トップページ > ニュー速VIP+ > 2013年05月29日 > rm/OF9w8P

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名も無き被検体774号+
1 ◆wlrXk.nKvWpx
高校1年生の家庭教師やるんだが・・・
魔王「私が勇者になる……だと?」 【2】

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高校1年生の家庭教師やるんだが・・・
26 :名も無き被検体774号+[]:2013/05/29(水) 08:55:05.85 ID:rm/OF9w8P
苦手意識を持ってしまった時点でアウトだったな、今思えば。
算数レベルで躓いて、以後数字怖い、どうせわからないし、状態になった。
上にもあったけど、どこがわからないのかすらわからないんだよね。
家庭教師の先生は頭の良い人だったので
なんでわからないのかわからなかったぽくて、苦労させたと思う。
が。結局成績も上がらなかったな。
申し訳ない話
魔王「私が勇者になる……だと?」 【2】
722 :1 ◆wlrXk.nKvWpx []:2013/05/29(水) 09:17:03.53 ID:rm/OF9w8P
おはよ!
お迎えまで!

>>719
ご、ごごごごご、ごめん!
私が盗賊のと勘違いしたorz

>>660

姫「この石は……水の力よ」
使用人「……彼女の加護は水では無かった筈、ですよね」

姫「この石は……炎の力よ」
使用人「……彼女の加護は炎では無かった筈、ですよね」

ほんっとーにご免なさいorz

>>720
このスレだけでは終わらない気がします、そもそも……(・△・)
魔王「私が勇者になる……だと?」 【2】
723 :1 ◆wlrXk.nKvWpx []:2013/05/29(水) 09:34:56.55 ID:rm/OF9w8P
船長「あー……」
鍛冶師「船長!」
女剣士「ど、どういう事なんだ!?」
船長「長々と説明するのは面倒臭ェ」
鍛冶師「船長!!」
船長「……し、あれだ。何処まで話して良いか解らんから、まあ」
船長「掻い摘んで話すとだな」
鍛冶師「彼女は……『説明を任せて良いか』と言ってたじゃないか」
船長「……俺に詳しく話せって?」
女剣士「どうして……今の奴は急に消えたんだ!?」
女剣士「あんな魔法は見た事が無い!」
船長「ちょ、黙れお前ら!解った、解ったから!」
鍛冶師「……」
女剣士「……」
船長「ってもナァ、どこから話して良い物やら……」
鍛冶師「彼女は……『魔王』がどうとか言っていたな」
鍛冶師「……魔王の手先、なのか」
船長「せめて仲間と言ってやれ」
鍛冶師「船長!魔王……魔王だぞ!?」
船長「鍛冶師、お前は……少年を知ってるだろう?」
鍛冶師「……? ……魔導の街から劣等種達を救った、港街の『勇者様』か」
鍛冶師「それが何だと……」
船長「その少年が、魔王だ」
鍛冶師「……は!?」
船長「信じられないと言うのなら、この話は終わりだ」
魔王「私が勇者になる……だと?」 【2】
724 :1 ◆wlrXk.nKvWpx []:2013/05/29(水) 09:45:07.70 ID:rm/OF9w8P
鍛冶師「……ッ」
女剣士「……船長、アタシはどうせ、難しい話は理解できない」
船長「あン?」
女剣士「できないし……港街とか、魔導の街とか、そもそもが良く解らない」
女剣士「一つだけ、聞かせて。側近は……今消えた、あいつの言ってた側近は……」
女剣士「アタシが、探してる側近なのか!?」
船長「……絶対とは言わんが、そうだろうな」
女剣士「……!」
船長「北の街に船が着いて、そこから降りてきた男、だろ」
女剣士「! 何で知って……」
船長「ありゃ俺の船だ。ついでがあったから乗せてやったのさ」
船長「で、その幼い主、ってのが……魔王の事だろう」
鍛冶師「魔王は……まだ子供なの?でも、少年って言うのは……」
船長「いや、そうじゃネェよ。女剣士に説明しようとして……そうなったんじゃネェの?」
女剣士「……先代から今の主まで、仕えていると聞いただけだ」
女剣士「アタシ達が勝手に……勘違いした、んだ」
船長「ま……そうだろうな」
鍛冶師「じゃあ、側近って言うのは……今の、彼女は……」
船長「人間じゃネェよ。魔族だ……二人とも、な」
女剣士「ま、ぞく……」
鍛冶師「……じゃあ、あの街は……港街は……いや……ッ」
