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1 ◆wlrXk.nKvWpx
勇者「俺に魔王になれ……と言うのか!」

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勇者「俺に魔王になれ……と言うのか!」
56 :1 ◆wlrXk.nKvWpx []:2013/07/05(金) 09:29:20.30 ID:iGy6aiyXP
おはよう!
おむかえまでー
勇者「俺に魔王になれ……と言うのか!」
57 :1 ◆wlrXk.nKvWpx []:2013/07/05(金) 09:49:12.86 ID:iGy6aiyXP
王子「熱は下がったみたいだけどね」
王子「来たがってたけど……お母様が、駄目だって」
側近「盗賊、しっかり母親してるよなぁ……」
勇者「女剣士!さっきの話……」
女剣士「ん?ああ……話してないのか?」
側近「誕生パーティがどうとか?」
側近「……しかし、俺らが公の場に出ていくのはな」
女剣士「まあ、王様からの発表の場、だと思ってくれ」
側近「発表?」
王子「……」ニヤニヤ
勇者「あ!お前……何か知ってるな!王子!」
王子「まだ内緒だよ」
勇者「教えろよ!」
女剣士「あんまり大きい声を出すな」
側近「……仕方無いな」
勇者「行って良いの!?」
側近「お召し、とありゃ行かない訳にもいかんだろ」
女剣士「目深に被れるローブをちゃんと用意する」
側近「……」ハァ
女剣士「そう深く考えなくて良いよ、側近」
女剣士「勇者の存在は周知だ。この場所を知るのは騎士団の人間に限られるしな」
側近「まあ、そうだが……」
女剣士「まあ、伝える事は以上、だ……勇者」
勇者「ん?」
女剣士「アタシが剣を教えだして随分経つ。素振りも欠かしていないな?」
勇者「勿論! でも……週一回しか教えに来てくれないんだもんなぁ」
側近「仕方無いだろう。女剣士にだって仕事があるんだから」
王子「俺も強くなったぜ、勇者」
女剣士「そこで、だ……王子と、手合わせしてみるか?」
勇者「え!?良いの!?」
剣士「負けないぞ!」
女剣士「では二人とも、庭の方へ出ろ。騎士に見張らせておくから」
女剣士「まずは素振り200回だ!」
王子「はい!」
勇者「は、はい!」
女剣士「側近、少し待っててくれ。すぐに戻る」
側近「おう」
女剣士「各自剣を持って行け!」
王子「はい!」
勇者「はい!」

パタン
勇者「俺に魔王になれ……と言うのか!」
58 :1 ◆wlrXk.nKvWpx []:2013/07/05(金) 09:50:01.38 ID:iGy6aiyXP
勇者「え!?良いの!?」
剣士「負けないぞ!」



勇者「え!?良いの!?」
王子「負けないぞ!」

訂正orz
勇者「俺に魔王になれ……と言うのか!」
59 :1 ◆wlrXk.nKvWpx []:2013/07/05(金) 09:59:59.34 ID:iGy6aiyXP
側近(発表……発表、ね)
側近(何を企んでるんだかなぁ……)

パタン

女剣士「手短に言うよ、側近」
女剣士「……待たすと煩いからな、あの二人」
側近「ああ……俺も聞きたい事がある」
女剣士「パーティーは明日だ、朝迎えに来る」
側近「随分急だな」
女剣士「日を与えると、アンタは悩むだろう?」
側近「……盗賊の奴」クック
女剣士「明日はその侭、城に泊まると良い。部屋の準備はしてある」
側近「え?」
女剣士「見張りには騎士が交代でつくし……久々に酒でも飲もう、と」
女剣士「『王様からの命令』だ」クスクス
側近「そりゃ断れないなぁ……職権乱用、て伝えとけ」クス
女剣士「……洞窟が見つかった」
側近「!」
女剣士「アタシも同行するが、勇者と王子を連れて行こうと思う」
側近「……マジかよ」
女剣士「鍛冶師が、地図を側近に返しておけと預かったんだが……」
側近「返されてもなぁ……俺にはもう必要無いしな」
女剣士「…… ……そう、か」
側近「王国預かりって事にでもしといてくれよ」
女剣士「……聞きたい事、てのは何だ?」
側近「俺は……老けた、か?」
女剣士「それは……知り合った頃から?それとも……」
側近「この国へ来てから、かな」
女剣士「……そうだな。人が見て不自然で無い程度に」
側近「そうか……お前、幾つになったっけ」
女剣士「もう、30を超えたよ」
側近「お前と比べて、どうだ?」
女剣士「……もう少し、上と言われても違和感は無いな」
側近「そうか……なら、良い。安心した」
女剣士「…… ……」
勇者「俺に魔王になれ……と言うのか!」
60 :1 ◆wlrXk.nKvWpx []:2013/07/05(金) 10:09:03.59 ID:iGy6aiyXP
側近「話は……終わりか?」
女剣士「ああ……二人を見てこよう」
女剣士「食料などは途中の倉庫にいつも通り入れてあるからな」
側近「ああ。勇者に取りに行かせるよ」
女剣士「一緒に行くか?」
側近「え?」
女剣士「庭、だよ」
側近「俺が行っても…… ……いや」
側近「そうだな。行くよ」
女剣士「ん……ほら、手」
側近「おう」ギュ
女剣士「…… ……」
側近「照れるなよ」
女剣士「ち、違うわ、阿呆!」

