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◆znJHy.L8nY @転載は禁止
名も無き被検体774号+@転載は禁止
ある人々の話 [転載禁止]©2ch.net
男「…廃屋だと思ったら神社だったでごさる」 Part2
カーチャンが車が動かなくなったといったきり電話通じない [転載禁止]©2ch.net

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ある人々の話 [転載禁止]©2ch.net
51 : ◆znJHy.L8nY @転載は禁止[]:2014/11/02(日) 20:35:23.23 ID:XQDi837x0
小さい頃はまだ、性別に対する意識の相違がなかった。
それが小学校になり、それも高学年になるにつれて、自意識と身体の相違に戸惑い、一時期は一種の鬱の様になったこともあった。
それも中学に上がる頃には落ち着いた。
それでも、初対面や事情を知らない人に会うと「何故男子の制服を?」と聞かれる。
ボクは、それが嫌だった。
嫌だけれど、今更長い髪を切ってどうこうしようとは思えない。
これが昔からのボクだったし、これじゃないボクを、ボクは見たことがないから。
それでも、自分の意識が自分でも理解できないことが、辛い。
ある人々の話 [転載禁止]©2ch.net
52 : ◆znJHy.L8nY @転載は禁止[]:2014/11/02(日) 20:36:21.46 ID:XQDi837x0
「×××ー!」
名前を呼ばれ、ハッと意識が現実に引き戻される。
名前を呼んだのは、彼だった。
「どうしたの?+++君」
ボクは冷静に、平静を保ちながら応える。
そうでもしないと、心臓が飛び出してしまいそうだったから。
「今日放課後暇か?」
「暇だけど……なんで?」
普段なら、用事を言って直ぐ席に戻る彼にしては珍しく、何か吃っていた。
「いや……ちょっと話があってな」
「話ね。うん、わかった」
「じゃ、放課後にな!」
話の内容は教えてくれなかったけど、彼は吃っていたのはどこへやら、直ぐに元気を取り戻して自分の席に戻って行った。
ボクは、楽しそうに談笑している彼を見ていることにした。


休み時間も終わり、授業がはじまる。
彼は発言したがりなのか、よく玉砕していた。
その姿は、とても微笑ましいものだった。
国語の音読では、一字一句間違えずに読み上げ、嬉しそうにしたり
数学では、問題が解けたと喜んだり。
彼は、喜怒哀楽のはっきりした人だった。
それは、見ていてとても楽しいものだと思う。
ある人々の話 [転載禁止]©2ch.net
53 : ◆znJHy.L8nY @転載は禁止[]:2014/11/02(日) 20:38:36.75 ID:XQDi837x0
気がつけば放課後で。
彼につれられて校舎裏に来ていた。
この時間ならば人も来ないから、秘密の話をするにはもってこいだろう。
「それで……話ってなに?」
ボクがそう聞くと、彼は少しの沈黙の後、徐に口を開いた。

それは、ボクにとって衝撃的なものだった。

「俺には好きな奴がいる」

「最初はそいつのことを女だと思っていた」

「でも、そいつは男だった」

「でも俺は、そいつが好きだった」

「なぁ、どうすればいい?」







「好きだ、×××」
ある人々の話 [転載禁止]©2ch.net
54 : ◆znJHy.L8nY @転載は禁止[]:2014/11/02(日) 20:39:32.32 ID:XQDi837x0
家に帰って、横になる。
精神的な疲れからか、横になった途端に眠気に襲われて

眠りについた。





朝、日が昇る前に目が覚める。
お母さんは研究所に入りっぱなしだし、父さんは幾年か前に死んでしまったから、朝食の支度はボクが一人でする。
炊き忘れていたご飯は諦め、食パンをトースターに放り込む。
タイマーを設定し、部屋に戻った。
着ていた服を脱ぎ、そこでようやく体の変化に気づいた。
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55 : ◆znJHy.L8nY @転載は禁止[]:2014/11/02(日) 20:41:33.27 ID:XQDi837x0
せわしなく着替えを済ませ、トーストを口に詰め込み、紅茶を流し込む。
家を飛び出し、彼の家を目指し、走った。
彼は、丁度よく家から出るところで
「おま……どうしたんだよこんなところで」
「……き、昨日の……返事を……しておこうかな……って」
走ったからか、息が整わなく、肩を震わせるボクーーーいや、私を、彼はじっと見た。
「返事なんて……いいよ」
「よくない!」
突然にあげた大声に、彼はビクつく。
そこに畳み掛けるように、私はこう言った。






