- 絵を描き続けたら人生救われた
442 :華丸 ◆vk8BsG8fow []:2011/12/13(火) 17:02:42.36 ID:P1VUjXiJ0 - みんなこんにちは。
こんな時にアクセス規制くらって、どうしようかめっちゃあわてた。 なんとか2ちゃんビューアを導入して戻ってきた。 ここまで読んでくれてありがとう。これを読んで何か感じてくれたなら嬉しい。 時間があったら是非最後まで付き合ってください。
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443 :華丸 ◆vk8BsG8fow []:2011/12/13(火) 17:10:18.61 ID:P1VUjXiJ0 - 今日も、ぼちぼち続きを書いて行きたいと思います。
話は折り返し地点くらいまできました。
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448 :華丸 ◆vk8BsG8fow []:2011/12/13(火) 17:17:03.74 ID:P1VUjXiJ0 - 夏合宿。
みんな浮かれ気味である。 俺たち美術部一行は、とある片田舎の避暑地に行った。 バスでは、俺とそに子は隣に座らなかったが、 それをひたすらにブーイングされた。 なんだかんだで遠藤と仲よかった俺は、何故か遠藤の隣だった。 遠藤「今年の一年女子をこの合宿で見極める…」 俺「がんばれよ」 でも遠藤は途中からバス酔いしたので静かで楽だった。
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451 :華丸 ◆vk8BsG8fow []:2011/12/13(火) 17:23:52.54 ID:P1VUjXiJ0 - 夏合宿では海に行くか高原に行くか半々くらいだった。
女子が多い部活。 俺は正直海に行きたくて仕方なかった。 でも行き先は高原だった。 俺「着いた〜バスって楽しいねえ修学旅行みたい」 遠藤「水…水…」 コテージ?ログハウス?なんて言うんだろうそんなとこに皆で泊まる。 でも管理人の老夫婦がいたし民宿にも近いのかな。
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453 :華丸 ◆vk8BsG8fow []:2011/12/13(火) 17:30:06.93 ID:P1VUjXiJ0 - 俺「すごいなここ、バドミントンとかバスケ、テニスで自由に遊べるのな」
遠藤「バスケしようぜ〜」 近くには牧場もあったり、自由にスポーツできたり。 緑が綺麗でとてもいいところだった。 そに子「華丸さんバドミントンしようよ〜」 俺「遠藤、そういうことだから。」 遠藤「いやいや混ぜてくれよ」
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454 :華丸 ◆vk8BsG8fow []:2011/12/13(火) 17:34:43.77 ID:P1VUjXiJ0 - この時ばかりは青春ってやつだったかもしれない。
今思い出すとむずがゆい、でも楽しかった。 明るいうちはみんなでバドミントンとかして、 近くの小川に行って裸足で入って足怪我したり。 食べれる野草を見つけてみんなで騒いだり。 夜には肝試しでお化け役になって樹の枝に腕ひっかけてすりむいたり。 けっこう怪我したwでも楽しかった。
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456 :華丸 ◆vk8BsG8fow []:2011/12/13(火) 17:44:21.59 ID:P1VUjXiJ0 - 夜。自由時間。
夕飯も終わってみんなマターリタイムである。 俺は建物の外でまだ吸い始めたばかりの煙草を吸っていた。 そうすると、部長がきた。 部長「くさいよ、それ」 俺「あ、すいませ…部長相談があるんです。」 部長「何よw 改まっちゃってw」 俺「俺大学多分やめます」
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457 :華丸 ◆vk8BsG8fow []:2011/12/13(火) 17:48:47.53 ID:P1VUjXiJ0 - 部長「何トンチンカンな事言ってんの?」
俺「いや、だから…俺は美術教師になりたいんですよ、はい…」 部長「初めて聞いたな」 俺「そのためには、今の大学じゃ絶対無理じゃないですか。 やめて、今から美大は厳しいですから、学芸の中等美術科に…」 部長「うんうん、分かった分かったちょっと待って。」 俺「はい…」 部長「華丸は中高で美術部の経験があった?」 俺「いえ、まったく…高校では一度も美術の授業すらなかったです…」