ガチャ

女剣士「良し、素振りは終わったか!」
勇者「はい! ……あ、側近」
王子「199.200……! ……ッはい!」
女剣士「勇者、スピードを競えとは言っていない」
女剣士「息を合わす事も大事だ」
勇者「は、はい!」
女剣士「……騎士、側近様を頼む」
騎士「はッ ……どうぞ、お手を」
側近「ああ、ありがとう」
女剣士「では向かい合い距離を取れ」
勇者「はい!」
王子「はい!」
女剣士「手加減は無用!急所への攻撃は禁止……始め!」
勇者「俺に魔王になれ……と言うのか!」
61 :1 ◆wlrXk.nKvWpx []:2013/07/05(金) 10:20:49.97 ID:iGy6aiyXP
側近(打ち合う音が聞こえる……勇者も、王子も大きくなったな)
側近(洞窟が見つかった、か……まあ、盗賊の事だ)
側近(明日の発表とやら、その事なんだろうが……地図、持ってきて正解だったな)
側近(…… ……そういえば、あの古い地図)
側近(もしかしたら、俺が……兄貴に貰った奴かもしれないんだな)
側近(俺にくれたのは、女剣士の親父だし……何の因果か)ハァ
騎士「側近様、ご気分でも?」
側近「ああ、いや……大丈夫だ」
騎士「なら、よろしいのですが」
側近「……今、どうなって……」

ガキィン!

騎士「あ……ッ」
女剣士「そこまで! ……勝者、王子!」
王子「よっしゃぁ!」
勇者「く、くそ……ッ」
側近「……負けちゃったか」
女剣士「……王子様、お見事です。勇者様も検討されましたよ」
王子「……ッ ありがとうございました!」
勇者「ありがとうございました……」ハァ
側近(勇者はスタミナ不足……かな)
側近(王子は城で……女剣士に鍛えられてるんだろうしなぁ)
女剣士「……では、明朝お迎えに上がります。騎士、側近様を……」
側近「大丈夫だ、勇者がいる」
勇者「……ああ」
王子「女剣士!勝ったよ、俺!」
女剣士「お見事でした……が、驕りません様、王子様」
王子「……ッ はい!」
側近「お疲れ、勇者」ギュ
勇者「俺に魔王になれ……と言うのか!」
62 :1 ◆wlrXk.nKvWpx []:2013/07/05(金) 10:28:59.73 ID:iGy6aiyXP
勇者「くそ……」
側近「悔しいか?」
勇者「当然だ……!俺は、魔王を倒さなきゃいけないのに……!」
女剣士「では、失礼致します。行くぞ!」
騎士「はッ」
王子「勇者……様。又、明日」
勇者「……はい。お気をつけて」

スタスタ…… ……

側近「さっき、女剣士にも言われただろう?」
勇者「……?」
側近「お前は勇者だ。世界を守り、魔王を倒す光の子」
勇者「…… ……」
側近「目の前にある物を壊すだけの強さを求めて良い訳じゃない」
側近「守る物がある方が強くなれる」
勇者「守る物……」
側近「……そう。力を合わせる、とか。何かを守る、とかな」
勇者「あ……息を合わせる、て……奴、か」
側近「そう。圧倒的な力があれば、一人でも良いけど」
側近「……そうじゃ無いなら、必要だろ?」
側近「仲間を守る。世界を守る……ま、色々な」
勇者「……うん」
側近「魔王は……信じられない位強いよ」
側近「規格外だからな、アレは」
勇者「側近は……魔王を知ってるのか」
側近「…… ……世界滅ぼすとか、噂されてるだろ」
勇者「ああ……うん……」
側近「到底勝てない様な相手でも、仲間が居て、個々に守りたい大事な物があって」
側近「力を合わせれば、勝てるかもしれない」
側近「……俺は、お前にはそういう強さを身につけて欲しいよ」
勇者「……うん!」
側近「良し……で、だ」
勇者「ん?」
側近「腹減ったから、飯つくって?」
勇者「…… ……おう」
勇者「俺に魔王になれ……と言うのか!」
63 :1 ◆wlrXk.nKvWpx []:2013/07/05(金) 10:38:24.83 ID:iGy6aiyXP
……
………
…………

魔王「…… ……ん。側近」
側近「ん!?」パチ
魔王「起きたか」
側近「うわああああああああ、近い、近い!」ドン!
魔王「お……っと…… ……お前な、主を突き飛ばす奴が居るか」
側近「寝室に忍び込むな!寝起きに野郎の顔ドアップで見せられる身になれ!」
側近「……最悪な目覚めだ。何だよ……」
魔王「ちょっと聞いてくれよ」
側近「……ん?窓の外、暗い……おい!まだ夜じゃネェか!」
魔王「……鴉が……裸で私の上に乗ってたんだよ……」
側近「……目に見えてしょんぼりしないでくれる、気持ち悪い……」
側近「良いじゃないか、良い女じゃん、アレ」
側近「……ちょっと羽生えてるけど」
魔王「私の趣味じゃ無い……」
側近「何、据え膳食っちゃった訳?」
魔王「下品だね、お前は……やってないわ」
側近「んじゃ別にいいじゃねぇか」
魔王「吃驚して突き飛ばして逃げてきてしまったんだ」
魔王「……だから、ここで寝かしてくれ」
側近「はぁ!?」
魔王「……怖くて戻れん」モゾモゾ
側近「ちょ、潜り込んでくんな!おい、魔王様!聞いてんのか!」
魔王「おやすみー」
側近「こらあああああああああああ!」

