- 男「ずっと一緒に居たかったな」女「うん、そうだね」
36 : ◆CiBH9t3vahcS @転載禁止[]:2014/04/14(月) 21:27:39.83 ID:CCBsdAVX0 - 男「・・・おはよう」
女「むにゃ…」 男「はよ起きろや」 女「むむ…」 男「暗いうちに出るぞ」 女「なんで…?」 男「いいから早く」
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- 男「ずっと一緒に居たかったな」女「うん、そうだね」
37 : ◆CiBH9t3vahcS @転載禁止[]:2014/04/14(月) 21:30:29.74 ID:CCBsdAVX0 - 男「ちゃんとメガネ持ってきたな?」
女「うん、風も強くないね」 男「風は夜明け前は大したことないんだよ」 男「ほら、太陽が」 女「…キレイ」 男「早起きして良かったろ?」 女「うん!」
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- 男「ずっと一緒に居たかったな」女「うん、そうだね」
39 : ◆CiBH9t3vahcS @転載禁止[]:2014/04/14(月) 21:35:10.18 ID:CCBsdAVX0 - ビュー…
男「風が強くなってきたな、次の街に行こうぜ」 女「どうして決まった家に住まないの?」 男「……どうしてだろうな、分からない」 女「でも何か理由があるわけでしょ?」 男「……強いて言うなら俺の家じゃない家をずっと使うことの罪悪感かな」 女「・・・嘘つき、ホントの事言え」
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- 男「ずっと一緒に居たかったな」女「うん、そうだね」
41 : ◆CiBH9t3vahcS @転載禁止[]:2014/04/14(月) 21:37:01.90 ID:CCBsdAVX0 - 男「この星には未来がないから」
女「急に臭いセリフを吐いてきたな」 男「だって本当だもん」 女「まあいいや、詳しく教えてよ」 男「おう、気が向いた。教えてやるよ」
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- 男「ずっと一緒に居たかったな」女「うん、そうだね」
42 : ◆CiBH9t3vahcS @転載禁止[]:2014/04/14(月) 21:39:59.43 ID:CCBsdAVX0 - 男「昔はな、あそこにある『チキュウ』って星に住んでたらしい」
女「誰が?」 男「偉大なご先祖様」 女「なるほど、じゃあなんで私たちは火星にいるの? あそこにある『チキュウ』は今どうなってるの?」 男「まあ、そう焦るなよ」 男「時間は腐る程あるんだ。ゆっくり説明するからさ」 女「頼んだ!」
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- 男「ずっと一緒に居たかったな」女「うん、そうだね」
43 : ◆CiBH9t3vahcS @転載禁止[]:2014/04/14(月) 21:43:27.02 ID:CCBsdAVX0 - 男「今じゃあ考えられないがあの『チキュウ』にはたくさんの人が住んでたらしい」
女「ふーん、今は『チキュウ』にも火星にも誰もいないけどね」 男「たくさんの人が裕福になることを望んだらしい」 男「俺たちが使ったような機械を大量に使って『チキュウ』の皆が裕福になるように努力したらしい」 女「ふむふむ、良いことだね」
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- 男「ずっと一緒に居たかったな」女「うん、そうだね」
44 : ◆CiBH9t3vahcS @転載禁止[]:2014/04/14(月) 21:46:49.01 ID:CCBsdAVX0 - 男「でもそれは叶わなかった」
女「どうしてさ? 何も間違った事してないよ?」 男「どうしてなんだろうな。多分機械を使ったのが不味かったんだろうな」 男「『チキュウ』は確実に汚されていたんだ」 男「そしてある日『チキュウ』は俺たちの先祖様に牙を剥いた」 女「殺されたの?」ビクビク… 男「いいや」
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- 男「ずっと一緒に居たかったな」女「うん、そうだね」
46 : ◆CiBH9t3vahcS @転載禁止[]:2014/04/14(月) 21:53:18.46 ID:CCBsdAVX0 - 男「確かにその公害でたくさんの人が毒されたが、一部の裕福な人はそれを免れたんだ」
女「・・・火星に逃げたんだ」 女「・・・仲間を見捨てて」 男「おう、種の存続の大義名分の元に貧民を見殺しにしてな」 男「元々、火星を植民地にする計画はあったらしい」 男「要は空気とかの調整はあらかた終わってたから運良く『チキュウ』の公害からは逃げられた訳さ」 女「ロケットっていうのを使ったの?」 男「うん」 女「たくさんのロケットを使えばたくさんの人が乗れるんじゃないの?」 男「いいや、当時の『チキュウ』の人口からすると一握りの連中だけさ」
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- 男「ずっと一緒に居たかったな」女「うん、そうだね」
48 : ◆CiBH9t3vahcS @転載禁止[]:2014/04/14(月) 21:54:59.56 ID:CCBsdAVX0 - 男「ところが、それを『チキュウ』は許さなかった」
男「『チキュウ』は彼らに呪いをかけた」 女「もう火星に逃げたのに呪いをかけたの?」 男「……相当怒ってたんだろうな」 女「それはどんな呪いなの?」
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- 男「ずっと一緒に居たかったな」女「うん、そうだね」
