- ゲーセンで出会った不思議な子の話
805 :1 ◆WiJOfOqXmc []:2012/01/17(火) 00:12:11.95 ID:WJObiXhX0 - そんなこんなで、近所の俺の母校の小学校に着いた。
土曜だったので、がらんとしていた。 少年野球のチームが、練習している以外、校庭もほかに人はいない。 俺「懐かしいなあ〜。ここでよく、野球したんだー」 彼女「そうなんだー。すごい広いね…」 無駄に校庭だけは広い小学校だった。
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807 :1 ◆WiJOfOqXmc []:2012/01/17(火) 00:18:52.97 ID:WJObiXhX0 - 彼女は少女のごとく駈け出した。
思いっきり走りだしたもんだから、印象的だった。 あまり息上がるのもよくないのにね…。 彼女「こっちに来て!」 彼女「これ、うんていだよ、なつかしーw」 彼女は無邪気に色んな遊具で遊びはじめた。 彼女は滑り台の階段を上がって、俺が登ると滑り降りた。 彼女「無限ループだ!」 俺「そうなの?w」 こんな調子だった。
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809 :1 ◆WiJOfOqXmc []:2012/01/17(火) 00:21:52.50 ID:WJObiXhX0 - 俺たちは何故か滑り台の無限ループがツボに入ってしまい、
いい年してしばらくそこで笑いながら滑り台に興じた。 俺「いつまで経っても捕まらないww」 彼女「はやく追いついてww」 こんな繰り返しだった。
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818 :1 ◆WiJOfOqXmc []:2012/01/17(火) 00:29:48.04 ID:WJObiXhX0 - しばらくすると冷静になって二人して、
「え、これ何が面白かったの?」的な感じになった。 遠くから少年野球の声が聞こえる。 彼女「ねえ、あの少年野球にいたの?」 俺「うん、懐かしい。もうずっと前のことだけどね。」 彼女はしばらくぼーっと駆けまわる少年たちを見つめていた。 彼女「キャッチボールしよう。」 俺「大丈夫?無理しないでね。」 彼女はまた歌い出す。 「べーすぼーるのおとが鳴ったー、だれもぎゃらりーいないぐらうんどーってね。」 俺「何それ?」 彼女「知らないの?」 彼女は音楽の造詣も深くて、たまに俺の知らない曲も歌う。 そうするとちょっとぐずるんだけど、そういう時は決まって すぐiPodとかで教えてくれる。
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822 :1 ◆WiJOfOqXmc []:2012/01/17(火) 00:35:54.74 ID:WJObiXhX0 - その曲はフジファブリックのベースボールは終わらないだった。
「フジファブリックか…」 その日はその曲にピッタリだった。 晴れ渡っていて、広いグランドに二人だけ。 俺はその曲に則って、「あとで炭酸飲料を買いに行こう。」 というと、彼女はやたら喜んだ。 「いくよ!」 俺がボールを投げると、彼女はしっかりキャッチ。 そしてイイ感じに返してくる。運動神経がよかったのか、 昔からあまり運動が得意でない俺はちょっとだけうらやましくもあり、楽しくなった。
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825 :1 ◆WiJOfOqXmc []:2012/01/17(火) 00:37:02.24 ID:WJObiXhX0 - 1レスに書く量を増やしても、どう考えても次スレにいってしまいそうだ…
どうしよう次スレに行ったらまずいんですかね…?