鍛冶師「あの街の勇者が、魔王だって言うのか!?」
船長「さっきそう言っただろうが。落ち着け、鍛冶師」
魔王「私が勇者になる……だと?」 【2】
725 :1 ◆wlrXk.nKvWpx []:2013/05/29(水) 09:54:23.17 ID:rm/OF9w8P
女剣士「船長は魔王を知ってるのか」
船長「ん?まあ、そりゃ……」
女剣士「側近は今……魔王と一緒に居るんだな」
船長「ああ……そうだろうな」
女剣士「……」
船長「?」
鍛冶師「……」
船長「……なんだよ、二人揃って黙って。もう良いのか?」
女剣士「側近には何処に行けば会える?」
船長「……やめとけ」
女剣士「何で!」
船長「どうやって魔王の城に行くんだ?場所は知ってるのか?足はどうする」
女剣士「そ、それは、船で……!」
船長「俺は連れてはいかねぇぞ。そもそもお前、渡航代も無いだろうが」
女剣士「……ッ」
船長「俺にはやらなきゃならネェ仕事もある。お前さんをここまで連れてきたのは」
船長「ついで、だ。あんな場所で放って行く程薄情じゃネェからな」
船長「だがな、俺たちも商売でやってるんだ。聞いてたんだろうから、解るだろうが」
船長「使用人からもしっかり代金を頂戴した……俺たちも、食ってかなきゃならねぇ」
女剣士「……か、金があれば連れて行ってくれるのか」
船長「言っただろう。仕事がある。それが先だ」
女剣士「…… ……」
船長「この村から資材を運び、街を作らなきゃならネェ」
船長「使用人からの依頼もある……その後で、きっちり金を払うってんなら」
船長「そりゃお前さんの『依頼』だ」
女剣士「じゃあ……!」
船長「だが、その依頼を受けるかどうかは、わからんぞ」
女剣士「な、なんでだよ!」
魔王「私が勇者になる……だと?」 【2】
726 :1 ◆wlrXk.nKvWpx []:2013/05/29(水) 10:03:17.93 ID:rm/OF9w8P
船長「やめとけ、と言っただろうが……聞いてたんだろ?」
鍛冶師「魔王の世継ぎがどうとか、か」
船長「……」
鍛冶師「そんなにハッキリ聞こえた訳じゃないからあれだけど……」
鍛冶師「魔王は、死にかけてる、のか?」
船長「そうじゃ……いや、解らネェな。だが」
船長「人間が近づいて良い領域じゃネェってのは解るだろう」
鍛冶師「……うん」
女剣士「そんな!」
鍛冶師「でも、港街まで来るんだろう。今の……使用人?は」
女剣士「……!」
鍛冶師「三週間後、だったか」
女剣士「じゃ、じゃあその時に側近を連れてきて貰えば……!」
船長「いい加減にしろよ、お前はガキか!」
女剣士「!」ビクッ
船長「どうやって頼む?それも俺に『頼んでくれ』だろう!」
船長「会いたいのは解った。だがな」
船長「何でもかんでも、思った通りに行くと思うな!」
船長「世界はそんな、都合良く動いてくれネェんだよ!」
鍛冶師「せ、船長……!」
女剣士「……ッ」バタバタバタ……ッバタン!
鍛冶師「あ、女剣士……」
船長「放っておけ……甘いんだよ」
鍛冶師「……」
魔王「私が勇者になる……だと?」 【2】
727 :1 ◆wlrXk.nKvWpx []:2013/05/29(水) 10:16:51.18 ID:rm/OF9w8P
船長「ったく、俺は便利屋じゃネェよ……」
鍛冶師「……あの街の勇者てのは、少年……魔王、なんだな」
船長「あ?ああ……」
鍛冶師「姫、と言うのは?」
船長「魔王の嫁だよ」
鍛冶師「……でも世継ぎじゃ無い」
船長「そこら辺は盗賊にでも聞け」
鍛冶師「え!?盗賊も知って……ああ、そうか」
鍛冶師「……彼女も、勇者……魔王に救われた劣等種の一人、か」
船長「……」
鍛冶師「美しい世界を守りたい、か」
船長「結構しっかり聞いてるじゃネェか」
鍛冶師「必死に思い出してるんだよ」
鍛冶師「……教会を作るんだね?」
船長「あ?ああ……使用人からの依頼だからな」
鍛冶師「……」
船長「なんだよ」
鍛冶師「海賊さん達を手伝ってくる」
船長「は?」
鍛冶師「一人でも多い方が早く済むだろう?」
船長「そりゃそうだが……」
魔王「私が勇者になる……だと?」 【2】
728 :1 ◆wlrXk.nKvWpx []:2013/05/29(水) 10:22:43.61 ID:rm/OF9w8P
鍛冶師「女剣士の様子も見てくるよ」
船長「放っておけよ……ちょっと頭冷やさせろ」
鍛冶師「大丈夫」
船長「?」
鍛冶師「だから、さ。一人でも多い方が良いだろ?」スタスタ

