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使用した名前一覧書き込んだスレッド一覧
◆znJHy.L8nY @転載は禁止
名も無き被検体774号+@転載は禁止
ある人々の話 [転載禁止]©2ch.net
男「…廃屋だと思ったら神社だったでごさる」 Part2
カーチャンが車が動かなくなったといったきり電話通じない [転載禁止]©2ch.net

書き込みレス一覧

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ある人々の話 [転載禁止]©2ch.net
1 : ◆znJHy.L8nY @転載は禁止[]:2014/11/02(日) 14:57:46.05 ID:XQDi837x0
>>1が書いた小説を投下するスレです

鬱注意かもしれません
ある人々の話 [転載禁止]©2ch.net
2 : ◆znJHy.L8nY @転載は禁止[]:2014/11/02(日) 15:01:00.12 ID:XQDi837x0
それは核戦争のような人為的なものでなく、ただただ、必然であった。
出生率の低下からなる子供の不足、また、医学の発達による少子高齢化。
地球温暖化による環境の変化でからくるストレスで、女性の数が減った世界。
そんな世界に、ある一種のウィルスが現れた。
それは人体に寄生し、その宿主の性別を変えてしまうというものだった。
これは、そんな世界の話。
ある人々の話 [転載禁止]©2ch.net
3 : ◆znJHy.L8nY @転載は禁止[]:2014/11/02(日) 15:04:24.03 ID:XQDi837x0
朝起きてから、妙に体がだるいとは思っていた。
元から長めの髪だったから、髪の毛は気にならなかったけど、なにより、胸部に現れた二つの丘が、自分が性転換したことを物語っていた。
それに、目線が少し下がっていることにも気がついた。
元の背が高かったから、縮んでもかなりの高さはあったけど、違和感が支配する視界は、慣れないものだった。
ある人々の話 [転載禁止]©2ch.net
4 : ◆znJHy.L8nY @転載は禁止[]:2014/11/02(日) 15:04:53.31 ID:XQDi837x0
階段をおり、両親に性転換した旨を伝えた。
母親は泣いて喜んでいた。
父親は複雑そうな顔をしていた。
それはそうだろう。いずれこの家を継ぐはずだった一人息子が一人娘になってしまったのだから。
家督は誰にするか、ということを考えれば、複雑な顔の一つも出るだろう。
母親は、早速学校に電話していた。
それはそれは嬉しそうな声で。
父親は、複雑そうな顔はそのまま、車を出す準備をし、俺に「支度をしろ」とだけ言った。
ある人々の話 [転載禁止]©2ch.net
5 : ◆znJHy.L8nY @転載は禁止[]:2014/11/02(日) 15:05:32.08 ID:XQDi837x0
連れて行かれた先は、市役所だった。
性転換したTS患者は、市役所に届け出をしなければならない。
後のことはお父さんに任せて、と言った母親は、俺を服屋に連れて行った。
母親は、まるで俺を着せ替え人形の様に楽しんでいた。
歴史で習った限りの変化から考えて、ストレスで死なないこの母親の神経は、どれだけ図太いのだろうか。
追いついた父親も、なんだかんだ楽しそうにしていたのは、俺の予想外だったけど。
ある人々の話 [転載禁止]©2ch.net
6 : ◆znJHy.L8nY @転載は禁止[]:2014/11/02(日) 15:06:05.44 ID:XQDi837x0
家に帰る間の車で、一人称を俺から私に変えることを強制された。
慣れない口調は、私の精神をすり減らしていく。
両親の適応力の高さもだ。
まるで、男だった頃を全否定されたかのような感覚。
これは、なかなか堪えるものがある。
家に着いてからは、また大変だった。
制服の着方からなにからを一から指導され、夕方には担任の先生まで来た。
部屋に引っ込んでいたからなんの話をしていたかはわからない。ただ、時より聞こえる声が、どうにも受け入れられなかった。
ある人々の話 [転載禁止]©2ch.net
7 : ◆znJHy.L8nY @転載は禁止[]:2014/11/02(日) 15:06:31.96 ID:XQDi837x0
次の日から、私は登校した。
教室に着いて、友人から受けた第一声が「君だれ?」だったのは、正直死のうかと思った。
HRが始まり、先生が私がTS病に罹り、女になったことを説明した。
どうやら他クラスでも同じ説明をしているらしい。
これで一躍有名人だ。
ある人々の話 [転載禁止]©2ch.net
8 : ◆znJHy.L8nY @転載は禁止[]:2014/11/02(日) 15:07:54.85 ID:XQDi837x0
それからは、別段変わったことはなかった。
体育は休みを貰って見学したし、座学は前と変わらず寝通した。
声をかけてくる軟派者もいたけど、笑ってごまかすのが、私のできる精一杯のことだった。
部活は、私にはできないということで退部届けをだした。
仲間には、悪いことをしたと思っている。
ある人々の話 [転載禁止]©2ch.net
9 : ◆znJHy.L8nY @転載は禁止[]:2014/11/02(日) 15:08:56.04 ID:XQDi837x0
そうして、私はフリーになった。
やることもなく街をぶらつくのは、なかなか楽しいものだと再発見したくらいに。
なにが誤算だったかは、帰り道に友人に会ってしまったことか。
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10 : ◆znJHy.L8nY @転載は禁止[]:2014/11/02(日) 15:09:47.21 ID:XQDi837x0
「あ」
こちらが気づいた時には、遅かった。
向こうはもう気づいていたし、話しかける動作に入っていたから。
「昼間は、ごめん」
「謝られても困るんだけど……」
「え、あ、ごめん……」
前からこんな気が弱い奴だっただろうか、と思うほどにたどたどしかった。
「どうかした?らしくない」
私が悪戯っぽく、そう聞いた。
彼は、それには答えなかった。
代わりに、
ある人々の話 [転載禁止]©2ch.net
11 : ◆znJHy.L8nY @転載は禁止[]:2014/11/02(日) 15:10:33.37 ID:XQDi837x0
唇を、奪われた。