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459 :華丸 ◆vk8BsG8fow []:2011/12/13(火) 17:56:43.53 ID:P1VUjXiJ0 - 部長「じゃあ、美術の先生がどんなことするか、どんな人かも分からないんだね」
俺「まあ…そうなります…」 部長はいつになく真剣だった。部長はスタイルがよくて、 ハキハキしていて、出来る女性って感じだった。だから尚更気迫があった。 部長「華丸がなんで急にそんなこと言い出したのかは分からない。 まあ、なんとなく察しもつくんだけど… よく考えた方がいいよ。そんなに甘いもんじゃないよ。」 俺「で、でも…」 部長「こんな言い方してごめんね。でももしそれで大学やめて美術の先生になれなかったら? なれたとして、一生続けられるかな。」 部長は芸大受験に何回か失敗してからうちの大学に来ていたから、 学年一個上とは言え、歳は離れていた。
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460 :華丸 ◆vk8BsG8fow []:2011/12/13(火) 18:06:26.23 ID:P1VUjXiJ0 - 俺はもしかしたら、「頑張れ」とか「応援してる」とか
そういう言葉を期待していたのかもしれない。 学芸の受験自体は、実技がそこまでできなくても 勉強をめっちゃ頑張ってセンターでいい点をとれば可能性はあるかもしれない ということも分かっていた。 だから部長みたいな人に背中を押して欲しかったんだろう。 俺は落ち込んだ。 一歩踏み出す、きっかけを与えて欲しかった。
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461 :華丸 ◆vk8BsG8fow []:2011/12/13(火) 18:13:38.06 ID:P1VUjXiJ0 - そんなこんなで、期待していた夏合宿は終わりを迎える。
俺はここで心機一転するはずだったのに…と落ち込んでいた。 完全に他人に頼っていたと思う。 でも俺は挫けなかった。 夢を追えなかった板尾のことを思うと、美術教師は諦められなかった。 この時の俺は本当に取り憑かれたように美術教師になる、って言ってたんだけど それが本当の自分の気持ちだったのか、 板尾に対する自分の想いだったのかは、未だによく分からない。
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462 :華丸 ◆vk8BsG8fow []:2011/12/13(火) 18:20:28.64 ID:P1VUjXiJ0 - 合宿が終わると、
助けを呼ぶ声があった。 コミケで本を置かせてもらうことになっている板尾の友人だった。 友人「華丸君、今ヒマかな?原稿がやばいんだよ、手伝ってくれないかな…」 俺「おお、いいよいいよ。そんなにやばいんか。」 夏のコミケの締め切りギリギリ。まさに友人は修羅場状態であった。 そして、この一本の電話が俺にとって大事な分かれ道だった。
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463 :華丸 ◆vk8BsG8fow []:2011/12/13(火) 18:26:23.55 ID:P1VUjXiJ0 - 俺は美大近くの友人の家に行った。
友人「ごめんねー手伝わせて」 俺「いいよいいよーそれより聞いて欲しいんだけど」 俺たちは作業しながら会話をした。 友人「どうしたの?」 俺「今から、学芸行って美術教師になりたい、それって難しいのかな」 友人「そんなことないんじゃないー?」 軽い。予想外の反応だった。 友人「俺の友達で学芸とか教育系の美術科?受けてここに来た子とかいるよー」 俺「え、本当に?」
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464 :華丸 ◆vk8BsG8fow []:2011/12/13(火) 18:32:19.08 ID:P1VUjXiJ0 - 友人「その子、板尾とも仲良かったよ?もしかしたら会ったことあるんじゃない?」
俺は記憶の糸をたぐりよせた。確かに去年はよく板尾の美大に潜り込んで、 色んな人と関わった。 俺「なんて子?」 友人「石田だよ、石田。」 俺「あ、俺その子知ってるよ……」 その子は石田ゆり子にちょっぴり似ているので石田と呼ぶ。
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465 :華丸 ◆vk8BsG8fow []:2011/12/13(火) 18:42:41.74 ID:P1VUjXiJ0 - そもそも、石田さんとはそに子と初めて会う前から面識があった。
