 練り物の中から毛髪が伸びている。 状況からメーカーで混入したものと思われる。 「申し訳あ「金返して」 被せて来ました。もちろん返金に応じるべきです。おでんの代金を用意し、謝罪の言葉とともに差し出す 。 「違う。よく見ろ。」 放り投げるように渡されたレシートにはおでんの他に アサヒスーパードライ×6カンパック オツマミセット ヤワラカアタリメ 「彼の晩酌は髪の毛により台無しになった」ということしかそのレシートからは読み取れない。
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163 :名も無き被検体774号+@無断転載は禁止[]:2017/01/31(火) 00:13:19.70 ID:e/PzyobO - 頭上にクエスチョンマークを並べていると、「全額返せよ」
男はいつの間にかスーパードライを飲んでいる。どこから出した!?マジシャン!? 今飲んでるビールの代金も返せってこと? 業を煮やした男が、「話にならん。電話貸せ」 頭上のクエスチョンマークは増える一方だ。 どこへ掛けるか尋ねると、店のオーナーのところだという。 「ここのオーナーは俺の同級生だ」と。
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164 :名も無き被検体774号+@無断転載は禁止[]:2017/01/31(火) 00:30:22.99 ID:e/PzyobO - 何にせよ全額返金については自分で判断できることではない。
事務所へ行き、子機を渡そうとすると男も事務所に入ってくる。 関係者以外立ち入り禁止の旨を伝えると、 「あ?そう?店に聞こえてもいいのね?」 ますます手におえない。 ひとしきりオーナーに文句を言うと、男はビールを飲みながら帰っていった。
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165 :名も無き被検体774号+@無断転載は禁止[]:2017/01/31(火) 00:36:52.67 ID:e/PzyobO - 最高に気分が悪かったが、これをきっかけに彼女が口を開く。
一言。 「怖かったね」と。 確かに、お世辞にも人相が良い人とは言えない男だった。 でも、自分も怖かったと言うのは妙なプライドが許さない。 色んなお客さんが来るからねぇ・・・とごまかした。 その会話から徐々に空気がほどけて行き、気づけば普通に話をしてた。 新発売の中華まん、ブルーベリーチーズまんを半分ずつ食べてみたり、 その頃ヒットしていた「White Key」という鈴木亜美の曲が嫌いだとか。 凄く久しぶりに笑いあって話した。 さっきとは打って変わって猛スピードで時計が進む。 以前と同じように話す私たちを見て 出勤してきた筧君が不思議そうな顔をしてた。
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166 :名も無き被検体774号+@無断転載は禁止[]:2017/01/31(火) 00:47:24.85 ID:e/PzyobO - 本当に言いたいこと、
聞きたいことを口に出せば、再びやってくるだろう沈黙。 それに彼女も気づいていたと思う。 終業時間になり、彼女はバックヤードへ歩いて行った。 筧君とレジの中で引き継ぎしていると 帰り支度を整えた彼女が出てきた。 いつもなら「お疲れ様でした〜」と出ていくんだがこの日は違った。 自動ドアの前で立ち止まると、こちらを振り返り鎖骨の辺りを探るようにしいる。 ようやくシャツの中から取り出した物。 それは私がプレゼントしたネックレス。 着替える時に付けてくれたようだ。 悪戯した子供みたいに、照れた笑顔を浮かべ彼女は帰って行った。
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167 :名も無き被検体774号+@無断転載は禁止[]:2017/01/31(火) 00:53:09.22 ID:e/PzyobO - 書き溜め消化。続きの投下は水曜かな
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