パタン

船長「……なんか考えてやがる、な。あいつ……」
船長「ま、良い……」
船長(勇者、か)
船長(あの魔王を倒す、勇者?)
船長(できる訳が無い。そんな奴……現れるはずが……ない)スタスタ、パタン
船長「……おい、野郎共!」
海賊「あいよ、船長」
船長「こっちは俺がやる。資材の積み込み手伝ってこい」
船長「終わり次第出発だ!全速力で港街に戻るぞ!」

アイアイサー!

……
………
…………

女剣士(……側近が、魔族)
女剣士(あんだけ、強いんだ。魔王に仕える奴……)
女剣士(もう、会えないのか……!?)

カチャ
魔王「私が勇者になる……だと?」 【2】
729 :1 ◆wlrXk.nKvWpx []:2013/05/29(水) 10:28:47.46 ID:rm/OF9w8P
女剣士「!」
鍛冶師「あ、いたいた……何膝抱えてちっさくなってんの」
女剣士「鍛冶師か……放っておいてくれないか」
鍛冶師「会いたくないの?」
女剣士「……ッ 会いたいさ!だけど……!」
鍛冶師「方法が無い?」
女剣士「…… ……」
鍛冶師「そりゃね、そこでそうやってるだけじゃ、何時までたっても会えないよ」
女剣士「じゃ、じゃあどうしたら良いんだよ!アタシは、金も無いし……ッ」
鍛冶師「じゃあ、稼げば良いじゃん」
女剣士「どうやって……!」
鍛冶師「あのさ、自分で考えないと」
鍛冶師「そうやって誰かがやってくれるの待ってても、どうにもならないよ?」
女剣士「…… ……」
鍛冶師「お金が無かったら、稼げば良い。会いたければ会える方法を考えれば良い」
女剣士「……で、でも、どうやって……」
鍛冶師「僕は、応援するっていっただろ?」
鍛冶師「とりあえず……僕の手伝いをしてくれない?」
女剣士「え……?」
鍛冶師「船に港街の資材を積み込むんだ。行くよ」グイッ
女剣士「え、ちょっと!?」
鍛冶師「ほら、さっさとやればさっさと終わる!」
鍛冶師「そうすれば、早く出発できるよ」
女剣士「……」
鍛冶師「身体動かすのは得意だろう?」
魔王「私が勇者になる……だと?」 【2】
730 :1 ◆wlrXk.nKvWpx []:2013/05/29(水) 10:34:46.98 ID:rm/OF9w8P
女剣士「そ、そりゃそうだけど……」
鍛冶師「海の魔物にも襲われるんだ。君、腕に自信はあるんだろう」
女剣士「あ、ああ……だけど、アタシは……金が……」
鍛冶師「だから稼げば良いんだって。港街には三週間後、だっけ」
鍛冶師「……さっきの、使用人って子が来るんだ」
鍛冶師「そこで、側近に会える様に頼んでみれば良い」
女剣士「あ……!」
鍛冶師「時間は結構ある。港街の復興の手伝いと、船で戦闘の手助け」
鍛冶師「……ま、魔物退治は給料でるかわかんないけど」
鍛冶師「それから、僕の手伝い」
鍛冶師「……港街までの渡航代は、一端僕が立て替えておく」
女剣士「え?」
鍛冶師「早く終われば早く出発できるし」
鍛冶師「そうすれば、早く港街に着くだろ?」
鍛冶師「で……稼いだ分でさ、返してくれたら良い」
女剣士「……い、良いのか?」
鍛冶師「ああ。足りなければ、それは……僕の依頼分って事で良い」
女剣士「お前の……依頼、と言うのはなんだ?」
鍛冶師「僕も側近に会ってみたいんだ。話を聞きたい」
女剣士「え……?」
鍛冶師「まあ、使用人でも良いんだけどね」
女剣士「??」
鍛冶師「その話はおいおいするよ。とりあえず、さっさとやっちゃおう!」
女剣士「……あ、ああ!」

……
………
…………
魔王「私が勇者になる……だと?」 【2】
731 :1 ◆wlrXk.nKvWpx []:2013/05/29(水) 10:43:53.36 ID:rm/OF9w8P
使用人「……」シュゥン、スタ
姫「おかえりなさい、使用人」
使用人「姫様……ただいま、戻りました。が……あの、何を?」
姫「見ての通りよ。庭のお手入れ」
使用人「お体は……?」
姫「土いじりは、前に魔王がやってくれたわ。簡単な植え替えや選定ぐらいなら」
姫「大丈夫……疲れたら、休んでるし」
使用人「そう、ですか」
姫「……不思議ね」
使用人「え?」
姫「側近が持って帰ってくれた魔除けの石は割れてしまったのに」
姫「……魔王の魔力は、落ち着いている」
使用人「それでも……」
姫「ええ、解ってるわ。傍には寄らない、し……離れた部屋で大人しくしてる」
使用人「……はい」
姫「ごめんなさいね、無茶言って」
使用人「はい?」
姫「教会の事」
使用人「大丈夫ですよ。船長さんにしっかり頼んで来ましたから」
姫「そう……ありがとう」
使用人「陽が落ちれば冷えます。お部屋に戻られた方が……」
姫「そうね……今日はこれぐらいにしておくわ」
使用人「では、あの本お持ちしますね」
姫「……見つかった前編、ね」
使用人「ええ。まさか側近様が持って帰ってくるとは思いませんでしたね」
姫「盗賊が持ってたんですっけ……魔王が、持ち出してたのね」
魔王「私が勇者になる……だと?」 【2】
732 :1 ◆wlrXk.nKvWpx []:2013/05/29(水) 10:47:12.99 ID:rm/OF9w8P
使用人「明日、港街へ行ってきます」
姫「え?」
使用人「教会の完成まではもう少し掛かるでしょうが……」
使用人「魔除けの石を、作って頂いてきます」
姫「……貴女も、疲れているでしょうに」
使用人「名こそ頂きませんでしたが……側近様の変わりですから」
姫「……」
使用人「式を挙げるには、必要でしょう?」
姫「……そう、ね」
使用人「本を取りに行って参ります。姫様はお部屋でお待ちを」
姫「魔王に近づいて、大丈夫?」
使用人「側近様が戻られましたから大丈夫ですよ」
使用人「……本をお持ちしたら、食事の準備をしますね」
姫「ええ……解ったわ」
魔王「私が勇者になる……だと?」 【2】
733 :1 ◆wlrXk.nKvWpx []:2013/05/29(水) 10:48:03.89 ID:rm/OF9w8P
おむかえー!
んで、お昼ご飯!
魔王「私が勇者になる……だと?」 【2】
737 :1 ◆wlrXk.nKvWpx []:2013/05/29(水) 13:11:43.69 ID:rm/OF9w8P
……
………
…………