大学1年の5月くらいにもう会っていた気がする。 板尾が美大の連中を色々紹介してくれた時に、その中にいたって感じだった。 まだまだ異性に距離を置いていた時だったし、 もちろん連絡先も知らなかった。会ったことも4,5回あるくらいだった。 美大に遊びに行った時に、構内で出くわせば、「あ、ども…」くらいの感じだった。 それでもだんだん慣れて話すこともあったが、とにかく「板尾ありき」の存在だった。 板尾が亡くなってからは会ったことはなかった。
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466 :華丸 ◆vk8BsG8fow []:2011/12/13(火) 18:46:41.49 ID:P1VUjXiJ0 - ただ俺は板尾が紹介してくれた美大の連中のことはほとんど忘れていた。
この友人を除いて。 顔くらいは覚えていたが、名前までハッキリ覚えている人なんてほとんどいなかった。 ただ、俺は石田さんのことは覚えていた。 俺は石田さんを初めて見た時から、なんとなく「可愛い」とは思っていた。 好きとかそんなんじゃなく、外から傍観する感じで。 だから記憶にも割と残っていたのだ。
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467 :華丸 ◆vk8BsG8fow []:2011/12/13(火) 18:51:17.51 ID:P1VUjXiJ0 - 友人「じゃあ原稿一段落したら、美大に来なよ。
石田も呼んで、話聞く?そのついでにさ、ほら、美大の中色々見たりする?」 俺「それはいい考えだね。じゃあそに子も連れてくるよ。」 友人「きっと彼女も色々話聞きたいかもねwできるだけ友達呼ぶよw」 そう、板尾の友人は、俺とそに子と板尾が美大巡りの約束をしたことを 知っている唯一の人間だった。 あの時の計画が、こんな形で実行されるとは。 でも俺は楽しみだった。そに子もきっと喜ぶだろう。
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469 :華丸 ◆vk8BsG8fow []:2011/12/13(火) 19:13:35.18 ID:P1VUjXiJ0 - 書くの遅くてゴメン…
お盆にあるコミケの後にするか、前にするかで、悩んだ。 でも善は急げだって言って、コミケの前に行くことにした。 そに子にも話すと、 そに子「え、今なのww でも嬉しい、すごく」 と言ってくれた。そに子も、板尾の死にはショックを受けていたから。 そに子「どうしよう。スケブ持ってくよね?あとは…」 そこまでワクワクしてくれると、こっちも嬉しい。 良かった。 そして美大に行った。俺はそに子と二人で向かった。 正門の前に友人が立っていて手を振った。 友人「こっちこっちー」
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470 :華丸 ◆vk8BsG8fow []:2011/12/13(火) 19:18:46.94 ID:P1VUjXiJ0 - 友人「みんな来てくれるかと思ったけどねーwさすがに夏休みだし予定がw
でも石田は来てくれたよー良かったね」 石田「久しぶり!」 二人はニコニコしてなんだか楽しそうだった。 俺「久しぶりだね。今日はありがとう。」 自分でも分かるくらいもう女性に対しての苦手意識はなくなっていた。 俺はとにかく早く学芸受験の相談も聞いて欲しかった。
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474 :名も無き被検体774号+[]:2011/12/13(火) 19:26:55.44 ID:P1VUjXiJ0 - 友人「長期休暇中だからねー、ほとんど建物の中入れないけど
色々見てまわろうかー」 美大の中を歩いていると、色々思い出した。 よく板尾に案内してもらった。 一緒に歩いた、去年のコミケのことも思い出された。 この計画も本当は…なんて思った。 なんだかとっても辛くなった。 そに子がずっと笑っていたのが救いだったかもしれない。 板尾のおかげでこの子にも会えたし… そんな感傷モードに浸っているうちに美大探訪は過ぎていった。
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475 :華丸 ◆vk8BsG8fow []:2011/12/13(火) 19:33:07.89 ID:P1VUjXiJ0 - 支援ありがとう。ごめんなんだか書くの辛くて少し遅くなるかも。許してくれ。
友人「ほんじゃ、そろそろゆっくり話とかもしたいし、 俺の家に行ってゲームでもやろうよ」 友人はゲーム好きだった。 確かにゆっくり話もしたいとこだったし、家に行くってのはみんな賛成だった。 石田「あたしなんか作るねー」 そに子「わ、わたしも…手伝います…」 そに子は実家暮らしなのでそこまで料理はできなかった。 俺は、女性陣は可愛いなあ、なんて心のなかで思っていた。
