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イケメン同期に振り回された俺の人生について語る。 [無断転載禁止]©2ch.net

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イケメン同期に振り回された俺の人生について語る。 [無断転載禁止]©2ch.net
194 :@転載は禁止[]:2016/02/23(火) 00:02:48.73 ID:s1RHru00
スマイルプリキュア組が海に花火に楽しんでいる夏の日、
俺はTシャツとパンツ一丁のまま、ベッドに寝っ転がっていた。
携帯の過去メールを、ポチポチと無意味にさかのぼって見ていた。

健太郎の告白から、しばらく連絡を取らない日々が続いていた。

あいつが俺のことを好きだなんて、考えもしなかった。
元々、自分の気持ちを話すようなやつじゃなかったけど。
だから春に会いたがらなかったんだなと、ようやく合点がいった。

でも、好きだから会いたくないなんて。
好きだからこそ会いたいんじゃないのか。

今年もラフティングに行きたかったけど、どうやら叶いそうにない。
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196 :@転載は禁止[]:2016/02/23(火) 00:08:38.98 ID:s1RHru00
早苗は「何かスポーツするとか、趣味でも見つけなさいよ。」と言ってくれたが、
スポーツやる相手もいないし、一人で楽しめる趣味なんてやってもつまんないし。
友達もいないし、恋人もいないし、俺はこのまま孤独死していくのかなぁ。
そんなことをぼんやり考えていた。

そんな腐った生活を一変させてくれたのは、気分転換に機種変したiPhone5だった。
周りはほとんどスマートフォンにしていたが、困らなかったので機種変してなかったのだ。

旧友にメールアドレス変更を呼び掛けたら、LINEの存在を知らされ、
LINEに登録したら、地元の中学や高校の友達と再び繋がりができたのだ。
中には、知らないうちに関東に出てきてる奴もいて、いつか会う約束もできた。
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197 :@転載は禁止[]:2016/02/23(火) 00:13:43.39 ID:s1RHru00
実は、メールアドレス変更を言い訳にして、健太郎にもメールを送った。

まず送るかどうかしばらく悩んで、次に内容について悩んで、
結果「スマホにしたから変更よろ」という差し障りのない内容で送った。

これで返信がこなかったらさすがに堪えると思っていたが、
「おっけー変更しておくねー」と、至ってフツーの返信がきた。

(なんだ、全然大丈夫じゃんかよ。)

胸にずっとつっかえていたものが取れて、
強がったものの、泣きそうになるくらい安心した。
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198 :@転載は禁止[]:2016/02/23(火) 00:18:25.30 ID:s1RHru00
そのあとは、何もなかったころと同じようにメールをした。

スマホは便利だぞとか、LINEで旧友とたくさん話したとか、
こっちの事務所はいまこんな状況だとか、そっちはどうなんだとか。
健太郎もスマホに興味を示して、今度機種変しようかなと言っていた。

メールでは何ら変わりないやりとりをしていたが、
「会おう」という話は、どちらからも持ち出さなかった。
俺は会いたかったが、それを俺が言ったらまずいかなと思っていたのだ。
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199 :@転載は禁止[]:2016/02/23(火) 00:23:41.37 ID:s1RHru00
ようやく腐りきった生活から抜け出せたと思った矢先、俺は入院するハメになった。
LINEで再会した友人とバドミントンをやったときに、靭帯を痛めてしまったのだ。
そりゃそうだ。しばらくずっとゴロゴロしかしてなかったんだから。

運動不足というよりは、自分がもう若くないことをしみじみ感じさせる出来事だった。

ただ、この入院事件でよかったことがある。
健太郎がまっさきにお見舞いにきてくれたのだ。
俺の大好きな梨と、退屈しないようにたくさんの漫画を持って。
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200 :@転載は禁止[]:2016/02/23(火) 00:28:43.39 ID:s1RHru00
会っていなかった間は、次どんな顔して会えばいいんだよと思っていたが、
予告なしに突然お見舞いにきたもんだから、いつも通りに再会してしまった。
いつも、日曜日にプリキュアを見に来た健太郎を迎える、あの感じで。

