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名も無き被検体774号+@転載は禁止
愛は真心、恋は下心。 [転載禁止]©2ch.net

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愛は真心、恋は下心。 [転載禁止]©2ch.net
1 :名も無き被検体774号+@転載は禁止[sage]:2015/09/13(日) 17:00:35.34 ID:4FDoMmGn0
愛は真心、恋は下心。誰が言ったかも分からないこんな文に心を動かされた訳ではないが、僕には当てはまらないと思う。
心は時に、真ん中でも下でもなく、右上だったり左下だったり、そんな場所にも行くと思うんだ。
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3 :名も無き被検体774号+@転載は禁止[]:2015/09/13(日) 17:01:28.82 ID:4FDoMmGn0
夏が鳴いた。
茹だるような暑さ。涼しさを演出してくれるはずの風鈴は微動だにしていない。
窓から外を見ると、昨晩降った雨で出来た水溜りの上に陽炎が浮き出ていて、今が何時かを確認する必要も無いほど、耳には蝉の声が響いていた。
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4 :名も無き被検体774号+@転載は禁止[sage]:2015/09/13(日) 17:02:18.13 ID:4FDoMmGn0
生憎と僕の住む二階建てでこじんまりとしたアパートの一室には、エアコンなどという地球温暖化に真っ向から喧嘩を売りにいくような機材はなく、買ってから手入れをしていない羽に埃がついた扇風機に顔を近づけて体感温度を誤魔化すしかなかった。
扇風機が作る風は生温い。それでも、汗でベタベタになった体はそんな風ですら涼しく感じさせた。
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5 :名も無き被検体774号+@転載は禁止[sage]:2015/09/13(日) 17:03:27.84 ID:4FDoMmGn0
そんないつもと変わらない今日。
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6 :名も無き被検体774号+@転載は禁止[]:2015/09/13(日) 17:03:44.82 ID:4FDoMmGn0
祝日で仕事は休みだったが、だからといってやりたい事など一つも無い。東京には仕事関係以外の友人など数少ないし、趣味も無い。
それでも、普段は仕事をしている曜日に何もしないというのはなんだか居心地が悪かった。
汗でびしょびしょになった半袖のシャツを脱いで洗濯機の隣に置いてある籠に投げ入れ、綺麗に畳んで置いてある服の中から緑色のシャツを選んで着て、暑さから逃げるように僕は部屋を出た。
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8 :名も無き被検体774号+@転載は禁止[]:2015/09/13(日) 17:05:51.65 ID:4FDoMmGn0
着いた場所は部屋を出て徒歩五秒、隣の部屋である。
四十住(あいずみ)と書かれた表札は手書きで、黒の油性ペンで書かれているその文字は所々滲んでおり、ここに掲げられてから長い月日が経ったであろう事が伺えた。
ここはアパート自体が随分古いから、チャイムがない。
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9 :名も無き被検体774号+@転載は禁止[]:2015/09/13(日) 17:07:20.70 ID:4FDoMmGn0
扉を手の甲でコンコンと叩き、「四十住さん」と一言声をかける。
耳を澄ませると中で部屋を片付けるようなごそごそとした音が聞こえ、程なく中から一人の女性が出てきた。
その女性、四十住さんは目を大きく見開くと、そのまま僕を部屋に入れた。
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10 :名も無き被検体774号+@転載は禁止[]:2015/09/13(日) 17:08:12.21 ID:4FDoMmGn0
ちょうど一年ほど前、このアパートで一人暮らしを始める事になった。
僕は女性が激しく苦手なのだが、それはこの時も変わらずだった。
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11 :名も無き被検体774号+@転載は禁止[]:2015/09/13(日) 17:09:28.01 ID:4FDoMmGn0
これからこの古ぼけた部屋を我が家と呼んで、毎日仕事尽くしの生活が始まるのかと思うと些か気分が沈んだが、幸いだったのは住民が少ないことだった。
住んでいる人は二階の端からひとつ手前の僕の部屋を除くと、僕の部屋の隣、つまり一番端の部屋に一人。
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12 :名も無き被検体774号+@転載は禁止[]:2015/09/13(日) 17:10:06.10 ID:4FDoMmGn0