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477 :華丸 ◆vk8BsG8fow []:2011/12/13(火) 19:39:47.02 ID:P1VUjXiJ0 - 友人の家につくと、石田さんが料理を作った。
そに子も少しは頑張ったらしいw 美味しかった、なんか感動した。 同級生の女の子が作った料理… その後そに子は友人とゲームを始めた。 俺は色々と石田さんに話を聞くことにした。
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478 :華丸 ◆vk8BsG8fow []:2011/12/13(火) 19:52:06.23 ID:P1VUjXiJ0 - 俺「実は自分、学芸に行って美術の先生になりたくて…」
石田「らしいね。聞いたよ。あたしも受けたよ〜学芸」 石田「現実的に考えるなら母校の高校の美術の先生とかにも相談したら…? あたしも高校の時は受験のために美術の先生と仲良くなったよw」 石田「田舎だから予備校も長期休暇とかしか行けなかったし」 俺「なるほどなあ。」 この日話していて分かったんだが、石田さんと俺は 地元が一緒だということも分かった。これには本当に驚いた。
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479 :華丸 ◆vk8BsG8fow []:2011/12/13(火) 19:56:30.34 ID:P1VUjXiJ0 - 石田「華丸君はきっと頭いいんだから、まず勉強頑張ればセンターで差がつくし
受験は大丈夫。あたしは応援しちゃうな〜」 これが美大生の思考なのだろうか。迷わず応援してくれた。 俺は自分の補って欲しいところを補ってくれるような、 そんな存在が現れた気がした。 石田「華丸君絵を描くの好きなんだね。板尾も上手かったもんね」 話は板尾の話にもなった。 同じ地元に受験、板尾の話…共通の話題が尽きることはなく、 石田さんとは本当に長い時間話している気がした。
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481 :華丸 ◆vk8BsG8fow []:2011/12/13(火) 20:02:22.31 ID:P1VUjXiJ0 - その日はそんな感じで過ぎた。
そに子に帰り道でちょっとすねられた。ずっと話していたせいだ。 そに子「でも学芸受験のこと相談できる相手できてよかったね。 わたしはそういうの全然分からないし…」 あんたはエライ子だよ。 そして、このすぐ後にコミケが来る。 楽しみ半分、不安半分。 去年のことが懐かしく感じられた。
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482 :華丸 ◆vk8BsG8fow []:2011/12/13(火) 20:05:26.39 ID:P1VUjXiJ0 - この時までは、本当に失うものが何もなかったんだと思う。
夢を追おうが、捨てようが、自分の選択次第だし、自由だった。 この時までの自分はある種幸せだったなあと思う。 悩んで、苦悩して。 色んな人に迷惑かけてみて。
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483 :華丸 ◆vk8BsG8fow []:2011/12/13(火) 20:09:11.22 ID:P1VUjXiJ0 - そして、夏のコミケが来た。
夏コミは青春って感じがして、ほんとうに楽しい。 あくまで個人的感覚だが、若さと情熱で溢れている。 俺は友人のスペースで、そに子と友人と一緒に、本を売った。 前回同様、マッタリとだが本ははけてくれた。 すると、予期せぬ人が訪ねてきたのだ。
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484 :華丸 ◆vk8BsG8fow []:2011/12/13(火) 20:13:37.25 ID:P1VUjXiJ0 - 来たのは、石田さんだった。
石田「よ、頑張ってるねー」 友人「おっすー」 俺「あーおつかれー」 正直、ドキッとしてしまった。 純粋に、来てくれたことを嬉しく感じた。 この時、そに子はどんな風に思っていたんだろうか。
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485 :華丸 ◆vk8BsG8fow []:2011/12/13(火) 20:16:48.03 ID:P1VUjXiJ0 - その後は特にイベントもなく