健太郎は、いつもの優しい健太郎だった。
俺のつまらない話を聞いて、笑ってくれて。
でも、いままでと、ただひとつ違うところがあった。

「もっと早くから大地と知り合ってたらよかったのにな。」
「大地がずっと入院してたら毎日一緒にいられるからいいね。」
そう言って、いままであまり言わなかった、健太郎の感情を表に出すようになったのだ。
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202 :@転載は禁止[]:2016/02/23(火) 00:33:44.55 ID:s1RHru00
退院してからも、それは変わらなかった。
またいままで通りプリキュアを見に来るようになったし、
俺に対する感情を隠すことなく、伝えてくるようになった。

特に関係を迫ってくるわけでもなかったから、俺は気にせず過ごしていた。
それに、健太郎から大切にされるのは嬉しくもあった。

健太郎とも元通りになれたし、LINEで話す友達も増えたし、
ウルトラハッピー!あとは彼女を作るだけだ!と張り切っていた。

このときの俺が、一番どうかしてたって今でも思う。
この年の秋と冬が、人生で一番しんどい季節になるとは知らずに。
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203 :@転載は禁止[]:2016/02/23(火) 00:37:40.79 ID:s1RHru00
追いつき始めたのでいったん連投します
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204 :@転載は禁止[]:2016/02/23(火) 00:38:52.66 ID:s1RHru00
頭に血がのぼっていた。

気温はすでに秋を感じさせるぐらいになっていたが、
そんなもので頭が冷えるほどじゃないくらい、俺は怒っていた。

どこに行くわけでもなく、人気のない静かな夜の町をズカズカと歩いている
俺の数メートル後ろを、健太郎が何も言わずにトボトボと追ってきていた。

「だから、付いてくんなって言ってるだろうが。」
一瞬振り返ってそう言っても、健太郎は何も言わずに後を付いてきていた。
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205 :@転載は禁止[]:2016/02/23(火) 00:39:35.90 ID:s1RHru00
高校のころの友達がセッティングしてくれた、合コンの夜だった。
話の流れで健太郎に報告したら、すごく困惑した顔をして、
「僕も一緒に行きたい。」と言い出したから、連れて行った。

お前女興味ねーじゃんw合コンいってどうすんだよwと言ったものの、
健太郎がメンツに加われば、女子のレベルが上がりそうだと踏んだのだ。

案の定、女子のレベルはいままでにないくらい高かった。
しかもどの子もいい子ばかりで、俺の胸は期待で膨らんだ。

健太郎が、爆弾発言をするまでは。
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206 :@転載は禁止[]:2016/02/23(火) 00:39:51.46 ID:s1RHru00
「僕は大地が好きなんだ」と、とんでもないことを言ったのだ。

一瞬場の空気が固まって、その後は爆笑の渦だった。
おかげで俺と健太郎はホモキャラ扱いで笑いのネタになり、
ただのコメディキャラで、その夜が終わってしまった。

だから俺は健太郎に腹を立てて、頭を冷やすために外を歩いていたのだ。

しばらく歩いて頭が冷えてきたころ、
「お前、ほんとに何がしたいんだよ!!」
と、立ち止まって後ろについてきた健太郎に言った。
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207 :@転載は禁止[]:2016/02/23(火) 00:42:08.40 ID:s1RHru00
「男と恋愛したいなら、おんなじように男が好きな連中とすればいいだろ。
 俺を巻き込むなよ。なんで今日、付いてきたんだよ。最悪の夜になったじゃねーか!!」

うつむいて立ちすくんでいる健太郎に罵声を浴びせると、
健太郎はいつものごとく黙りこくって、何も言い返してこなかった。

「黙ってないでなんとか言えよ。」

毎度、不機嫌になると黙り込む健太郎にさらに腹が立って、
俺は健太郎に近づいていって、問い詰めるように続けた。

おい、と肩をどつくと、健太郎は顔を上げて、吐き捨てるように言った。

「お互いのためにならないもんね。」

「・・・はぁ?」
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208 :@転載は禁止[]:2016/02/23(火) 00:43:35.42 ID:s1RHru00
健太郎の顔には、怒りがにじみ出ていた。

「僕が大地を好きでいても、大地は気持ち悪くて迷惑なだけだし。
 すこしの望みもない、不毛な片思いをしてる僕も惨めなだけだし。
 お互いのためにさっさと忘れたほうがいいよね。すいませんね。」