側近「チェックメイト」
魔王「ま、待て!」
側近「待たネェよ……お前、本当に弱いな」
魔王「糞……もう一回だ!」
側近「またぁ?」

コンコン、カチャ

使用人「失礼致します……何やってるんです?」
側近「おう、使用人ちゃんか」
魔王「ほら、側近早く!」
使用人「……お食事、お持ちしましたけれど」
使用人「飯だってよ、魔王様」
魔王「……食ったらもう一度だ」
使用人「チェス、ですか……」
側近「いやぁ、魔王様……びっくりするぐらい弱くてな」
魔王「うるさい!」
使用人「暢気ですね……ああ、そうだ側近様」
側近「いや、だってやる事無いんだもん。ん?」
使用人「持ち帰られた本、お借りしてよろしいですか?」
側近「ああ、良いだろう……なあ?」
魔王「ん?ああ……好きにしろ。使用人が読むのか」
使用人「私も拝見しますが……姫様が」
側近「そりゃ、暇つぶしも必要だわな」
使用人「それから、私は明日港街に向かいます」
魔王「さっき帰ったばかりだろう?」
魔王「私が勇者になる……だと?」 【2】
738 :1 ◆wlrXk.nKvWpx []:2013/05/29(水) 13:16:53.66 ID:rm/OF9w8P
使用人「ご存じでしたか」
魔王「気配を感じたからな」
側近「船長には無事に会えたんだろ?」
使用人「はい。三週間位で、港街に戻ると言うお話でした」
魔王「明日、は何故だ?」
使用人「魔除けの石を準備して頂こうかと」
使用人「後……諸々」
魔王「そうか」
側近「玉座の間の奥の部屋の様子も見ておいてくれるか?」
使用人「はい……準備は整えておきます」
魔王「……姫の様子はどうだ」
使用人「庭いじりをされて居ましたよ」
魔王「そうか……何か必要なものがあれば、揃えてやってくれ」
使用人「はい。では失礼致します」
使用人「お食事が済んだ頃に、また参ります」
使用人「……本、お借りします」

スタスタ。パタン

側近「……甘やかし過ぎじゃネェの。今に始まった事じゃ無いけど」
魔王「姫か」
側近「他に誰が居るの」
魔王「仕方あるまい。あの……エルフの森の傍で、会ってしまったからな」
側近「惚れるなよ、て何度も言っただろ?」
魔王「私が勇者になる……だと?」 【2】
739 :1 ◆wlrXk.nKvWpx []:2013/05/29(水) 13:28:43.24 ID:rm/OF9w8P
魔王「阿呆。そんなんじゃ無いって言ってるだろう」
側近「じゃあ、何なんだよ」
魔王「……なんだろうな」
側近「好きなんじゃ無いのか?そりゃ、最初は利用するつもりだったのかもしれんが」
側近「……妻の座に、今……態々、つける理由は何なんだよ」
魔王「姫は、私の為に嘘を吐いた」
側近「ん?」
魔王「エルフは嘘を吐けない。本当になってしまうから」
側近「……」
魔王「魔導の街で、盗賊に問われた時に」
魔王「あいつは、怪しまれない為に……私達は夫婦だと。そう言ったんだ」
側近「だから、叶えてやらなけりゃならん、てか?」
魔王「姫は大事な存在だ。だが……それが愛かと問われると肯定はできん」
側近「否定もできない、てか」
魔王「できるだけの事はしてやりたい。巻き込んでしまった責任はあるだろう」
側近「向こうも好きでついてきたんだろ。責任は半々じゃね」
魔王「……反対なのか?」
側近「そうじゃネェよ。言っても聞かない、てのも解ってるけどな」
側近「お前の命令は絶対だ、魔王様」
側近「それが、俺の意思だ。使用人ちゃんも同じだと思うぜ?」
魔王「……おかしな話だ」
側近「ん?」
魔王「元人間のお前達が……私の一番傍に居る、とはな」
魔王「私が勇者になる……だと?」 【2】
740 :1 ◆wlrXk.nKvWpx []:2013/05/29(水) 13:39:21.65 ID:rm/OF9w8P
側近「……」
魔王「物心つく頃には、お前が居たからな」
魔王「まさか元人間だとは思わなかったが」
側近「お前は本を読むのも好きだったしな。何時か聞いてくるだろうと思ってたんだよ」
側近「それが、俺に回復されても『ありがとう』だけだしなぁ」
魔王「側近は側近だからな。元が人間であろうが、何だろうが別に気にならん」
側近「……そうか」
魔王「一ヶ月、程か」
側近「ん?」
魔王「……姫と、港街に出向くまで、だ」
側近「それまで、無茶はすんなよ。折角なんだから」
魔王「解ってる」
側近「……こんなのんびり出来る様になる時が来る、方が」
側近「俺にはびっくりだよ」
魔王「何時も忙しそうだもんな、お前」
側近「誰の所為だと思ってんだよ!」
魔王「親父も、一緒だったか?」
側近「……俺に勝ったら教えてやるよ。ほれ」
側近「もう一回勝負するんだろ?」
魔王「良し……次は負けんぞ!」

……
………
…………

姫(光に選ばれた運命の子、勇者……が、魔王を倒すお話、ね)ペラ
姫(結構なボリュームがあるのね……全部読むのは、時間が掛かりそう)ペラ
魔王「私が勇者になる……だと?」 【2】
741 :1 ◆wlrXk.nKvWpx []:2013/05/29(水) 13:53:20.54 ID:rm/OF9w8P
姫(……『少年は、王の部屋と言うには粗末な装飾で飾られた部屋へと通された』)
姫(『道中、ちらと見た外観も、お世辞にも立派とは言えず、内部の廊下も』)
姫(『豪華と言うには物足りない物だった。塵一つ落ちていないのは流石、掃除が行き届き』)
姫(『清潔に保たれている様子は見て取れたが、これが所謂王城かと思うと』)
姫(『少年の心に、小さな不安が浮かぶのも無理はなかった』……)

コンコン

姫「はい?」
使用人「失礼致します、姫様」カチャ
姫「ああ……もう、行くの?」
使用人「ええ、何かご用はありますか?」
姫「いいえ……大丈夫よ。ある程度の事は自分でするわ」
使用人「食事の支度などは、使い魔に言いつけてあります」
使用人「数日で戻るつもりですが……」
姫「解ったわ……私は、この本読んで暇つぶしてる」
使用人「……雨、早くあがると良いですね」
姫「そうね。そしたら、庭に出れるんだけど」
使用人「なるべく早く、戻ります。くれぐれも無理はなさいません様に」
姫「ええ……気をつけて行ってらっしゃい」
使用人「はい。それでは失礼致します」