「×××!16歳!性別''女''!貴方の彼女にしてください!」
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56 : ◆znJHy.L8nY @転載は禁止[]:2014/11/02(日) 20:43:01.29 ID:XQDi837x0
第四話終わりです
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58 : ◆znJHy.L8nY @転載は禁止[]:2014/11/02(日) 20:48:48.62 ID:XQDi837x0
>>14,25,57
ありがとうございます
ある人々の話 [転載禁止]©2ch.net
59 : ◆znJHy.L8nY @転載は禁止[]:2014/11/02(日) 20:49:53.18 ID:XQDi837x0
次回で最終話になります
ある人々の話 [転載禁止]©2ch.net
62 : ◆znJHy.L8nY @転載は禁止[]:2014/11/02(日) 20:51:40.06 ID:XQDi837x0
高評価を貰えて嬉しい限りです
最終話は今までとは違う感じになってます
もしかしたら苦手、嫌いな方もいらっしゃるかもしれません
ある人々の話 [転載禁止]©2ch.net
63 : ◆znJHy.L8nY @転載は禁止[]:2014/11/02(日) 20:53:48.40 ID:XQDi837x0
ーーーある研究者の話

我々人類が、20年前ーーー現在2053人年から差し引いて2023年ーーー環境ストレスからなるxx染色体保持者の減少から、緩やかに衰退を始めて以来、女性というものの希少価値は高まる一方だった。
対策として、人工子宮の開発や、万能細胞を用いた体外受精の実験など、様々な方法を使っても、倫理や人権、費用などの様々な問題が山積みとなり、結果として実用には至らなかった。
国連及び国連加盟国は、女性種の保存を目的とした様々な方法を試し、結果、ストレスをなるだけ与えない、女性優遇措置が取られることになった。
それからというもの、女性ということに胡座をかき、それを振り回して男性を見下すようになるのに、それほどの時間は要らなかった。
もちろん、全て女性がそうとは言わない。
でも、すくなからず私の周りには、そういう人しかいなかった。
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64 : ◆znJHy.L8nY @転載は禁止[]:2014/11/02(日) 20:54:55.94 ID:XQDi837x0
止まらない人類の衰退。
その福音が、13年ほど前になった。
後天性性異常症候群。
産まれもった性別ではない、その対となる性別に、僅か短時間でなってしまうという、細菌性症候群。
空気、経口、血液、体液と、およそ考えられる全ての感染経路から感染し、発症まで1〜7日しかない、この細菌と、私は生きてきた。