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836 :1 ◆WiJOfOqXmc []:2012/01/17(火) 00:41:18.87 ID:WJObiXhX0 - よく分からないけど、とりあえず1000まで行けばスレ自体は
残ってそのあともこのスレは見れるんですかね? そういうことなら続けようと思います。
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844 :1 ◆WiJOfOqXmc []:2012/01/17(火) 00:52:18.09 ID:WJObiXhX0 - ひとしきり小学校で遊ぶと、俺は彼女を連れて小学校の近くの駄菓子屋に行った。
正直、まだあるか不安だったけど、小学生の時はよく入り浸っていた。 彼女「すごい…こういうのって本当にあるんだね。」 俺「ま、田舎だからね…w」 駄菓子屋のおばちゃんには可愛がってもらった。 おばちゃん「はい、いらっしゃい。」 俺「こんにちは、富澤ですー」 おばちゃん「あら、富澤くん…久しぶりだねえ…」 彼女も笑って、 「こんにちは」と言った。 3人でしばらく談笑した。
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849 :1 ◆WiJOfOqXmc []:2012/01/17(火) 00:58:08.94 ID:WJObiXhX0 - おばちゃんは、
「この前〇〇君来てさ…とか、〇〇先生がね…」 と懐かしい話をたくさんしてくるため、俺は楽しかった。 店を出る。 彼女は退屈だったかな、って思うと彼女は買った駄菓子を抱えながら 彼女「すごいね…すごいね。あったかい。こういうの本当にあるんだ。」 とすごく喜んでいた。 彼女「富沢のこともっと知れた気がして嬉しいんだー これが田舎かーふるさとかー」 彼女は高揚して何度も言っていた。 俺がいつも飲んでいたって教えてあげたチェリオを嬉しそうに飲んでいた。
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857 :1 ◆WiJOfOqXmc []:2012/01/17(火) 01:06:29.44 ID:WJObiXhX0 - そのあとは、彼女を連れて歩いて、疲れたら休んで、での繰り返しで
そこら一帯、俺にゆかりのある場所をめぐった。 路端の小川を指して、「中学の時この場所によく自転車をつっこんで走って、水上自転車大会って 言って遊んだんだよ。」とか、 「このお宮にいつも初詣にきたんだ」とか、 「中学の通学路はここで、片想いの子が彼氏と歩いてるの見てショック受けたんだー」とか。 それは、まったく中身のないしょーもないツアーだった。 でも彼女は、「わーすげー!」「こんな感じ?」 とか一つ一つ本当に生き生きとリアクションをとった。 小学校からさほど遠くない母校の中学校まで来て、彼女は突拍子も無いことを言い出す。
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860 :1 ◆WiJOfOqXmc []:2012/01/17(火) 01:11:18.56 ID:WJObiXhX0 - 彼女「毎日、ここの中学校に通ってたんだね…」
俺「そうなるね。いやーなつかしいww」 彼女は正門からの道を指した。 彼女「で、ここを帰ったと…」 俺「うん、そうだね。」 彼女「わたしたち今から中学生ね、同級生の。ひゃーどうしよう。」 俺「ええー!?」 その日は時間が経つのも早く、時分はそろそろ夕方にさしかかろうと している頃だった。
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871 :1 ◆WiJOfOqXmc []:2012/01/17(火) 01:16:32.04 ID:WJObiXhX0 - 彼女「あ、富澤くんだ…!ねえねえ、良かったら一緒に帰ろ?」
俺「そのノリ続けんのー?」 急にこっ恥ずかしくなった。 彼女はこうなるとひかない。 俺「吹石じゃん…ま、いいよ。帰ろうか?」 彼女「やったー!」 彼女が手を差し出して手をつなぐ。 それまで幾度と手を繋いだことはあったけど、この時ばかりはなんていうか すごく恥ずかしかった。 ちなみに、自転車は小学校に置いてあった。
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876 :1 ◆WiJOfOqXmc []:2012/01/17(火) 01:23:49.01 ID:WJObiXhX0 - >>870 のちのちふれますね。
普段爛漫な彼女が、この時は中学生になっていたのか、 急に無口になりだすもんだから、俺は焦った。 空も夕焼けに近づいて、俺は手に変な汗をかきそうだった。 俺たちには珍しく、話す言葉が浮かばなかった。 よく分からないけど、なんだかすごく初々しい気持ちになっていた。 彼女がそういう風にしていたからなのか、なんかいつもの調子とは違っていた。 どうせ自転車取りに行かなきゃ行けないから絶対行くのに、彼女は意味ありげに 「ねえ、ちょっと小学校寄り道してこっか。」と言った。