後は一階にある大家さんの部屋と、その隣に一人だけだった。
住民全員に挨拶回りをしなければならないと思っていた僕にはこの事実は、外国の地震で死傷者ゼロ人というニュースよりもはるかに嬉しい事だった。
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13 :名も無き被検体774号+@転載は禁止[sage]:2015/09/13(日) 17:10:30.27 ID:4FDoMmGn0
都会では挨拶回りなどしないのが普通だというのはその後仲良くなった四十住さんから聞いて初めて知る事になる。
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14 :名も無き被検体774号+@転載は禁止[]:2015/09/13(日) 17:11:33.85 ID:4FDoMmGn0
その挨拶の際、ちょっとした茶菓子を持って部屋を回っていた僕に偶然帰宅するタイミングだった四十住さんが、親睦を深めようと僕を半ば無理やり部屋へ招いた。
僕が極度の女性恐怖症だという事を知らない四十住さんは目を輝かせながら、このアパートに新しい入居者が来たのは三年振りだと熱く語っていたのたが、対する僕は慣れない状況に眩暈を起こしてその場で嘔吐、気絶してその場で一夜を明かした。
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16 :名も無き被検体774号+@転載は禁止[]:2015/09/13(日) 17:12:52.52 ID:4FDoMmGn0
翌朝になって目を覚ますと、昨晩に吐いた僕の残骸は全て無くなっていた。
身体を包む暖かさを確かめてみると、そこは四十住さんの布団の中だった。
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17 :名も無き被検体774号+@転載は禁止[]:2015/09/13(日) 17:13:47.24 ID:4FDoMmGn0
女性の良い香りと、昨晩の記憶が混濁して、僕はまた床に嘔吐した。
それを見た四十住さんは大きな声で笑って、床を綺麗片付けて僕の気持ちが落ち着くのを珈琲を飲みながら待ってくれていた。
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18 :名も無き被検体774号+@転載は禁止[]:2015/09/13(日) 17:14:57.72 ID:4FDoMmGn0
気持ちがだいぶ楽になった頃、僕と四十住さんは自己紹介をした。
僕は今年で十九歳になること、極度の女性恐怖症であること。
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19 :名も無き被検体774号+@転載は禁止[]:2015/09/13(日) 17:16:30.87 ID:4FDoMmGn0
昨晩とつい先程は本当に申し訳ない事をしてしまったと平謝りする僕に、四十住さんは『君、面白いね』と言って笑って流してくれた。
彼女は僕と同い年で、このアパートの古株であること、大学に通っていること。
それにパニック障害であることを教えてくれた。
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20 :名も無き被検体774号+@転載は禁止[]:2015/09/13(日) 17:17:56.68 ID:4FDoMmGn0
詳しい過去をお互いに話す事はなかったが、親近感を感じたのだろう。僕と四十住さんはすぐに意気投合する。
四十住さんは僕の女性恐怖症を治すため、僕は四十住さんのパニック障害を治すため、二人で過ごす時間を増やしてきた。
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21 :名も無き被検体774号+@転載は禁止[]:2015/09/13(日) 17:20:08.65 ID:4FDoMmGn0
四十住さんのパニック障害は他の人と比べると軽度ではあったが、閉塞的な空間や人混みの中にいると眩暈と動悸が激しくなり、立っていられなくなる。不安発作というものだった。
それからというもの、お互いが暇になる度にどちらかの家にお邪魔し、下らない話をしながら一晩を過ごすのが決まりになっていた。
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22 :名も無き被検体774号+@転載は禁止[]:2015/09/13(日) 17:22:44.58 ID:4FDoMmGn0
僕の女性恐怖症は、リハビリの甲斐もあり、ほぼ完全に治った。
四十住さんも、外食はまだ苦手でも人混みを歩いて買い物できるまでになった。
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23 :名も無き被検体774号+@転載は禁止[]:2015/09/13(日) 17:23:53.74 ID:4FDoMmGn0
それから今に至るまで、大体一週間に二回は互いの部屋を行き来していた。