……
………
…………

鴉「おや、おはよう側近……なんだ、アンタ眠れなかったのかい?」
側近「あ?」
鴉「目の下にクマ……台無しだよ」
側近「いい男が、って定型文が抜けてるぜ」
鴉「必要だったかい?」
側近「…… ……つか、誰の所為だと……」ブツブツ
勇者「俺に魔王になれ……と言うのか!」
64 :1 ◆wlrXk.nKvWpx []:2013/07/05(金) 10:49:13.91 ID:iGy6aiyXP
スタスタスタ

魔導将軍「鴉、こんな所にいたのか」
鴉「ああ、魔導将軍……どうした?」
魔導将軍「例の大陸の狼共だがな……」
鴉「ああ……あれか。じゃあね、側近」
魔導将軍「側近、この間はお疲れだったな」
鴉「え?」
側近「ああ……アレね」ゲンナリ
側近「思い出したくもない……」
魔導将軍「魔王様に連れられて、生き残りの部隊を殲滅に行ったのだろう」
鴉「ああ!あれアンタだったのかい!」
側近「魔王様は俺の後ろで笑ってただけだがな!」
魔導将軍「あの程度、訓練に丁度良いと思ったんだろう」
魔導将軍「……大活躍だったそうじゃないか?」
側近「……だから、魔王様がなんもしてくんねーから……」
鴉「良いじゃないか、風の魔法使いこなせる様になったんなら」
鴉「魔王様もご安心だろうて」クスクス
側近「スパルタも良いところだぜ……魔物の群れの中に放りこまれたんだからな」
魔導将軍「側近たるもの、魔王様を守れるぐらいじゃないとな」
側近「……あいつは人間と魔族の共存を望んでるんじゃないのか?」
鴉「……そうだねぇ」
魔導将軍「……」
側近「……なんだよ」
鴉「いや……アタシらはね、魔王様の部下だからね」
魔導将軍「魔王様がお決めになられた事ならば、勿論、従うつもりだ」
側近「腹ん中は違う、って顔してやがんぜ、二人とも」
鴉「アンタはどうなんだい、側近」
側近「俺? なんで、俺……」
魔導将軍「お前、元人間だろう。率直に……どう思うのだ?」
側近「…… ……正直に言えば、どうでも良い」
鴉「……」
側近「魔王様の決めた事なら、ってのはアンタ達に同意。だがな……」
魔導将軍「だが?」
勇者「俺に魔王になれ……と言うのか!」
65 :1 ◆wlrXk.nKvWpx []:2013/07/05(金) 10:58:55.76 ID:iGy6aiyXP
側近「平穏無事、が一番だとは思うぜ。いくら俺が今……魔族だからって」
側近「人間を意味も無くぶち殺してやろうなんて思わネェもん」
魔導将軍「ふむ」
側近「共存して、うまくやってけるならそれが一番だろうが」
側近「……そう、旨くはいかんだろ。簡単には、な」
鴉「…… ……そうだねぇ」
側近「魔王様は、俺にその橋渡し役になって欲しい、みたいな事言ってたけどな」
魔導将軍「それは……」
側近「あ、いっとくけど断ったからな」
鴉「え!?」
側近「時至れば、命令ならば聞いてやる……が、今はそんな時期じゃネェだろ」
側近「……先代の爪痕は深い」
魔導将軍「そう……だな」
魔導将軍「お世継ぎの件も考えねばならんしなぁ」
側近「……魔王の子は魔王、ね」
鴉「そんな、カエルみたいにお言いでないよ……」
側近「つか、アンタら何か用事あったんじゃねぇの」
側近「こんなところで油売ってて良いのかよ」
鴉「ああ、そうだった……行こうか、魔導将軍」
魔導将軍「側近、お前、それとなく魔王様に聞いておいてくれ」
側近「あん?」
魔導将軍「お世継ぎの件だ」
側近「えええええええええええええええええ」
鴉「そうそう。さっさと決めないと、アタシが襲っちまうよ、てね?」クスクス
側近(今更……)
鴉「……何だい、その顔」
側近「何でもねぇよ!じゃあな!」スタスタ
側近(アブねえアブねえ……逃げるが勝ち!)
側近(……ん?)
側近(庭に、誰か…… ……魔王様か)
側近(ん、あっちは…… ……見た事、ネェな)
勇者「俺に魔王になれ……と言うのか!」
66 :1 ◆wlrXk.nKvWpx []:2013/07/05(金) 11:05:52.31 ID:iGy6aiyXP
魔王「ん……側近!」
側近「おう…… ……えーと、こんにちは?」
??「こんにちは」ニコ
側近(美少女!黒髪に青い瞳……清楚……良いねぇ)
魔王「これは后と言う……丁度良かった、側近」
側近「何だよ」
魔王「私はこれから、鴉と魔導将軍と会議でな」
魔王「后に城の中を案内してやってくれないか」
側近「あ、ああ……別に構わないけど」
后「側近、て言うのね。宜しくお願いします」
側近(……鴉も、見た目だけは綺麗だけど、どっちかって言うと)
側近(肉食動物系……鴉なのに)
側近(癒されるなぁ……)
魔王「では、頼むな、側近」スタスタ
側近「ええ、と……后さん。じゃあ、まず……」
后「あ、側近、見て!蝶々!」
側近「え? ……ああ、本当だ」
后「……取ってくれる?」
側近「ん?ああ、良いよ……」タタタ
后「…… ……」ニッ
側近「よ……、と……ッ」グラッ
側近「!? うわあああああ!?」バタン!
后「あはははは!引っかかった!」クスクス
側近「……へ?」
側近(……あ、草……結んで……)
側近(……ッ 前言撤回!)
勇者「俺に魔王になれ……と言うのか!」
67 :1 ◆wlrXk.nKvWpx []:2013/07/05(金) 11:14:07.80 ID:iGy6aiyXP
……
………
…………

