- 童貞「ラスト・オナニーだ」
97 :名も無き被検体774号+[]:2013/07/16(火) 00:11:48.66 ID:gA8uTvusO - だが、今は戦時中である。決意ややる気だけで童貞はやっていけない。
脅してでも追い返そう、益垣がそう思ったとき、視てしまった。 柔い新雪に隠れた、底知れない童貞力を。 小さな少年という器に凡そ、入り切らない大きな童貞を、ちらりと垣間見てしまったのだ。 益垣はそれに魅入られ『下働きだけで危ない仕事はなし。リーダー命令は絶対。楽器を練習しろ』という条件付きで入団を許可した。 団員達や地区童貞組合は子供の入団に難色を示したが、貞の才能を説明し、納得ずくの上で、若干十一歳という若さの童貞戦士が誕生したのだった。
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98 :名も無き被検体774号+[]:2013/07/16(火) 00:16:21.04 ID:gA8uTvusO - (ただのガキじゃあない。
天性の童貞がある。訓練さえ積めば、一流の童貞になれるはずだ!) 益垣は思い出から帰り、真剣な顔つきでギターを弾く少年を見下ろした。 あの日以来、貞は強い童貞力を発していない。 合同訓練時も、際立って童貞というわけでもなかった。 (だが……不思議なことに、こいつは誰に師事してたわけでもないのに、基本は完璧だ……) 何より、あれは見間違いではあるまい。 益垣には確信があった。 (こいつは強くなる。俺よりも……スパッツマスクよりも……誰よりもだ。 この戦争を終わらせるのは、こいつかもしれない! いっぱしの童貞戦士になるまで、こいつの童貞だけは死守してやるぜッ!)
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99 :名も無き被検体774号+[]:2013/07/16(火) 00:18:57.53 ID:gA8uTvusO - 練習は二時間続き、昼前になってようやく終了した。
昼時になると、暗い表情の団員がぞくぞくと帰ってきた。 どうやら、ビッチ達の奇襲に友をやられたものもいるらしい。 揃って頭を垂れ、益垣に芳しくない報告をした。 曰く、この街の『反政府童貞』が全て有害童貞に指定された。 曰く、ビッチハンター達はほぼ全ての反乱軍を襲撃した。 曰く、半数の童貞反乱軍が壊滅的なダメージを負った。 全てを聞き終えると、益垣は深く息を吐いた。 その表情には、隠しきれない痛憤が刻まれていた。 「……みんな、俺達は今、危機に瀕している」 いつになく真剣な面持ちで彼は言うと、団員一人一人の顔を順に見た。 「恐らく……いや、確実にここへビッチ共が押し掛けてくるだろう。 抜けるなら、今のうちだ。 元々俺の道楽に付き合ってもらってたんだ。 抜けても文句はねぇ」 「ああ、抜くさ。 奴等の心臓に俺のザー汁で穴を開けよう」 「今更かっこつけても遅いっすよ、団長。 一生ついていきやす!」 団員達が残ると声を上げる中、益垣は俯き、顔を伏せた。 心なしかその口は、バァロー、と言ってるように映らなくもない。
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100 :名も無き被検体774号+[]:2013/07/16(火) 00:20:27.68 ID:gA8uTvusO - 「僕も。僕も残らせてください!」
少年は小さい胸を震わせて勇気を振り絞った。 澄んだ声色に、団長がハッと顔を上げる。 「貞、俺のギター指導はこれまでだ。 聞いたろ?危険なんだよ、もう」 「でも、僕だって一反乱軍の一人……三擦り楽士団の戦士なんだ! いま逃げたら、僕はもう童貞を名乗れない!」 「度胸だけは立派だよ。 だけどよ、言いたくはないがお前は弱い」 益垣はわざと辛辣な語調で言い放った。 子供の童貞を戦いに出すわけにいかない。 そのようなことをしては、童貞の名折れである。 しかし、そのようなことを考える余裕は益垣には露ほどもなかった。 彼の頭を埋めていたのは、貞が成長すれば童貞軍を勝利に導いてくれるだろう、という根拠のない童貞のカンだけであった。
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101 :名も無き被検体774号+[]:2013/07/16(火) 00:24:03.26 ID:gA8uTvusO - 「いたところで、役に勃たないんだよ」
「学校で女の子から理不尽な精神攻撃と潮ショット食らってますから、潮除けくらいにはなります!」 「……ガキ共のおままごとじゃねぇんだ、反乱軍は。 その華奢な身体に本場の潮吹きを浴びてみろ、四散して逆に迷惑なんだよ」 益垣は小さな少年に凄んでみせた。 少年は一瞬怖じけるも、真っ直ぐに見返した。
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102 :名も無き被検体774号+[]:2013/07/16(火) 00:26:24.32 ID:gA8uTvusO - 「行け。団長命令は絶対。