今日も暇になったので四十住さんの所を訪ねたのだが、彼女の様子はいつもと少し違うようだった。
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25 :名も無き被検体774号+@転載は禁止[]:2015/09/13(日) 18:07:15.17 ID:4FDoMmGn0
「四十住さん、どうかした?」
堪え兼ねた僕は何かを我慢しているかのような彼女に言葉をかける。
いや、本当は心当たりがあるのだが。
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26 :名も無き被検体774号+@転載は禁止[]:2015/09/13(日) 18:09:11.61 ID:4FDoMmGn0
アコースティックギターで有名な楽曲のワンフレーズを繰り返し弾いていた四十住さんは手を止めて、完全にくつろいでいた僕を見下ろした。
「斎藤。君はどうかしているよ」
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27 :名も無き被検体774号+@転載は禁止[]:2015/09/13(日) 18:09:44.11 ID:4FDoMmGn0
彼女は大袈裟に首を左右に振って肩で溜息をつく。椅子に座った状態で膝に置いていた楽譜を布団に投げて腰を上げ、弦が錆び付いたギターをスタンドに立て掛けてから僕の隣に座った。
「君が想いを寄せている彼女、どうやらマイナーながらもアイドル活動をしているようだね」
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28 :名も無き被検体774号+@転載は禁止[]:2015/09/13(日) 18:12:41.30 ID:4FDoMmGn0
やはりこの話題だったか。
「そうですよ。毎週木曜日に定期公演してるみたいです」
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29 :名も無き被検体774号+@転載は禁止[]:2015/09/13(日) 18:13:40.08 ID:4FDoMmGn0
四十住さんとは同い年だが、僕は敬語で通している。
四十住さんには色々と世話になっているし、敬語を使うのが癖になっているというのもある。
しかし大部分は、彼女から発せられる人生の玄人感だ。
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30 :名も無き被検体774号+@転載は禁止[]:2015/09/13(日) 18:15:17.17 ID:4FDoMmGn0
見た目は整った顔立ちをしていて、髪は念入りに手入れされている事を容易に想像できるような黒のセミロング。幼さは微塵も感じさせないが、大人というにはまだ少し何かが足りないような、そんな印象を受ける。
しかしそれとは反対に、言葉遣いと物事の考え方から、まるで何百年も生きてきたような雰囲気を感じさせられた。
そして服はいつも制服を着ている。
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31 :名も無き被検体774号+@転載は禁止[]:2015/09/13(日) 18:15:57.15 ID:4FDoMmGn0
四十住さんの通う大学は、別段制服制というわけではない。彼女いわく、この方が何かと便利なのだそうだ。
こう言った要素から初めて見た時は高校生くらいだと思ったが、実際に話してみると僕よりもひと回り、ふた回りも年上に感じられた。
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32 :名も無き被検体774号+@転載は禁止[]:2015/09/13(日) 18:16:51.64 ID:4FDoMmGn0
「定期公演が木曜日だと言ったな? そして今日は木曜日だ。ならば何故、君はここにいる?」
「何故と言われましても困ります。ここに居たいからです」
そう言うと彼女は苦虫を噛み潰したような顔をして僕の後ろに座り、背中から腕を回して僕を抱きしめた。
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33 :名も無き被検体774号+@転載は禁止[]:2015/09/13(日) 18:19:37.83 ID:4FDoMmGn0
「斎藤、分かっているだろう? 私はな」
「分かってますよ。貴女は誰かに恋をしている僕が好きなんですよね」
ここ一ヶ月で何度も聞いた台詞だ。
初めて聞いた時、僕は目を丸くした。
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34 :名も無き被検体774号+@転載は禁止[]:2015/09/13(日) 18:20:04.08 ID:4FDoMmGn0
誰かに好きだなんて言われた事は生まれて一度も経験した事がなかった。
僕の人生の中である甘い思い出と言えば、中学生の頃に学園祭のクラス委員だった女の子と放課後一緒にクラス発表で使う黒い発泡ボードに修学旅行の写真をひたすら貼り付け、帰る時には外が真っ暗だった事もあってその女の子を家まで送り届けた事くらいだ。