側近「…… ……」ムクリ
勇者(すうすう)
側近「……夢見悪いなぁ」ガックリ
側近(勇者は、まだ寝てる、か……今、何時だ?)スタスタ
側近(にい、さん……窓は、ここか)シャッ
側近(……小鳥の声が聞こえる。早朝、かな)
側近(目、覚めちまったな……)
勇者「……ん、側近?」
側近「悪い、起こしたか……まだ早いだろう」
勇者「カーテン開けたら眩しいって……良いよ、起きる」
側近「興奮して眠れなかったのか? ……ガキだな」ハハ
勇者「そんなんじゃ無い……女剣士は、朝来るんだろう?」
側近「流石にまだ来ないだろうけどな」
勇者「……あー……飯作るわ。ちょっと早いけど、良いだろう」
側近「おう、悪いな…… ……勇者」
勇者「ん?」
側近「光の剣、持って行けよ」
勇者「え!?」
側近「……城に泊まるつもりだからな。置きっぱなしは不用心」
勇者「あ、ああ……そういう事か……お泊まりか、そっか」
側近「嬉しそうだな」
勇者「そりゃね。このベッドよりふかふかだろうしさ」
側近「……コレも王様が揃えてくれた奴だぜ」
勇者「気分だよ気分!」
側近「……お前、14だって言ってたな」
勇者「ん?ああ……そうだよ」
側近「大きくなったなぁ……」
勇者「やめろよ……なんか恥ずかしい」
勇者「改まって何だ」
側近「……いや」
勇者「ほら、飯食えよ!」
勇者「俺に魔王になれ……と言うのか!」
68 :1 ◆wlrXk.nKvWpx []:2013/07/05(金) 11:22:03.79 ID:iGy6aiyXP
側近(照れてやんの)プ
勇者「……何笑ってんだよ」
側近「いやいや……」
勇者「弟王子に会うのも久しぶりだな」
側近「そうだなぁ……ああ、そうだ」
側近「女剣士がローブ持ってくるって言ってたから」
側近「ちゃんと被っておけよ。脱ぐなよ」
勇者「大丈夫だって」
側近「……そっか。もう14歳か」
勇者「さっきから何なんだよ」
側近「……勇者」
勇者「だから……」
側近「お前、16になったらこの街を出ろ」
勇者「……え?」
側近「昨日もちらっと話しただろう。自分で仲間を見つけ」
側近「守りたい物を見つけ……そして」
側近「……魔王を、倒せ」
勇者「…… ……」
側近「ずっと話してきたはずだ。お前は……」
勇者「『光に導かれし運命の子』」
側近「……そうだ」
勇者「わかってる……勇者は、魔王を倒す」
側近「…… ……」
勇者「大丈夫だ、側近。俺は、魔王を倒す。この美しい世界を守る為に」
勇者「産まれた……勇者だ」
側近「……拒否権の無い選択をさせてすまん」
勇者「小さい頃からすり込んできたくせに、何言ってんだよ、今更」
側近「魔王……は、強い。だが……」
勇者「……心配するな。俺は勇者だ」
側近「心強い台詞だ……だが、驕るなよ」
勇者「……うん」

コンコン
勇者「俺に魔王になれ……と言うのか!」
69 :1 ◆wlrXk.nKvWpx []:2013/07/05(金) 11:29:11.71 ID:iGy6aiyXP
側近「来た……かな。はい」
女剣士「勇者様、側近様、失礼致します」カチャ
女剣士「……お迎えに上がりました。どうぞ、このローブを……」
勇者「……ありがとう」
側近「勇者、ちゃんと持ったな?」
勇者「ああ」
女剣士「では、行きましょう。王様方がお待ちです」

……
………
…………

ザワザワ……

勇者「凄い人だな……」
側近「ちゃんとフード被っとけよ」
勇者「大丈夫だ……女剣士は何処に行ったんだ?」
側近「し……ッ ここは大広間、だったな?」
勇者「うん」
側近「……人はどれぐらいいるんだ」
勇者「わかんないよ、一杯……王様は何処から……」

カチャ

盗賊「静まれ! ……待たせたな、皆の者!」

シーン……

勇者「王様だ……!階段の上だ!」
側近「小さい声で!」
盗賊「今日は我が弟王子の為に集まって貰って恐縮致す」
盗賊「生まれつき身体の弱い弟王子も、今日で晴れて12の誕生日を迎える事となった」
盗賊「始まりの街、始まりの大陸に住む全ての者が」
盗賊「今日という日を、街中で祝ってくれると言うのは、母として本当にありがたい」
盗賊「今から丸二日、飲むも食うも自由!無礼講にて楽しんで貰いたい!」

ワアアアアアアアアアアアア!