カチャ……パタン

姫「……」
姫(どこまで読んだかしら……ええと)
姫(『少年は先日、15歳の誕生日を迎えたばかりだった』)
姫(『母親手作りのケーキと、普段より贅沢な食事。そして』)
姫(『笑顔で告げられる、お誕生日おめでとうの言葉が少年の心を満たした』)
姫(『母親から常に言い聞かされてきた、勇者の二文字も』)
姫(『この時の少年には、誇らしく感じられるばかりだった』)
魔王「私が勇者になる……だと?」 【2】
742 :1 ◆wlrXk.nKvWpx []:2013/05/29(水) 14:19:46.40 ID:rm/OF9w8P
……
………
…………

シュウン……スタ!

使用人「ここは……」キョロ
使用人(ああ、港の外れ……ですか)
使用人(丘の上……と、側近様言ってましたね)スタスタ
娼婦「こちらでよろしいですか、神父様」
神父「ええと……はい、そうですね。後……む?」チラ
神父「……!」
使用人「……」ペコ。スタスタ
娼婦「まあ、少女……いえ、使用人さん、でしたね、今」
使用人「お久しぶりです。娼婦さん」
神父「使用人……さん、貴女が、ですか……」
使用人「貴方が、魔除けの石を作られたのですね?」
神父「側近さんから、お聞きになった、のですね」
使用人「はい……使用人と申します」
神父「元人間で……今は魔族になられたと言う」
神父「……魔導の街の出身の方」
使用人「……そうです」
神父「…… ……神父、と申します」
娼婦「どうしたのですか、使用人さん……今日は、側近さんは?」
使用人「側近様は……魔王様の傍から離れられません」
娼婦「え?」
使用人「……盗賊さんは、どこにいらっしゃいますか?」
娼婦「街の方に居ると思います。毎日……忙しく走り回っていらっしゃいます」
娼婦「それより、あの……魔王様は、どう……?」
使用人「……ご説明の前に、盗賊さんを呼んできて頂けませんか?」
魔王「私が勇者になる……だと?」 【2】
743 :1 ◆wlrXk.nKvWpx []:2013/05/29(水) 14:26:24.67 ID:rm/OF9w8P
使用人「お使いだてして申し訳ありませんが、余り……私の様な者が」
使用人「街へ行かない方が良いでしょう」
神父「私が、呼んで参りましょう」
娼婦「あ、いえ、私が……」
神父「……お知り合い、でしょう?」
神父「どうぞ、お話していてください。すぐに戻りますよ」スタスタ
使用人「ありがとうございます……すみません」
娼婦「あ、あの……」
使用人「今日は、お願いがあって参りました。神父さんと……娼婦さんに」
娼婦「私にも、ですか?」
使用人「詳しくは、二人が戻られ次第お話します」
使用人「……お加減は、如何です?」
娼婦「……特に、変わりはありませんよ。皆様、良くして頂いて居ます」
使用人「そうですか……良かった」
娼婦「……」
使用人「そんなに、不安そうな顔をしないで下さい。今現在、魔王様は元気ですよ」
娼婦「あ……す、すみません」
使用人「……」
娼婦「姫様は……?」
使用人「少し、お腹が目立って来ましたね」
娼婦「もうすぐ……いえ、随分、時間が掛かるのでしたね」
使用人「そう……ですね」
娼婦「……」
使用人「……」
使用人「……魔除けの石、は」
娼婦「え?」
使用人「神父さん、が作られたのですね?」
魔王「私が勇者になる……だと?」 【2】
744 :1 ◆wlrXk.nKvWpx []:2013/05/29(水) 14:40:01.51 ID:rm/OF9w8P
娼婦「え、ええ。そうです。私では……あんなに、清浄な物は……」
使用人「すぐに、作れるのですか?」
娼婦「随分、体力を使われますから……どうでしょう」
娼婦「こんな言い方をしては随分偉そうですが、凄く上手になられました」
娼婦「コツも掴まれたようですし……」
使用人「そうですか……」
娼婦「この分では、数ヶ月すれば出荷できるかも知れませんね」
娼婦「神父様は、商売にするのは嫌がっておいでですが……あ」