こんな風に言い返してきたことが初めてだったから、
戸惑いもあったが、それ以上に怒りの感情のほうが強かった。

「なに逆ギレしてんだよ。キレたいのはこっちのほうだっつーの。」

俺は、健太郎を睨み返した。
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209 :@転載は禁止[]:2016/02/23(火) 00:44:29.13 ID:s1RHru00
「俺はいままで、お前がゲイでも普通に接してやってたじゃん。
 それでもまだ不満だっつーのか?これ以上なに望んでんだよ?」

健太郎も俺の目をまっすぐ見て、そしてまた何もしゃべらなくなった。

「だから何とか言えって。」
もう一度肩をどつくと、健太郎は視線を少し落とした。

「大地と・・・・・・。」

そういって、ふたりの間に沈黙が流れた。
サワサワと木々が風に揺れる音だけが聞こえた。

「ずっと一緒に生きていきたいって、思ってるよ・・・・・・。」
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210 :@転載は禁止[]:2016/02/23(火) 00:45:03.10 ID:s1RHru00
自分でもどうしたらいいかわからないんだよ
大地が好きなんだよ、大好きでたまらないんだよ

大地に迷惑かけちゃいけない、迷惑かけたくないって
初めて僕を理解をしてくれた嬉しさとごっちゃになってるだけだって
そう思って何度も忘れようとしたし、何度も大地から離れようと思ったけど

でもだめなんだよ
お互いのためにならないってわかってる
大地の迷惑になってることもわかってるけど
わかってるのにどうしても好きでたまらないんだよ

女だったら彼女にするって
いつもいつも言われる僕の気持ちわかる?
どれだけ後悔したかわからないよ
なんで女じゃないんだろうって
なんで大地と付き合えないんだろうって
なんで好きになってくれないんだろうって
もうどうしたらいいか、よくわからないんだよ
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211 :@転載は禁止[]:2016/02/23(火) 00:45:41.74 ID:s1RHru00
再び、ふたりの間に沈黙が流れた。

早口でまくし立てた健太郎は、興奮して肩で息をしていた。
俺の頭は健太郎の言葉ですっかり落ち着きを取り戻していたが、
なんと返していいかわからず、何もしゃべることができなかった。

ただ、顔をゆがめている健太郎を、見つめることしかできなかった。

「それでも、大地が好きなんだよ・・・・・・。」

健太郎は小さい声でそう言ったのを最後に、俺に背を向けて歩いていった。
俺は、しばらく歩き出せず、その場に立ちつくしていた。
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212 :@転載は禁止[]:2016/02/23(火) 00:55:03.94 ID:s1RHru00
健太郎と絶交してから、季節はいつしか冬の訪れを迎えていた。

健太郎に蔑ろにされていた春、
健太郎に一方的に決別された夏、
そして健太郎と喧嘩別れをした秋。

とにかく今年は振り回された一年だった。
あのとき健太郎に逆切れされたことは、まだ許せていなかった。

合コンをめちゃくちゃにされたのはこっちなのに、
なんで俺が責められなきゃいけないのか、納得いかなかった。
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213 :@転載は禁止[]:2016/02/23(火) 00:58:21.78 ID:s1RHru00
ただ、あの夜の健太郎の言葉を何度も思い出して考えてもいた。

(人を好きになるって、どういうことだろうか。)

自分の心を、もう一度、探ってみる。
好奇心、嫉妬心、独占欲、支配欲、いろんな感情。

やっぱり、俺は早苗とやり直したかった。
もう一度想いを伝えよう。きちんと告白しよう。
あのときのクリスマス、寝坊してしまったことを謝ろう。

そう決意して、何度もシミュレーションをして、俺は早苗を呼び出した。
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214 :@転載は禁止[]:2016/02/23(火) 01:01:26.82 ID:s1RHru00
キュアビューティーが留学に悩んでいた冬の寒い日、
いつものファミレスのテーブルで、早苗を前にしていた。

実際に目の前にすると、異常に緊張してしまって、
あれだけシミュレーションしたのに、うまく切り出せなかった。

「重大な話ってなに?」
そうせっつかれて、俺は苦し紛れに健太郎の話を出した。

絶対内緒にしてほしいんだけど、あいつ実はゲイでさ、
この前、俺のこと好きだって、告白されちゃったんだよね。
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215 :@転載は禁止[]:2016/02/23(火) 01:02:04.55 ID:s1RHru00
俺にとっては思い切ったカミングアウトだったが、
早苗は驚くことなく、ついに告白したんだーと言って、
「知ってたよ。初めて会ったときから。」
と、逆に驚くことを言ってきた。

初めて・・・会ったとき?
ちょっと待て、初めて会ったのって去年の新年のことか?