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878 :1 ◆WiJOfOqXmc []:2012/01/17(火) 01:31:26.04 ID:WJObiXhX0 - 小学校につくと、彼女は疲れちゃったのか、校舎と校庭をつなぐ階段に腰掛けて
「ふう」と息を大きくはいた。 おれは気になって、「待ってて」と言ってすぐに自販で飲み物を買ってきて 彼女に手渡した。 彼女「ごめんね、いつもいつも迷惑かけちゃって…」 俺「何言ってんのさーwおいしそうに飲んで笑顔を見せてくれたらいいんだよw」 そう言うと、彼女はにっこり笑って、立ち上がった。 校舎の脇の犬走りにあったじょうろを持ちだして、水をくみ始めた。 俺「?何すんのー?」
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889 :1 ◆WiJOfOqXmc []:2012/01/17(火) 01:39:21.40 ID:WJObiXhX0 - 彼女は、もう誰もいなくなった校庭に、じょうろで何やら描き始めた。
何をしているんだろう? 「ありがとう」 そこにはこんな文字が浮かび上がった。 俺はハッとした。 急いで彼女のもとに駆け寄った。 そうすると彼女の方から抱きついてきた。 彼女は泣いていた。 彼女「ずっと…これからもずっとずっと…一緒にいてくれますか?」 彼女の言葉が脳内をこだました。
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900 :1 ◆WiJOfOqXmc []:2012/01/17(火) 01:44:36.71 ID:WJObiXhX0 - 俺「ずーっと一緒にいるよ。ずっとね。」
俺は深く抱きしめた。 彼女が泣き止むまで、頭をを撫でながら、 彼女は泣きながらも「うぇ…わんわん…」とおどけて見せた。 俺は、心が傷んだ。 俺はこの子にこれから何をしてやれるんだろう? 一緒にいて、共に歩く、それしかないと分かりながら。 彼女は半泣きのまま、背負っていた小さなリュックから、何やら取り出そうとした。
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906 :1 ◆WiJOfOqXmc []:2012/01/17(火) 01:46:10.62 ID:WJObiXhX0 - ではそろそろ次スレに移行します。
このスレは >>899さんが言ってくれたみたいな感じにしてくれたら幸いです。
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- ゲーセンで出会った不思議な子の話 Part 2
11 :1 ◆WiJOfOqXmc []:2012/01/17(火) 01:49:30.12 ID:WJObiXhX0 - こちらに移行しました。
では、これからまた続きを書いていきたいと思います。
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- ゲーセンで出会った不思議な子の話 Part 2
24 :1 ◆WiJOfOqXmc []:2012/01/17(火) 01:58:25.96 ID:WJObiXhX0 - 彼女は、リュックから色紙をとりだした。
そこには、俺があげたCOACHのデザインのネックレスをして笑っている女の子が描かれていた。 そしてわきに、「富澤へ。いつもいつもありがとう。」という文字と日付が書かれていた。 彼女「それね、私が考えたオリジナルキャラなんだ。 ネックレス、すごい嬉しかったから。お礼にね、描いたの。ありがとう。」 そういって涙目で笑って俺に色紙を渡した。 朝、机で何かしていたのはそういうことだったのか。 俺は、本当に嬉しかった。 今までもらった中で、これほど嬉しいものはないと言っても過言ではないくらいだった。
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33 :1 ◆WiJOfOqXmc []:2012/01/17(火) 02:12:45.54 ID:WJObiXhX0 - 俺は、涙をこらえて、「ありがとう」と言った。
渾身の、心からのありがとうだった。 その絵は暖かくて、彼女自身のようにも思えた。 彼女の頭を撫でると、彼女は楽しそうに「わんわん!」と言った。 なんだかそれがとってもおかしくて、さっきまで泣いていたのに 二人して大笑いした。 もう楽しくなって、叫びながら校庭を二人で走りまわった。
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36 :1 ◆WiJOfOqXmc []:2012/01/17(火) 02:21:01.92 ID:WJObiXhX0 - もう辺りもすっかり夕焼けになっていて、徐々に暗くなりだしていた。