盗賊「ほら、神父さん、早く!」パタパタ
神父「さ、先に行ってください、盗賊さん……」ハァハァ

使用人「相変わらずですね」クス
娼婦「……貴女は、変わりましたね」
使用人「え?」
娼婦「見た目こそ……変わらないけれど」
娼婦「……」
使用人「船長さんにも言われました」
娼婦「今の環境が、あっているのでしょうね」
使用人「そうかも知れませんね」
盗賊「少女ー!ひさしぶりだな!」ダキッ
使用人「……ッ お久しぶりです、盗賊さん。私は……今は、使用人と言う名です」
神父「はあ……お待たせしました」
娼婦「だ、大丈夫ですか、神父様……盗賊、もう……!」
神父「いえいえ、平気ですよ……喜ぶ気持ちも分かります」
盗賊「珍しいなぁ、しょ……えっと、使用人か」
盗賊「側近はどうしたんだ?」
魔王「私が勇者になる……だと?」 【2】
745 :1 ◆wlrXk.nKvWpx []:2013/05/29(水) 14:55:05.18 ID:rm/OF9w8P
使用人「……」
盗賊「使用人?」
使用人「側近様は、今……魔王様の傍を離れられません」
盗賊「え?」
神父「先ほども仰ってましたが……どういう意味です?」
神父「それに……その話は、私達が聞いて良い物なのですか」
娼婦「使用人さんは、私と神父様にお願いがあって来たと……仰いましたね」
使用人「はい。側近様から、貴方達にある程度の話はしたと聞いています」
使用人「知識があるとの前提でお話しします」
使用人「……魔王様の力は、あり得ない程強くなっています」
盗賊「それが……側近とどう……?」
使用人「側近様は魔王様の目をお持ちです。魔王様曰く……」
使用人「『私の全てが揃えば、大丈夫』なのだとか」
盗賊「それで……城から出れないのか。姫は大丈夫なのか?」
使用人「今はまだ、ペンダントがあります。ただ……魔王様の様子を考えると」
使用人「備えがあれば安心かと思いまして」
神父「魔除けの石をご所望、ですか」
使用人「はい……以前頂いた物は、魔王様が触れた途端に……」
神父「まさか……壊れた?」
使用人「はい。 ……申し訳ありません」
娼婦「……」
神父「いえ……謝る必要はありません。そう、ですか……」
盗賊「この間、側近が癒やしの石持って帰ったろ?」
使用人「……癒やしの石では、もう役に立たないのですよ」
盗賊「え!?」
使用人「城にある半分以上が、紫に染まってしまい」
使用人「もう……役に立たないのです」
魔王「私が勇者になる……だと?」 【2】
746 :1 ◆wlrXk.nKvWpx []:2013/05/29(水) 16:01:20.50 ID:rm/OF9w8P
神父「なんと……」
使用人「……このまま、魔力が膨張し、もし……暴走でもすれば」
盗賊「そ、そんな事になったら、姫は……!」
使用人「姫様だけではありません……世界が、終わります」
娼婦「……」
神父「……世界が、終わる」
盗賊「な、なんでだよ!?そんな……!」
使用人「そういう可能性もある、ですが」
娼婦「それで……姫様を守る為に、魔除けの石を?」
使用人「それだけではありません。もしかしたら、魔王様のお力を」
使用人「押さえる事もできるか……と」
神父「ふむ……」
盗賊「で、でも……壊れた、んだろう」
使用人「数の勝負、になりますが……」
神父「世界の破滅、等と聞かされてしまうと拒否する事もできませんね」
使用人「……解っていて申し上げている事は否定致しません」
盗賊「そんなに、悪い、のか。いや、悪いとかじゃネェじゃ」
盗賊「ええと……」
使用人「勿論、癒やしの石もお願いしたいんです。本当に……」
使用人「気休めにしかならないんですが……」
神父「しかし、私も歳です。それ程量産できる訳ではありませんよ」
神父「時間も、掛かります」
使用人「数日はお世話になります。宿はある……のですよね?」
盗賊「うちに泊まれば良いさ。娼婦も……良いよな?」
娼婦「え、ええ……それは、勿論」
魔王「私が勇者になる……だと?」 【2】
747 :1 ◆wlrXk.nKvWpx []:2013/05/29(水) 16:22:29.80 ID:rm/OF9w8P
使用人「ありがとうございます」
使用人「それから……船長さんにはもう伝えたのですが」
盗賊「え……船長に会ったのか?」
使用人「ええ、こちらに来る前に、鍛冶師の村に寄って参りました」
盗賊「! そ、そうか……」
使用人「ここの教会の完成を急いで貰う為です」
神父「この? ……何故です」
使用人「魔王様と、姫様が……ここで、式を挙げられるのだと」
娼婦「結婚式、ですか……」
使用人「はい……姫様のご希望で」
神父「……成る程。それも、貴女がここに来られた理由、ですか」
使用人「はい」
神父「失礼ながら。魔王にしてもそうですが……貴女も、側近さんも」
神父「どうして、その姫さんに……そこまで」
使用人「……私と、側近様は『魔王様が望まれるから』でしょうね」
神父「主だから、ですか」
使用人「はい」
神父「……主は絶対、ですか」
使用人「はい」
神父「……」
使用人「魔王様は……式の後、とある場所に姫様を眠らせると仰られています」
娼婦「え……?」
使用人「その後、ご自分も封印の為、眠りに着くおつもりです」
神父「何故……ですか。何故そのような……」
使用人「長い月日が流れれば、ご自分を倒してくれる勇者が現れるかもしれないと」
娼婦「!」
使用人「そうすれば、その後、姫様に……産まれて来るお子様に」
使用人「魔王様が好きだと言う……美しい世界を見せてやれるから、と」
盗賊「……」
神父「その子供、と言うのは……魔王の子では無いと側近さんから聞いていますが」
使用人「ええ……魔王様の世代交代の事は?」
神父「聞きましたよ。力を継承していく、のですよね?」
魔王「私が勇者になる……だと?」 【2】
748 :1 ◆wlrXk.nKvWpx []:2013/05/29(水) 16:43:59.75 ID:rm/OF9w8P
