- 半生をつらつら聞いて欲しい。
111 :からあげくん ◆ZOigNAXyD2 @転載は禁止[]:2014/06/19(木) 18:15:18.32 ID:FMjeAYzc0 - ただいまです。
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113 :からあげくん ◆ZOigNAXyD2 @転載は禁止[]:2014/06/19(木) 18:29:20.24 ID:FMjeAYzc0 - >>112
ビールとスーパーカップです。 その客は前からたちが悪かったが、従業員一同閉口していた。 仕事柄殴られても何しても、それが銭になるなら喜んでどうぞって感じだったから。 それに味を占めたその客は俺にターゲットを合わせ、言葉尻を掴んではいたぶっていた。 俺は大概腹立っていたが、オーナーの意向でお客様は神様で通してた。 ある日、閉店間際でその客一人の時に俺が言った一言で切れ始めた。 なんてことない、やっぱり店屋物とかじゃなくて作りたてが美味しいんですね。って言った言葉が気に入らなかったらしい。 そんな客でもオーナーは大切だったんだろう。 おりもおり、リーマンショックで贅沢な飲み方を出来る人間がかなり減っていたから。 2時間近く詰められ、最終的になくなく300万の借用書を書かされる事になった。 抵抗も虚しく書かされた借用書。 借りても無い金に俺は腑が煮えくり返っていた。
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116 :からあげくん ◆ZOigNAXyD2 @転載は禁止[]:2014/06/19(木) 18:36:53.51 ID:FMjeAYzc0 - 気が済んだのか、客は借用書を置いて帰ってしまった。
その際に連帯保証にオーナーの名前を書いたのが、オーナーと俺の問題の拗れ始めだった。 なんで連帯保証に俺の名前を書いたと怒り狂うオーナーに平謝りをして、内心はお前が庇わないからあいつを切らないから遅かれ早かれこうなったんだろと思っていた。 その日は記帳して家で休み、翌日出勤し営業しているとその客が顔を出した。 そのまま席に着くと借用書の話をし始め、またしても3時間近く営業中に詰められることになった。 俺は我慢の限界で、上手いことかわせというオーナーにも腹を立てて、脅迫で警察に行けないなら俺は辞めると言い、そのまま退勤と相成った。 その時そばかすはバイトをはじめていたし、次男はヤンキーの友達の紹介で同和系のゴミ収集業に務めてた。 気が滅入っていたのも有り、家賃も高いので少し郊外に引っ越そうと思いたった。 家族と没交渉でもいい。そばかすがそばに居てくれるならと思っていた。 それほどにそばかすがは甲斐甲斐しく俺を世話していた。
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117 :からあげくん ◆ZOigNAXyD2 @転載は禁止[]:2014/06/19(木) 18:42:26.92 ID:FMjeAYzc0 - >>114>>115
水商売なので、筋に通らない御託もお客様なら通る事もあるんです。 サパーってそういうもんで、納得出来なくても申し訳ないです。 結局、客は本当に金が欲しかったんじゃなくて俺を好き勝手に出来る脅しが欲しかったんだと思う。 郊外に引っ越し半年程過ぎた時、職業訓練に通って仕事を探そうか思案しているとオーナーから電話がかかってきた。 元々丼勘定でやってた店の原価であったり、経費を考え税理士と相談しながらやりくりしてた俺が抜けて屋台骨が揺らぐのも時間の問題だった。 店が傾いた時に、オーナーラーメン屋起死回生を計るといい、よかったら店長をしてくれないかと相談してきた。 考える時間をくれと電話を切ったものの、考える余裕は俺には無かった。 生活するための金が無いのだから。
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119 :からあげくん ◆ZOigNAXyD2 @転載は禁止[]:2014/06/19(木) 18:51:03.65 ID:FMjeAYzc0 - 一度は反旗を翻したものの、大変な時に60万もの大金を二つ返事で貸して貰えた恩はやはり自分の中で大きく。