私の人生を大きく変えたTS病との出会いを、ここでは語ろうと思う。
ある人々の話 [転載禁止]©2ch.net
65 : ◆znJHy.L8nY @転載は禁止[]:2014/11/02(日) 20:56:17.61 ID:XQDi837x0
<<機長より、乗客の皆様へ。当機はこれより着陸体制に入ります。シートベルトの着用をお願いします>>
長い空の旅も終わりを告げ、衝撃と共に訪れる「地に足が付く」感覚が戻ると、私は荷をもって機体から降りた。
南アフリカ共和国。発展は女性の減少でとまり、半ば廃墟と化した高層ビルと、人の疎らな都市部は、人類衰退の現実を、我々に見せつけるようだった。
「ようやくいらっしゃいましたか」
懐かしい声と日本語で、私は振り返った。
「高橋博士……」
「博士はやめてくれ、前みたいに憲司叔父さんでいいよ」
高橋憲司。
細菌研究のエキスパートで、最近設立された、国連細菌テロ対策室の室長をしている。
そして、私の叔父。
「で、叔父さん。上の指示でこちらに来ましたけど、何かあったんですか?」
「それは車の中で話そう。向こうに待たせてあるんだ。エアコンも効いてる。ここは暑いだろう?」
「えぇ、じゃあ行きましょうか」
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66 : ◆znJHy.L8nY @転載は禁止[]:2014/11/02(日) 21:00:49.43 ID:XQDi837x0
空港をでた先にあったのは、陸上自衛隊の89式戦闘装甲車だった。
周りには、22式小銃を携帯し、砂漠迷彩に身を包んだ陸上自衛官が、周囲を警戒している。
「三曹、こちらが件の博士だよ」
三曹、三等陸曹の階級章をつけたその自衛官は、手を差し出して
「お初にお目にかかります、博士。私は野崎三曹です」
と自己紹介した。
「どうも、私は唐氏といいます」
差し出された手を私は握り、自己紹介した。
「三曹はこれからの状況の外敵排除……ようするに露払いをしてくれるんだよ」
叔父さんはそう言った。
「露払い、と言うことは、何か命の危険が?」
「民兵組織が、これから向かう村で幅を利かせてる。敵の装備は小銃や拳銃の様な生易しい物じゃない。ソマリアの様に対戦車ロケットやRPGまで持ってやがる」
「我々の他にも、多目的ヘリや攻撃ヘリの支援まであります。博士には傷一つつけません」
「それは……ご丁寧にどうも」
「行きましょう、そろそろ時間だ」
装甲で固められた後部ハッチから、我々は戦闘装甲車に乗り込んだ。
ある人々の話 [転載禁止]©2ch.net
67 : ◆znJHy.L8nY @転載は禁止[]:2014/11/02(日) 21:02:15.20 ID:XQDi837x0
「ここから数十分のところに、PKFの航空基地があります。そこでMH-60に乗り換え、1時間ほど飛行します。目的地はここです」
野崎三曹の指さした先には、周りを山で囲まれた、小さな村があった。
「未確認の細菌が蔓延し、これは噂ですが、なんでも男性が女性になったとか」
「ん……なバカなっ」
「私も冗談と信じたいですが、先遣隊の報告では、女性の数が男性に比べ圧倒的に多い集落だった、と」
にわかに信じられないことだった。
全世界的か気候の変動からなるストレスから、XX染色体保持者、要するに女性の数が激減した現在、一集落の男女比は9:1にまで落ち込んだ。
ある人々の話 [転載禁止]©2ch.net
68 : ◆znJHy.L8nY @転載は禁止[]:2014/11/02(日) 21:02:40.71 ID:XQDi837x0
これは先進国で、しかも其れ相応の処置を施された地域での数字。
アフリカの地方では、それがどんな極端に小さい数字になってるかなど、想像すらつかない。
「あと、装備ですが」
三曹は掛けられた低圧密封されたケースから、通常迷彩の防護服を取り出した。
「細菌蔓延地域ですので、着用してください」
ヘッドセットの無線機の電源をいれ、狭い車内で、防護服を着た。
ある人々の話 [転載禁止]©2ch.net
69 : ◆znJHy.L8nY @転載は禁止[]:2014/11/02(日) 21:03:16.92 ID:XQDi837x0
轟音と共に飛び立つ攻撃機を横目に見つつ、回転翼の回っているMH-60に乗り込む。
ダウンウォッシュで巻き上げられた熱風が、防護服の中を蒸し風呂にしていく。
「状況は1130開始予定です。状況地域着後、まずは患者の問診から始めましょう」
「了解です」
ふわりともせずに浮かび上がり、上下にガタガタ揺れる機体の中には、戦場へ向かうかの様な緊張感が漂っていた。
でも、実際に行われるのはただの診察であり、そこに民兵からの軍事介入がなければ、全く問題の無い事だ。
「叔父さん、その未確認の感染症についてなにかわかっている事は?」
