- 憂「あずさちゃん、手術が必要なんだって...」
91 :名も無き被検体774号+[]:2011/03/15(火) 01:59:36.44 ID:MK+uhnya0 - >>1だが、>>56以下を書き直したので、こちらを正式版ということでご勘弁を。。
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- 憂「あずさちゃん、手術が必要なんだって...」
92 :名も無き被検体774号+[]:2011/03/15(火) 02:00:17.09 ID:MK+uhnya0 -
「。。。。。。。」 「....................ん」 「...ず............ん」 「あず...に.......」 「あずにゃ......」 パチッ 唯「あずにゃーーん!」 梓「ゆ、い、せん、ぱい...?」 唯「麻酔醒めたんだね〜? 良かった〜〜」 梓「唯、先輩...。他の人たちは...? お父さんとお母さんは...?」 唯「今はみんな向こうの方にいるみたいだよ〜」 梓「そうで、すか...」 唯「あずにゃん、手が冷たくなっちゃってるね。あっためてあげよう」ギュッ 梓「唯先輩...。恥ずかしいですよ...」 唯「あずにゃん気にしないで! あずにゃんは今病人なんだからさ!」スリスリ 梓「ど、どうも...」 梓(唯先輩の手、あったかくて気持ちいいなぁ...)
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93 :名も無き被検体774号+[]:2011/03/15(火) 02:00:47.80 ID:MK+uhnya0 -
唯「手術は成功だよあずにゃん。私がいるから大丈夫だよ、あずにゃん、よしよ〜し」ナデナデ 梓「もう、こんなところでまで子供扱いしないでくださいよ...。唯先輩はいつからいてくださったんですか...?」 唯「ん〜〜? ずっとだよー。手術からずっと!」 梓「ほ、ほんとう、ですか...。ありがとうございます...」 唯「気にしないで〜。かわいいあずにゃんの為だもん! これからはいつだって一緒にいるから! さみしくないよあずにゃん!」 梓「何ですかそれ...。大学入ってもベタベタしてたら困りますよぉ...」 唯「えへへ、あずにゃん。大学入ったら、りっちゃんと澪ちゃんとムギちゃんが待ってるから、みんなでまたけいおんやろうね!!」 梓「もぉ...、大丈夫ですよ...。唯先輩もですよ...。またギターいっぱい弾きましょうね...」 唯「もちろんだよ! またみんなで放課後テイータイムだよ!」 梓「はい...。それはもう...」
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94 :名も無き被検体774号+[]:2011/03/15(火) 02:01:19.64 ID:MK+uhnya0 -
唯「ねー、あずにゃん」 梓「はい......」 唯「あずにゃんは大学に入ってね、それから、みんなとまた同じような部活の時間を過ごしてね、それでお茶して、おしゃべりして、ギターも弾いて...」 梓「...唯先輩...」 唯「いっぱい良い音を聴かせてね! できれば大学の後もずっと、いっぱいいっぱい、みんなの音を聴いていたいなぁ...」
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95 :名も無き被検体774号+[]:2011/03/15(火) 02:01:42.09 ID:MK+uhnya0 -
梓「唯先輩、何ですかそれ...。まるで唯先輩がどっかいっちゃうみたいです...。唯先輩も一緒に演奏するんですよ...」 唯「そうだね...。そうだね...。いつもあずにゃんの側にいるからね...。私も演奏するからね...」 梓「そうですよぉ...。いつでも一緒ですよ。私たちは放課後ティータイムですから...」 唯「えへへ、あずにゃん、約束だよ...! ずっと、ずぅっと、私たちの音楽を...」 梓「はい、当たり前です...」 唯「そうだね、ありがとう、あずにゃん...。ありがとう...」 。。。。。。。。。。。。。。。 。。。。。。。。。。。。 。。。。。。。。。 。。。。。。 。。。 。
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96 :名も無き被検体774号+[]:2011/03/15(火) 02:02:34.46 ID:MK+uhnya0 -
藤吉「ご説明します」 梓父母「はい...」 藤吉「あずささんのバチスタ手術は病変部位の状態から難しい状況でした。 しかし、偶然にもあずささんと同年代の女性のドナーが現れまして、 あずささんがAB型で、ドナーの方の血液型もO型でしたので、 移植の適合性もあり、その他の免疫学的な条件もクリアできました。 よって、そのドナーの方から心臓移植を施しました。経過は良好です...」 梓母「そうですか...。良かった...」 梓父「でも、そのドナーになっていただいた方は...?」 藤吉「規則により、詳細をお知らせすることはできませんが、交通事故に遭われたそうです...。当院のすぐ近くで...」 梓父母「そうですか.........」