それでオーナーの助けが出来るならと話を受けることにした。 が、それは甘過ぎる考えだった。 ナイトで成功してるのだから考えがある人なのだと思っていたが、今思えばそうじゃないから屋台骨が傾いたのだ。 時代の潮流に少し乗っただけのオーナーは借金を繰り返し、サパー店とラーメン屋をなんとか切り盛りしようとしていた。 ラーメン屋の開業だけで800万円近くかかっていることに俺は不安を抱いていた。 内装が終わり、メニューの試作に入り始めた。 化学調味料少し入れるだけで爆発的に上手くなるって科学式だけは双方理解の上だった。 二人とも元々料理畑出身だったから。 鶏ガラから出るイノシン酸に、旨味調味料のグルタミン酸を入れるだけで10倍旨味を感じるようになるのは周知の事実だった。 これを基準にラーメンを作り始めたのだが、鍋を見てるだけでもおかしかった。 90Lの鍋が二つ、30Lの鍋が一つ、ガス口は3つ。 90Lは鶏ガラと豚骨、30Lは昆布やら煮干しやらの出汁だった。
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120 :からあげくん ◆ZOigNAXyD2 @転載は禁止[]:2014/06/19(木) 18:58:59.03 ID:FMjeAYzc0 - 試作を始めて2日目、煮込んだスープが出来上がりテストでラーメンを作った。
美味いのだが、味がもう一つ物足りないと訴えたがオーナーはお前にそんな高級な舌がついてるか!と笑った。 俺も笑って返した、が不安は強くなる一方だった。 3日目、テストラーメンを食った。 美味い。確かに美味いが、少しくどいというか、美味しいラーメンとは程遠かった。 4日目、ラーメンはかなり濃いスープに浸かり豚の臭いが店中に溢れかえっていた。 それもそのはずだった、初日から少しの水を足しながら煮込み続けていたのだ。 冷凍餃子はバットにくっ付き、ヘラで取ると底の皮が破けていたし、チャーシューは一枚120円の原価を超え、ラーメン一杯の試算が900円を越えないと稼げないレベルになっていた。 店は駐車場が有るが、かなりの郊外だし立地的にも900円は高過ぎると訴えた。 大学がすぐ後ろにあるんだから700円前後でチャーハンつけてターゲットを学生に絞るべきだと言ったがオーナーは耳を貸さなかった。
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123 :からあげくん ◆ZOigNAXyD2 @転載は禁止[]:2014/06/19(木) 19:06:18.78 ID:FMjeAYzc0 - プレオープンが始まり、声をかけたナイトの従業員や懇意してくれるお客さんを呼び、営業できる状態に意識を切り替えてラーメンを作っていたが皆首を傾げるだけだった。
オーナーは気付いて居なかったが、俺は毎日味が変わるラーメンに不信感すら感じでいた。 毎日味が変わるラーメンなんて学生でも不信がって食いに来ないと思っていた。 ナイトの時の同僚が友達や後輩を連れて食べに来た時、オーナーが買い出しに行っていたので俺は思い切ってその人たちに聞いて見た。 そのラーメン700円で食べようと思うか?と。 皆返事は同じで、まず無いなとの事だった。 しかしオープンは目前で止められる物も止められない段階にまできていた。 そんな時に、オープン前煮込んだ鶏ガラを前にした俺にオーナーが言った。 チーユ取ろうぜと。 目の前で静かに沸き立つ鶏ガラを前に鶏油を取ると。 揺れる湯を前に、油だけ取り出すなんで無理難題だし、っていうかそもそも鶏油ってこうやって取るものじゃないと思う。 取って瓶に入れてもすぐに腐ると言ったが、オーナーはあいもかわらず耳を貸さなかった。
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124 :からあげくん ◆ZOigNAXyD2 @転載は禁止[]:2014/06/19(木) 19:13:04.16 ID:FMjeAYzc0 - 俺の不信感は限界を超えて、営業できレベルじゃない店にただただ怯える日が続いた。