盗賊「……の、前に。話しておきたい事がある……悪いが、少し時間をくれ」
盗賊「……入れ」

スタスタ……

勇者「あ……鍛冶師様、女剣士……王子と、弟王子が出て来た」
勇者「俺に魔王になれ……と言うのか!」
70 :1 ◆wlrXk.nKvWpx []:2013/07/05(金) 11:37:49.46 ID:iGy6aiyXP
盗賊「まず、一つ目!」
盗賊「……弟王子も無事、この日まで育った」
盗賊「これをもって、我が国の時期王の座につく者を、弟王子と定める事とする!」
側近「何!?」
勇者「側近、シッ……!」
盗賊「これは王子のたっての願いでもある。同時に、王子を正式に」
盗賊「我が王国騎士団の一員と認める!」
鍛冶師「これだけは心にとめて置いて欲しい」
鍛冶師「王子といえど、騎士団の一騎士に変わりは無い」
鍛冶師「規律通り、目上の者への態度、言葉遣い、全て従うのが道理」
鍛冶師「一騎士として以上も以下の扱いもしない様、お願いするよ」
鍛冶師「王子、良いな?」
王子「はい!宜しくお願い致します!」
勇者「あいつ……ッ内緒、て……これか……!」
盗賊「二つ目!」
盗賊「……勇者様、こちらへ」
勇者「!」

ザワザワ……
ユウシャサマ?ユウシャサマ、キテルノ?

鍛冶師「側近様もご一緒に、どうぞ?」
側近「……勇者、ローブを取れ。それから……手を」
勇者「あ、ああ……」ギュ

キンノカミ……キンノヒトミ……アノコダ……
ユウシャ……ユウシャサマダ……!!
ユウシャサマ、ユウシャサマ!!

側近「盗賊……お前……」
盗賊「悪い様にはしねぇよ?」ニッ
勇者「王様……あの……」
盗賊「久しぶりだな、勇者。光の剣は持ってるか?」
勇者「あ、ああ……」
盗賊「良し……高く掲げて。繰り返して……」
勇者「俺に魔王になれ……と言うのか!」
71 :1 ◆wlrXk.nKvWpx []:2013/07/05(金) 11:50:31.68 ID:iGy6aiyXP
勇者「……えッ!?そんな事言うの!?」
鍛冶師「大丈夫大丈夫」
女剣士「静まれ!」

シーン……

勇者「え、えっと……『私は、光に導かれし運命の子、勇者だ!』」
勇者「『勇者は、必ず魔王を倒す! ……この、光の剣に誓って!』」

ワアアアアアアアアアアアアア!

盗賊「……上出来」ニッ
盗賊「静かに…… しかし、見たとおり、この光の剣は」
盗賊「ボロボロだ……魔王との戦いの凄まじさを物語るが如く!」
側近(……出任せを……いや、出任せでもないか……うーん……)
勇者「き、き、き……ッ きんちょ、した……ッ」
女剣士「深呼吸しな、お疲れさん」
側近「静かにしなさい君達……」ハァ
盗賊「騎士団は南の島に、稀少な鉱石とやらが眠る洞窟を発見した」
盗賊「が、岩礁に囲まれた小さな島の洞窟には、恐ろしい三つ頭の化け物が」
盗賊「居ると言う……そこで」
盗賊「近々、勇者様と我が騎士団で、この洞窟へと向かう事にした!」
鍛冶師「僕の元で鍛冶を学んでいる者も、忙しくなるだろうから」
鍛冶師「そのつもりでね」
側近「……お前、そんな事やってたの」
鍛冶師「魔法剣に触れるチャンス、僕が手放すと思った?」
側近「…… ……」
女剣士「騎士の中で我こそはと思う者!志願する者は三日以内に」
女剣士「志願書を出す様に!中から精鋭を選んで10人、連れて行く!」
女剣士「……王子、お前も行きたければ、私に勝てるぐらいに、強くなれ!」
王子「…… ……はい!」
盗賊「三つ目!最後だ」
盗賊「これに伴い、騎士では無い者、この島の者で無い者に向けて」
盗賊「冒険者登録書を作る事にした。身元の明らかな者であれば」
盗賊「誰でも利用できる様するつもりだ」

ワアアアアアアアアアアアアアア!

鍛冶師「……さて、と。長くなったけれど」
勇者「俺に魔王になれ……と言うのか!」
72 :1 ◆wlrXk.nKvWpx []:2013/07/05(金) 11:57:49.16 ID:iGy6aiyXP
鍛冶師「今日は楽しんで、飲んで食べて。騒いで」
鍛冶師「良い日を過ごしてくれ。あ、でも……もめ事は勘弁ね?」

ワアアアアアアアアアアア!
ユウシャサマ!ユウシャサマ!
オトウトオウジサマ!オメデトウゴザイマス!
ユウシャサマ、バンザイ!
ジキコクオウ、バンザーイ!