離れた瞬間に、彼の頬をひっぱたいた。
が、彼は止まらなかった。
運悪くそこは暗い路地で、そのまま制服を剥ぎ取られた。
昨日母親が買ったひらひらした下着はちぎられた。
私は、かつての友人に穢された。

そして、私は女なのだと、認識した。
ある人々の話 [転載禁止]©2ch.net
12 : ◆znJHy.L8nY @転載は禁止[]:2014/11/02(日) 15:11:08.79 ID:XQDi837x0
家に帰ってからも、なにも言わなかった。
ただただ無言で、食事すら取らなかった。

気がつけば、天井から垂れたベルトに、椅子の上。

私は、椅子を蹴った。
ある人々の話 [転載禁止]©2ch.net
13 : ◆znJHy.L8nY @転載は禁止[]:2014/11/02(日) 15:12:07.44 ID:XQDi837x0
第一話の投下は終わりです

次話の投下は夜になると思います
男「…廃屋だと思ったら神社だったでごさる」 Part2
626 :名も無き被検体774号+@転載は禁止[]:2014/11/02(日) 15:16:13.38 ID:XQDi837x0

カーチャンが車が動かなくなったといったきり電話通じない [転載禁止]©2ch.net
9 :名も無き被検体774号+@転載は禁止[]:2014/11/02(日) 15:29:40.52 ID:XQDi837x0
女『車のエンジンがかからないの…』
男『あらら?バッテリーかな?ライトは点く?』
女『昨日まではちゃんと動いてたのに。なんでいきなり動かなくなっちゃうんだろう。』
男『トラブルって怖いよね。で、バッテリーかどうか知りたいんだけどライトは点く?』
女『今日は○○まで行かなきゃならないから車使えないと困るのに』
男『それは困ったね。どう?ライトは点く?』
女『前に乗ってた車はこんな事無かったのに。こんなのに買い替えなきゃよかった。』
男『…ライトは点く?点かない?』
女『○時に約束だからまだ時間あるけどこのままじゃ困る。』
男『そうだね。で、ライトはどうかな?点くかな?』
女『え?ごめんよく聞こえなかった』
男『あ、えーと、、ライトは点くかな?』
女『何で?』
男『あ、えーと、エンジン掛からないんだよね?バッテリーがあがってるかも知れないから』
女『何の?』
男『え?』
女『ん?』
男『車のバッテリーがあがってるかどうか知りたいから、ライト点けてみてくれないかな?』
女『別にいいけど。でもバッテリーあがってたらライト点かないよね?』
男『いや、だから。それを知りたいからライト点けてみて欲しいんだけど。』
女『もしかしてちょっと怒ってる?』
男『いや別に怒ってはないけど?』
女『怒ってるじゃん。何で怒ってるの?』
男『だから怒ってないです』
女『何か悪いこと言いました?言ってくれれば謝りますけど?』
男『大丈夫だから。怒ってないから。大丈夫、大丈夫だから』
女『何が大丈夫なの?』
ある人々の話 [転載禁止]©2ch.net
15 : ◆znJHy.L8nY @転載は禁止[]:2014/11/02(日) 16:41:38.53 ID:XQDi837x0
用事が済んだので第二話を投下します
ある人々の話 [転載禁止]©2ch.net
16 : ◆znJHy.L8nY @転載は禁止[]:2014/11/02(日) 16:42:12.23 ID:XQDi837x0
ーーーある会社員の話

