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1 ◆yT5YRa9V0k
30歳からの青春を謳歌した話

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30歳からの青春を謳歌した話
349 :◆yT5YRa9V0k []:2012/04/24(火) 00:15:45.40 ID:oLJvEn5z0
すまない今帰った
遅れてしまって本当すまん
今日こそ終わらせるよ、ごめんな
30歳からの青春を謳歌した話
355 :◆yT5YRa9V0k []:2012/04/24(火) 00:26:09.03 ID:oLJvEn5z0
俺にとって幸せな毎日だった
とてもとても
その年のクリスマスも人生で初めて異性と過ごした
後輩は、とてもいい子だった

碁会所で、クリスマス会なんぞもあった
忙しい合間をぬって、俺は行った
小学校の頃の「お楽しみ会」を思い出すかのようなアットホームぶり
30歳からの青春を謳歌した話
356 :◆yT5YRa9V0k []:2012/04/24(火) 00:30:17.05 ID:oLJvEn5z0
大の大人たちが年甲斐もなくはしゃぎ倒している
ほとんどの人が、碁会所でしか会わないのに
昔からの友達かのようにとても親しげに楽しそうに、

俺は、この碁会所に来て生まれ変わった
俺に楽しみをくれたし、若さをくれた
こんなお年寄りたちに若さをもらうなんて、なw
30歳からの青春を謳歌した話
358 :◆yT5YRa9V0k []:2012/04/24(火) 00:39:04.37 ID:oLJvEn5z0
年が明けると、俺は彼女となった後輩を連れて爺さん家に行った
もう、すっかり娘さんのお腹も大きくなってきていて
家の中は幸せな空気そのものといったところ

俺の目の前にも洋々とした未来が広がりだしたなって思った
爺さんしきりに孫が生まれるぞいいだろいいだろ、って言うんだw
そんで俺君にも子どもが生まれたら私の孫だって言うんだw

ほんと、憎めない人だよw
30歳からの青春を謳歌した話
359 :◆yT5YRa9V0k []:2012/04/24(火) 00:44:39.26 ID:oLJvEn5z0
それからしばらくは、碁会所にもそんなに行けなくなった
俺も仕事が忙しかったし
まあ何もかもが順風満帆な気がしたし、仕事は辛くなかった

たまーに碁会所に行っても爺さん家の誰かに会うこともなかった
娘さんもそろそろ大変だろうし、色々とバタバタしてるんだろう

子どもが生まれるってどんなんかなあって俺は楽しく想像してた
30歳からの青春を謳歌した話
363 :◆yT5YRa9V0k []:2012/04/24(火) 00:49:12.73 ID:oLJvEn5z0
3月になった頃かな
ちょうど地震があってさ
どうなっているだろうって碁会所に様子を見に行ったんだよ
なんとか皆無事だと聞いて、安心した

碁会所には爺さんの娘さんの旦那が来ていた
俺は「爺さん最近どうしてるの?」って聞いた
なんでも、地震の揺れに驚いてつまずき、少し足を悪くしたらしい
だからしばらく来れないとか
俺は少し寂しくなるなーって思った
30歳からの青春を謳歌した話
364 :◆yT5YRa9V0k []:2012/04/24(火) 00:57:24.18 ID:oLJvEn5z0
それで4月になった頃、爺さんの娘さんが出産した
娘さんと旦那さんが碁会所に子ども連れてきていた
元々が仲の良い碁会所
みんな寄ってたかって子どもをみたがり軽い祭り状態

俺も「お〜よちよち〜」とか言ってたw
もうね、赤ちゃんってね、マジ可愛いんだw

ただそこに嬉しそうに笑ってるはずの爺さんはいなかった
よっぽど足悪くしたんだろうな、残念だ
30歳からの青春を謳歌した話
366 :◆yT5YRa9V0k []:2012/04/24(火) 01:01:01.20 ID:oLJvEn5z0
俺はそれからも楽しい毎日を続けていた
仕事も楽しいし、友人ともうまくやってた
恋の方も順調で、碁会所にも通い続けていた
まあ相変わらず2ちゃんやらネットも存分に続けていたw