……
………
…………

側近「……もう、食えない」グタ
盗賊「小食だなぁ、側近は……」
鍛冶師「盗賊は二人産んでから、よく食べる様になったよね」
鍛冶師「……僕ももう、満腹」
盗賊「女剣士と、子供達は?」
鍛冶師「寝かしてくるって出て行ったキリだね」
側近「……しかしまぁ、とんでもない企みしてやがったな、お前は」
盗賊「この国に来た時に言ってただろ」
盗賊「……どんどん利用しろ、ってな」
側近「お前もだよ、鍛冶師……」
鍛冶師「さっき言った通り、さ」
側近「チャンスは手放さない、か……」
盗賊「……久しぶりだな。こうやって……話すの」
側近「そう、だな……最後、かもなぁ」
鍛冶師「何言ってんの」
側近「……16になったら、勇者は旅に出させる」
盗賊「伝えたのか」
側近「ああ、今朝な」
盗賊「…… ……そうか」
鍛冶師「君はどうするんだ、側近」
鍛冶師「この城で良ければ、部屋は用意するよ」
盗賊「そうだな。その目じゃ勇者がいなきゃ辛いだろう」
勇者「俺に魔王になれ……と言うのか!」
73 :1 ◆wlrXk.nKvWpx []:2013/07/05(金) 12:09:01.61 ID:iGy6aiyXP
側近「いや……俺は、魔王様の城へ戻る」
盗賊「……」
鍛冶師「……そう、か」
盗賊「なら、船の手配をさせるよ」
側近「いや……ああ、そう……か」
側近「……転移で戻ろうかと思ったんだがな」
盗賊「お前、それは……!」
側近「流石に、もう無理かもな」
鍛冶師「…… ……」
側近「必要そうならば、頼むよ。そういえば……船長は元気にしてる、のかな?」
盗賊「一回だけ来たな……まだ、勇者が小さい頃だ」
鍛冶師「とびきり上等な布を仕入れた帰りだとか言ってたかな」
側近「使用人ちゃんか……」
盗賊「たまには顔出せよ、とは言っておいたんだがな」
側近「……娼婦ちゃんが居るからなぁ」
鍛冶師「…… ……あそこは、相変わらず綺麗だよ」
側近「そっか……」
側近「……いや、しかし吃驚したぞ」
盗賊「ん? ……ああ」
鍛冶師「土下座されたからなぁ……」
側近「土下座!」
盗賊「ああ……王位は弟王子に譲る。だから僕を騎士団に入れてくれ、ってな」
盗賊「憧れなんだそうだ。女剣士が、さ」
側近「へぇ……まあ、望んだ事するのが、一番良いんだろうけどな」
鍛冶師「なあ、側近」
側近「ん?」
鍛冶師「旅立たせる、ってさ……どうするんだよ」
側近「ああ……丁度良いから、登録所とやらを利用させるかなぁ」
盗賊「まあ、それも勇者の望むとおりに、だ」
側近「…… ……そうだな」

カチャ

女剣士「やっと寝た!」
勇者「俺に魔王になれ……と言うのか!」
74 :1 ◆wlrXk.nKvWpx []:2013/07/05(金) 12:19:27.88 ID:iGy6aiyXP
盗賊「おう、お疲れ」
女剣士「あの二人、興奮しちまって寝ねぇんだよな」
側近「まあ、仕方無いさ。まだまだ子供だ」
鍛冶師「……その子供を、旅立たせようってんだから、ねぇ」
側近「俺が前魔王様んとこに行ったのもそんなもんだったかな」
盗賊「……随分、時間が経ったんだな」
鍛冶師「そうだよ……もう、側近達がこの街に来て……10年以上だ」
側近「色々あったな。色々……変わったし」
女剣士「…… ……」
盗賊「良し。アタシもそろそろ休むかな。弟王子、放っておけないし」
鍛冶師「そうだね、僕も……女剣士、後宜しくね」
側近「……なぁんか態とらしいねぇ」
盗賊「気のせいだよ。じゃあな」
鍛冶師「おやすみなさい」

カチャ、パタン

女剣士「…… ……」
側近「緊張してんのか?」
女剣士「流石に……そんな事ないさ」
女剣士「アンタが……色々、とか、さ。何か……寂しい事言うから」
側近「さっき、盗賊達には言ったんだけどな」
女剣士「16になったら旅に出す、か? ……勇者に聞いた」
側近「そうか……」
女剣士「良いと思うよ。アタシ達のお膳立て無しで」
女剣士「自分達の手で、道を切り開いて行かなきゃいけないんだ、あの子は」
側近「……ありがとう」
女剣士「側近は……魔王の城に戻るんだろう?」
側近「え?」
女剣士「……そんな気が、して」
側近「ああ……そのつもりだ」
女剣士「そうか…… ……」
側近「……お前、結婚しないの?」
側近「モテるらしいじゃないか。強くて、怖くて美しい女剣士様、てな」
女剣士「お前以外に言われてもなぁ」ハハ
側近「…… ……悪かったな」
女剣士「お前が……悪い訳じゃ無いさ」
女剣士「……こればっかりは仕方無い」
側近「…… ……ああ」
女剣士「傍で、お前と勇者を守れた。アタシはそれで幸せだ」
側近「洞窟には、何時発つんだ」
女剣士「もう暫く先だな。人員の選出もしないといけないしな」
側近「……俺も、行く」
女剣士「え!?」
側近「勘違いすんな、俺は流石にもう戦えないし……手を出すつもりはない」
側近「ま、回復要員だな」
女剣士「……そうか。助かる」
勇者「俺に魔王になれ……と言うのか!」
75 :1 ◆wlrXk.nKvWpx []:2013/07/05(金) 12:24:36.09 ID:iGy6aiyXP
側近「勇者の回復魔法も、まあ役に立つっちゃ立つけど」
側近「あいつはスタミナと魔力がなぁ」
女剣士「……もう少し、こっちに通わす事は可能か?」
側近「ん?」
女剣士「ああして、街の人達に顔も見せた事だしな」
女剣士「アタシが通って行くにも限界はある。王子と一緒なら」
女剣士「お互いにライバル視してるし、伸びるんじゃないかと思ってな」
側近「ああ、成る程な……そうだな、良いんじゃないか?」
側近「明日にでも、俺から話しておくよ」
女剣士「ああ、頼む…… ……」
側近「…… ……女剣士?」
女剣士「……これで。良かった……んだよな」
側近「…… ……」
女剣士「……部屋まで、送る。もう、休んで、側近」ギュ
側近「……ああ」