今朝は、妙に早く目覚めた。
今は朝の4時。日はまだ昇ってすらいない。
限りなく夜に近い朝。私はこの時間が嫌いではなかった。
布団から這い出て、出社する準備をする。
女性を猛烈に優遇する私の会社では、住む所まで会社持ち、給与の他に月に幾万かの追加報酬がでる。
別に金に目がくらんだわけではない。ただ、私の実力ではここが精一杯だったのだ。
世界中を男性が闊歩し、女性というだけで祀り上げられるこの世界が、私は嫌いだった。
ある人々の話 [転載禁止]©2ch.net
17 : ◆znJHy.L8nY @転載は禁止[]:2014/11/02(日) 16:42:45.76 ID:XQDi837x0
一日の終わりは、早い。
もともと与えられた仕事を早くこなす事を信条に働く私は、待遇のおかげもあってか定時退社ができる。
早く家に帰れるということは、私にとってなんのメリットもなかった。
でも、それでも気分は楽というものだ。
夕飯の支度を手早く済ませ、皿に盛り付け机へ運ぶ。
いつもなら簡単にできることが、妙にかったるいのは、疲れからか。
食事は、スパゲティにミートソース。
フォークに巻きつける麺は、絡み合い、ほぐれあう。
口に運ぶ動作が、面倒だった。
瞼が、まるで磁石の様に閉じようと、閉じようとしている。
頭がまるで働かない。
力が抜ける。
意識が、跳ぶ。
ある人々の話 [転載禁止]©2ch.net
18 : ◆znJHy.L8nY @転載は禁止[]:2014/11/02(日) 16:43:14.20 ID:XQDi837x0
日光に瞼を刺され、暖かな太陽光が皮膚を熱し、目が覚める。
目を隠す筈の髪は、床に散乱していた。
視界を遮る程度はあった胸部は、大胸筋すら浮かない壁になり、肋骨がビブラフォンの様に浮く。
そして、生殖器の形が、まるで変わっていた。
喉には喉仏が増え、骨格も変わった。
太ももやふくらはぎは走りやすそうなシャープなものに、しかし腕は細いものに。
私は、男になった。
ある人々の話 [転載禁止]©2ch.net
19 : ◆znJHy.L8nY @転載は禁止[]:2014/11/02(日) 16:44:58.09 ID:XQDi837x0
会社には、性転換にともなう事務手続きから休むと伝えた。
区役所に向かい、戸籍を変えた。
名前も変わった。
今日からの私は××× ××××だ。
両親に電話したら、泣かれた。
男に変わったことが、私の罪の様に言われた。
もう、彼らなんか信じない。
ある人々の話 [転載禁止]©2ch.net
20 : ◆znJHy.L8nY @転載は禁止[]:2014/11/02(日) 16:45:53.25 ID:XQDi837x0
午後、社長他重役たちと話をした。
どうやら私は、あの家を追い出されるらしい。
わかってはいたことだが、この世界は、男に対して、厳しい。
増えすぎた男性の価値など、使い捨ての駒と同等なのだと、私は実感した。
自分が女性であることに胡座をかき、祀り上げられることを嫌いと言いながら、それに甘んじていた自分が、このときばかりは許せなかった。
ある人々の話 [転載禁止]©2ch.net
21 : ◆znJHy.L8nY @転載は禁止[]:2014/11/02(日) 16:46:44.02 ID:XQDi837x0
家に帰ると、荷物が全部なかった。
転換前に買ったものから、実家から送られたもの、通帳に至る全てのものが、すでに回収され、ここの費用となった後だった。
私は、玄関で泣き崩れた。
ある人々の話 [転載禁止]©2ch.net
22 : ◆znJHy.L8nY @転載は禁止[]:2014/11/02(日) 16:48:13.04 ID:XQDi837x0
しばらくすると、同期の男が訪ねて来た。
その男は、呑みに行くぞ、と言った。
居酒屋では浴びる様に酒を飲んだ。