約束したよな?童貞は約束を守るモンだぞ」 「その命令は承服出来ません。 どうしても抜けろっていうんなら、だったら団員としてではく、ただの一童貞として残ります」 おろおろと団員達が二人を見るなか――その時は訪れた。 それは唐突だった。 入り口の方からけたたましい早鐘の音が鳴り響いてきたのだ。 「て、敵襲!敵襲! ビッチが――」 見張り役の声が、不意に途切れた。 攻撃を受けたに違いない。皆に緊張が走る。 次の瞬間、入り口の方から見張りが吹っ飛んできた。 皆の頭上を越え、壁に叩きつけられた見張りは、全身から磯の香りがしていた。 「え、遠藤ォォォォォォオオオオッッッ!!!」 「遠藤がやられた!息はまだある!衛生貞!衛生貞ッ!」 「野郎ッ!第一種戦闘配置!」 皆が怒号を上げ、ズボンを脱ぎ捨てた。 中には、義憤に駆られて外へ飛び出す団員もいた。 その渦中で、貞は恐怖のあまり動けずにいた。 普段の穏やかな童貞達とは思えない緊迫感に満ちた団員達。 まがまがしい匂いを放ち、動かない見張り。 これが戦いなのだ。 日常も命も、あっけなく戦火に燃え尽きてしまう。
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103 :名も無き被検体774号+[]:2013/07/16(火) 00:27:35.69 ID:gA8uTvusO - 「貞!おい貞!」
急に呼び掛けられ、貞は我に帰った。 気付けば、益垣が真剣な顔で貞の肩を掴んでいた。 「俺達が時間を稼ぐ!お前は逃げろ!」 益垣は返事を返す間も与えず、釘と板で封鎖された裏口へ貞を引き摺った。 益垣は腰を引くと、鋭く腰を振り抜いた。 轟音とともに扉が破壊され、吹っ飛ぶ。 明るい陽光が支配する外の世界へ、貞は無理矢理突き飛ばされた。 「益垣さん!僕は!」 「貞」 益垣が静かに言った。 後ろで戦闘が起きているとは思えないほどの落ち着きようだ。
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104 :名も無き被検体774号+[]:2013/07/16(火) 00:28:55.75 ID:gA8uTvusO - 「俺は嘘をついた。すまないな、童貞失格だ」
後ろで何度目かの悲鳴が上がった。 「俺はお前のことを弱いなんていったが、ありゃ嘘だ。 貞……お前は魔法使いだ」 魔法使いというのは、才能ある童貞という意のスラングである。 別に三十過ぎた童貞のことではない。
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105 :名も無き被検体774号+[]:2013/07/16(火) 00:30:43.87 ID:gA8uTvusO - 「なんだって……?」
「ホントさ。訓練さえ積めば凄腕になれる。 だから……お前に反乱軍の空気を慣れさせたくて入団させた。 いつかお前が成長し、政府を倒してくれるときの為にな」 貞は開いた口が塞がらなかった。 「行ってくれ、後生だ。 そしていつの日か……肩を並べて戦おう」 益垣はそういうやいなや、貞を残して、倉庫内へ戻った。 いつもの彼からは考えられない叫び声を上げ、仲間の元へ駆けた。 入り口のドアから、争っている団員がちらりと映った。 残っているのは数人で、後は全員地面に蹲っている。 その数人も益垣が見ているうちに、バタバタと倒れていく。
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106 :名も無き被検体774号+[]:2013/07/16(火) 00:32:18.92 ID:gA8uTvusO - 益垣は外へ飛び出すと同時に、ズボンを脱ぎ捨てた。
視界に飛び込んできたのは、噂には聞いていたビッチだった。 「よぉ、嬢ちゃん!俺が『早漏』の益垣だッッ!!!」 彼は股間をいきり立たせ、怒りに任せて射精した。 ビッチは頭を軽く傾けて、易々と躱してみせる。 「ふぅん……アンタがね。 ちょっとは楽しめるかな?」 「楽しめるものならな」 益垣は低い声で小柄なビッチに凄んだ。 そしてッ!目にも止まらぬスピードで股間を扱くッッッ! 「刻むぜ!俺の遺伝子ッ!」 ビッチが地を蹴ったのと、益垣の銃口から乱れ射ちが放たれたのは同時だった。
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107 :名も無き被検体774号+[]:2013/07/16(火) 00:42:15.35 ID:gA8uTvusO - (静かすぎる……)