……
………
…………

王子「……行った?」
勇者「行った、な」
王子「寝れないよな」
勇者「ああ……良し」ガバ
王子「なあ、もう一回見せてくれよ」
勇者「ん?ああ……何回目だよ」
王子「……綺麗、だな」
勇者「俺に魔王になれ……と言うのか!」
76 :1 ◆wlrXk.nKvWpx []:2013/07/05(金) 12:26:07.00 ID:iGy6aiyXP
おひるごはーん
勇者「俺に魔王になれ……と言うのか!」
78 :1 ◆wlrXk.nKvWpx []:2013/07/05(金) 13:07:30.70 ID:iGy6aiyXP
勇者「……光の剣、か」
王子「でもこれ……刃が欠けてるんだよな」
勇者「何でだかは俺も知らないんだ」
勇者「……俺の剣だって、側近はずっと言ってたけど」
勇者「魔法剣だって言うけど、これじゃ……何も出来ない」
王子「だよな……洞窟、行けると良いな……いや」
王子「絶対、行くからな!」
勇者「おう!」
王子「明日から、特訓だ……ッ」
勇者「良いよな、お前は。毎日女剣士に鍛えて貰えて」
王子「勇者もお願いしてみれば良いじゃないか」
勇者「側近が駄目って言うよ、多分……」
王子「俺も一緒に頼んでやるよ!」
勇者「……うん!」
王子「でさ、一緒に洞窟行って……」
王子「絶対、お前の剣、治そうぜ」
王子「お父様は腕の良い鍛冶師だ。大丈夫だ!」
勇者「そう、だな。そうだよな!」
勇者「それで……俺は、絶対に魔王を倒す」
勇者「この国も、全部……守ってやるから」
王子「俺は、騎士団に入っちゃったからついて行けないけど」
王子「お前が魔王を倒しに行ってる間は、この国、俺が守るからさ」
勇者「ああ。約束な!」ガシ
王子「約束だ!」ガシ

……
………
…………

側近「あれ……魔導将軍?」
魔導将軍「……ああ、側近か」フラフラ
側近「どうしたんだよ、お前……フラフラじゃないか」
側近「大丈夫か!?」
魔導将軍「……そっくりその侭返す。何でお前はずぶ濡れなんだ」
勇者「俺に魔王になれ……と言うのか!」
79 :1 ◆wlrXk.nKvWpx []:2013/07/05(金) 13:17:26.07 ID:iGy6aiyXP
側近「……扉開けたらバケツが振ってきたんだよ」
魔導将軍「そうか……私は、鴉の酒に付き合わされただけだ」
側近「后様、妊娠したって喜んでたからなぁ……」
魔導将軍「悪戯も収まれば良いがな……」
側近「で、魔王様は?」
魔導将軍「寝ていらっしゃるだろう、もう」
側近「もう!?」
魔導将軍「后様の傍から離れないからな」
側近「……何時悪戯仕掛ける暇があるんだ、あの女は……ッ」
魔導将軍「大人しそうな顔して、いやはや……」
側近「しかし、なぁ……鴉のやけ酒も連日だな、ここんとこ」
魔導将軍「案外純情な女だぞ、あれは」
側近「……あれが?」
魔導将軍「……まあ」
側近「裸で、魔王様の上に乗る様な、女が?」
魔導将軍「…… ……忘れてやれって」
側近「無理だ!その所為で俺、魔王様と寝る羽目になったんだぞ!?」
魔導将軍「…… ……お世継ぎが産まれれば、落ち着いてくれると思いたいがな」
側近「本当に、それ、願うよまじで……」
魔導将軍「……」
側近「……」
魔導将軍「……湯でも浴びて、休むとする」スタスタ
側近「おう。俺も……」スタスタ
側近(本気……ねぇ?愛……アイ、ね)
側近(魔王様もあの女の何が良いんだかなぁ……まあ、そりゃ見た目は可愛いけど)ツルッ
側近「……おわッ ……ぶ、ねええええ!」
側近「……なんだ、これ……うわ、酒くさッ」キョロキョロ
側近「あ……ッ 鴉!コラ!」
鴉「あー?」
側近「…… ……目、座ってるし」ハァ
勇者「俺に魔王になれ……と言うのか!」
80 :1 ◆wlrXk.nKvWpx []:2013/07/05(金) 13:24:24.84 ID:iGy6aiyXP
鴉「コレが、飲まず、にぃ……やってられるかあああああああ!」
側近「ウルセェ……ちょ、酒瓶振り回すな!」
側近「ああ、もう……水と拭くもの持って来るから!そこ動くなよ!」タタタ
鴉「…… ……」ヒック
鴉「魔王さまぁ……」グビ
鴉「…… ……」