しばらくして、気を失った。


溺れていた。


見えにくい視界には、男の姿があった。


首に指圧感があった。


力が入らない。

息ができない。

苦しい。

死にたくない。




意識が


途切れ
ある人々の話 [転載禁止]©2ch.net
23 : ◆znJHy.L8nY @転載は禁止[]:2014/11/02(日) 16:48:40.58 ID:XQDi837x0
『昨日発見されました、○○街での水死体ですが、××× ××××さんであると警察から公式発表がありました。
警察によれば、×××さんは、性転換をしたばかりで、精神的に不安定だったのではないかとみて、聞き込みを続けています。
なお、警察はこの事件を自殺であると発表しておりーーーーー』
ある人々の話 [転載禁止]©2ch.net
24 : ◆znJHy.L8nY @転載は禁止[]:2014/11/02(日) 16:50:28.34 ID:XQDi837x0
第二話終了です
三話の投下は完成次第始めたいと思います
ある人々の話 [転載禁止]©2ch.net
26 : ◆znJHy.L8nY @転載は禁止[]:2014/11/02(日) 18:33:02.15 ID:XQDi837x0
第三話の投下を始めます
ある人々の話 [転載禁止]©2ch.net
27 : ◆znJHy.L8nY @転載は禁止[]:2014/11/02(日) 18:37:43.94 ID:XQDi837x0
ーーーあるニートの話


高校を卒業して、大学進学か就職かを迷っていたら、いつのまにか自宅警備員に就職していた。
どうしてこうなった、とは言わない。
こうなった訳はわかっていた。
夜20時に起床して、親の用意した食事を食べる。
そこから掲示板徘徊をした後、消化ゲームをやる。
空腹から夜食を漁り、部屋で食べながら、過去ログを漁る。
食べ終わったらゲーム。
毎日がその繰り返しだった。
申し訳ない、とは思っていた。
なんとかしなきゃ、とも思っていた。
だけど、俺にはその勇気がなかった。
他人に拒絶され、家族から冷たい目で見られ、他人の視線に晒されることが怖くなっていた。
笑い声が、嘲笑いの声に聞こえる。
人の話し声が、俺を罵倒している様に聞こえる。
太陽が、高い。
世界が、黒い。
ある人々の話 [転載禁止]©2ch.net
28 : ◆znJHy.L8nY @転載は禁止[]:2014/11/02(日) 18:38:08.63 ID:XQDi837x0
日が登り、俺は眠い目をこすった。
普段なら、ここから延長戦にはいるところだけど。
身体が言うことを聞かない。
指が、キーボードを叩くことを拒否していた。
トラックボールを転がす右手が、凍った様に動かなくなった。
「……寝よう」
辛うじて動く足をなんとか動かして、ベッドに倒れこむ。
足をベッドにのせることもなく、布団をかけることもなく、眠りについた。
ある人々の話 [転載禁止]©2ch.net
29 : ◆znJHy.L8nY @転載は禁止[]:2014/11/02(日) 18:38:52.77 ID:XQDi837x0
投下の途中ですが、用事が入ったので少し落ちます

帰ってきたら再開します
ある人々の話 [転載禁止]©2ch.net
30 : ◆znJHy.L8nY @転載は禁止[]:2014/11/02(日) 19:48:30.45 ID:XQDi837x0
かえりました
投下再開します
ある人々の話 [転載禁止]©2ch.net
31 : ◆znJHy.L8nY @転載は禁止[]:2014/11/02(日) 19:48:55.12 ID:XQDi837x0
夢だ。
明晰夢の類だと思ってくれれば間違いはない。
夕暮れだった。
学校だった。
それは俺が高校生だった頃だ。
目の前には、幼馴染がいた。
目の前には、女子がいた。
俺の手には、昨晩必死で書いた手紙。
俺の手には、彼女の好きなもの。
「×××××!×××××!」
なんと言ったのかは、わからない。