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35 :名も無き被検体774号+@転載は禁止[]:2015/09/13(日) 18:25:04.10 ID:4FDoMmGn0
作業中はどんな言葉を交わしたか覚えていないが、発泡ボードにべた塗りされた黒の塗料から発せられる強烈なシンナーの匂いは未だに覚えている。
その時の僕は、この子とこれから何かあるんじゃないかと期待せずにはいられるほど大人じゃなかった。
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36 :名も無き被検体774号+@転載は禁止[]:2015/09/13(日) 18:28:53.31 ID:4FDoMmGn0
帰り道にその子から恋愛相談を受けて、僕の幼稚な幻想はすぐ砕かれる事となるが。
これをきっかけに、僕の中にある女の子に対する免疫力は著しく低下する事になる。
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37 :名も無き被検体774号+@転載は禁止[]:2015/09/13(日) 18:29:07.19 ID:4FDoMmGn0
女の子の気持ちを理解できずに、相手の顔色を伺って人付き合いをする僕は学校で虐めの対象になった。主に女性関連。嘘の告白はもちろん、裸の写真を撮られたり、大事な部分を切り取られそうになった事もある。
それからの僕は、身内以外の女性の前に立つだけで動悸が激しくなったり、喋るなんて以ての外である。
おかげで接客業なんて出来た試しがない。高校すら通信制に通う羽目になったのだ。
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38 :名も無き被検体774号+@転載は禁止[]:2015/09/13(日) 18:33:09.50 ID:4FDoMmGn0
我ながら脆い精神だ、と思う。
高校を卒業してからは、倉庫の棚卸しや運送会社の下請け仕事を転々としながら二十歳という若さで残りの人生を惰性のように生きてきた。 
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39 :名も無き被検体774号+@転載は禁止[]:2015/09/13(日) 18:37:26.55 ID:4FDoMmGn0
そんな僕にも所謂モテ期というのがやってきたのだ。
その時は浮かれていた。が、まだその時は理解していなかったのだ。その言葉の本質を。
「分かっているなら、何故君は誰かに恋をしないんだ? 私は早く恋をした君に恋をしたいんだ」
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40 :名も無き被検体774号+@転載は禁止[]:2015/09/13(日) 18:40:59.77 ID:4FDoMmGn0
彼女は歪んでいる。
一度、監禁された事がある。
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41 :名も無き被検体774号+@転載は禁止[]:2015/09/13(日) 18:43:13.64 ID:4FDoMmGn0
いや、軟禁と言うべきか。部屋から出る事も誰かに連絡を取る事も許されなかったが、室内でのある程度の自由は保障されていた。
四十住さんと出会ってから半年後の出来事である。
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42 :名も無き被検体774号+@転載は禁止[]:2015/09/13(日) 18:54:12.73 ID:4FDoMmGn0
上京してから初めての職場は、人と接する事のない倉庫整理の仕事だった。
そこの同僚に、一人だけ愛想の良い女性がいた。
出勤から退勤まで殆ど喋る必要のない職場にも関わらず、人とのコミュニケーションを欠かさない人だった。
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43 :名も無き被検体774号+@転載は禁止[]:2015/09/13(日) 18:54:28.38 ID:4FDoMmGn0
その時の僕はまだ女性恐怖症が強く残っており、遂に話をする事は叶わなかったが、それでも好きだった。
そんな事を話のネタになればと思い、四十住さんの部屋にお邪魔している時にうっかり喋ってしまった。
うっかりと言っても、この時は四十住さんにこんな隠れた性格があるとは知らなかったので僕に罪はないだろう。
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44 :名も無き被検体774号+@転載は禁止[]:2015/09/13(日) 18:57:54.03 ID:4FDoMmGn0
その話をしている間、四十住さんは僕を愛おしげに見つめていた。
その後、されるがままに僕は手と足首を厳重に縛られ、犯罪者になった四十住さんは赤ん坊のように怯える僕に映画の中のヒロインのような口調でこう言った。
『誰かに恋をしている君が、好きだ。今の君を誰にも渡したくない』
