- 禁書「だってここは、そういう所だよね?」
1 :名も無き被検体774号+[]:2010/12/08(水) 07:42:35.16 ID:N/CvcAbHO - 立ったら書きたい
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- 禁書「だってここは、そういう所だよね?」
2 :名も無き被検体774号+[]:2010/12/08(水) 07:46:56.43 ID:N/CvcAbHO -
二年前。 「−−−う、オオオオオオっ!!!」 少年が走る。 凡庸な身なり。 中肉中背の身体。 しかしその背にはこの世の全てを背負う。 −−−本当に良いのか、幻想殺し。 そんな少年に語りかけるもの。 それは彼の目の前に顕現していた。 "神上"、アレイスター・クロウリー。 今の彼は、もうビーカーの中には居ない。人の認識を遥かに超越したエネルギーの塊。 AIMをベースとして、魔力、テレズマ。 三種の力場を混同した新しい界を形成した彼は、その頂点に立つ神。既存の神を超越した、"神上"。 そんな神は、少年に語らう。 −−−本当に良いんだな。 ―――この幻想を殺したら。 そう続けるより先に、少年の右手はその幻想を打ち殺した。
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3 :名も無き被検体774号+[]:2010/12/08(水) 07:55:18.12 ID:N/CvcAbHO - 学園都市。
そこはかつて最先端の科学力を結集した都市、そして超能力開発のメッカとして名を馳せていた。 しかし二年前の大規模なネットワーククライシスによってその機能の大部分が停止。 機械で埋め尽くされた街は、連鎖的なショートの果て、ついにダウンした。 そして元が何年もかけて築かれてきたその要塞の復旧には当然長い年月がかかる――― と。 表向きには、そうなっていた。 上条「…。」 かつての英雄。 そして破壊者。 上条当麻は、簡素なベッドの上で何となく虚空を眺めていた。 考える事は一つ、あの日の事だ。
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4 :名も無き被検体774号+[]:2010/12/08(水) 07:58:41.59 ID:N/CvcAbHO - 幻想は消えた。
新界形成の為に集められた魔力、テレズマ、AIM。 それらを一瞬で吸い取られ、戦線に立つことも無く一般人と化した魔術師や能力者。 ただ1人、幻想殺しだけが戦線に残り。 アレイスターの最初の一撃で血の海に没した仲間たちを背に、上条はその幻想を殺したのだ。 それで終わると、思っていた。 科学は魔術に負けた。それでいいじゃないか。 それでいい。文化と文化の優劣争いなんて、それで終わらせて。 優劣なんて関係なく、人と人で仲直りをすればいいじゃないか。 そう、思っていた。
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5 :名も無き被検体774号+[]:2010/12/08(水) 09:50:11.53 ID:N/CvcAbHO - ひ、人が来ない…(°Д°;)
でも負けないっ(泣 上条「…なのに、なんで。」 上条が天井にむけ伸ばした腕が、力なく地へ落ちる。 −−−最初に起こったのは、魔術や超能力の消滅だった。 魔術師は魔力を吸い尽くされ、能力者はAIMを根こそぎ剥ぎ取られた。そしてそれらはアレイスターに消費され、再び世界に循環していくはずだった。 しかしそれらは上条の幻想殺しによって"無くなって"しまったから。
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6 :名も無き被検体774号+[]:2010/12/08(水) 09:53:06.99 ID:N/CvcAbHO - 質量保存の法則を破った、この右手。
今まで人類が何世紀に渡って練り上げ、少しずつ世界に充満していた魔力も。 日々鍛錬に励み会得した超能力が発したAIMも。 その長い努力の結晶の全てを、上条はアレイスターから取り返すでもなく"消して"しまった。 故に、魔術師には個人が少しずつ生成する僅かな魔力しか残されず。 能力者に関しては、原石や上条を除き大抵の者が自分だけの現実(パーソナルリアリティ)を喪失し、能力自体を失った。
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9 :名も無き被検体774号+[]:2010/12/08(水) 10:52:17.75 ID:N/CvcAbHO - ここまでのヒント:テンポ がんばれ
→がんばります! そして、そんな力の消失があり。 次に起こったのは、魔術師側のデモであった。 −−−"科学側の"アレイスターが、私達の文化を台無しにした。 そんなキャッチコピーが、魔術側の諸国で流行ったらしい。 それ以降、まだ科学側と 魔術側には小競り合いが続いている。 世界は、何も好くはならなかったのだ。 ―――本当にいいのか。 あの時のアレイスターの言葉が蘇った。
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10 :名も無き被検体774号+[]:2010/12/08(水) 10:57:14.98 ID:N/CvcAbHO - 上条「だって、仕方ねえじゃねえか…。」
―――その幻想を殺したら。 風斬は、二度と姿を見せなくなった。 ―――その幻想を殺したら。 一方通行が、昏睡状態に陥った。 ―――その幻想を、殺したら。 堰を切ったように溢れ出した不幸が、神裂を襲った。 ―――殺したら、殺したら、殺したら。 上条「くっ…あああああああァァァアアア!!!」 顔をぐしゃぐしゃにして、上条は1人吠えた。 それは夜が明けるまで続き、そんな夜を何回も続ける。 収まってはずっとふさぎ込み、またある時突然発狂する。 二年間、そんな生活が続いていた。
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11 :名も無き被検体774号+[]:2010/12/08(水) 11:31:19.55 ID:N/CvcAbHO - ☆
戦いの後、学園都市生の大半が学園の外へ出て、実家や親戚の家へ疎開した。 それは上条も例外でなく、彼の場合は療養のためと言われ、事情を知った例のカエル顔に寝床を提供してもらっていた。 かつてのlevel5に、超電磁砲の御坂美琴という少女がいる。 上条に特別な感情を抱く彼女は、そんな慣れない外での生活の中上条の元を頻繁に訪れていた。
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12 :名も無き被検体774号+[]:2010/12/08(水) 18:03:02.97 ID:N/CvcAbHO - 彼女が努力で勝ち得たlevel5は、今や見る影もなく衰退している。昔であれば研究施設の1つや2つは動かせる程の電撃使い(エレクトロマスター)であった彼女も、あれ以来ようやく電子レンジを動かせるぐらいのものになってしまった。
もちろんそれは彼女自信残念に思っていが、それと同時にその悔しさは世界の想いを1人背負って苦渋の決断を下した1人の少年に押し付けていいものであるわけがない、とも思った。 そういうように、御坂美琴は今だって上条当麻の味方でいる。 インデックスもイギリスに帰ってしまった今、彼女くらいしか上条に寄り添ってやれる者は居なかった。
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