「初めて三人で会ったとき、あんまりわかりやすいから聞いちゃったんだよね。それで。」
「ちょっとまて、あいつが俺のこと好きになったの、今年の春くらいからだぞ。」
「そんなわけないじゃない。もっと、ずっと前からだよ。」

そんな、まさか・・・。
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216 :@転載は禁止[]:2016/02/23(火) 01:02:58.05 ID:s1RHru00
去年の新年があまりに前のことすぎて、俺はそれまでのことが思い出しきれなかった。
でも待てよ、夏にラフティング旅行であいつを追いやったり、秋に横浜まで迎えに越させたり、
クリスマス無理やり付き合わせたり、色んなことを健太郎にしてきたような気がした。

「てっきり大地も健太郎くんのこと好きになりつつあるかと思ってたけど、違ったんだ?」
「へ、変な冗談よせよ。そんなわけないだろ。」

そ、そうだ。健太郎のことで動揺してる場合じゃない。
今日、早苗に気持ちを伝えるために呼び出したのだから。

俺はギュッと拳を握り締めて、早苗の目をじっと見据えて、告白した。
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217 :@転載は禁止[]:2016/02/23(火) 01:04:09.81 ID:s1RHru00
早苗からの返事は、すぐだった。

「ごめん。大地とはもうそういう関係にはなれない。それと、私いま彼氏いるから。」

お、おい

おい、うそだろ

「うそついてどうするの。」
うわ言のようにうそだろ、と言った俺に、早苗はキッパリそう言った。
聞いたら、去年の冬から彼氏がいて、もうそろそろ一年になるという。

「な、なんでだよ!!」
俺は思わず声を上げてしまった。
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218 :@転載は禁止[]:2016/02/23(火) 01:05:17.88 ID:s1RHru00
「どこのやつだよ!?会社のやつか!?年下か!?」
「なんでそんなこと教えなきゃいけないのよ。」
「どうして付き合ったんだよ!?」
「なにこれ尋問?」

俺は完全に目の前が真っ白になっていた。
なぜだ、なぜこんなことになっているんだ。
早苗と付き合っていたときの失敗は反省している、
いまでは大人になって、相応しい男になったつもりだ。

別れてからも、ずっと心のどこかで早苗を想い続けていた。
俺のこの気持ちはどうなるんだよ。どうしてくれるんだよ。
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219 :@転載は禁止[]:2016/02/23(火) 01:05:52.12 ID:s1RHru00
俺の耳には、もう何も入ってこなかった。
俺の頭には、体中の血という血がのぼりつめていた。

どうして言ってくれなかったんだとか、
どうしていままで俺と会ってきたんだとか、
早苗はもう何も言い返してこなくなっていたが、
それでも俺は混乱していて一方的にしゃべりつづけていた。

「お前には、ほんとにがっかりしたよ!最低だよマジで!!」

俺がしゃべり終えたのを確認すると、早苗はにっこり笑って言った。

「満足した?」
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220 :@転載は禁止[]:2016/02/23(火) 01:06:31.16 ID:s1RHru00
「・・・なんだよ、満足した?って・・・。」