タタタ

側近「よ、いしょ……っと」フキフキ
側近「ほら……ああああ、もう。瓶を煽るなって……ほら、飲め、水」
鴉「いらなぁい……」
側近「明日二日酔いで死ねるぞ、お前……」
鴉「……なーんで、さぁ、后様なのかねぇ」
側近「俺が聞きたいよ……」
鴉「でもさ、アタシ、さぁ……后様、好きなんだよねぇ……困った事に……」
側近「……」
鴉「お世継ぎ、かぁ……おめでたい、けど、サァ……」
側近「好きならさぁ、酒振りまきながら飲むのやめろって」
側近「后様が滑って転んだら、どーすんだ?」
鴉「…… ……御免」
側近「ん」
鴉「……狼将軍、知ってるぅ?」
側近「あの大男か……ああ」
鴉「今日もまた、怒鳴り込んで来てさぁ?」
側近「まだ諦めてないのか……」
鴉「娘を娶れ!側室で良いから!だってー」
鴉「側室だったら、アタシが居るっての!」
側近「おいおいおいおい……」
鴉「……でも、さ。后様しか目にない魔王様だから、アタシ……」
鴉「前より、魔王様が好きなんだよねぇ……」
勇者「俺に魔王になれ……と言うのか!」
81 :1 ◆wlrXk.nKvWpx []:2013/07/05(金) 13:32:55.86 ID:iGy6aiyXP
側近「さっっっっっぱりわかんねぇ」
鴉「……ねぇ。アタシも……わかんない……」スゥ
側近「おい、鴉? ……寝やがった」
側近「……」ハァ
側近(愛だの、恋だの……ああ、面倒臭い)ズルズルズル
鴉「……うぅん」ゴン
側近「あ…… ……」
鴉「…… ……」
側近「……しゃあねぇな」ダキ
側近「ええっと……鴉の部屋は……」スタスタ

……
………
…………

使用人「ふぅ……出来た」
使い魔「使用人様、何を作ってるんですか?」
使用人「前の魔王様のマントは、勇者様に渡してしまったので」
使用人「……あんまり、上手に出来ませんでしたけど」
使い魔「充分だと思いますよ……余り、どうします?」
使用人「どこかへしまって置いて下さい。また、何かに使います」

コンコン

使用人「はい?」
使い魔「使用人様、沖の方に船が見えます」
使用人「船長さんですね……今回は早かったですね」
使い魔「馬車の用意を致しましょうか?」
使用人「ええ、お願いします。後、ローブを持ってきて下さい」
使い魔「はい」
勇者「俺に魔王になれ……と言うのか!」
82 :1 ◆wlrXk.nKvWpx []:2013/07/05(金) 13:40:10.50 ID:iGy6aiyXP
使用人(随分……大きくなったんだろうな、娘ちゃん)
使用人(本当なら、城へお招きしたいけれど……)
使用人(…… ……贅沢は、言えない)
使い魔「使用人様、準備が出来ました」
使用人「……ローブを此方へ」
使い魔「はい」
使用人「では……行きましょうか。お願い致しますね」

……
………
…………

船長「よう、久しぶりだな」
使用人「何時もすみません、船長さん」
船長「ほらよ、上等な布……何回目だ?」
使用人「10回目、ですかね……もう、10年です」
船長「まだ作ってんのか、カーテン……」
使用人「この前のは魔王様のマントを作りましたよ」
使用人「城中のカーテン、作っちゃいましたからね」
船長「……他に何か、やる事ないのか」
使用人「庭もお花で一杯になってしまいましたからね……」
船長「魔王は……どうだ?」
使用人「何も……ずっと、眠られて居ますよ」
船長「そうか……」
使用人「娘ちゃん、大きくなったでしょうね」
船長「ああ……もうすぐ、15になる」
使用人「そうですか……魔法使いさんは?」
船長「あいつも元気にしてるよ」
使用人「やはり、まだ船に……?」
船長「ああ……死んだら、女海賊と同じように、水葬にしてくれ、ってな」
船長「……最近はそんな事ばっかいってら」
船長「だからジジィ呼ばわりされんだよ。俺より若いのにな」
勇者「俺に魔王になれ……と言うのか!」
83 :1 ◆wlrXk.nKvWpx []:2013/07/05(金) 13:44:41.75 ID:iGy6aiyXP
使用人「船長さんも……白髪、増えましたね」
船長「一年に一回ぐらいだからなぁ、此処に来るのも……」
使用人「勇者様は……」
船長「それも、変わりないさ。一度……お前さんが、一番最初に」
船長「布を頼んだ時に始まりの城に寄ったきりだ。会ってネェ」
使用人「そうですか……」
船長「だが、そろそろ……娘も15歳だ。勇者も同じぐらいだろう」
船長「噂話は耳に入ってくるしな……一度、寄ろうと思ってる」
使用人「そうですか……」
船長「……悪いな。無理言って」
使用人「何が、です?」
船長「顔、隠してくれ、なんてさ」
使用人「……いいえ。娘ちゃんの事とか、考えれば当然です」
船長「しかしまぁ、お前さんはやっぱり……変わらない、んだな」
船長「声も……その侭だ」
使用人「……立たせっぱなし、も気が引けます」
使用人「手短に、お聞かせ願えますか、その……噂話」
船長「ああ……そうだな。あんまり船も待たせられネェ」
勇者「俺に魔王になれ……と言うのか!」
84 :1 ◆wlrXk.nKvWpx []:2013/07/05(金) 13:45:30.61 ID:iGy6aiyXP
おむかえー!


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