コミケ終わった後 石田さん含めて俺たち4人でメシを食べに行った。 俺は、その最中も石田さんに受験関連のことを聞き続けた。 石田さんに少し惹かれていたのか、 「美術の先生のなるんだ」ってことばかり考えていたのか。 両方だったと思う。 そに子はどう思っていたのだろうか。
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486 :華丸 ◆vk8BsG8fow []:2011/12/13(火) 20:19:37.07 ID:P1VUjXiJ0 - その後、定期的に石田さんから連絡がくるようになった。
俺はそれが悪い気はしなかった。 もちろん、そに子への好意は全然生きていたし、 石田さんとの関わりは自分でもよく分からない感情だった。 でも9月に入ると、そんな寝ぼけたことを言ってられない 大きな壁にぶち当たる。
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487 :華丸 ◆vk8BsG8fow []:2011/12/13(火) 20:23:24.35 ID:P1VUjXiJ0 - 母の体に癌が見つかった。
元々俺の家は片親だった。 母と、社会人の兄。稼ぎ手も二人いたので、経済的に困ったことはなかったが。 兄に一度帰ってくるように言われた。 母は入院したらしい。 「これからどうなるんだ?」 「母さんは、どうなるんだ?」 混乱した。とりあえず実家に帰ることにした。
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490 :華丸 ◆vk8BsG8fow []:2011/12/13(火) 20:29:40.85 ID:P1VUjXiJ0 - 母は手術をした。
手術は上手くいった。しかしリウマチを発症した。 リウマチとは、手足がかたまって、時期に動かなくなる病だ。 それに進行の早いものだったらしい。 兄「母さんはなんとか大丈夫だったけど、分かってるよな?」 俺「うん…もう働けないし、段々世話も必要になる、ね…」 兄「お前大学辞めるとか言ってたけど」 兄「今まで俺たち散々母さんに迷惑かけてきたんだから」 俺「……」 兄「諦めろ。母さん生きているウチに自立して、立派なとこ見せるんだぞ」 この時俺は号泣していた。 どうしてこんなことになってしまったんだろう? 自分が世界で一番不幸なんじゃないか、って思うくらいだった。
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491 :華丸 ◆vk8BsG8fow []:2011/12/13(火) 20:36:48.85 ID:P1VUjXiJ0 - 夢が敗れた気がした。
夢を追いたい、でも今から大学に一から行き直したら… 母が生きてるうちに、立派な社会人になりたい… 母にはどれだけ迷惑をかけたか。 幼い頃から、俺たち兄弟をずっと育ててくれた。 いつか恩返しをする。 そして、俺は人一倍人の死に敏感になってた。 板尾を失った時のことを思い出して、どうしようもなくなった。 諦める。そして真面目に就活して、絵は趣味にする… そう、決心した。
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493 :華丸 ◆vk8BsG8fow []:2011/12/13(火) 20:44:14.84 ID:P1VUjXiJ0 - 母が退院するまでしばらく俺は実家にいて、
兄と協力して車を出したり、病院に行ったりしていた。 地元にいると大学の友だちと会えなくて辛かった。もう授業も始まっていた。 でも、俺はこの「諦める」と決心した時、 まず最初に石田さんにメールした。泣きながら。 特に深い意味はなかったと思う。今まで散々学芸受験の相談にのってもらったし、 諦めるなら、はやくそのフシを石田さんに伝えるべきだと思った。 もちろんそに子とは電話とかたくさんしていたし。 俺は石田さんに細かい経緯とかも伝えた。 今思えば、石田さんにはそんなに込み入った事情まで言うべきじゃなかったって反省してる。 でもこういう時って、本当に誰かに話したくなるんだよな。 俺辛い、辛いんだよ〜って。
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495 :華丸 ◆vk8BsG8fow []:2011/12/13(火) 20:54:00.76 ID:P1VUjXiJ0 - 話ももう佳境です。八割くらいきたと思います。
今日中に終わることを目標にします。ごめん、長くて。 それから数日経った日の夜、石田さんから、 「〇〇駅に来て」とだけのメールが来た。 その駅は俺の実家の最寄りだった。 駅に行くと、石田さんが笑ってベンチに座っていた。 田舎の駅だから、平日夜でも人はまばらだった。