49 : ◆CiBH9t3vahcS @転載禁止[]:2014/04/14(月) 21:56:16.97 ID:CCBsdAVX0 - 男『子が生めない』
男「……ただそれだけの呪いさ」
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- 男「ずっと一緒に居たかったな」女「うん、そうだね」
50 : ◆CiBH9t3vahcS @転載禁止[]:2014/04/14(月) 22:00:39.35 ID:CCBsdAVX0 - 男「相当研究したらしい、けれど結局よく分からなかったらしい」
男「ぼんやりと分かったのは『チキュウ』での公害が原因らしいこと」 男「…しばらくは人工受精を行っていた」 男「クローンの研究も進めていたが、その、色々あってな……辞めたらしい」 女「クローン?」 男「コピー人間さ。自分とおんなじのが百人いても困るだけだろ?」 女「・・・確かに」
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- 男「ずっと一緒に居たかったな」女「うん、そうだね」
51 : ◆CiBH9t3vahcS @転載禁止[]:2014/04/14(月) 22:02:07.62 ID:CCBsdAVX0 - 女「ふむふむ、だけどそれじゃあ星に未来がないことに繋がらないよ」
男「お、話をうやむやにしようかと思ってたが……見破られたか」 女「さあ教えてもらおうか!」 男「・・・いいよ、大事なのはここからだ」
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- 男「ずっと一緒に居たかったな」女「うん、そうだね」
52 : ◆CiBH9t3vahcS @転載禁止[]:2014/04/14(月) 22:07:49.48 ID:CCBsdAVX0 - 男「元居た貴族様たちの数は激減した」
男「人工受精は効率が悪いんだ。しかも多くの家庭に理解が得られなかったってのもある」 男「でも、ある程度の子どもたちは生まれ続けていた」 女「うん、それがどうして今は全く居ないのかって話だよ」 男「そうだな、進み過ぎた科学は悲惨な結末を人類の歴史に刻んだからだ」 女「・・・凄く、難しいよ…」 男「簡単に言うと、隕石が火星にぶつかることが分かったんだ。およそ100年前のことだ」
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- 男「ずっと一緒に居たかったな」女「うん、そうだね」
53 : ◆CiBH9t3vahcS @転載禁止[]:2014/04/14(月) 22:10:23.77 ID:CCBsdAVX0 - 男「科学技術が凄く高かったご先祖様達は手を尽くした」
男「結果は無駄だった。あまりにも大き過ぎたらしい」 男「そして先祖様達は人工受精も辞めた」 男「おしまい」 女「は? 続きは?」 男「無い。これ以上語ることは無い。」
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- 男「ずっと一緒に居たかったな」女「うん、そうだね」
54 : ◆CiBH9t3vahcS @転載禁止[]:2014/04/14(月) 22:12:57.93 ID:CCBsdAVX0 - 女「今度はロケットで脱出しなかったの?」
男「適当な惑星が見つからなかったんだ」 女「じゃあいっそのことロケットに住めば?」 男「あはは……そうだな。そうかもな、そうすれば良かったのかもしれない」 女「どうして? どうして隕石から逃げないの?」 男「どうしてなんだろうな」
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- 男「ずっと一緒に居たかったな」女「うん、そうだね」
55 : ◆CiBH9t3vahcS @転載禁止[]:2014/04/14(月) 22:16:13.95 ID:CCBsdAVX0 - 男「考えみてくれ。種を保存する能力を持たない虫けらのことを」
男「それがどうにか機械の力を使って数を増やす」 男「哀れじゃないか?」 女「そんな・・・でも! 」 男「諦めたんだよ、先祖様達は」 男「俺たちは仲間を裏切った哀れな貴族の末裔さ」 女「・・・やだ」 男「え?」
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- 男「ずっと一緒に居たかったな」女「うん、そうだね」
57 : ◆CiBH9t3vahcS @転載禁止[]:2014/04/14(月) 22:18:50.59 ID:CCBsdAVX0 - 女「私死にたくない!」
男「…誰でもそうじゃないか」 女「私はやだ!」 男「もう諦めろよ、無理なんだよ」 女「いつ隕石は来るの? 私それまでにロケットを修理して逃げる!」 男「……」 女「え?…早く言ってよ」 男「…もう、3ヵ月もないんだ」
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- 男「ずっと一緒に居たかったな」女「うん、そうだね」
58 : ◆CiBH9t3vahcS @転載禁止[]:2014/04/14(月) 22:21:12.09 ID:CCBsdAVX0 - 男「…俺も、ロケットを見に行ったさ」
男「治せるもんならと思ってな」 男「100年も経つといくらロケットでも朽ち果てるよ、あはは…」 女「……」ポロポロ… 女「…死にたくない……」 男「……」ギュッ
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- 男「ずっと一緒に居たかったな」女「うん、そうだね」
59 : ◆CiBH9t3vahcS @転載禁止[]:2014/04/14(月) 22:23:21.41 ID:CCBsdAVX0 - 男「…俺が」
男「俺がずっと歩いてるのはそういう理由だ」 女「……」ポロポロ… 男「ごめんな、ショックな話だったよな」 女「……」ポロポロ…