ただ、彼女の口が
「ごめん」
と動いた気がした。
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32 : ◆znJHy.L8nY @転載は禁止[]:2014/11/02(日) 19:49:57.85 ID:XQDi837x0
珍しく日が昇っている間に目覚めた、日曜日の朝。
伸びをしながら欠伸をし、視界にかかる髪の毛に違和感を覚える。
ボサボサだった髪は、実にしなやかでみずみずしいものに変わった。
「……あー」
喉仏を失った声帯は、まるで女性のものの様な声を出した。
細かった身体に変化はなかったけど、平べったい胸部には、うっすらと膨らみがでていた。
浮腫んだ足からは、男性器がなくなり、代わりに、女性器がついていた。
前にスレで見たTS病だなと、俺は思った。

今更変わったところで、もう意味はないのに。
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33 : ◆znJHy.L8nY @転載は禁止[]:2014/11/02(日) 19:52:24.61 ID:XQDi837x0
日が昇っていた間だったから、階下に降りれば家族がいた。
時計は、16時を指していた。
ソファーに横になる妹に、ご飯の支度をしている母。
父親は、まだ帰宅してない様だった。
「あ、あの……母さん?」
久しぶりに喋る家族は、まるで他人の様だった。
「……そう、あんたがね」
母は呆れていたのか、興味がないのか、素っ気なく答えた。
「あ、うん……。それで、区役所に行きたいんだけ……ど……」
もう何年も出ていない外へでなければいけないのは、酷だった。
せめて母と一緒なら、と思ったのだけど、母は忙しそうだった。
「母さんは忙しいの、見てわからない?」
母は少し苛ついた様な口調でそう言う。
ソファーで寝ていた妹が、もぞもぞと起き出すのを、母が制止した。
「このニートと役所まで着いてってやって」
ある人々の話 [転載禁止]©2ch.net
34 : ◆znJHy.L8nY @転載は禁止[]:2014/11/02(日) 19:54:27.12 ID:XQDi837x0
妹は不服そうな声をだした。
が、母が財布から一万円札を二枚抜き、妹にそれを手渡してから
「これで服も買ってやって。あまったらあんたにあげるから」
と言ったら、目の色が変わっていた。
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35 : ◆znJHy.L8nY @転載は禁止[]:2014/11/02(日) 19:56:16.33 ID:XQDi837x0
「ったく……なんでこいつと……」
妹はブチブチ小言を言っていた。
まぁ仕方ないかもしれない。
何年も引きこもって顔すら思い出せない様な兄のことなんか、俺が妹の立場なら嫌いになる自信がある。
「しかも美人なのがムカつく……」
美人、という単語に一瞬なんのことだ、と思い、すぐに俺のことだと思い出した。
ある人々の話 [転載禁止]©2ch.net
36 : ◆znJHy.L8nY @転載は禁止[]:2014/11/02(日) 20:02:07.90 ID:XQDi837x0
全世界に規模を広げているTS病。
正式名称、後天性性異常症候群。
感染率こそ低いものの、空気、口腔、血液、免疫など、様々な感染経路をもち、感染者は1〜7日の間に発症、個人差こそあるものの骨格異常や毛髪の異常発育、そして性転換を果たす。
男性異常のこの世界にすれば、この感染症は神からのプレゼントの様だった。
実際は、このままいけば感染者は全世界にまで広がって、男性が滅ぶ。
男性が滅ぶということは即ち、人類の滅亡を意味する。
今の世界は、TS病感染者と女性を優遇する法律や政令が沢山敷かれている。
それが、自分たちの首を結果として締めることになるとも知らずに。
ある人々の話 [転載禁止]©2ch.net
37 : ◆znJHy.L8nY @転載は禁止[]:2014/11/02(日) 20:03:19.60 ID:XQDi837x0
あるスレッドでこんな書き込みを読んだことがある。

「どちらにしろ、人類は増えすぎた。
そろそろ、世代交代の時代だ」

ジュラ紀に栄えた恐竜は、謎の絶滅をした。
それと同じで、栄えたものはいずれ廃る、ということか。
強者必衰の理、まさにその通りだ。
ある人々の話 [転載禁止]©2ch.net
38 : ◆znJHy.L8nY @転載は禁止[]:2014/11/02(日) 20:04:51.39 ID:XQDi837x0
考え事をしていたら、区役所に着いた。
事務手続きは妹に任せ、俺は受付前で座っていた。
テレビでは、今日のTS病感染者数、というコーナーが放送されていた。
TS病が世界に現れてから幾年。
現在の日本の総人口、9923万人のうち、TS病感染者は0.9%しかいない。
この数字は、多いのか少ないのか。
俺には、わからない。
ある人々の話 [転載禁止]©2ch.net
39 : ◆znJHy.L8nY @転載は禁止[]:2014/11/02(日) 20:09:58.20 ID:XQDi837x0
妹が事務手続きを終えて戻ってきた。
俺の新しい名前は「××× ×××」に決まった。
まだ顔は見てないけど、仰々しいような、そんな名前になった。