Mならこの底知れない不穏さに、勃起せずにはいられないに違いない。 微動だにしない空気は、言い様のない不気味さを孕んでいた。 貞は警戒しながら、歩みを進め、曲がり角からそっと顔を出した。 見ると、何人もの団員が倒れているのを認めた。 地獄絵図のような光景の中で、二つの人影が対峙していた。 肩を上下させ、互いにかなり消耗しているらしい。 一人は長身で、テンガロンハットの特徴的な男、益垣。 彼は拘束具を脱ぎ捨て、そのリボルバーを風に曝さしていた。 もう一人の姿は、幼い少年に大き過ぎる衝撃を与えた。 貞は目を見張り、思わず卒倒しそうになった。 だが、辛うじて残った思考力を必死に働かせて、喉まで上がってきた悲鳴を噛み殺す。 (嘘だ……こんなの何かの間違いだ!) 懸命に世界を否定するが、現実はいつも残酷だよなホント。 目の前の光景は、彼の網膜に残酷な光を突き刺し続けた。 襲撃者は、貞が良く知る少女だった。
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108 :名も無き被検体774号+[]:2013/07/16(火) 00:44:18.95 ID:gA8uTvusO - >>107
痛恨のミス…投下間違えた
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109 :名も無き被検体774号+[]:2013/07/16(火) 00:47:00.38 ID:gA8uTvusO - 一方、そこからさほど離れてない場所で、小さな少年が頭を抱えていた。
益垣に言われた通り、逃げたのはいいものの、あれは自分を逃がすための方便だったのかもしれない。 貞はそう思わずにはいられなかった。 (やっぱり、行こう。 僕一人逃げるなんて出来ないよ……) 貞はくるりと向きを変え、倉庫へと引き返した。 (益垣さん……みんな……無事でいて!) 倉庫の周辺は、酷く静かだった。 荒らしの前の静けさ、というのだろうか。 掲示板でも祭りの前は一度、不思議に静まり返るものである。
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110 :名も無き被検体774号+[]:2013/07/16(火) 00:49:13.43 ID:gA8uTvusO - (静かすぎる……)
Mならこの底知れない不穏さに、勃起せずにはいられないに違いない。 微動だにしない空気は、言い様のない不気味さを孕んでいた。 貞は警戒しながら、歩みを進め、曲がり角からそっと顔を出した。 見ると、何人もの団員が倒れているのを認めた。 地獄絵図のような光景の中で、二つの人影が対峙していた。 肩を上下させ、互いにかなり消耗しているらしい。 一人は長身で、テンガロンハットの特徴的な男、益垣。 彼は拘束具を脱ぎ捨て、そのリボルバーを風に曝さしていた。 もう一人の姿は、幼い少年に大き過ぎる衝撃を与えた。 貞は目を見張り、思わず声を上げそうになった。 だが、辛うじて残った思考力を必死に働かせて、喉まで上がってきた悲鳴を噛み殺す。
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112 :名も無き被検体774号+[]:2013/07/16(火) 00:50:38.25 ID:gA8uTvusO - (嘘だ……こんなの何かの間違いだ!)
懸命に世界を否定するが、現実はいつも残酷だよなホント。 目の前の光景は、彼の網膜に残酷な光を突き刺し続けた。 襲撃者は、貞が良く知る少女だった。 冬の薄い日差しにきわ立つ、栗色の髪。 気の強さを窺わせる、薄い鳶色の瞳。 見た目とは裏腹に非常な筋力を秘めた矮躯で拳を構えている少女は、貞の姉だった。 「チマい癖してやるじゃねぇの、お嬢ちゃん」 益垣が血の混じった唾を吐いた。 「あんただろう? 最近暴れてる山鯨っていうヤリマンは。噂には聞いてるぜ」 「あたしも噂には聞いてるわ。 お喋りな童貞がいるってね」 「……こりゃ一本とられたね。童貞だけに」 益垣が肩をすくめた。
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113 :名も無き被検体774号+[]:2013/07/16(火) 00:52:07.85 ID:gA8uTvusO - 貞は、現状を理解しようと必死に努めた。
しかし、久々に学校に行った時の授業のように、彼を置き去りにして状況は配色を変えていく。 「ねぇ、『早漏』、あたしの異名の由来って知ってる?」 「そりゃお前さん、潮吹きが凄いからだろう? だから鯨……あと、山登りが趣味とかかい?」 「半分ハズレ、半分は当たりね」 芳野がゆっくりと右拳を解き、スカートのあたりまで下ろした。 それは、命のやりとりをしている最中とは思えない妖艶な仕草だった。 「山鯨ってね、猪のことを指すそうよ」 「へぇ、そりゃ勉強になるな。 こんなお嬢ちゃんが猪ね……」
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- 童貞「ラスト・オナニーだ」
114 :名も無き被検体774号+[]:2013/07/16(火) 00:53:39.65 ID:gA8uTvusO - うわああああ!!!
ギルバルト仲間になんねぇ!なにこれ! カノープス仲間にしたのに!!