訪れたオープンの日、覚悟を決めて店に向かおうと電車に乗った。 足が震え、脂汗が異常に垂れ始めた。 夏前で気温も暑くないのに体調が悪いのかもしれないと思いながら乗り換えの電車を待った。 目の前で扉を開く電車を前に腰を上げることすら出来なくなっていた。 頭では分かっているが、体が動かなかった。 ポケットの中ではオーナーが着信を鳴らし続けてた。 取ることも出来なかった。 無理矢理に体を動かし何度も転びながら、漸く帰路についた。 オーナーには、申し訳ないけど出勤出来ないとメールで送ったが、お前はレシピだけ盗みやがって絶対殺すと返信を何通も頂いた。 留守電も怒号が響いてた。 あまりに様子がおかしくなった俺を、無理矢理そばかすが病院に連れて行き、診断された病状は鬱病だった。
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126 :からあげくん ◆ZOigNAXyD2 @転載は禁止[]:2014/06/19(木) 19:21:12.59 ID:FMjeAYzc0 - 家族と長らく連絡を取っていなかったし、そばかすは俺の家族関係を理解していたから守るように構いっきりになった。
26歳の頃だったと思う。 無理に食わされなければ飯も食わず、水も飲まず、日がな一日寝ているのか起きているのかわからない日々が続いた。 その間の生活費はそばかすが働き工面してくれていた。 生きているだけで誰かに迷惑を掛けるのも辛かったし、ただただ苦しい日々だった。 誰かのせいでもなくて、環境が悪いとか状況が悪いとか、もう少しマシな家庭に生まれていればなんて思うことも無かった。 ただ自分の頑張りが足りなかっただけだと思い続けた。 家族全員同じような思いをしているのだろうと思っていた。 気もそぞろながら、以前の交通事故の時に貰った算数ドリルを本棚から取り出し眺めていたのを覚えてる。 それとなくそばかすが手渡したボールペンで書き込み始めた。 掛け算すら出来ないじぶんに嫌になりながらも、満たされる知識欲になんとか意識を戻しながらドリルを繰り返した。
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127 :からあげくん ◆ZOigNAXyD2 @転載は禁止[]:2014/06/19(木) 19:29:26.88 ID:FMjeAYzc0 - 気がつけば、そばかすが買ってきた参考書を何種もやり続ける日々だった。
繰り返し、繰り返し。 しかし、重要な事は参考書は教えてくれなかった。 これは授業でもそうなのかもしれないけれど、代数はなぜ代数なのか。 なぜaやらbやらなのか。 募る不満を解消するのは結局勉強だった。 Amazonで子供が読む歴史漫画を買ってはそばかすに笑われた。 その度に俺は、子供の読む本で恥ずかしいけど学ぼうとするものを馬鹿にするな、まともに勉強してない人間は小学生が理解できる程度の本を読まないといけないのだからと怒った。 そばかすは短大出身だが、両親が公務員で、俺からすれば恵まれていると思っていた。 俺にバイト代を貢いでも生活が出来るのだからと。 それを享受している自分は棚に置いて。 それでもそばかすは横で笑いながら、一冊5千円近くする参考書を惜しげも無く買ってきた。 俺は参考書が視線で破れるまで読み続けた。 大学ノート何冊分も書き写し、出題を解き、繰り返した。 結局視線で参考書破れなかったのだけど。
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129 :からあげくん ◆ZOigNAXyD2 @転載は禁止[]:2014/06/19(木) 19:37:23.61 ID:FMjeAYzc0 - 落ち込む日々が勉強漬けになっている時、そばかすの提案で高校卒業程度認定試験を受ける事になった。
そばかす曰く、取っても誰も困らない資格だからと。 受験要項を熟読し、応募してからは苦手な数学に掛かりっきりになった。 そばかすの友人(かなり優秀な高校大学を卒業したらしい)を家庭教師がわりに教えてもらったが、いくつか問題の解き方と分数を教えてもらっただけで代数はなんで代数なのか?の質問を繰り返し、勉強にならなかった。 その人には本当に申し訳なかったと思うし、そばかすの顔を潰して申し訳ないと思う。 そばかす伝えのその人曰く、地頭は良いんだろうけど変な所が気になり過ぎてる。あれは数学に向かない。と言ってたらしい。 夏前の試験で9科目中5科目の合格をし、高認は冬前の試験まで長引いた。 5ヶ月を掛けて落とした教科、特に数学を重点的に繰り返した。 そして11月の試験がやってきた。