でも、相変わらず爺さんたち一家はパッタリ来なかった
こっちからはあまり連絡をとったことがなかったし
今までも自然に碁会所で会う感じだったから、とても拍子抜けだった
おかしいなあおかしいなあって思いながらも

俺はいつか来るだろうって思って待ってた
爺さんがいるはずの隅の席が寂しく見えた
コーヒー、淹れてやるのにな
30歳からの青春を謳歌した話
368 :◆yT5YRa9V0k []:2012/04/24(火) 01:04:42.59 ID:oLJvEn5z0
夏が来た頃、俺はあまりにおかしいって思った
マスターに聞いても「何も聞かされてないんだ」って言う
こんなことは初めてらしかった

なんとなく嫌な予感がし始めたので
俺は爺さんの家の電話に連絡しようかと考えた
でも携帯とは違うし、あくまで碁会所だけの友人である俺が
いきなり自宅に電話かけるってのもあれだし…って思ってずっと悩んでた
30歳からの青春を謳歌した話
370 :◆yT5YRa9V0k []:2012/04/24(火) 01:08:06.98 ID:oLJvEn5z0
ただ、社会人になるとあまりに時間が流れるのが早いんだよな
みんな分かるだろ?大学の頃の10倍時の流れが早く感じる

仕事やら実家のことやら、色々追われていたらあっという間に夏が終わってた
あまりに一瞬だった
あれ?夏いつだった?って思った、コミケも行かなかったし

夏が終わろうと相変わらず来ない爺さん一家
もうどう考えても何かあったとしか思えなかった
30歳からの青春を謳歌した話
373 :◆yT5YRa9V0k []:2012/04/24(火) 01:12:01.06 ID:oLJvEn5z0
9月になった頃だろうか
俺は爺さんの自宅に思い切って電話した
思えば、電話なんぞ初めてした
だって今までかける用事なんてなかったしなw

今でも忘れんな、あの時の奥さんの電話のトーン。
電話したら、奥さんが出たんだ
「どなた?って」
だから俺です、って言った
そしたらものすごい勢いで感激して「久しぶりねえ!」って言った
そして今までまったく碁会所に顔出せなかったことをひたすら謝られた
「会えなくてごめんね、ごめんね」って
30歳からの青春を謳歌した話
375 :◆yT5YRa9V0k []:2012/04/24(火) 01:17:43.45 ID:oLJvEn5z0
俺は笑って、爺さんどうしてます?電話出れます?って聞いた

そしたら少し黙って「今は家にいないのよ」って言われた
俺は「え?」と思ったがなんとなく覚悟はできてた

聞いても、あまり深くは答えてくれなかった(今思えば当然だが)けど、
爺さん胃癌になっちゃって病院に入院してるらしい
俺は、それでも冷静で、そうなんですか。って言ってしまった

電話切った瞬間一気に力抜けて、とても悲しくなった
泣きなんてしないけど、なんだか頭の中が真っ白になった
30歳からの青春を謳歌した話
377 :◆yT5YRa9V0k []:2012/04/24(火) 01:25:19.30 ID:oLJvEn5z0
それからなんとなく、毎日に力が抜けた
祖父母を幼い頃に亡くしてたし、親父も学生の時亡くなった俺にとっては
本当のおじいちゃんであって親父のようであったし

こんなに心の通じる友はいないって思ってたから
いなくなるのがとても怖かった
それからは毎日何やるにしても気が気じゃなかったな
でも癌だって治る人はいるし
俺はそれを信じてた
30歳からの青春を謳歌した話
379 :◆yT5YRa9V0k []:2012/04/24(火) 01:32:48.49 ID:oLJvEn5z0
眠いけど頑張るぜ…俺はちゃんと書ききりたい。

俺が電話してからしばらく経った日
奥さんに都合のつく日を教えて欲しい、と言われた
俺がもしできたら会いに行けませんかって言っておいたのだ

そして俺は爺さんの病院に面会へ行った
もう、秋もだいぶ深まっていた11月初旬くらいのことだったろうか
30歳からの青春を謳歌した話
380 :◆yT5YRa9V0k []:2012/04/24(火) 01:36:38.21 ID:oLJvEn5z0
その日はたまたま娘さん夫婦も来ていて
俺に軽く会釈してくれたっけ
「お久しぶりです」って みんななんか神妙な面持ちで
病室に入ると寝てる爺さんがいた