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- 童貞「ラスト・オナニーだ」
115 :名も無き被検体774号+[]:2013/07/16(火) 00:55:31.96 ID:gA8uTvusO - 益垣のせせら笑いが、消えた。
芳野が不意に、前傾姿勢になったためだ。 直後、爆発音とともに彼女は潮を吹いた。 そしてその勢いで、真っ直ぐに捉えた益垣へ――ロケットの如く宙をイク! 益垣は目を見開いた。 潮吹きは遠距離攻撃で使うのが普通だ。 それを彼女は、移動手段として使ってみせた! 芳野の潮吹きは通常も、当り前も、常識さえも飛び越えるのだッ! だが、益垣も大概、凡百に埋もれる童貞ではなかった。 「ッ!」 二人の影が重なり、鈍い音が響いた。 益垣は地面に叩きつけられ、芳野はバランスを失いながらも着陸に成功する。
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- 童貞「ラスト・オナニーだ」
116 :名も無き被検体774号+[]:2013/07/16(火) 00:56:58.23 ID:gA8uTvusO - 「初見であたしの潮吹きジェットの直撃を避けて、精液を射つなんて……アンタ、何者よ」
芳野は顔を痛みに歪め、脇腹を押さえた。 その指の間から、一筋の赤いものが漏れる。 「何者かって……?」 益垣は呻きながら立ち上がった。 右腕はだらんと力なく、重力の性奴隷と化していた。 「早漏さ」 彼は攻撃の初動を確認した瞬間、脊髄反射でマスをかいていたのだ。 反応速度さえ、早いのである。 (な、なんだ……なんなんだこれ……ッ!) 二人の人知を越えたオナニーに、物陰に隠れていた貞は、余計冷静さを欠いていた。 彼は姉の脇腹に滲む血と、益垣の動かないらしい右腕を交互に見比べた。 痛いだろうな、痺れた頭から弾き出された感想はそんな粗末なものだった。
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- 童貞「ラスト・オナニーだ」
117 :オナ禁三日目[]:2013/07/16(火) 01:02:41.91 ID:gA8uTvusO - 一旦休憩がてらポケモンの厳選します
よければ今日書いたおじいちゃん「鋼の年金暮らし」も見てね! >>111 >>86 本当にありがとう ひたすら自サイトから現行黒歴史をコピペる苦行ですが、あなた方のレスで勇気付けられます! 沸々と力が沸いてきます! なんだか優しい気持ちがいっぱいです! 世界にオナ禁の加護があらんことを、ザーメン
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- おじいちゃん「鋼の年金暮らし」
26 :名も無き被検体774号+[]:2013/07/16(火) 01:14:01.55 ID:gA8uTvusO - うわぁ、見返したら>>22のコピペ改変ミスってる…
これは恥ずかしい(*⊃_⊂) (*^_ ’)読んでくれてありがとう! 世界にオナ禁の加護があらんことを、ザーメン
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- 童貞「ラスト・オナニーだ」
118 :名も無き被検体774号+[]:2013/07/16(火) 01:19:16.76 ID:gA8uTvusO - 「さぁ!負けを認めなさい!
利き腕を破壊された貴方なんて、昼下がりの団地妻に睨まれた童貞のようなもの!」 「言ってくれるねぇ。 お嬢ちゃんも腹から血ィ流してる癖によ」 「これは生理よ!」 「へぇ。近頃の女の子は脇腹から排卵すんのか。 ナプキンでも買ってこようか? そうだな、羽付きがいい。 天国まで羽ばたいとけよ」 「口の減らない童貞め! 次の一撃で永遠に喋れなくなるけどね。 あたしに潮吹きジェットを使わせたのはアンタで二十人目くらいだよ」 「意外と多いじゃねえか! もっと出し惜しめよ!」 二人は不意に口をつぐみ、視線をぶつけ合わせた。 両者が感じているのは同じだった――次の一合で、決着がつくということ。 そして、益垣の方が部が悪いということ。
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- 童貞「ラスト・オナニーだ」
119 :名も無き被検体774号+[]:2013/07/16(火) 01:20:51.77 ID:gA8uTvusO - 芳野が挑戦的に笑った。
「最初にした話、アンタにも悪くないと思わない? 何も死ぬことはないでしょ。 オナ腕が使えないのは致命的だし、アンタに勝ち目はない」 芳野が言った。 「やってみなきゃ分からねぇぞ。 利き腕じゃない方が初々しくて、案外気持ち良いかもしれねぇしな」 それが益垣の答えだった。 彼は左手を相棒に沿えた。 右腕は折れても、心は折れていないようだ。 「童貞って、ホントバカ……」 芳野も右拳を固く握り、左手をスカートの中へ偲ばせた。
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120 :名も無き被検体774号+[]:2013/07/16(火) 01:22:25.88 ID:gA8uTvusO - 一方、物陰にいた貞も、このままでは二人はただではすまないと直感した。
止めなければ、そう思い、声を張り上げた。 「待ってよ、お姉ちゃん!益垣さん!」 二人はぎょっとして自慰をやめた。 貞を認め、唖然とする。 「ど、どうしてアンタがここに……」 「おい、貞!逃げろって言ったろうが! なんで戻ってきた!」 益垣の叱責を無視し、貞は彼の脇を通り抜けた。 「お姉ちゃん、これはどういうつもりだよ」 芳野は答えず、俯いた。 益垣は状況が呑み込めず、わけもわからないまま、とりあえず勃起した。