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97 :名も無き被検体774号+[]:2011/03/15(火) 02:02:59.27 ID:MK+uhnya0 -
「...............」 梓「ん......」 澪「気がついたか...? あずさ...」 梓「...ここ、は...?」 澪「病室だよ。あずさは、まる4日眠っていたんだぞ」 梓「お父さんとお母さんは...」 澪「ご両親は病院の人たちと話しがあるみたい。その間私があずさに付き添ってるから」 梓「そうでしたか...。澪先輩ありがとうございます...」 澪「もう大丈夫。手術は無事終わったよ...」
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98 :名も無き被検体774号+[]:2011/03/15(火) 02:03:20.80 ID:MK+uhnya0 -
梓「唯先輩は...?」 澪「えっ.........?」 梓「さっき唯先輩が来てくれたんです...。とっても明るく励ましてくれて...」 澪「...あずさ、それは夢だよ...。あずさはさっきまでずっと眠ってたんだから...」 梓「でも、唯先輩はずっと付き添っててくれたって...」 澪「そ、それは......。その、唯は今、来れないし......」 梓「えっ、唯先輩どうかしたんですか? 憂は...?」 澪「憂ちゃんは、唯と一緒にいるはずだよ...」グスッ 梓「澪、せん、ぱい...?」 澪「うっ、ううぅぅ......」ポロポロポロ... 。。。。。
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99 :名も無き被検体774号+[]:2011/03/15(火) 02:03:48.03 ID:MK+uhnya0 -
その時の私は、まだ麻酔が抜けきれていなかったのか、澪先輩の涙と不自然な言動も、憂の不在も、唯先輩の笑顔とその手のぬくもりも、どれもが宙に浮いた幻のようにどこか頼りなげな記憶で、全てが夕べみた夢のように不確かでした。 それから術後の容態も安定し、先輩方やクラスのみんなもお見舞いに来てくれるようになって、日に日に胸の苦しさや傷の痛みからも解放され、一歩ずついつもの日常に帰れる予感がわいてくる毎日でした。 でも、退院するまで唯先輩と憂はとうとう病室へ来てくれませんでした。
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100 :名も無き被検体774号+[]:2011/03/15(火) 02:04:26.85 ID:MK+uhnya0 -
さびしい気もしましたが、澪先輩たちは毎日のように来てくれるし、その時はいつも唯先輩や憂が忙しい用事のために顔を出せないことを繰り返し聞かされていたので、退院して自由に歩けるようになってから、改めて倒れてから今までのお礼をしようと思っていました。 そう思っていたんですが、退院して、先輩たちに連れられて行ったお墓の前で、憂と再会し、唯先輩が私の手術の日に交通事故で亡くなっていたことを知らされました...。
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101 :名も無き被検体774号+[]:2011/03/15(火) 02:04:46.24 ID:MK+uhnya0 -
みんな泣いていました。私の手術がせっかく成功したのに、唯先輩が突然いなくなってしまうなんて...。 なぜだか、憂だけは涙も枯れ果てたかのような虚ろな瞳で私を見続けていました。 その瞳に射抜かれると、私だけ何も知らずに健康を取り戻していたことがとても悔やまれ、恥ずかしい思いでいっぱいになり、涙があふれて止まりませんでした。手術が終わって回復したばかりの心臓がズキズキと痛んだのが忘れられません。
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102 :名も無き被検体774号+[]:2011/03/15(火) 02:05:10.14 ID:MK+uhnya0 -
その日からしばらくして、唯先輩の四十九日の法要がしめやかに執り行われました。 唯先輩を除いた放課後ティータイムのメンバーももちろん参加して、唯先輩に最後のお別れを言いました。 法要の後、形見分けがありました。 憂とはその時、退院後に始めて言葉を交わしました。 憂が、私にぜひに、とくれたもの...。
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103 :名も無き被検体774号+[]:2011/03/15(火) 02:05:29.81 ID:MK+uhnya0 -