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497 :華丸 ◆vk8BsG8fow []:2011/12/13(火) 20:58:11.18 ID:P1VUjXiJ0 - 石田「ちょうど私も地元に帰ってきたからさー、元気かなと思って」
明らかに嘘だった。こんな時期に、大学生が帰郷なんかするか? まあ本当に何かあったのかもしれないが。 俺「そうなんだ」 石田「直接話したかった…元気かなって。無理してるんじゃないかって」 石田さんはきまり悪そうに笑った。 なんて言ったらいいか分からなかった。 上手く話せなくて何時間くらいそこに座っていたんだろう。
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502 :名も無き被検体774号+[]:2011/12/13(火) 21:04:06.78 ID:P1VUjXiJ0 - 今思えば、石田さんは真っ直ぐな人だったんだろう。
一瞬美保を想起したが、それは考え過ぎだった。 石田「華丸くんはさ…そに子ちゃんが大事だよね。」 俺「誰よりも大事だと思うよ。」 石田「わたしはさ…ダメかな、ダメかもね…」 俺「……」 嫌な予感はした。告られたらリア充とか言われそうだが、 この時の精神状態で、誰かを振るというのは、きつかった。 なにしろ石田さんとの関係性は失いたくなかった。
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506 :華丸 ◆vk8BsG8fow []:2011/12/13(火) 21:07:46.30 ID:P1VUjXiJ0 - 石田「あたしはね…華丸くんが好きなんだ…」
嬉しいことである。とても嬉しい。 でも、今言わないで欲しかった。もっと別に仲良くやっていく方法もあったはずだ。 俺「ありがとう…でも…俺は…」 石田さんは強かった。表情一つ変えなかった。覚悟もしていたのかな。 石田さんは笑って、 石田「じゃあさ、儀式しようよ!」 と言い出した。 俺「儀式…?」
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508 :華丸 ◆vk8BsG8fow []:2011/12/13(火) 21:08:46.22 ID:P1VUjXiJ0 - >>505 ありがとうwでもなんやかんや言って実はまだけっこう長いから、
今日中には終わらないかもw
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509 :華丸 ◆vk8BsG8fow []:2011/12/13(火) 21:14:21.47 ID:P1VUjXiJ0 - 石田「わたくし、石田ゆり子は、博多華丸のことが、大好きです。
良かったら…付き合ってください!」 俺「ありがとう、ごめんなさい…」 石田「ふられちゃった」 石田さんはニシシとばかりに苦笑いした。 正直、その時俺は気持ちが持って行かれるんじゃないかと思った。 石田「恋人がいる人に告白するなんて、あたし卑怯だー」 石田「そに子ちゃんはいい子だもんね、あたしもがんばる」 何も言えなかった。
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511 :華丸 ◆vk8BsG8fow []:2011/12/13(火) 21:17:31.10 ID:P1VUjXiJ0 - 石田「華丸君は頑張りすぎないでね」
石田さんはそう言って改札をくぐっていった。 最後まで何も言わなかった気がする。 遠くで手を振られて、ただ振り返すしかなかった。 あまりに叙情的な景色だったから、ハッキリと覚えている。 自分でもなんだこの状況?ってなった。 心にぽかんと穴が開いたみたいだった。
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515 :華丸 ◆vk8BsG8fow []:2011/12/13(火) 21:21:11.09 ID:P1VUjXiJ0 - さて、このタイミングで申し訳ないのですが、ちょっと晩飯を食べてきます。
なので30分ほど時間あけて、また再開しますね〜
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519 :華丸 ◆vk8BsG8fow []:2011/12/13(火) 22:11:21.17 ID:P1VUjXiJ0 - 晩御飯からもどりました。
正直、こんなにたくさんの人に自分の話を 見てもらえるなんて思ってもいなかったです。 ここまで続けるのは大変でしたが、みんなの応援のお陰です。 あと少しになってきましたが、最後まで付き合って頂けたら嬉しいです。
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526 :華丸 ◆vk8BsG8fow []:2011/12/13(火) 22:45:45.48 ID:P1VUjXiJ0 - 石田さんとの時間は、夢を見ているかのようだった。