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121 :名も無き被検体774号+[]:2013/07/16(火) 01:24:23.74 ID:gA8uTvusO - 「答えろよ!僕はお姉ちゃんを信じてたのに……!」
「ち、違うの!これには事情が」 「僕は!今まで童貞ハンターと暮らして……! 僕のせいで皆は狙われたのか!」 幼い少年の心は、自責の念と悔しさで溢れていた。 零れた感情は、涙となり、言葉となって姉を責め立てた。 だが、それは不意に途切れた。 一陣の風が吹いた。 かと思うと、貞は糸の切れた人形のように崩れ落ちた。 彼の背後には、いつの間にか長身痩躯の少女が立っていた。 「時間切れです。 貴女には失望しましたよ。 残念ですが芳野様、貴女の腕前では……スパッツマスクを敗るのは難しいでしょう」 少女は、手刀を固めていた。 どうやら、貞の意識を奪ったのは彼女らしい。 芳野は驚くより先に、凶暴なまでの感情を爆発させた。 「うちの弟に何やってんだ貧乳がァァァアアッ!!!」 芳野は少女を知っていた。 白砂町の童貞ギルド運営者兼酒場のマスターである。 益垣はいよいよ混乱し、とりあえずツイッターを更新した。
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122 :名も無き被検体774号+[]:2013/07/16(火) 01:26:11.24 ID:gA8uTvusO - 「ふむ……」
マスターは荒らぶる芳野に目もくれなかった。 気絶している貞に屈みこみ、顔を見て目を細めた。 「なるほど、貴女に良く似てらっしゃいますね。 まるで双子のよう……瓜二つですわ。 これならショタ愛好家の富豪や、童貞好きの貴婦人に高くで売れますわね」 恐ろしい独り言を漏らすマスターに、芳野の怒りは天元突破を迎えた。 「マスターッ! ふざけたこと抜かしてんじゃないわよゴラ! なんであたしの弟に手出してんだよ!」
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123 :名も無き被検体774号+[]:2013/07/16(火) 01:29:48.02 ID:gA8uTvusO - 「あら、芳野様」
まだいたのか、というような調子でマスターが顔を上げた。 「理由ならただ一つ、芳野様の弟が三擦り楽士団の童貞だからでございますわ。 反乱軍の童貞に、人権はありません」 「約束が違うッ!三擦り楽士団の頭を倒せば、弟の童貞を保証してくれるって!」 「嘘は女性の身だしなみですわ。 それに芳野様がもしも、もっと利用価値のあるヤリマンでしたら弟さんに手荒なことはしないつもりでしたが。 益垣は、スパッツマスクに数段劣ります。 それに苦戦する貴女は、我が主の期待に応えられそうもありませんもの」 「……鼻っから、スパッツマスク戦のテストだったってわけね。 でも、あたしだってスパッツ野郎を疲れさせるくらい出来るのよ」
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124 :名も無き被検体774号+[]:2013/07/16(火) 01:30:52.24 ID:gA8uTvusO - 「確かに、奴に手傷くらいは負わせられるかもしれませんね。
ですが、弟さんの童貞を保証しなくても……」 マスターは言葉を切り、口の端をつりあげた。 「貴女は戦わざるを得ない」 「外道……ッ!」 芳野はマスターを見据え、拳を構えた。 性欲をたぎらし、下腹に溜まったそれを全身に漲らせる。 精力による身体能力の強化。 童貞処女ビッチヤリチン等の性闘志なら基礎中の基礎だが、それ故にこれが得意だと単純に強いものである。 闘志を燃やす芳野を、マスターはせせら笑った。 「いいのですか? どうしてもお金が必要なのでしょう。 ギルドを辞めてもらってもいいのですよ」 「依頼なら他で探すわ! 今はッ!殴りたいッ!アンタをッ!」
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125 :名も無き被検体774号+[]:2013/07/16(火) 01:34:10.27 ID:gA8uTvusO - 「『スパッツマスクに数段劣る』か。
そう言われて黙っちゃあいれねぇな」 芳野の隣に、益垣が進み出た。 芳野がはっとする。 益垣は、小柄な少女を横目に見ながら、 「勘違いすんなよ。 俺は仲間を助ける、たまたま隣にお前さんがいたってところだ」 「……ありがとう。 あんたのツイート、フォローしてあげる……」
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126 :名も無き被検体774号+[]:2013/07/16(火) 01:36:31.06 ID:gA8uTvusO - 「これはこれは」
マスターは笑みを広げた。 品のある動作で懐から得物を取出した。 「たったいま敵同士だったお二人が共闘するだなんて、面白いですわね」 構えたピンク色のそれは、ディルドだった。 益垣が訝しむ。 ディルドなんかで何をするつもりだ、と思案した。 芳野はそのようなことはどうでもよかった。 歴戦の自分と、全国最高峰の童貞のタッグだ。 負ける道理などない。 「行くよッ!」 「覚悟なうッ!」 芳野と益垣が、同時に地を蹴った。 たかが華奢な少女、一撃で葬りされる――二人はその考えを疑わなかった。 つまらなそうに二人を待ち構える少女の余裕と実力を、もっと警戒するべきだったのだ。 その日、毎日欠かさず更新していた益垣のツイッターは、更新されなかった。