帰り道は上り坂だったので、俺が自転車をひいて、二人で歩いて帰った。 一番星が見え出していた。 彼女は「一番星!」と言うと、また歌い出した。 「さようならーあえなくなーるけどーさみしくなーんかーないよー!」 帰り道は、二人で大合唱だった。 夕闇、宵の口はテンションが高揚する。 「ほーしーになれたらいいなー!」 歌い合うと、あまりのひどさに二人で爆笑した。
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41 :1 ◆WiJOfOqXmc []:2012/01/17(火) 02:25:46.01 ID:WJObiXhX0 - すいません、連投で少々疲れました。ちょっとだけ休みます。
今日はもうちょっとだけ書きますね。 >>38さんのレスが本当にそのとおりすぎて
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54 :1 ◆WiJOfOqXmc []:2012/01/17(火) 02:40:24.18 ID:WJObiXhX0 - 彼女の魅力と言ったら、俺の知らないことをいっぱい知ってて、
俺にできないことがいっぱいできて、一緒にいるとどんなものを見せてくれるか分からない そういうところにあった。 この帰り道でも俺の前で急にタップダンスを披露して 「こういうステップがあってねー」と突然言い出したり、 空のグラデーションを見ては、こういう色合いの空を油絵で表現するときは まずどんな色をおいてー、と色々嬉しそうに語ってくれた。 そのすべてを面白く感じさせてしまうのも、本当に彼女だからこそだった。
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56 :1 ◆WiJOfOqXmc []:2012/01/17(火) 02:54:43.70 ID:WJObiXhX0 - いつも早くのぼりきりたい坂道が、彼女といると永遠に続けとさえ思った。
振り返ると、空はとっぷり暮れていて、月があった。 彼女は「三日月さんが逆さになってしまった!」と叫んだ。 俺「今日も、楽しかったねー」 彼女「うん、昨日もだけど、すっごいすっごい楽しいよ。」 そういって道を進んで行って、とうとう我が家に着く。 これで、今日も終わってしまう。 楽しい時間なんて、すぐに終わってしまう。
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58 :1 ◆WiJOfOqXmc []:2012/01/17(火) 03:00:29.04 ID:WJObiXhX0 - それでは、一旦今日はこのへんで終わりにしようと思います。
明日というか今日は、割と手が空いているのでもしかしたら昼くらいから 更新する可能性も無きにしもあらずですが、とりあえずまた明日の夜に 続きを書きます。みなさんお付き合いありがとうございました。
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- 俺の8年に及ぶストーカー的恋が今日とうとう大円団を迎えた
291 :名も無き被検体774号+[]:2012/01/17(火) 05:28:57.23 ID:WJObiXhX0 - 寝れなくてウロウロしてたらとても面白いスレを見つけた。
見たところ、1には色々わかちあう友人もいるようじゃないか。 1は色々やらかしたけど、男としてわかる部分も大いにある。 きっと1はいいやつなんだろうなあって思ってる。 お前のこれからに幸あれ。
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166 :1 ◆WiJOfOqXmc []:2012/01/17(火) 18:01:45.64 ID:WJObiXhX0 - みんな待たせてごめんなさい。
おまたせ致しました。 そして、彼女が歌っていた歌の歌詞を書いてくれた人ありがとう。 なんだか嬉しくなりました。 なんだか凄いことになってきましたね… ゆっくりで申し訳ないけど、続きを書いていきます。
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183 :1 ◆WiJOfOqXmc []:2012/01/17(火) 18:17:35.11 ID:WJObiXhX0 - 家に着くと、昨日とは変わって母さん一人が
夕飯の支度をしていた。 俺「ただいま」 彼女「お邪魔します」 母「はいおかえりー」 歌いすぎた俺たちは些か声が枯れ気味だった。 妹は、俺たちが帰ってくるなり部屋からとびだしてきた。
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187 :1 ◆WiJOfOqXmc []:2012/01/17(火) 18:24:19.73 ID:WJObiXhX0 - 妹「お二方帰ってまいりましたか!アツアツなことで!」