妹は、俺にいろいろな話をしてくれた。
例えば
「これからは兄貴じゃなく姉さんかお姉ちゃんって呼ぶから」
や、例えば
「お姉ちゃんは可愛いより綺麗って感じ」
や、例えば
「これだけ綺麗なんだから男とか簡単に捕まるよ」
や、例えば
「お姉ちゃん、料理とか家事上手かったから、主婦として生活できるよ」
などなど。
後半に至っては、俺がどんな男が趣味か、という話になっていた。
「ちょ、待って。俺元男だから……どんな人が好きとかわからないから」
「はい、俺禁止」
「なん……だと……」
「そのキモい喋り方も禁止」
制約がいろいろつけられてしまった。
ここまでいろいろつけられると、逆に清々しかった。
ある人々の話 [転載禁止]©2ch.net
40 : ◆znJHy.L8nY @転載は禁止[]:2014/11/02(日) 20:10:46.52 ID:XQDi837x0
服屋というものは、俺はどうにも好きになれない。
キャピキャピした女子達が、キャピキャピした服を選び、キャピキャピしながら買い物を済ませ、またキャピキャピしながらスタバで高い飲み物を飲んでいる雰囲気しかないからだ。
俺はキャピキャピしたものが嫌いだし、苦手だ。
それに、服屋にはいい思い出がなかったが、それはまた別の話。
とにかく、俺は服屋が嫌いだった。
しかし、女になった以上、男物の、しかもロゴ入りジャージにダボダボパーカーというわけにもいかないらしい。
「お姉ちゃんは綺麗なんだから、もっといい格好しなきゃ駄目だよ」
そういう妹に反応した自動ドアから漏れ出した、衣類用の糊とアイロンの様な匂いが、俺の鼻腔をくすぐった。
いらっしゃいませ、という店員の声に、足が竦む。
胃から逆流した、消化途中だった食物が、食道へと向かう。
嗚咽とともに口から飛び出しそうになった吐瀉物と、それに伴う嘔吐感が、俺の脳を刺激した。
「お姉ちゃん?」
心配そうに見てきた妹に手を握られ、意識が現実に引き戻されるように、嘔吐感も収まる。
やっぱり、服屋は苦手だ。
ある人々の話 [転載禁止]©2ch.net
41 : ◆znJHy.L8nY @転載は禁止[]:2014/11/02(日) 20:11:19.17 ID:XQDi837x0
店員さんと妹の着せ替え人形に甘んじていると、一時間という時はあっという間に過ぎる。
店を出る時には、もらった二万円はほとんどなくなり、妹はその金で俺に飲み物を買ってきてくれた。
俺の大好きな、ジンジャーエールだった。
「はい」
妹は、ジンジャーエールを手渡ししてくれた。
俺はそれを受け取り、礼を言う。
「ありがとう」
「……お礼言うなんて珍しい」
失礼なことを言われたが、気にしない。
キャップを捻り、プシュッと小気味良い音を立てながら抜ける炭酸を、逃さないように口を付け、一気に煽る。
喉を駆ける刺激が、心地いい。
口の中に仄かに残る生姜の風味が、懐かしかった。
「昔は、二人でよくジンジャーエールを回し飲みしたよね」
唐突にそういった妹に、俺はなにも言えずにいた。
小さい頃は、良く妹とも遊んだ。
近くにあった公園で、近所の子供達も巻き込んでサッカーやバドミントンをしてた。
でも、それも俺が小学校に上がるまで。
小学校に上がると、俺はあまり外にでなくなった。
その頃発売されたゲーム機に、俺は夢中になっていた。
妹にせがまれても、頑としてきかず、俺は部屋にこもる時間が増えていった。
ある人々の話 [転載禁止]©2ch.net
42 : ◆znJHy.L8nY @転載は禁止[]:2014/11/02(日) 20:13:13.54 ID:XQDi837x0
中学に上がる頃には妹とは疎遠になっていたし、家族ともあまり話さなくなっていた。
それでもなにも言われなかったのは、そこそこの成績をだしていたからか。
高校に入る頃には、家族とも全く話さなかった。
友人は数える程しかいなかったし、それが不都合とも考えなかった。
ただのうのうと毎日を過ごし、繰り返される日々をだらだらと生きていた。
進路相談の時にもまともな回答をせず、そのままずるずると卒業してしまった。
進学も考えたけど、結果として、それは思考実験でしかなかった。
結果としてニートになった俺には、もうなにもなかった。
インターネットの中に真実を求め、現実を否定した。
画面の中の世界しか信じずに、目に見えたものを否定した。
社会を否定し、自らを肯定することでしか、存在価値を見出せなかった。
輝く世界に嫉妬し、暗い世界を憎んだ。
俺は、ただのダメ人間だった。
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43 : ◆znJHy.L8nY @転載は禁止[]:2014/11/02(日) 20:13:44.70 ID:XQDi837x0
帰りに、近場のコンビニに寄った。
お目当てのものは、手に入った。