「現在わかっている事は、感染者の遺伝子情報を改編する、ということだけだ」
「それは、何か臨床実験で得られた資料?」
「一応マウスでも実験はした」
「結果は?」
「遺伝子改変が見られた以外には特に」
「そうですか」
問診前の事前情報ほど、助かるものはない。
それは、どんな場合でもそうだ。
大体のあたりがついていれば、そこから絞り込むことだって容易だから。
ある人々の話 [転載禁止]©2ch.net
70 : ◆znJHy.L8nY @転載は禁止[]:2014/11/02(日) 21:03:44.14 ID:XQDi837x0
乾燥した砂を、ダウンウォッシュが巻き上げる。
周辺警戒をしつつ降りた陸自隊員の後につづき、重苦しい防護服に身をつつみ、降りる。
黒人の白目から光る、ぎょろりとした黒い目に、私は少し疎外感を感じていた。
「OH-1からの報告では、周辺地域に民兵の姿はないそうです」
「ゆっくり診察できるってことですね」
「えぇ。これから我々は状況を開始します。状況時間は1時間。それまでにサンプルの確保をお願いします」
「わかりました。じゃあおじさん、やりましょうか」
「よし、わかった」
通訳の隊員に連れられ、ある一つの家に入る。
中には、男性用の衣類に身を包んだ女性がいた。
「この村の長だったのですが、この通り女性化を」
「冗談だと思ったんだけどな」
「残念ながらこれが事実です」
「……この事象が解明されたら、もしかしたら人類には福音かもしれんな」
「そうなればいいですけどね。その可能性を確かめる為にも、サンプル、お願いします」
黒人の女性は、まっすぐこちらを見る。
黒目に射抜かれた、と言うべきか。
ある人々の話 [転載禁止]©2ch.net
71 : ◆znJHy.L8nY @転載は禁止[]:2014/11/02(日) 21:04:13.19 ID:XQDi837x0
「こんにちは」
同時通訳で隊員が話しかける。
「私は日本の医者です。貴女達を治す為に来ました」
もちろん、治す為というのは嘘だ。
この作戦の目標はサンプルの採取であり、患者の治療ではない。
治療も何も、この細菌の特性や発病後の症状もわかってないのだ。
「Mimi kufa kwa ajili ya?」
彼女が何かを言う。
「私は死ぬのか?」
「いえ、私達の医療技術で貴女を助けましょう」
「Nimekuwa nini duniani?(私は一体どうなるのだ?)」
「私たちに協力して頂ければ、貴女を助けることができます」
「Nifanye nini?(何をすればいい?)」
「では腕を出してください」
彼女は言われた通りに腕を出してきた。
私はその細い腕に採血帯をつけ、注射器を挿入した。
「Chungu(痛い…)」
「すぐ終わりますから」
計25cc。
この中に含まれる細菌を培養し、猿に投与する。
結果はまだわからないけど、私は血液の入った密閉試験管を保冷鞄にしまった。
ある人々の話 [転載禁止]©2ch.net
72 : ◆znJHy.L8nY @転載は禁止[]:2014/11/02(日) 21:04:44.31 ID:XQDi837x0
「少し、お話しませんか?」
「Nini anatakiwa kusema?(何を話せばいい?)」
「貴女が女性の体になったときの状況などを」
「Sijui. Wakati kuamka asubuhi na hii imekuwa katika mwili huu.(わからない。朝起きたらこの体になっていた)」
「何か、体がだるいとかありませんでしたか?」
「Wepesi? Sijui, mwili inakuwa ajabu nzito, ni kwenda kulala mara moja siku hiyo.(だるい?よくわからないけど、その日は妙に体が重くて、すぐに寝てしまったよ)」
「なるほど。ありがとうございました」
発症の前日に体の不調。
倦怠感と長時間睡眠。
「何かわかりましたか?」
三曹だった。
「いや、まだわからないです。これから研究所に戻って培養実験をしないと」
「そうですか……。これが人類の福音になるといいですね」
「えぇ……」
バタン!と開けられた扉から、隊員が一人、入り込んでくる。
「報告!敵、二ヶ小隊!装備、Ak小銃にRPG、車両、テクニカル!」
ある人々の話 [転載禁止]©2ch.net
73 : ◆znJHy.L8nY @転載は禁止[]:2014/11/02(日) 21:05:49.49 ID:XQDi837x0
「マルヒトより本部。ガンシップの支援を要求する。送れ」
「本部よりマルヒト。米軍はガンシップを貸せないと言ってきた。現状の装備で対応されたし。送れ」
「了解。終わり」
三曹は、無線でしきりに本部と連絡を取っていた。
民兵と言えども、その命を惜しまない戦い方と、数に圧倒され、最新の装備をもった部隊でも敗北を喫することがあると言う。