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- 男「ずっと一緒に居たかったな」女「うん、そうだね」
61 : ◆CiBH9t3vahcS @転載禁止[]:2014/04/14(月) 22:30:35.84 ID:CCBsdAVX0 - 男「着いてくるかはお前の自由だよ」
男「どうやっても無理だろうが、最後の抵抗を試みてもいいかもしれない」 男「俺は自分の最後の死に場所を探してる、それだけ」 男「あと、…恐怖を紛らわすため」 男「…どうする?」 女「……」グス… 男「……じゃあ今日までは傍に居てやるよ、明日からはお前は完全に自由だ、いいな?」 女「……」コクッ
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- 男「ずっと一緒に居たかったな」女「うん、そうだね」
63 : ◆CiBH9t3vahcS @転載禁止[]:2014/04/14(月) 22:32:39.69 ID:CCBsdAVX0 - (小さな街)
男「……」 女「……Zzz」 男「よし、寝たな」 男「……」 男「……Zzz」
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- 男「ずっと一緒に居たかったな」女「うん、そうだね」
66 : ◆CiBH9t3vahcS @転載禁止[]:2014/04/14(月) 22:42:55.96 ID:CCBsdAVX0 - (朝)
女「ねぇねぇ、おはよ」ツンツン 男「ん・・・随分早起きだな」 女「昨日はあんまり眠れなくてね」 男「そ、まあ無理すんなよ。余命は限られてんだ」 女「んでさ、誰と最後を過ごそうかなーっと、夜中考えてたんだ」 男「見つかった? その誰かさんは」 女「だ〜か〜ら〜!」 男「なんだよ急に大声出すなよ」 女「…一緒に行きたいなあって」ヒソヒソ… 男「……もっと分かりやすく言えよ…」ヒソヒソ…
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- 男「ずっと一緒に居たかったな」女「うん、そうだね」
68 : ◆CiBH9t3vahcS @転載禁止[]:2014/04/14(月) 22:51:44.18 ID:CCBsdAVX0 - 女「というわけで着いていくから」
男「おう! どんと来い!」 女「ところでさ?」 男「ん?」 女「どうしてそんなに火星の歴史に詳しいの?」 男「俺もお前と同じでな、記憶が残ってないんだ。でも目が覚めたのが運良く大きな図書館でな」 男「幸い字は読めたからお勉強したんだよ」 女「ふーん、意外とちゃんとした人だったんだね。山賊かと思ってたよ」 男「…お前から取るものは処女くらいしかないな」 女「地獄に落ちろクソ男」
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- 男「ずっと一緒に居たかったな」女「うん、そうだね」
69 : ◆CiBH9t3vahcS @転載禁止[]:2014/04/14(月) 22:54:46.12 ID:CCBsdAVX0 - 男「…よしじゃあ気を取り直して次の街に行こうか!」
女「おー!」
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- 男「ずっと一緒に居たかったな」女「うん、そうだね」
70 : ◆CiBH9t3vahcS @転載禁止[]:2014/04/14(月) 22:57:22.02 ID:CCBsdAVX0 - (昼)
女「……暑い」 男「水あるぞ? 飲むか?」 女「死ぬー、もう死んじゃうー」 男「勝手に死ねよ、今度は助けてやらねーぞ」 女「うー…うー…」 ビュー…
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- 未来に保証なんてないのに
8 :名も無き被検体774号+@転載禁止[]:2014/04/14(月) 22:58:15.22 ID:CCBsdAVX0 - そこに椎名林檎がある
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- 男「ずっと一緒に居たかったな」女「うん、そうだね」
71 : ◆CiBH9t3vahcS @転載禁止[]:2014/04/14(月) 23:02:54.14 ID:CCBsdAVX0 - (村)
女「着いたー!!」 男「お疲れさん」 女「ふー! まああたしが本気出したらこんなもんよ!」ドヤ! 男「じゃあもう少し本気出して飯作ってくれないかなあ」 女「機械は?」 男「こんな村にあるわけないって」 女「えー、材料もないしなあ」 男「…じゃあ最後の手段だ」 女「最後の手段?」 男「この非常食を食べよう」
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- 男「ずっと一緒に居たかったな」女「うん、そうだね」
74 : ◆CiBH9t3vahcS @転載禁止[]:2014/04/14(月) 23:05:17.13 ID:CCBsdAVX0 - 女「うおおおぇえぇええ」
男「汚いから声出すな」ボリボリ 女「まっっっっず!!!」オエェー 男「だから不味いって言ったじゃん」ボリボリ 女「これは人が食べる食べ物じゃない!」ボリ… 女「…おぇ……」
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- 男「ずっと一緒に居たかったな」女「うん、そうだね」
75 : ◆CiBH9t3vahcS @転載禁止[]:2014/04/14(月) 23:11:54.46 ID:CCBsdAVX0 - 的な世界観を説明しつつ今日はここまでということで
見てくれた人ありがとうございましたお
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