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127 :名も無き被検体774号+[]:2013/07/16(火) 01:48:07.52 ID:gA8uTvusO - 芳野貞が最初に見たのは、知らない天井だった。
「ここは……?」 身を起こし、辺りを見回した。 裸電球が一個ぶら下がっているだけなので、薄暗い。 息苦しいほど狭い部屋で、壁は武骨なコンクリート造りだが、一面だけ縦に太い鉄棒が何本も伸びている。 「僕……捕まったのかな……」 混濁した意識で漏らし、記憶を辿った。 最初は散り散りだった記憶の欠片が、パズルのように合わさっていく。 やがて彼は、拳を振り上げながら潮吹きで低空ジェット飛行する姉のことを思い出した。 重い衝撃が胸を衝き、鼻の奥が熱くなる。 一人なら、そのまま泣いてしまったに違いない。 だが、その時部屋の隅から呻き声が聞こえ、彼はハッとした。
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- 童貞「ラスト・オナニーだ」
128 :名も無き被検体774号+[]:2013/07/16(火) 01:49:39.18 ID:gA8uTvusO - 目をやると、蓙の上で横たわっている人物がいた。
毛布を全身すっぽり被っていたため、今まで気付かなかったようだ。 貞は恐る恐る近づき、顔を覗きこんだ。 目の下に酷い隈のある、不健康そうな少年だった。 歳は姉と同じくらいだろうな、そんなことを思っていると、少年は目をカッと見開いた。 「貞か……」 貞は思いがけず尻餅をついた。 この少年は擦れた声で、確かに自分の名前を呼んだのだ。 「あぁごめん、驚かせましたね。 ここへ連れられてくるとき、ヤリチン僧兵が言ってた気がしたんだ。 多分、君の名前かなって」 少年はさして悪びれる風もなく言うと立ち上がり、貞へ手を差し伸ばした。 「俺は小森新斗。 ただのしがない童貞さ」 「僕は貞、芳野貞です」 貞はまだ忙しない心臓を悟られないようにしながら、小森の手を握った。
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- 童貞「ラスト・オナニーだ」
129 :名も無き被検体774号+[]:2013/07/16(火) 01:52:34.58 ID:gA8uTvusO - 「小森さん、ここは何処なんでしょう?」
「ちょっと分からないな」 小森は座り込み、頭を抱えて呻いた。 「頭が痛いんですか。大丈夫ですか?」 「あぁ、ここへくるとき、薬を盛られたみたいでね。 ちくしょう、あの村……恩を仇で……いくらで売れたんだ、俺……!……そうだ、貞君。 俺と一緒にいたトナカイ知りませんか?」 「頭が大丈夫ですか?」 二人はそれから、簡単な自己紹介をした。 貞は白砂町の三擦り楽士団団員で、好きなハードはドリームキャストで、襲撃者に襲われて捕まったということ。 姉がヤリマンというのは伏せておいた。 肉親にヤリマンがいるのは、童貞なら気に食わない話だろうと思ったからだ。 小森は、とある童貞に師事している童貞で、師匠の言い付けで武者修行に出ているという。 トナカイと一緒に旅をしていたのだが、山村で薬を盛られ、今に至るらしい。
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- 童貞「ラスト・オナニーだ」
130 :オナ禁三日目[]:2013/07/16(火) 01:54:58.10 ID:gA8uTvusO - 夜も更けてまいりましたので、今夜は休むことにします
お付き合い下さってる方、本当にありがとう。 皆様にどうかオナ禁のご加護があらんことを…ザーメン
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- 童貞「ラスト・オナニーだ」
134 :名も無き被検体774号+[]:2013/07/16(火) 10:54:09.87 ID:gA8uTvusO - ありがとうございます!
ちょっとだけですが、投稿します
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- 童貞「ラスト・オナニーだ」
135 :名も無き被検体774号+[]:2013/07/16(火) 10:59:50.06 ID:gA8uTvusO - 「ソリできた」
彼は言った。 寒い国からきたそうだ。 産まれは日本だが、いまは師匠のいる地が故郷らしい。 そして、スーファミとテレビが常に繋がっていると語った。 「小森さん……僕たちどうなっちゃうんでしょう」 「分からないさ。……シッ、何かくる」 小森は何かを感じとったに違いない。 眼光鋭く、いつでも脱げるようにズボンに手をかけた。 その視線は、鉄棒越しの廊下へ向けられている。 貞は、心臓が早鐘のように脈打つのを感じた。 こんな牢獄へぶちこむ相手だ、歓迎してくれそうにはない。 やがて、靴音が響いてきた。
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- 童貞「ラスト・オナニーだ」
136 :名も無き被検体774号+[]:2013/07/16(火) 11:03:32.47 ID:gA8uTvusO - 「パネエェッパネッパネッパネッパネッパネッパネッ!!」
足音の主が、ぬっと姿を見せた。 チャラ男だった。 妙な笑い声を立てている。 小麦色の肌に、暗闇でもそれと分かる明るい茶髪。 彼はこちらを指差し、耳のピアスをじゃらじゃら鳴らしながら腹を抱えて笑い転げていた。 「なんだこいつ」 小森が真顔で言った。 チャラ男は笑うのを止め、小森に顔を向けて鼻で笑った。 「チョリーッス!! マジぱねぇ!チョーウケるし!ぱねぇ、ぱねぇ!!」 「な、なんだと!」 小森は目に見えて怒りを顕にした。 チャラ男は興奮し、まくし立てた。 「マヂパネェし!ヤベッ! 童貞系?ヤベッ!まぢパネェから!ヤベッ!ヤベッ!」 「言わせておけば!」 小森は目に怒りの炎をちらつかせ、チャラ男に飛び掛かった。 しかしあっけなく鉄棒に弾かれ、床で悶絶した。 セミの死骸みたいだな、貞はそんなことをふと思った。