変わり果ててしまっていたな
正直、こんな姿は見たくなかったって思った
もう、意識もあるんだかないんだかで

「久しぶりです、俺ですよ、分かりますかー」って言っても
「あーうん…あー…」としか言わないんだ
30歳からの青春を謳歌した話
381 :◆yT5YRa9V0k []:2012/04/24(火) 01:39:48.62 ID:oLJvEn5z0
人生の最後って想像が脳裏をよぎった瞬間鳥肌たった
こんなになってしまうんだ…なんて辛いんだ…って

俺泣きそうになってたよ
なんで俺が泣きそうなんだよ、もっと泣きたいのは家族の方だよ

忘れもしない、爺さん、こんなこと言うんだ
「君…寿司をとってきてくれ…お金ならいくらでもやる…」
唯一分かること、こんなこと言われたんだ
いまでも忘れられねえよ

もう悲しくってしょうがなかったよ
こんなこと、決して言う爺さんじゃなかったのにな
30歳からの青春を謳歌した話
383 :◆yT5YRa9V0k []:2012/04/24(火) 01:43:03.01 ID:oLJvEn5z0
もう爺さん弱ってて、
しきりにもう亡くなった兄弟のこととか
昔のことばっか話すようになってたらしい
旦那さんのことさえあやふやだったという

そりゃあそうだ、俺のことなんか覚えてるはずねえよ
俺は病室出るとき言ってやったよ

「僕はね、爺さんの友達なんです。ずっとずっと、友達です」って

爺さん「あーそう…」みたいにしか言ってなかった
聞こえたんだろうか
俺半分泣いてたよ
本当、壮絶なものを見てしまった
30歳からの青春を謳歌した話
385 :◆yT5YRa9V0k []:2012/04/24(火) 01:46:15.55 ID:oLJvEn5z0
その日、家帰ってめちゃくちゃ酒飲んだ
多摩川の写真とか見ながら
次の日会社だったけど、しこたま飲んでやった

それからまた、爺さん一家とはぱったりと連絡をとらなくなった
いや、向こうがとれなくなったんだろうか

俺は、奇跡を信じながら碁会所に通い続けた
この頃になるとマスターとか一部の人たちは爺さんの状態を知っていた
みんな、すっごい心配してた
30歳からの青春を謳歌した話
388 :◆yT5YRa9V0k []:2012/04/24(火) 01:49:47.94 ID:oLJvEn5z0
爺さんは俺の友達だよ
親父でもおじいちゃんでもあったけど、やっぱ友達だったよ

あの日、多摩川で一人で写真を撮ってる俺に笑って話しかけてくれた爺さんの目は
友達のそれだった

爺さんが話しかけてくれて、こんな歳になってしまった俺の目の前で
青春が勢い良く走りだしたんだから

くよくよしているうちにあっという間に年が明けた
うん、今年だよ、2012年になった
30歳からの青春を謳歌した話
391 :◆yT5YRa9V0k []:2012/04/24(火) 02:06:28.91 ID:oLJvEn5z0
爺さん、爺さん
信じていたけど…

2月になった頃
爺さんの家からFAXがきた、電話ではない。
それは、爺さんの不幸を告げるものものだった

目を疑った。ダメだった、ダメだった…
30歳からの青春を謳歌した話
393 :◆yT5YRa9V0k []:2012/04/24(火) 02:10:08.43 ID:oLJvEn5z0
正直俺は
お通夜に参列することに戸惑った
旧くからの友人でもなければ
親戚でもなく、仕事の同僚でもなく、俺なんかが式に行っていいものかとても悩んだ
遠い知人であれば、後から香典を送るというのも一つのマナーでありお悔やみだ
どうすれば…

でも俺は、最後に爺さんに会いに行かなきゃ後悔すると思った
俺は、爺さんに最後まで面と向かって「ありがとう」って言ってなかったじゃないか
俺は、爺さんにとって最後の新しい友だちだったに違いない、そう思った
30歳からの青春を謳歌した話
395 :◆yT5YRa9V0k []:2012/04/24(火) 02:14:35.74 ID:oLJvEn5z0
俺は爺さんのお通夜に参列した
しっかりと、最後を見届け、そしてありがとうと伝えた