1993年、ソマリアの首都モガディシオで起きた民兵と米国特殊部隊との戦闘では、米国側が2機の最新鋭ヘリコプターを撃墜されるという敗北で幕を閉じた。
現代戦において、人の命、一人の兵隊の命は、軍事予算の中で最も高いと言われる。
総数20万しかいない自衛隊では、それが特に顕著であった。
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74 : ◆znJHy.L8nY @転載は禁止[]:2014/11/02(日) 21:06:37.90 ID:XQDi837x0
「目標視認!距離1000!テクニカルだ!こっちに向かって来る!」
大振りの建物の屋上で、狙撃任務についていた観測手が叫ぶ。
次の瞬間、近くにあった建物が一つ、爆発と轟音を伴って吹き飛んだ。
「撃て!」
その号令で、12.7mmの弾丸が、音速よりも幾らか早い速度で飛んでいく。
ドゴンッ!と腹に響く発砲音は、私が戦争行為に巻き込まれたことを実感させてくれた。
「目標後部着弾!次弾装填せよ!」
どうやら、テクニカルの後部、砲座付近に当たったらしい。
再び放たれた弾丸に、今度は
「敵車両ヒト、破壊!目標、次!」
に変わった。
その後も何発か撃たれた銃弾で、テクニカルを行動不能にしたことを知る。
「分隊移動開始。武器の使用を許可。殲滅せよ。繰り返す。殲滅せよ」
三曹は、無線にそう言った。
ある人々の話 [転載禁止]©2ch.net
75 : ◆znJHy.L8nY @転載は禁止[]:2014/11/02(日) 21:07:24.37 ID:XQDi837x0
AH-6搭載のM134Dの攻撃で民兵の半分がが死に、AH-64Dのハイドラロケットランチャーで更に半分が死んだ。
身を隠す事をあまりせず、狙いが雑な民兵の弾は、訓練を受け、プロとして、自衛官という、国の盾になった彼らの敵ではなく、ただただ、射撃訓練の的を倒して行くかの如く、一方的な殲滅であった。
サンプルに傷はたった一つの無く、戦闘が始まる前に何処かへ消えてしまった叔父さんを探すのも後日になった。
ある人々の話 [転載禁止]©2ch.net
76 : ◆znJHy.L8nY @転載は禁止[]:2014/11/02(日) 21:08:25.67 ID:XQDi837x0
揺れるヘリの機内で、考え事をしていた。
果たして、あの細菌はいったいなんなのだろう?
現在疑われる症状は、性転換。
人類か躍起になって人工性器を作ってきたのに、それを一瞬で否定する細菌が現れた。
笑えてくるこの状況に映る日差しは、沈みかける茜色だった。
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77 : ◆znJHy.L8nY @転載は禁止[]:2014/11/02(日) 21:08:54.95 ID:XQDi837x0
アフリカからの帰国後、私は国立感染症研究所のある研究室をあたえられ、そこで培養実験を繰り返していた。
血液中の細菌は、ファージにも見える特異な形をしていた。
血小板に取り付いた細菌は、その細胞を侵食しつつ、ある成分液を分泌する。
それが全身に回る時、人の遺伝情報にある異変が起こる。
XYとして形成されていた遺伝子の一部に、変異作用をもたらし、変異後の遺伝子は、XXと同じ塩基配列を持ちながら、環境ストレスに耐えられる適応性を持つ塩基を追加付与される。
それが、僅か8時間で完了した。
特筆すべき点は、モルモットに鬱にも似た症状が出た、位だろうか。
変異対象がXXの場合も考え、メスのモルモットの血液で細菌を培養した結果、XXはXYへと変化した。
私は、この細菌によって引き起こされる一連の症状を「後天性性異常症候群」とした。
ある人々の話 [転載禁止]©2ch.net
78 : ◆znJHy.L8nY @転載は禁止[]:2014/11/02(日) 21:09:31.89 ID:XQDi837x0
密閉戸が開き、防護服に身を包んだ人影が一つ、培養実験室に入ってくる。
「叔父さん?」
「どんな感じだ?細菌の方は」
「そんなことより、今までどこにいたんですか!?」
「どこでもいいじゃないか」
徐に取り出されたそれが、ロシアのトカレフ自動拳銃だとわかるのは、少し後の事だ。
狙いが適当で、私の防護服の一部と、実験に使用していた細菌のサンプルを砕き、弾丸は壁に穴を開けた。
「……ッ!何をしてるんです!!」
「それはこっちの台詞だ。私の手柄だぞ?その細菌は私のものだ」
焦点が既にあっていない目と、恐れと過剰に放出されたアドレナリンの影響からか、叔父さんの手はガタガタ震えていた。
「甥の分際で!私の横取りをしようなんて!死ね!死ねよ!」
同時に二発、合わない照準は脇腹をかする。
「ッ!」
「痛いか!?どうだ!?私の手柄を奪おうとした報いを受けろ!!」
千鳥足。