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137 :名も無き被検体774号+[]:2013/07/16(火) 11:05:56.68 ID:gA8uTvusO - 「ウェーイ!まぢウケるし!ウェーイ!川原でBBQ!」
チャラ男はそれを捨て台詞に、去っていった。 小森は身を起こし、額を擦る。 「まぢいたい」 「大丈夫ですか小森さん? あいつ何なんでしょう?」 「分からない……オデコ痛い、なんか冷やすもんないかい? 冷えピタでもいいぞ」 「そんな、急に言われても」 「故郷の雪が恋しくなってきたぜ……」 小森はうなだれた。 それから、二人に会話らしい会話はなく、ぼんやりと時間が過ぎるのを待っていた。
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138 :名も無き被検体774号+[]:2013/07/16(火) 11:08:27.33 ID:gA8uTvusO - 小森は額を押さえながら、部屋の隅に蹲っていた。
視線は虚空を泳いでいるが、彼の目は遠い故郷とやらに向けられているのだろう。 やがて、また靴音がしたかと思うと、廊下の照明がついた。 あまりの眩しさに、二人は思いがけず呻いた。 「おらっ、飯だ飯。この薄汚れた童貞共め!」 しゃがれ声と共にやってきたのは、トレイをもった男だった。 色褪せた青いつなぎを着ていて、酔っているのか顔が赤い。 仕草や表情から、粗暴さが透けて見えた。 「今日はスペシャルディナーだぞ。 屑肉のスープに、飼料用穀物の粥だ!」 男は下卑た笑い声を上げると、トレイを床に下ろし、足で押しやった。 僅かな隙間を通り、トレイが入ってくる。
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- 童貞「ラスト・オナニーだ」
139 :名も無き被検体774号+[]:2013/07/16(火) 11:12:18.76 ID:gA8uTvusO - 「ここは一体どこなんですか!?」
貞が声を張った。 男は答えず、鼻で笑った。 「童貞に答える義務はないね。 どっちせよ、朝になりゃ嫌でも分かるさ。 そうそう、朝になったら……二、三時間後だな……お前らを移動させるからな。 妙な真似はするんじゃねぇぞ」 赤ら顔の男は言うだけ言うとふらふら帰っていった。 貞は必死にここがどこか考えを回らせながら、小森に意見を求めようとした。 当の小森はというと、運ばれてきた食事にがっついていたところだった。 「小森さん!」 「なんだ、大声出して。 君も食べるんだ。 煮詰めた猫のゲロみたいな味だけど、食えるだけマシだぞ」
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- 童貞「ラスト・オナニーだ」
140 :名も無き被検体774号+[]:2013/07/16(火) 11:22:57.59 ID:gA8uTvusO - 貞は毒気を抜かれ、口をぽかんと開けた。
確かにその通りだと思い、おとなしく小森の横に座り込む。 男の冗談ではなく、粥は本当に穀物だった。 適当な野菜を入れているらしく、所々赤いものや緑のものが浮いている。 思ったより不味くないと思った。 だが、曰く『屑肉のスープ』を飲んだ瞬間、彼の顔色は土気色を通り越してドドメ色へと変わった。 「マズいってもんじゃないよな」 自分の分を完食したらしい小森が、横から哀れそうに言った。 「何の肉だろうな、これ。 ろくなもんじゃなさそうだ」 小森に答えず、貞は無心でスープを呷った。 そこに残った肉は出来るだけ息をしないように咀嚼し、無我の境地で飲み込んだ。
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- 童貞「ラスト・オナニーだ」
141 :名も無き被検体774号+[]:2013/07/16(火) 11:31:06.95 ID:gA8uTvusO - 「俺は好奇心で肉を口に入れたまま深呼吸したよ。
また毒を盛られたかと思ったね」 貞は口を拭い、呻いた。 「……食べたのに、なんか体力を消耗したような気がします」 「俺もさ。マゾに目覚めそうだ」 事実、貞は憔悴しきっていた。 眠気はないが、身体が怠くてしょうがない。 小森も顔に隠しきれない疲れが滲んでいた。 二人は暗黙の了解で横になろう、という結論に達した。
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- 童貞「ラスト・オナニーだ」
142 :名も無き被検体774号+[]:2013/07/16(火) 11:37:27.86 ID:gA8uTvusO - 蓙の上で、毛布を分け合う。
「小森さん、さっきのチャラチャラした男ってなんだったんでしょうね?」 小森は答えなかった。 貞が見ると、彼は目を瞑りゆっくりと胸を上下させていた。 寝ているのか、はたまた答える気がないのか。 貞はこの頼りなさそうな少年に、いつの間にか深い信頼を寄せているのに気付き、胸中、驚いた。 チャラ男が来る前にいち早く察知したのは恐らく精力による『感覚強化』だろう。 感覚強化とは言葉そのままに、視覚、聴覚、嗅覚等の感覚機能を性欲で底上げする技術で、偵察活動全般に渡って求められる。 小森は『身体強化』はなんとなく不得手そうだが、いっぱしの童貞戦士には間違いないと貞は思った。 彼がいればきっと、悪いようにはならないはずだ。 貞はそう自分を慰め、少しでも睡眠をとろうと目を瞑った。