「私は、あんたに交際報告をしなきゃいけない義務があるの?
 あんたは、私の恋愛の自由を許さない権利でも持ってるの?」

「そういうことを言ってるんじゃねーから。」

「最初からずっと言ってたよね。大地やりなおすつもりはないって。
 友達としてじゃないなら、もう会わないし、連絡もしないって。」

「そりゃそうだけど、でも・・・」

「"俺に気持ちがあるのがわかってるなら、お前が会うのを自重しろ"って言いたいのかな。」

「そういうわけじゃ・・・」

「大地、昔から少しも変わらないね。
 いつだって自分が自分がって、自分中心でしか考えられないよね。」
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221 :@転載は禁止[]:2016/02/23(火) 01:07:04.25 ID:s1RHru00
「私たちが付き合ってたとき、喧嘩したときのクリスマスだってそう。
 疲れてるんだから寝坊したってしょうがないだろって、そういうことしか言わなかったよね。
 私だってあのとき仕事に追われてて、すっごく疲れてたよ。でも、大地と会いたかった。
 疲れてる大地の癒しになれたらいいなと思って、何しようか考えたり、プレゼント用意したり、
 そういう相手の気持ちをちょっとだけでも考えようって思いやりを持とうともしないよね。
 寝坊したことを怒ったわけじゃないのに、そこばかりにこだわって相手を責めてさ。
 そのことに、いまこの歳になっても、気づいてないんだもんね。」

「・・・・・・。」

「自分の価値を落とすようなこと、やめたほうがいいと思うよ。」

頭にのぼった血が、ボタボタと音を立てて足元に落ちていく音が聞こえた。
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222 :@転載は禁止[]:2016/02/23(火) 01:07:45.10 ID:s1RHru00
早苗は決して声を荒げているわけではなかった。
俺が、ただ何も言い返せなかっただけだ。

自分はいま、怒られているんじゃない。
憐れみの気持ちで見られているんだ。
可哀想な男だと。可哀想な人間だと。
このまま生きていくのですかと。

体中から血が抜けてしまったようだった。

「もう連絡してこないで。」

その言葉を残して、早苗は千円札をテーブルに叩きつけて去っていった。
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223 :@転載は禁止[]:2016/02/23(火) 01:11:52.29 ID:s1RHru00
何も考えられなかった。
街を行き交う人の中で、俺だけが白黒になってしまったようだった。
どうやって店を出たのか覚えていない。どうやって家に帰ってきたのかも覚えていない。
いつしか、自分の部屋のベッドにもたれかかりながらぼんやりと天井を見ていた。

早苗に憐れみの気持ちを持たれたこと。
高校のころ、部活のコーチと言い争ったこと。
健太郎が、ずっと前から俺のことを好きだったこと。
ブラック企業に勤めていたころ、上司と言い争ったこと。
俺の知らないところで、早苗に彼氏ができていたこと。
最後に、健太郎と別れたときのこと。

いろんなものが頭の中でごっちゃになって、何も考えられなかった。
深いヘドロのような黒い渦にズブズブと沈み込んでいくようだった。

何も考えられない。誰か、この暗闇から掬い上げて欲しい。
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224 :@転載は禁止[]:2016/02/23(火) 01:14:40.07 ID:s1RHru00
いつも、助けてくれたのは健太郎だった。
いつも、励ましてくれたのは健太郎だった。

俺は、あいつに何かしてあげられたことがあるんだろうか。
何も思い浮かばなかった。たった一つでも思い浮かばなかった。

『誰が何を好きになってもいいって、言われたの初めてだよ。ありがとう。』
『せっかくの旅行なのにって、言いたいのはこっちだよ…。』
『もう一度だけ、手を繋いでもいい?』
『それでも、大地が好きなんだよ・・・・・・。』

健太郎の言葉が、フラッシュバックする。

謝らなくちゃ。

謝らなくちゃ、健太郎に。

引き出しの奥にしまってあったものと、携帯だけをつかんで、俺は家を飛び出した。
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225 :@転載は禁止[]:2016/02/23(火) 01:17:43.13 ID:s1RHru00
健太郎に会いたい。会って謝りたい。
でもいまさら何て言って会ったらいいんだ。
答えが出せず、しばらく町をさまよっていた。

気が付いたら、知らない公園にたどり着いていた。
ベンチに倒れこむように座って、スマホを取り出した。

何十分もスマホを見つめながら、葛藤を繰り返し、力を振り絞ってLINEを送った。

「自分勝手だってわかってる。でも会いたいです。」

頼む、返ってきてくれ。
頼む、返ってきてくれ。
頼む、返ってきてくれ。

「いまどこにいるの?」
健太郎からの返信だった。
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226 :@転載は禁止[]:2016/02/23(火) 01:19:56.69 ID:s1RHru00
何時間、公園のベンチでうなだれていたかわからない。
いつしか、足音がだんだん近づいてきて、俺の隣に座る人がいた。