まるで、中学生に戻ったかのような、そんな青臭い自分を感じた。 家に戻ると兄が玄関にいた。 兄「女か。」 昔から兄は鋭かった。 母の病院に行かない夜は何があってもいいように 一緒に家にいて、二人で格ゲーをやっているのが普通だったからだ。 遅い時間に帰ってきたから不審に思ったんだろう。 兄「地元の友達にでも会ってきたのか」 俺「ま…そんなとこ…」
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528 :華丸 ◆vk8BsG8fow []:2011/12/13(火) 22:52:33.79 ID:P1VUjXiJ0 - 俺は、次の日かかりつけの眼科に行った。
思えば、小さい頃はよく母と病院にきたものだ。 この眼科もそうだった。 俺は診察の時先生に言った。 俺「実は母が…」 先生「そんなことがあったのか…華丸君が小さい時から知ってたからなあ 辛いけど、今はそばにいてあげて」 先生は初老のじいちゃんだ。 これが田舎の地元のいいところだ。 地元に戻れば、家族みたいな人がたくさんいる。 俺は元気をだそうと思った。
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529 :華丸 ◆vk8BsG8fow []:2011/12/13(火) 22:58:29.16 ID:P1VUjXiJ0 - このじいちゃんにも、半年に一回の受診でしか会わないのに、
こうやって心配してくれるんだ。 石田さんだって、心配だったんだろう… 母のことで鬱屈としていた俺は元気をだそうと思った。 じきに、母は退院した。癌の方は一旦おk、ということになったようだった。 これからは自宅で、クスリで再発防止の抗がん治療をするようだった。 しかしリウマチがあったので、しばらく自宅で療養することになった。 あまり大学を休み続けるわけにもいかなかったので、俺は実家から戻ることにした。
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530 :華丸 ◆vk8BsG8fow []:2011/12/13(火) 23:05:12.39 ID:P1VUjXiJ0 - 久しぶりにもどってきた。
大学、絵、何もかもが久しぶりに思えた。 そに子がすごく心配してくれた。 なんだかほっとした。 だんだんと、日常をとりもどしていく気がした。 できる限り、実家のことを思い出さないようにしていた。 逃げていたのだろう。向き合うのが辛かった。
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531 :華丸 ◆vk8BsG8fow []:2011/12/13(火) 23:08:14.48 ID:P1VUjXiJ0 - 目的を失った俺はどうしたらいいか分からなかった。
夢…就活… この頃絵を描くのがすごくつまらなくなった。 なんで描いているんだろう? 分からなくなった。 板尾がいたらなんて言ってくれたろう。 なんでアイツはあんなに絵を描くのが好きだったんだろう。 俺は分かって気になっていたが、分かっていなかったんだ。
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534 :華丸 ◆vk8BsG8fow []:2011/12/13(火) 23:14:57.61 ID:P1VUjXiJ0 - そもそも、俺が絵を描くきっかけだったのは板尾。
板尾がいなくなって、俺は板尾の代わりに夢を追うような、 そんな気持ちで居たのかもしれない。 異性不信を克服するため、また恋ができるように、落ち込んでいた俺を板尾が 変えるために絵を薦めた。 今ではすっかり異性不信もなくなったし、 そに子がいた。 絵を描く意味が分からなかった。絵を描く必要があるのか。 そう考えだした。
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- 絵を描き続けたら人生救われた
535 :華丸 ◆vk8BsG8fow []:2011/12/13(火) 23:18:46.30 ID:P1VUjXiJ0 - そんな俺に、そに子が言ってきた。
そに子「冬のコミケの当落、もうすぐだね〜」 コミケ…? 俺は夏にそに子と一緒に冬コミの申し込みをしたのだった。 と言っても、そに子が張り切っていたので、全部そに子に任せていたのだが。 俺「コミケ…ね。一人で本出すってのでも…いいんじゃない?」 そに子「…え?」 俺「いや…絵を描ける気がしないし、本出せないわ、絶対」
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