使用人「はい……世継ぎが居ない以上、魔王様を倒せるであろう者は」
使用人「今の段階では居ないのです。それこそ……勇者様でもお生まれにならないかぎり」
神父「……」
盗賊「……」
娼婦「……」
使用人「……」
神父「一つ、お聞きしてもよろしいでしょうか。少し……話は逸れますが」
使用人「え?ええ……なんでしょう」
神父「魔王の属性というのは……何なのです?」
神父「紫の瞳を持ち、様々な属性の魔法を使えると聞いております」
盗賊「それは確かだ。魔王は……魔導将軍を殺す時、姫の姿で……」
盗賊「……俺は間近で見てた。ありゃ……なんて言うか……」
使用人「規格外、ですか」
娼婦「……」
使用人「側近様にも、聞かれたのかもしれませんが」
使用人「解りかねます、としか……」
使用人「しかし、優れた加護はお持ちにならないそうですよ?」
神父「え!?魔王……なのに、ですか」
使用人「姫様から聞いただけ、ですが……嘘では無いでしょう」
盗賊「そうだな。エルフは嘘は吐かない」
魔王「私が勇者になる……だと?」 【2】
749 :1 ◆wlrXk.nKvWpx []:2013/05/29(水) 16:53:08.81 ID:rm/OF9w8P
神父「そうですか……そういえば、以前聞きそびれましたね」
神父「魔王、と言うのは……代々、紫の瞳をし」
神父「属性に縛られない存在、なのでしょうか」
使用人「……私には、わかりません。側近様ならご存じかも知れませんが」
娼婦「あの方は、先代様にも仕えていらっしゃったのですよね」
使用人「はい」
盗賊「……わかった、て」
使用人「はい?」
盗賊「解った、て納得しなきゃ行けないのか!?」
娼婦「盗賊……」
盗賊「折角……折角、軌道に乗ってくるって時に!」
盗賊「遊びに来るって、約束したのに……!」
娼婦「……では、その約束を守って頂くためにも」
娼婦「協力、すれば良いでしょう」
神父「娼婦さん……」
娼婦「私からもお願い致します、神父様」
娼婦「……結婚式を、挙げさせて差し上げてください」
神父「……」
使用人「お願い致します」
盗賊「……俺、手開いてる奴探してくる!」タタタッ
神父「あ、盗賊さ……!」
使用人「……」
娼婦「……」
神父「…… ……別に、反対する気はありませんよ」
娼婦「神父様……」
神父「娼婦さんは、よろしいのですか。貴女は……」
娼婦「良いのです」
使用人「……」
魔王「私が勇者になる……だと?」 【2】
750 :1 ◆wlrXk.nKvWpx []:2013/05/29(水) 16:59:13.18 ID:rm/OF9w8P
娼婦「魔王様の望みだと言うのであれば、私は……」
娼婦「……良い、のです」
神父「やれやれ……」スタスタ
使用人「神父さん……何処へ?」
神父「私からもお願いして参りましょう。一人より二人、です」スタスタ
娼婦「……」
使用人「……ありがとうございます」
娼婦「……使用人、さん」
使用人「はい?」
娼婦「私に……魔除けの石……と、呼べるかどうか解りませんが」
娼婦「作らせていただけませんか」
使用人「え?」
娼婦「神父様は、私にも魔除けの石を作る様仰っておられました……最初は」
使用人「最初、ですか?」
娼婦「はい……私は、神に仕えると言いながら」
娼婦「心に崇めるのは……ずっと、魔王様でした」
使用人「……」
娼婦「私の、神。 ……それに、私はインキュバスと交わって居ます」
娼婦「寿命も、残り少ない。そんな事を理由に……断っていたのです」
使用人「神父さんはご存じなのですね」
娼婦「ええ。こんな私の作った石では、神聖である筈がありませんから」
娼婦「神父様は……否定はされませんでしたよ」
娼婦「そんな事無いと、言ってはあげたい……とは、言って下さいましたけれど」
使用人「……」
娼婦「でも、だからこそ」
娼婦「……魔王様を想う、私だからこそ」
娼婦「魔王様のお力を押さえるのに、お役に立ちませんか?」
魔王「私が勇者になる……だと?」 【2】
751 :1 ◆wlrXk.nKvWpx []:2013/05/29(水) 17:07:35.64 ID:rm/OF9w8P
使用人「……何時言おうか、と考えて居ました」フゥ
娼婦「え?」
使用人「同じ事を、こちらからお願いするつもりだったのです」
使用人「貴女は、魔王様の為にとお願いすると断らない事は……明白ですから」
娼婦「……城の書庫で、貴女には見られていましたね」
使用人「それだけじゃありませんよ。娼婦さんを見ていれば……魔王様を」
使用人「慕っている事は解ります……娼館に居る時から、でしょう」
娼婦「ああ……そう、ですね。魔導将軍に傷付けられた時」
娼婦「看てくれて居たの……貴女、だった」
使用人「魔王様は……貴女の勇者様でしょう」
娼婦「……はい」
使用人「私が言うのはおかしいのだという事を承知で、聞きます」
使用人「良いんですか?」
娼婦「お役に立てるのでしたら、喜んで」
使用人「寿命を削りますよ」
娼婦「元より……それほどの時間もありません」
使用人「インキュバスの元から帰ってきた時点で、一年です」
使用人「……もし、石を作れば……貴女は……」
娼婦「すぐに、とは思いません。ですが……」
使用人「……」
娼婦「良いんです。魔王様は、私の主。私の……勇者様」
娼婦「同じですよ、使用人さん」
娼婦「魔王様の為ならば……喜んで、差し出しましょう」
使用人「……」
娼婦「使ってください。魔王様の為に」
娼婦「……美しい、世界の為に」グッ
使用人「! 娼婦さ……!」
娼婦「う、ぅ……ッ」コロン……フラ
使用人「……!」ガシ!
娼婦「……魔王様。願えば、叶う……ん、です……よ、ね……」
使用人「娼婦さん!」
魔王「私が勇者になる……だと?」 【2】
752 :1 ◆wlrXk.nKvWpx []:2013/05/29(水) 17:19:23.97 ID:rm/OF9w8P
使用人(……気を失っている、だけか。良かった)
使用人「盗賊さんの家に……ッ」
使用人「……ありがとうございます。娼婦さん」スタスタ