しばらくの沈黙の後、優しい声がした。
「かぜ引いちゃうよ。」
・・・健太郎だ。

健太郎、ごめんな。ごめんな。本当にごめんな。
言いたいことはたくさんあったはずなのに、何の言葉も出てこなかった。
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227 :@転載は禁止[]:2016/02/23(火) 01:22:22.29 ID:s1RHru00
「俺、情けないよ。」

やっと出てきた言葉だった。

「自分がこんなに情けないと思ったの初めてだよ。
 なんで俺、こんなにクズみたいな男なんだろう。」

『自分の価値を落とすようなこと、やめたほうがいいと思うよ。』
早苗の言葉が思い出されて、俺はギュッと目をつぶった。

「健太郎、ごめんな。本当にごめんな。こんな自分勝手で。
 俺お前の気持ちに全然気づかなくて、ひどいことばっかして。
 わかってたのに、健太郎の気持ちになろうとしなくて。
 甘えてばっかりでごめんな。俺は健太郎に何もしてあげられないのに。
 それでも、俺には健太郎がほんとに大切な親友なんだよ。」
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228 :@転載は禁止[]:2016/02/23(火) 01:24:11.73 ID:s1RHru00
俺が顔を伏せてうなだれたまま償いをしている間、
健太郎は何も言わなかった。相槌さえ返ってこなかった。

謝りたい、そんな気持ちでいまここにいるけど、
本当を言うと、救われたかった。慰められたかった。
ここにきてこんなわがまま許されないけど、もうだめになりそうなんだ。

(頼むから、何とか言ってくれよ。)
そんなすがる気持ちで顔をあげると、俺の感傷は宙に飛んでいった。

健太郎が、うつむいて唇を噛み締めながら、ぽたぽたと涙をこぼしていたからだ。
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229 :@転載は禁止[]:2016/02/23(火) 01:26:14.03 ID:s1RHru00
信じられない。

信じられなかった。

健太郎が泣くなんて、考えられなかった。

MaxHeartの最終回を見たときも、
プリキュア5の絶望回を見たときも、
キュアピースの父の日回を見たときも、
目を潤ませることさえしなかった健太郎が。

俺が泣いてるときも、いつも笑顔で支えてくれた健太郎が、泣いている。

健太郎が、泣いている・・・。
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230 :@転載は禁止[]:2016/02/23(火) 01:27:20.02 ID:s1RHru00
悲しみに飲まれて、笑うなんて感情どこからもでてくるはずがないのに、
目の前で起きている非現実的なその光景に、なぜか半笑いになってしまった。

「なんでお前が泣くんだよ。これいま、俺が泣く流れの話してるんじゃんか。」

そう声をかけても、健太郎は小さく震えながら、
目を固くとじて声も出さずに、涙をこぼすだけだった。

「健太郎・・・。」

居たたまれなくなって震えている肩を抱くと、
健太郎は、糸が切れたように声をあげて泣き出した。
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231 :@転載は禁止[]:2016/02/23(火) 01:29:14.51 ID:s1RHru00
「好きになりたくなかったのに・・・!!
 ずっと友達のままでいられたら、ずっと大地のそばにいて、
 つらいときに一番の支えになってあげられるのに・・・!!」

そう言って、健太郎は嗚咽を始めた。
俺は、ギュッと胸を締め付けられるような感覚だった。
こんなにも俺のことを大切に思ってくれる人がいるなんて。
そして、こんな人に、俺はなんてひどいことをしてきたんだろう。

「でも、でも・・・」

健太郎は涙と鼻水を手でぬぐいながら、声を絞り出すように言った。

「でも、やっぱり大地が好きなんだよ・・・・・・。」

俺の涙腺は、限界だった。
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232 :@転載は禁止[]:2016/02/23(火) 01:31:07.44 ID:s1RHru00
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ひとしきりふたりで泣いたあと、俺たちはぼんやりと冬空を見ていた。