ノックの音がし、妹の声がする。
はいるよ、と言われたので了承した。
「お姉ちゃんご飯……ってなに書いてるの?」
「これ?あぁ、これは履歴書だよ」
「履歴書?お姉ちゃんバイトするの?」
「まぁね。これを気に、ってやつ?」
「お姉ちゃん……」
妹は、叫びながら何処かへ行ってしまった。
その晩、久しぶりに家族と食事をした。
暖かいご飯は、美味しかった。

母親にバイトについて根掘り葉掘り聞かれたのは、また別の話。
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44 : ◆znJHy.L8nY @転載は禁止[]:2014/11/02(日) 20:14:17.81 ID:XQDi837x0
数日後、面接に向かった。
店長は優しそうなお爺さんで、うんうん、と話を聞いてくれた。
結果は、合格だった。
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45 : ◆znJHy.L8nY @転載は禁止[]:2014/11/02(日) 20:16:02.26 ID:XQDi837x0
「ねぇ、お姉さんのバイト先ってどこなの?」
「ん?あそこのコンビニだよ?」
「行ってみようよ」




「いらっしゃいませ、ようこそ!」



これは、あるニートの物語。
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46 : ◆znJHy.L8nY @転載は禁止[]:2014/11/02(日) 20:19:36.76 ID:XQDi837x0
以上で第三話の投下は終了です
感想など書いていただけると嬉しいです
第四話の投下は2030頃に始めます
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47 : ◆znJHy.L8nY @転載は禁止[]:2014/11/02(日) 20:29:32.09 ID:XQDi837x0
第四話の投下を開始します
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48 : ◆znJHy.L8nY @転載は禁止[]:2014/11/02(日) 20:31:38.40 ID:XQDi837x0
ーーーある男子生徒の話


中学校も3年になれば、性の意識がはっきりとして、異性に興味を持ち始めたり、自分の性を理解して、それを意識したりしはじめる時期だと思う。
ボクの場合は、それが少し違っていた。
ボクが他人と違うと自覚したのは、小学校も高学年。
ボクは始めて恋をした。
クラスでも上位カーストに入る、かっこいい男の子で、ボクなんかにも構ってくれて、よく遊んだりもした。
そんな彼に、ボクは恋をした。
でも、それはかなう事がなかいものだった。
何故なら、それはボクが男だからだ。
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49 : ◆znJHy.L8nY @転載は禁止[]:2014/11/02(日) 20:32:45.13 ID:XQDi837x0
ボクの容姿は、まわりのいわゆる男性のものとは違っていた。
すらりと伸びた白い足、毛一つない腕、そして鼻筋の通った顔立ちに、長く艶やかな黒髪。
ボクの容姿は、女性のそれに酷似していた。
ボクのお母さんは、まだ感染が世界規模になる前、感染がはじまった頃に、TS病について研究していた科学者だった。
でも、不慮の事故によって防護服内に侵入したTSウィルスに冒され、女性化した経歴を持つ。
そんなお母さんが、TS病について何を研究していたか、前に教えてもらった事がある。
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50 : ◆znJHy.L8nY @転載は禁止[]:2014/11/02(日) 20:33:28.59 ID:XQDi837x0
それは、「TS病感染者と、その家族の発症率と容姿の異常」だった。
それは簡単に言えば、TS病患者の子は、TS病発症の確率が一般人の4倍、また、子の容姿が、その子のもつ性別に一致しない、というものだった。
TS病患者を母にもつボクは、その影響から、女性の様な容姿になってしまった。
ボクは、この姿が嫌だった。
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