彼女「ただいま帰りました!留守のあいだ異常はなかったか?」 妹「異常なしですww」 この二人、もうすっかり気が合うようだった。 すると妹は「見せたいもんがあるんです」と彼女だけを部屋に連れてった。 俺はなんのことか察しがついた。 妹は服飾の専門でよく自作で衣装を作ってたから、それを見せたいんだろう。 俺に見せたって仕方ないし、同年代の女の子に見てほしいんだろう。
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193 :1 ◆WiJOfOqXmc []:2012/01/17(火) 18:31:15.58 ID:WJObiXhX0 - 夕飯の時、彼女は興奮していた。
彼女「妹さんすごいですね!可愛い衣装たくさん作ってて… わたしは服飾は専攻してないけどとても感激でした!」 妹は終始ドヤ顔だった。 妹と彼女は本当に気が合うようで、それだけで彼女を実家に連れてきて良かったなあって思えた。 母さんは母さんで、 「うちの子になっちゃいなよ、娘増えたほうが嬉しいわぁ、富澤とチェンジで」 とか言い出すし、まあ男俺一人だから大変だったけど、それはそれで楽しかった。
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197 :1 ◆WiJOfOqXmc []:2012/01/17(火) 18:40:56.79 ID:WJObiXhX0 - 晩御飯も一段落して部屋に戻ると、彼女は俺に聞いてきた。
彼女「今日は富澤の育った場所見れて楽しかったなぁ」 俺「いいとこだったでしょー」 彼女「ねえねえ、わたしが育った場所も見てみたい?」 それは意外な一言だった。今まで決して過去を語ろうとしなかった彼女だから、 俺はゲーセンで会う以前のことはあまり聞こうともしていなかった。 俺「正直、すごく見に行きたい。」 彼女「じゃ、さ。明日は朝早く向こう戻って、色々巡ってみよう。 行ったり来たりの渡り鳥だね〜!」 彼女は手を広げて羽ばたくような仕草をしてみせる。 そういうことになった。 さすがに強行日程すぎないか?と思いつつ俺は彼女に早く寝て休むように促した。
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205 :1 ◆WiJOfOqXmc []:2012/01/17(火) 18:52:07.78 ID:WJObiXhX0 - 俺たちは無駄に早起きした。
日曜だったので母さんも妹もまだ起きてはいなかった。 すると彼女は、「アイアンシェフの出番だー!」などと言い出し、 俺は「きたれ、アイアンシェフ!」というコントを朝からやらされた。 彼女はふざけながらも朝ごはんを作る、といって張り切り、 二人で一緒に朝ごはんを作った。 ベーコンを焼いてスクランブルエッグを作って、 野菜を切るくらいのことだったが、俺は楽しくて仕方なかった。
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208 :1 ◆WiJOfOqXmc []:2012/01/17(火) 18:58:23.93 ID:WJObiXhX0 - 一緒に住んでいたり、夫婦の人は、ずっとこういう日が続くのか
いいなぁ、と俺は思っていた。 二人でバカ笑いしながら騒がしくご飯を作っていたから、 妹も母さんも起きてきた。 今日は俺たち二人で作る、と言い張って 妹はテレビの前、母さんは洗濯を始めた。 ああ、普通の生活だなってしみじみ思った。
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211 :1 ◆WiJOfOqXmc []:2012/01/17(火) 19:12:37.51 ID:WJObiXhX0 - 朝ごはんを食べながら俺は不肖にも
「これは彼女の手料理…」と思いながら食べていた。 朝ごはんを食べたらすぐ家を出る旨を母さんと妹に伝えると 「さみしいねー」「もっといればいいじゃないー」と言われた。 そうしたいのは山々だよ、と俺は悔しかった。 もっと時間があればもっとゆっくりしていた。 この時ばかりは彼女と俺もただただ顔を見合わせるしかなかった。
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215 :1 ◆WiJOfOqXmc []:2012/01/17(火) 19:19:26.60 ID:WJObiXhX0 - 荷物をまとめて、家を出る。
妹が車を出してくれた。 車に乗って、坂をくだる。妹が、「また来てくださいねー」と言うと 彼女がぼそっと「また来れるかな…」 と言ったのが心を突いた。 何もかも、次があるのか分からない。 彼女自身も、その不安と悔しさと戦っていたのかもしれない。
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221 :1 ◆WiJOfOqXmc []:2012/01/17(火) 19:32:21.84 ID:WJObiXhX0 - また、特急列車に乗る。2時間ほどの旅。