「ほんと、だめだな。」
「ほんと、だめだね。」

そういったあと沈黙が流れて、また同じことを言う。
そしてまた沈黙して、その繰り返しをしているうちに、
だんだんおかしくなってきて、二人で泣きはらした顔で笑った。

「でもさ。」
俺は、つかんで持ってきた、クリスタルコミューンをポケットから出した。

「だから、プリキュアはふたりなんだろ。」
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233 :@転載は禁止[]:2016/02/23(火) 01:32:51.19 ID:s1RHru00
「俺、健太郎のために何ができるか全然わかんないよ。
 でも、やっぱりそばにいてほしいって思っちゃだめかな。」

真剣な顔をして訴えたのに、健太郎は笑って返した。

「またそういう、ずるいこという。」

それは、いつもの健太郎の笑顔だった。
俺は、この笑顔に何度も救われてきた。
こんな風に、人を救える男になろう、大人になろうと思った。
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234 :@転載は禁止[]:2016/02/23(火) 01:37:52.25 ID:s1RHru00
しばらく経ったあと、俺は早苗にメールをした。
「みっともない真似しないから、一度だけ電話させてほしい。」と。

「俺、早苗に尊敬される男になるよ。そうしたら、友達としてまた会ってくれるかな。」

拒否をされるか、いつになるやらと言われると思っていたが、
「いまも尊敬してるとこ、いっぱいあるよ。」と言ってくれた。

俺は、27歳にしてようやく大人の階段を上りはじめた。
昔考えていた27歳って、もっと大人だったんだけどな。
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235 :@転載は禁止[]:2016/02/23(火) 01:38:39.99 ID:s1RHru00
あれからも、それなりにいろんなことがあった。

両親にゲイってことがバレて健太郎が家を追い出されたり、
それがきっかけで俺も引っ越して一緒に暮らすようになったり。
そのことで俺が健太郎の親御さんと言い争ったりww
俺に彼女ができたり、健太郎に彼氏ができたり。

そして俺、今年の春に、結婚するのです。
だから、この2月で健太郎との生活も終わりなのです。
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236 :@転載は禁止[]:2016/02/23(火) 01:40:40.32 ID:s1RHru00
健太郎との思い出を振り返って、こうやってまとめてみたけど、
俺ってつくづくクズというかダメな男だったなぁと反省してますww

でも、それがあったからいまがある。
あのとき気づかせてくれた、健太郎と早苗には本当に感謝してます。

そして。

プリキュアは、俺と健太郎の思い出の結晶です。
ずっとずっとありがとうの思いを込めて、最後に一言。

キュアップ・ラパパ!今日もいい日にな〜れ!

■おしまい■
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242 :@転載は禁止[]:2016/02/23(火) 06:36:12.88 ID:s1RHru00
昨日力尽きて寝てしまったw

自分で書きながら、改めてクズな男だったなと思うわけです。
実際、健太郎に対しても「ゲイを認めてやってる俺」という気持ちが
どこかにあったから、俺のほうが優位なんだと思ってたところがあるし。

改心したというほど立派なもんじゃないっす。
やっと、人の気持ちを考えられるようになったって感じです。
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243 :@転載は禁止[]:2016/02/23(火) 06:41:23.83 ID:s1RHru00
いまの一番の願いは、日本でも同性婚が早くできるようにならないかなぁということ。

俺も健太郎も、同時期にお互いのパートナーができたのに、
俺だけ先に結婚しちゃって、健太郎は望みがないなんて。

渋谷のパートナー制度の話のときにも話題にのぼってたけど、
扶養がとか、子孫がとか、そんなの求めて結婚する人少ないじゃん。
好きな人とずっと一緒っていう契りを交わしたくてする人のほうが多いと思うんだけどな。
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244 :@転載は禁止[]:2016/02/23(火) 06:45:36.93 ID:s1RHru00
とりあえず仕事だー!!

あ、もうひとつ、青少年諸君。
30代っていったら大人なイメージあるけど、びっくりするほど子どもだぞw
自分がなってみて、つくづく思ったよ。

でも、色々考えて生きてきたのか、そうじゃないのかで、差がでてくるのも30代からだと思ったよ。
そういう意味で俺は気づくのが遅かったから、ちょっとだけ後悔してるけどね。


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