それは唯先輩の愛してやまなかったギー太です。 憂「あずさちゃん、お姉ちゃんがギー太を預けられる人は、あずさちゃん以外に考えられないはずだよ。これをあずさちゃんにあげるから...」 憂は、私がギー太を受け取ったとき、堰を切ったように泣き始めました。
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104 :名も無き被検体774号+[]:2011/03/15(火) 02:05:47.61 ID:MK+uhnya0 -
やっと落ち着いた頃、 憂「あずさちゃんに使ってもらえたら、お姉ちゃんもきっと...、きっと天国で喜ぶよ...!」 と、泣きながら笑顔で語りかけてくれました。 今でもこれを思い出すたび、私なんかが唯先輩の大事なギー太を貰い受けて良かったのかと悩みます。
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105 :名も無き被検体774号+[]:2011/03/15(火) 02:06:14.60 ID:MK+uhnya0 -
法要が終わり、皆さんと別れて家路に着きました。 唯先輩から私の家までにある、学校へ続く一本道、川の水面へ緑を映す土手、アイスクリームを一緒に食べた駄菓子屋さんのベンチ、合宿を打ち合わせたハンバーガー屋さん...。 どれもが、二度と戻ることのない5人揃った放課後ティータイムの思い出を、今でも鮮やかに映し出す場所です。 一歩進んでは足を止め、それらの思い出の中の唯先輩は、必ず笑顔にあふれていたことを確かめます。
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106 :名も無き被検体774号+[]:2011/03/15(火) 02:06:38.94 ID:MK+uhnya0 -
もう思い出の中でしか会えない...。 だから、決して思い出の唯先輩の笑顔がにじまないよう、私はゆっくり、ゆっくり歩きました。 季節は冬に差し掛かり、冷え始めた風が、私の涙に濡れるに任せていた頬をなでます。 今、私の肩にあるギー太を唯先輩自身が背負って、そこの角から笑顔で飛び出してくるんじゃないか。分かれ道を通るたび、そんな叶うはずのない微かな希望を散らしつつ、私は家へとたどり着きました。 その日はまだ体力が十分でなかったことと、唯先輩を失った悲しみを改めて意識した影響か、寝床で微熱に臥せりました。
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107 :名も無き被検体774号+[]:2011/03/15(火) 02:07:06.03 ID:MK+uhnya0 -
梓(......) 唯『あずにゃん...、あずにゃん...』 梓(唯、せんぱい...?) 唯『あずにゃん、ギー太をもらってくれたんだね...』 梓(は、い...) 唯『ありがとう...。あずにゃんに弾いてもらえるならギー太もうれしいはずだよ...』 梓(ごめんなさい...。私なんかが...)
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108 :名も無き被検体774号+[]:2011/03/15(火) 02:07:24.78 ID:MK+uhnya0 -
唯『そんなことないよあずにゃん』 梓(え...?) 唯『ギー太はね、私が軽音部に入って初めて出会ったギター...。初めてライブで演奏したただ一つのギターでしょ...? 』クスッ 梓(はい...) 唯『うん...。だからね、私たち放課後ティータイムの曲を、いつまでも演奏して欲しいって、きっと思ってるはずだからさ...』 梓(唯先輩...) 唯『あずにゃん、ギー太のこと、よろしくね...。いっぱい、いっぱいみんなの音楽を演奏してあげて。あずにゃんの手で、リズムを刻んで...』 梓(ゆ、い、せんぱ...) 。。。。。。。。 。。。。。。 。。。。 。。 。
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109 :名も無き被検体774号+[]:2011/03/15(火) 02:07:47.52 ID:MK+uhnya0 -
さわやかな朝、私は目覚めました。 昨日の重苦しく悲しみに沈んだ私の心は、どういうわけか晴れやかでした。 夕べの夢、唯先輩のやさしい瞳...。不思議なぬくもりの中で目を覚ました私は、起き上がって真っ先にギー太を取り出しました。 指で六弦を触れると、なぜだか胸がきゅんと優しく痛みます。 8ビートで弦を弾くと、その痛みが胸の高鳴りに柔らかく溶け込んでいって、涙があふれてきます。 その時に、強く唯先輩のことを意識しました。
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