目まぐるしく回ってきた日々、その中にはいつも爺さんがいたね
いろんな事が落ち着いた頃、俺は爺さんの墓参りにも行った
色々語りかけた

爺さんありがとう、ゆっくり休んでね
爺さんの優しさが、俺を変えたんだよ
30歳からの青春を謳歌した話
396 :◆yT5YRa9V0k []:2012/04/24(火) 02:16:58.80 ID:oLJvEn5z0
今は彼女ともよくやっているんだ
近いうちに、結婚すると思う。

俺、幸せになるんだよ
見たいって言ってた孫wもきっと見せに行ってやるからね

ありがとう、俺すっごく今が楽しいんだ
爺さんみたいに、楽しくて素敵な家庭が築けそうなんだ

ずっと憧れだった、少しずつだけどしっかり歩いてるからね
30歳からの青春を謳歌した話
399 :◆yT5YRa9V0k []:2012/04/24(火) 02:22:57.88 ID:oLJvEn5z0
ただ残念だなあ
結婚したら、絶対式には爺さんも呼んだのに
最年長の友人としてね
笑っちゃうでしょ?でも俺はそんなことを夢見ていたんだ

なんであと少し間に合わなかったんだろう
爺さん、一緒に飲もうなって言ってた日本酒の銘柄、全然飲めてないぞ
囲碁だって、一度は負かすって言って、一度も勝ったこと無いぞ
生まれたばっかりの孫だっていたじゃないか
30歳からの青春を謳歌した話
400 :◆yT5YRa9V0k []:2012/04/24(火) 02:24:43.02 ID:oLJvEn5z0
ごめん、溜まっていたことをここに連ねることになってしまいそうだから
自重しておくわ

そんなこんなで、爺さんはこの世を旅立った

立派に生きた男の最後だったと思う
家族と友人にあそこまで愛される人も、そうそういないと思う
30歳からの青春を謳歌した話
402 :◆yT5YRa9V0k []:2012/04/24(火) 02:27:22.94 ID:oLJvEn5z0
ここではたいそう立派なことを書いていた俺も
なかなか気持ちの整理ができなくて
ここ何週間かはずっとふさぎがちだったんだ
彼女や同僚にもすごい心配されて
碁会所に行っても全然喋らなくなっていたから

それでこないだ、たまたま田園都市線に乗ってさ
二子玉を通って
色々と思い出したんだよね
そういやちょうど今くらいの時期だったなあって

それでさ、気持ちの整理がしたくなって、スレを立てさせてもらった
30歳からの青春を謳歌した話
403 :◆yT5YRa9V0k []:2012/04/24(火) 02:31:47.76 ID:oLJvEn5z0
これが、俺の30歳からの青春です
多分青春はこれからも続いていくと思う

遊び心や好きな気持ちを忘れなければ、いくつになっても終わらない青春があるって
爺さんが教えてくれたからね

今度は爺さんの分まで俺が幸せになって、いくつになっても青春を追いかけようと思う
そう決心したよ

すっごくクサイまとめになってしまったけど、これで俺の話はおしまいです
30歳からの青春を謳歌した話
404 :◆yT5YRa9V0k []:2012/04/24(火) 02:33:41.63 ID:oLJvEn5z0
このスレに書いたことで色々整理もついたし
改めて前向きな気持ちになれたよ

明日から頑張ろうと思う
皆も、一緒に青春を生きよう

どっかの囲碁大会とかで近いうちに会えたらいいねw
30歳からの青春を謳歌した話
411 :◆yT5YRa9V0k []:2012/04/24(火) 02:52:40.17 ID:oLJvEn5z0
>>410
これからこれから!
一緒に頑張ろう。
俺も囲碁にここまで動かされるなんて意外だった
思わぬ所に終わらない青春があるかもしれないね
30歳からの青春を謳歌した話
413 :◆yT5YRa9V0k []:2012/04/24(火) 03:06:08.24 ID:oLJvEn5z0
>>412
交流は続けたいって思ってるよ
でも今向こうの家は赤ちゃんもいるし
爺さんの一件もあったからね
奥さんだけだとなかなか碁会所には現れないし

また落ち着いたら是非みんなで飲みたいなって思っているよ


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