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45 :名も無き被検体774号+@転載は禁止[]:2015/09/13(日) 18:58:52.45 ID:4FDoMmGn0
その後も長い時間をかけて四十住さん自身の心情を細かく教えてくれた。
今までに誰かを愛した経験がないこと、恋に落ちたのはこれが初めてだということ、自分でもおかしいと思っているということ、気がついたら衝動的に僕を縛り上げてしまっていたこと。
怯える僕はとにかく何とか逃げなきゃと考え、部屋から出ない、連絡を取らないことを条件に監禁状態を解いてもらい、軟禁生活が始まった。
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46 :名も無き被検体774号+@転載は禁止[]:2015/09/13(日) 19:17:47.08 ID:4FDoMmGn0
初めは恐怖と焦りで眠る事もままならなかったが、一番丸く収まる方法を考えているうちに軟禁生活に慣れてしまった。
軟禁といっても、携帯やパソコンといったインターネットの繋がる物を使えないだけで、お腹が空けばが料理を作ってくれるし、四十住さんと一緒になら買い物にも行ける。
夜は四十住さんと一緒の布団で睡眠を取るし、借りてきたDVDを見たり音楽を聴いたり、ゲームをしたりと毎日を満喫できた。
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47 :名も無き被検体774号+@転載は禁止[]:2015/09/13(日) 19:30:40.28 ID:4FDoMmGn0
勿論連絡が取れない僕は仕事に復帰する事はできなかったし、両親からは勘当を食らった。
僕の親を心配させすぎないようにと四十住さんが僕と彼女のツーショット写真をメールで送ったのが原因だ。
当然、仕事に行っていない事は実家にも連絡があっただろう。
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48 :名も無き被検体774号+@転載は禁止[]:2015/09/13(日) 19:30:52.28 ID:4FDoMmGn0
勤めも果たさないで遊び呆けていると思った父から、勘当だという旨が届いたという。
それでも僕が四十住さんから逃げようとしなかったのは、きっとこの時から僕は彼女の事が好きになっていたからだ。
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49 :名も無き被検体774号+@転載は禁止[]:2015/09/13(日) 19:31:46.92 ID:4FDoMmGn0
軟禁状態とはいえ、彼女が僕に尽くしてくれる行動からは間違いなく愛を感じた。
僕に向けてくれる笑顔は、この世で一番に美しいものだと思ったんだ。
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51 :名も無き被検体774号+@転載は禁止[]:2015/09/13(日) 19:45:39.63 ID:4FDoMmGn0
自分の気持ちに気づいたその夜、僕は四十住さんに気持ちを伝えた。
ハッピーエンドを予想していただけに、考えられないほどのショックが僕を襲った。
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52 :名も無き被検体774号+@転載は禁止[]:2015/09/13(日) 19:48:02.96 ID:4FDoMmGn0
僕が伝えたのはただ一言、貴女が好きです。
彼女が発したのもただ一言、たった今、私は君が好きじゃなくなった。
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53 :名も無き被検体774号+@転載は禁止[]:2015/09/13(日) 19:49:11.75 ID:4FDoMmGn0
そう、彼女は『四十住さん以外の誰かに恋をしている僕に恋をしている』のだ。
僕と彼女が結ばれる事はない、だろう。
それから僕達は今まで通りの生活に戻った。
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54 :名も無き被検体774号+@転載は禁止[]:2015/09/13(日) 19:50:56.02 ID:4FDoMmGn0
「斎藤、今は好きな人はいないのか?」
後ろから抱きついていた彼女は既に定位置であるデスク前の椅子に座ってベースギターを弾いていた。
「いますよ」
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55 :名も無き被検体774号+@転載は禁止[]:2015/09/13(日) 19:51:53.68 ID:4FDoMmGn0
四十住さんの部屋にある本棚からいくつか本を取り、それを読みながら僕は答えた。
「ほう、誰だ?」
四十住さんはベースのフレット数を指差しで数えながら会話を続ける。
お互いにこの会話に意味などない事は分かっていた。
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