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130 :からあげくん ◆ZOigNAXyD2 @転載は禁止[]:2014/06/19(木) 19:42:00.26 ID:FMjeAYzc0 - 11月の試験で3科目受かった。
が、一番重要な数学だけを落としてしまっていた。 これでは高認は受けられない。 ここでそばかすと俺の認識の差に気づいた。 そばかすは試験に受かることが目的だった。 俺は試験に受かり、借金してでも学校に行くつもりだった。 そばかすは試験だけを重要視しており、俺は試験を解いた以上に数学に理解度が無いとその先(大学)でやって行くことは出来ないだろうと口論を繰り返した。 どちらにしても、次の試験は半年以上先なのだからと、その時までに考えようと落ち着いた。
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132 :からあげくん ◆ZOigNAXyD2 @転載は禁止[]:2014/06/19(木) 20:00:55.60 ID:FMjeAYzc0 - 半年後の試験に向かって勉強する必要が有ると思う反面、体がやけに怠く重たかった。
27歳を迎えて、体の違和感を感じでいたがある日大便をした後にトイレットペーパーを見るとドン引く位の血が着いていた。 それから連日血便を繰り返し、便器はその度に血塗れになっていた。 日に日に怠くなる体を黙っていたそばかすに訴え、心療内科に行った後内科へのハシゴをすることになった。 怠さと血便を訴え、血液検査を行い、のちに検査結果を知らされるとの事だった。
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133 :からあげくん ◆ZOigNAXyD2 @転載は禁止[]:2014/06/19(木) 20:08:16.60 ID:FMjeAYzc0 - 結果は大腸ガンだった。
ステージAで治療出来る範囲だと言われたが、帰宅後の空気は重っ苦しい物だった。 若いから進行も早いと言われたのが2人の首を擡げた一因だった。 面白いほどに降りかかる不幸にこれもまた面白いと、強がりでもなく笑った。 これはこれで、こんな経験してる奴居ないだろうと笑った。 そこで、俺はある程度の覚悟が決まっていた。 そばかすを放流して、俺は終末を決めるのだと。 それに当たって、しとかなければいけない事があると。 10年以上会ってない実父に会う必要があるだろうと。 やらしい考えだが、治療費でもいい、養育費すら払わなかった実父から少なからず金をせしめることが出来たのならそばかすへの罪滅ぼしが出来るんじゃないかと。 そう思い、実家と同市内に住み続け持ちマンションまで手に入れた実父の元に訪れようと考えた。
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136 :からあげくん ◆ZOigNAXyD2 @転載は禁止[]:2014/06/19(木) 20:15:38.53 ID:FMjeAYzc0 - かれこれ14年は会ってないだろう、実父に会うのは簡単な話では無かった。
そもそも実父はフィリピン人と結婚しており、8歳下の妹が居ると知っていたから。 天秤に掛けた時、実父に掛けられた迷惑の方が彼の生活を守るよりも大きく傾いた。 何本か酒を煽り、少々酔っ払いながら実父の家に向かうのが精一杯だった。 金の無心なんてした事も無いし、自分がしようとしていることはたかりと同じじゃないかと脳裏に過った。 それでも、それを無視して遂行するためには酒を煽るしか無かった。 綺麗事なんか要らない、持ってるものから当たり前の金を貰うだけだと思っていた。 実父の家に着き、インターホンを鳴らしてもその考えはやはり自分の足を引っ張った。
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