そこから在来線で1時間ほど。 それほど長い旅ではないのだが、特急を降りた辺りで彼女の様子がおかしかったことには気付いた。 口数が減っていたのだ。 彼女は、自分から弱音を言うことは無い人だから、俺は嫌な予感がしていた。 在来線になると人が多くて座れなくなる。 俺は、途中駅で彼女を下ろした。彼女は「なんで?」という顔をしていたが、 とりあえずベンチに座らせた。 俺「ねえ、大丈夫?様子が変だよ。無理してない?」
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224 :1 ◆WiJOfOqXmc []:2012/01/17(火) 19:37:56.84 ID:WJObiXhX0 - 彼女「どうして?平気だよ?」
俺「いい?一番大切なのは何よりも体なんだよ?少しでも何かあったら言って」 彼女は悔しそうに言った。 彼女「あのね…少しだけ吐き気がするの…でも本当に少し。 でも言ったら絶対心配かけちゃうと思って…」 俺はやられた、と思った。大袈裟かもしれないが一気に血の気の引いた俺は、 「歩ける?」と聞きつつも彼女を揺らさないように強引におんぶして、改札をぬけた。 彼女は必死で「大丈夫だよ!電車に乗ろ!」と言っていたが、 俺は電車は座れないし人も多いからもうダメだ、と思っていた
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225 :1 ◆WiJOfOqXmc []:2012/01/17(火) 19:43:01.93 ID:WJObiXhX0 - 彼女を傷つけたらだめ、少しでも無理させたらダメ、そう決めていた俺は必死だった。
もし何かあったら全てオレのせいだ、そう思っていた。 駅を降りて、必死でタクシーを止める。 さすがの彼女も諦めて、 「ごめんね…ごめんね…」と繰り返していた。 俺は必死だった。 俺「急いで、〇〇方面に向かってください!」彼女の自宅だった。
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228 :1 ◆WiJOfOqXmc []:2012/01/17(火) 19:48:38.09 ID:WJObiXhX0 - この時、タクシーの運転手がすごく良い人だったのが印象的だった。
彼女のことを車酔いか酒酔いをした人だと思っていたのか、 水飲む?といってペットボトルくれたり、 近道しますよ、といって渋滞の抜け道をしてくれたり。 初老の白髪のじいちゃんだったのだが、動転して入ってきた俺をなだめ、 落ち着かせてくれた。終始Jリーグの話をしていて、お若い方だった。 彼女はタクシーの中で涙目だった。俺はずっと肩を抱いていた。 窓を開けて車で走っているウチに、彼女の口数も増えてきて俺は安心していた。
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232 :1 ◆WiJOfOqXmc []:2012/01/17(火) 19:58:35.96 ID:WJObiXhX0 - 彼女の家につく頃には、彼女にはだいぶ笑顔がもどってきていた。
俺は胸をなでおろした。 彼女はフラフラ歩き出した。 俺「こら、そんなに焦って歩いちゃダメだよ」 彼女「ここが、我が家です!でもどうせ呼ぶつもりだったから」 と笑って玄関先に立ってみせた。 俺は彼女の父さんと母さんに事情を話した。逐一電話報告もしていたが、 叱られることも重々覚悟の上だった。 しかし、ここまで一緒に来てくれてありがとう、と言われた。 とても、申し訳ないことをしてしまった気持ちになった。
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234 :1 ◆WiJOfOqXmc []:2012/01/17(火) 20:06:36.62 ID:WJObiXhX0 - 大事をとって、彼女は少し横になって休ませることにした。
「富澤とわたしの母校に行くのー!」と言ってきかなかったが、 一番大事なのは体調だ。決まってる。 みんなで説得して、なんとか彼女を寝かせた。 そのかわりに俺は彼女が目覚めるまで家にいて欲しいと言われ、家にいることになった。 しばらく彼女が部屋で寝ているのを見守っていたが、居間におりて 彼女のお父さんとお母さんと話した。
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239 :1 ◆WiJOfOqXmc []:2012/01/17(火) 20:15:22.69 ID:WJObiXhX0 - 空気は重かった。あまり話すことも見当たらないんだ…
とりあえず俺は、今日はすいません、と真剣に謝った。 母「気にしないでね。」 父「君はいつもいつも、娘の病室にやってきてくれるね。 君が来てくれるから、あの子はいつも本当に楽しくやっていられる。 謝りたいのは、ろくに何もできないこっちだよ。」 俺は、黙っていた。何を言っていいかまったく思いつかなかった。 母「あの子、本当にいつもいつも富澤君のこと話してくれるのよ。 富澤くん、私にもよくマメに連絡くれるでしょ。本当にありがとうね」 真面目な話はこれくらいだった。そのあとは、それを忘れたいかのように テレビを見ながら、他愛もない世間話をしていたと思う。