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- 童貞「ラスト・オナニーだ」
143 :名も無き被検体774号+[]:2013/07/16(火) 11:39:21.45 ID:gA8uTvusO - (お姉ちゃん……)
だが、瞼の裏に姉の拳によって作られたあの戦場が浮かびあがり、寝付けなかった。 微睡むことさえないまま、男の言っていた移動とやらの時間になった。 猟銃を持った男が二人現れ、鉄棒を喧しく蹴りだしたのだ。 小森と貞は銃を突き付けられながら牢から出され、歩かされた。 廊下は意外なほど短かった。 二人が居た部屋を入れて、六部屋しか牢もない。 刑務所というわけではないらしい。
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- 童貞「ラスト・オナニーだ」
144 :名も無き被検体774号+[]:2013/07/16(火) 11:42:27.00 ID:gA8uTvusO - 「しゃきしゃき歩け、新入りが!」
猟銃で突かれ、牢の並ぶ廊下を抜けると、またコンクリートが剥き出しになった廊下だった。 上にはパイプが駆け巡っている。 そして、先には頑健そうな鉄の扉が待ち構えていた。 「いったいどこですか? 教えてくれたっていいはずだ」 小森は不満たらたらといった様子だ。 乱暴な起こされ方で機嫌が悪いらしく、彼の股間は臨戦態勢だった。 「楽園さ。お前ら童貞にとってな」 というのが男の答えだった。
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145 :名も無き被検体774号+[]:2013/07/16(火) 11:47:59.09 ID:gA8uTvusO - 扉の前まで行くと、男達は銃口を突き付けながら、
「入れ。その先がお前らの新たなるライフステージだ」 「精々、先輩達と仲良くしな!」 「小森さん」 貞は不安げに小森を見上げた。 小森は猟銃をちらりと盗み見、肩をすくめた。 「行くしかないさ。童貞の神々の加護があらんことを」
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- 童貞「ラスト・オナニーだ」
146 :名も無き被検体774号+[]:2013/07/16(火) 11:50:49.28 ID:gA8uTvusO - 彼は鉄の扉を開けた。
薄明。 冬の澄んだ空気が、彼らの顔を撫でる。 進むと、すかさず後ろから扉の重々しい鳴き声が聞こえた。 外界と彼らを隔てたことを告げる、無慈悲な響きだった。 「なんだ、ここ?」 貞の目に映ったのは、小さな岩山だった。 地面も茶色い土くれで、五十歩程度先にはコンクリートの壁がある。 「さっきから嫌な予感しかしないぜ。見ろよ」 小森は顎で左側をしゃくった。 荒涼とした岩場地帯がぷっつりと切れ、代わりに砂利が広がっていた。 更に先には、川まである。 川の岸は無く、やはり壁が聳えていた。
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- 童貞「ラスト・オナニーだ」
147 :名も無き被検体774号+[]:2013/07/16(火) 11:58:53.33 ID:gA8uTvusO - 「ちょっとしたテーマパークだな」
小森は川と砂利に背を向け、歩きだした。 貞も慌てて追従する。 やはり岩場地帯はすぐに切れ、代わりに今度は森林が広がった。 森林といっても小さく、数十歩も歩けば草原に抜けた。 その間も、終始左右には壁があり、長方形の形で囲っているのだと分かった。 終わりの壁が見えた。 草原地帯も案の定最後は行き止まりと思ったが、忌々しい壁がぱっくりと口を開けたように、大きなシャッターがあった。 「出られるんでしょうか?」 「無理だろう」 小森はあっさり言うと、壁を見上げ、 「だいぶハードな展開だぜ。 超魔界村もこうはならねぇ」 壁は三階建てに相当するだろう、地面から垂直に聳えている。
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- 童貞「ラスト・オナニーだ」
148 :名も無き被検体774号+[]:2013/07/16(火) 12:03:37.12 ID:gA8uTvusO - 「貞、君は空を飛べるか?」
ぎょっとしたのは、小森が冗談を言った風もなく、至って真剣な顔だったからだ。 「飛べませんよ!飛べてたまりませんよ!」 「そうか」 小森は残念そうに嘆息した。 貞の顔に目をやり「でもな」と続ける。 「童貞だってその気になれば空を飛べるんだぜ」 そういうと、彼は初めて笑顔を見せた。 貞はその言葉の真意を聞こうとしたが、それはかなわなかった。 何かが軋む音――突如としてシャッターが上がった。 貞は目を丸くした。 中から、寝ぼけ眼の少年達が這うように出てくる。 貞と同じくらいの年から、小森よりも年上の少年もいた。 共通するのは十代らしいのと、それから雰囲気でそれと分かる童貞だった。
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- 童貞「ラスト・オナニーだ」
149 :名も無き被検体774号+[]:2013/07/16(火) 12:08:00.98 ID:gA8uTvusO - 「あ、あの!」
貞はわらわらとどこかへ移動する童貞少年のうち、一人に声をかけた。 「なんだよ?」 「ここはどこなんですか?」 「ここは童貞山さ」 「童貞山?」 おうむ返しに貞は聞いた。 童貞少年は頷き、続けた。 「あぁ、新入りか。 ここは客が、俺達童貞を上から眺めるための施設さ」
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