……
………
…………

船長「……はあ」
女剣士「お願いします!」
鍛冶師「僕からもお願いします」
船長「資材の運び込みと、魔物退治の報酬は微々たるモンだ」
女剣士「船長……」
船長「港街に着いたら、こき使うぜ。女であろうとも、だ」
女剣士「も、勿論だ!体力だけには自信ある!」
船長「心配しなくても頭が切れるタイプには全く見えネェよ」
鍛冶師「船長!」
船長「事実だろ……向こうでの労働の報酬は、後日盗賊から受け取れ」
船長「鍛冶師、渡航代は二人分で……」カキカキ
船長「こんだけ、だ」
鍛冶師「立て替えるだけだ。後できっちり、返して貰うからね?」
女剣士「勿論だ……ありがとう……!」
鍛冶師「良し……じゃ、これで」
船長「ん……きっちり頂いたぜ。良し、すぐ出発だ」
船長「船室には海賊に案内させる」
女剣士「アタシは甲板にいる!魔物に備えるぜ!」タタタ
船長「……落ち着きの無い女だな」フゥ
鍛冶師「ありがとう、船長」
船長「人手はあって困るもんじゃ無い……しかし、お前も本当に物好きだな」
魔王「私が勇者になる……だと?」 【2】
753 :1 ◆wlrXk.nKvWpx []:2013/05/29(水) 17:26:44.91 ID:rm/OF9w8P
鍛冶師「魔王の仲間、なんだろう。側近ってのは」
船長「……お前、まさか」
鍛冶師「……」ニッ
船長「魔法剣か! ……なんか企んでやがるとは思ったが」
鍛冶師「利があるならこれぐらいの出費、痛くはないさ」
鍛冶師「まあ……約束は守ってくれるだろうしね、女剣士も」
船長「応援したいとか言ってたくせに、お前は……」
鍛冶師「別に嘘じゃないよ。気持ちは分かるもの」
船長「恋する女の気持ちが、か?」
鍛冶師「……村に来る前に、さ」
船長「?」
鍛冶師「盗賊に……告白したんだ」
船長「は?」
鍛冶師「は、て……」
船長「盗賊に……何をだよ」
鍛冶師「こ、告白って言えば一つしかないだろ!?」
船長「…… ……あ! ……そういえば、お前ら二人揃って顔マッカにしてたな」
鍛冶師「船長……意外と鈍いんだな」
船長「だから、人の色恋なんざ興味ネェって!」
船長「しかし、まあ……お前が盗賊を、ネェ……」
鍛冶師「……別に、良いだろう。良い子だよ、盗賊は」
船長「悪いとは言ってないだろ、良いよ何でも……そんなもん」
船長「なんだ、じゃあ……付き合ってんのか?」
鍛冶師「返事は……まだ貰ってない」
船長「へ!?」
鍛冶師「引っ越しの準備をしたら、港街に戻るから」
鍛冶師「そしたら、聞かせて貰う」
魔王「私が勇者になる……だと?」 【2】
754 :1 ◆wlrXk.nKvWpx []:2013/05/29(水) 17:42:03.91 ID:rm/OF9w8P
船長「な、お前……返事もわかんねぇのに、引っ越すのか!?」
鍛冶師「な、何か厭じゃないか!成功したら引っ越しますとか!」
鍛冶師「振られたからって、引っ越しやめる気は別に本当に……無かったし」
船長「はぁ……」
鍛冶師「港街は港街で、気に入ってるんだよ!そ、それに……」
鍛冶師「それだけ……本気なんだよ!僕は!」
船長「お、おう」
鍛冶師「……」
船長「いや、うん……頑張れ……」
鍛冶師「も、もう頑張った後なの!」
船長「いや、まあ……そうか」
鍛冶師「ぼ、僕も部屋に戻るよ!」スタスタ
船長「あ……待て、鍛冶師!」
鍛冶師「な、何?」
船長「……ちょっと相談があるんだが」
鍛冶師「相談?」
船長「今の話で、ちょっとな……思いついたんだが」
鍛冶師「?」
船長「お前さ……始まりの街に住む気はネェか」
鍛冶師「え!?」
船長「港街が気に入ってる、てのは解ってる」
船長「……まあ、そろそろ町長の選出とかもあってだな」
鍛冶師「町長……」
船長「そうだ。俺も含め、住人の殆ども盗賊を押してるんだが」
船長「あいつは断固拒否、なんだ。『俺の器じゃネェ』ってな」
鍛冶師「……盗賊らしいね」
魔王「私が勇者になる……だと?」 【2】
755 :1 ◆wlrXk.nKvWpx []:2013/05/29(水) 17:52:55.72 ID:rm/OF9w8P
船長「実際、あいつは腰軽いからな。魔導の街との交渉役なんかも」
船長「やってくれてるしよ」
鍛冶師「……始まりの街、てのは魔王に言われたからか?」
船長「それもネェとは言わんが……船での流通の範囲を拡大したいってのもある」
船長「定期便も増やしたい。俺や、船の仲間の為にも、な」
鍛冶師「ふむ……けど、それと僕が始まりの街に住むのと」
鍛冶師「何の関係があるんだ?」
船長「始まりの街を本当に再興しようと思えば」
船長「指導者が必要だ。港街を別の人間に任せられるなら」
船長「盗賊の身も、あくだろう?」
鍛冶師「……いや、だから」
船長「だからお前と、盗賊で……だ」
鍛冶師「は!?」
船長「ま……お前らがうまくいったら、て前提だがな」
鍛冶師「……」
船長「別にすぐ答えを出せとは言わネェよ……考えといてくれ」
魔王「私が勇者になる……だと?」 【2】
756 :1 ◆wlrXk.nKvWpx []:2013/05/29(水) 17:53:50.00 ID:rm/OF9w8P
お風呂とご飯!
またあしたー!


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