酔っ払いの様な足取りで近寄って来る叔父さんは、もう私の知る人では無かった。
額に銃口を押し付けられ、引きつった笑みを浮かべる叔父さんの顔を睨む。
ゆっくりと人差し指が動き、ハンマーが雷針を叩き、雷針が弾薬内部の雷管を叩き、発火した雷管が火薬に火をつけ、弾頭を飛ばす。
その間、僅か0.1秒。
人は、危機的状況や、死に直面すると、一秒を長く感じるという。
永遠にも引き伸ばされたその一瞬が、私に平静さを取り戻した。
ある人々の話 [転載禁止]©2ch.net
79 : ◆znJHy.L8nY @転載は禁止[]:2014/11/02(日) 21:10:24.39 ID:XQDi837x0
爆発の轟音と、吹き飛ばされたジュラルミンに、叔父さんはたじろぐ。
「突入ッ!」
鋭い声と、足音の殆どでない歩き方で、彼らは室内に侵入してきた。
「ヒィイ!」
叔父さんは、悲鳴とも取れる奇声をあげ、トカレフを向けた。
引きかけていたトリガーをひき、パン!と低く乾いた音がなる。
着弾した先は明後日で、壁に9mmの穴を開けるだけに留まった。
代わりに、パススッ!と、サプレッサーのくぐもり、小さく圧縮された発砲音が響く。
5.56mmの弾は、壁に当たることもなく、叔父さんの体を小さく穿つだけだった。
ストッピングパワーの改良がされ、より殺傷力の高まった弾は、叔父さんの内臓をぐちゃぐちゃにかき混ぜ、叔父さんは突入から10秒かからず絶命した。
「マルヒト、こちらヒトヒト。対象射殺。状況終わり。送れ」
そう言った彼の声は、数週間前まで私と行動を共にしたものだった。
「野崎三曹……」
「お怪我は?」
「大丈夫です……」
手を伸ばされ、その手を掴む。
ゆっくりと立ち上がり、死んだ叔父さんの顔を見下ろした。
「名誉に目が眩み、手柄を横取りしようと民兵から武器を密輸したんでしょう。情報科からの暗殺要請を受けて来ました」
「情報科……。貴方達は普通科の人間じゃないのか?」
「我々は……」
「特戦……ですか?」
特戦、特殊作戦群は習志野駐屯地を拠点にしている、自衛隊初の特殊部隊。
その全貌は未だにベールの中だ。
「ご同行願います、博士」
ある人々の話 [転載禁止]©2ch.net
80 : ◆znJHy.L8nY @転載は禁止[]:2014/11/02(日) 21:11:10.44 ID:XQDi837x0
目隠し、ヘッドホンと、周囲の情報を完全に遮断された状態で、私はヘリに乗せられた。
独特な縦揺れに襲われながら、体感時間で一時間ほど揺られたあと連れて来られたのは、駐屯地内の隔離施設の様だった。
病院着に着替えさせられ、チョーカーを首にはめられたあと入れられた部屋はベッドと小さな窓しかなく、壁はマジックミラーになっている様だった。
「……三曹か?」
カコン、とマイクがオンになる音がした。
「どうも。私、情報科の斎藤二尉と申します」
斎藤、と名乗った若い士官は、間延びした声で自己紹介した。
「自衛隊の諜報部が何の用だ」
「いえ、大した用ではないんですがね?先日、研究所で発生した銃撃戦と、それに伴うバイオハザード防止の為に、その場にいた全員をこうして隔離させていただいてる訳です」
「マジックミラーに、盗聴器。隔離施設にしては設備が物々しくないか?」
「あらら。気づかれてましたか」
「何の用だ?」
「先程申し上げたのが全てですよ」
冗談とも本気ともわからない喋り方で、話をはぐらかされていく。
流れに流されるのは、この状況では危険だ。
窓から見える風景から考えると、今は夜の様だ。
この閉鎖空間では、時間の流れを把握しておかないことには、正気を保つことすら難しいだろう。
「食事です、ここの飯は美味いですよ」
開けられた扉から入って来たのは、化学防護服に身を包み、さらに戦闘防護衣を重ね着した、自衛官だった。
「カレーです。我々自衛官とは深い縁のある食べ物です」
「……だからどうした」
「特別深い意味はありませんよ。どうぞ、お食べ下さい」
先の割れてないスプーンに、プラスチックのコップに入った牛乳。
きゅうりやキャベツ、トマトの乗ったサラダ。
なんの変哲もない、ごく普通のカレーだった。
「毒なんか入ってませんよ。どうぞ」
少しの不安の中、スプーンを手に取る。
まだ湯気の立っている白米に、カレーを少し掛け、口に運んだ。
「どうです?美味いもんでしょう?」
美味いか不味いか、と言われたら美味いと答える。
だが、この不可思議な味はなんだろうか。
「どうしました?味に何か不審な点でも?」
「カレー粉ケチってないだろうな?」
「まさか!そんなことするわけないじゃないですか」
彼の言う言葉が正しければ、おかしいのはカレーではなく、私の味覚と言うことになる。
「まぁ、疲れもあるでしょうし。ガラムマサラ要ります?」
「いや、いい」
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