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245 :1 ◆WiJOfOqXmc []:2012/01/17(火) 20:27:22.80 ID:WJObiXhX0 - しばらくすると彼女が起きてきて、
俺を部屋に手招きした。 「もう、すっかり良くなったから。部屋で話そ」と言われた。 彼女「今日はごめんね…。行きたいところたくさんあったのに…」 俺「それは仕方ないよ。でも吹石がなんともなくて本当に良かった。 それだけで俺は嬉しいよ。 辛い時は、辛いって言わなきゃだめだからね?」
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249 :1 ◆WiJOfOqXmc []:2012/01/17(火) 20:36:21.51 ID:WJObiXhX0 - そうすると彼女は揚々と歌い出した。
「愛とはあなたのためだととかいったらー!うたがわれるけどー がんばっちゃうもんねー!!」 そう歌ってにっこり笑った。それはイエモンのlove love showだった。 俺「頑張っちゃうんだw」 彼女「うん、頑張る。」 彼女「だからさ、今日は聞いて欲しいんだ。」
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255 :1 ◆WiJOfOqXmc []:2012/01/17(火) 20:45:27.80 ID:WJObiXhX0 - 彼女「今日はわたしの育った場所まわれなかったから、
私の昔話をしますーぱちぱち」 俺「きかせてもらおうじゃないか」俺も若干の悪ノリをしていた。 彼女「結論から言ってわたし中学行けてないです」 そう言って彼女は苦笑いをこぼした。 俺は驚いたけど、「なにかあったんだ?」と優しく尋ねた。
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259 :1 ◆WiJOfOqXmc []:2012/01/17(火) 20:47:00.77 ID:WJObiXhX0 - >>251 wwww 冷静なご判断を!w
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261 :1 ◆WiJOfOqXmc []:2012/01/17(火) 20:52:49.72 ID:WJObiXhX0 - 俺は、彼女の話に耳を傾けることにした。
彼女「わたし、中学の時体弱かったんだーだからね、しょっちゅう 学校休んでたんだー。」 彼女「本当にね、すぐ体壊しちゃうから。でもさ、あまりに頻繁に 学校休んでるうちに、ういちゃってさー」 彼女は笑いながら話しているけど、辛そうだった。
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263 :1 ◆WiJOfOqXmc []:2012/01/17(火) 20:58:03.04 ID:WJObiXhX0 - 彼女「学校行くとさー。誰もまわりにいなくなってて…
昼ぐらいから行くと、給食泥棒とか言われちゃってさw」 俺は黙って彼女の目を見続けた。 彼女「いじめられてたとか、あんまり言いたくないんだけどさ。 ある日行ったらわたしの机ごとなくなってたんだー。 それで、あれ?学校くるんだ?とか言わちゃって。」 彼女「それから中学には行けなくなっちゃった。」
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269 :1 ◆WiJOfOqXmc []:2012/01/17(火) 21:04:02.79 ID:WJObiXhX0 - 彼女「その頃なんだなー。友達もいなくてさー。
お兄と一緒にゲーセン行くのだけが本当に楽しかったよ。 アケゲーの人とのつながりとか、楽しさの共有とか、わたしは肌で感じた。」 俺はぐっと涙をこらえていた。 彼女「そこでね、本当に色んな人に会えたんだよ。」 彼女「わたしね、高校からは私立に行ったんだけど」 彼女「てて子、覚えてる?あの子とも本当に偶然ゲーセンで会ったの」
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- ゲーセンで出会った不思議な子の話 Part 2
271 :1 ◆WiJOfOqXmc []:2012/01/17(火) 21:13:30.08 ID:WJObiXhX0 - 彼女「中学の時ゲーセンで出くわしてね、当時って、まだそんなに若い
女の子とかゲーセンにほとんどいなかったの。 だからお互いに気になって話したら意気投合して」 俺は話しいることが信じられなかった。彼女にとってゲーセンという存在が ここまで大きいなんて、にわかには信じられなかった。 彼女「そしたらてて子は中高一貫の私立に通ってる子で、 少し遠いけど私はその高校に行こうって決心した。」
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