- 八幡・スバル・上条・キョン等のラノベ主人公が聖杯戦争や東方世界で無双するSSあるじゃん?
6 :以下、5ちゃんねるからVIPがお送りします[]:2021/05/03(月) 08:03:46.824 ID:K9NOROm30 - 上条は能力的に無双は無理までもそこそこいけそうだが
キョンも持ち前のケンカの強さと頭の良さで切り抜けられそう あと2人は無理
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- 八幡・スバル・上条・キョン等のラノベ主人公が聖杯戦争や東方世界で無双するSSあるじゃん?
9 :以下、5ちゃんねるからVIPがお送りします[]:2021/05/03(月) 08:28:03.984 ID:K9NOROm30 - キョンも昔はよく見かけたよな
持ち前の運動神経と頭のキレで異世界くぐり抜けてたやん
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- 八幡・スバル・上条・キョン等のラノベ主人公が聖杯戦争や東方世界で無双するSSあるじゃん?
16 :以下、5ちゃんねるからVIPがお送りします[]:2021/05/03(月) 09:10:44.486 ID:K9NOROm30 - >>12
消失見ればわかる
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- 上条「お前、本当についてねーよ」フレンダ「……」
1 :以下、5ちゃんねるからVIPがお送りします[]:2021/05/03(月) 09:16:44.602 ID:K9NOROm30 - フレンダ「はぁ…はぁ…はぁっ……」
少しずつ短くなってきたとはいえまだまだ長い三月の夜が始まる。ビル郡を赤く染め上げて いた日は完全に沈み、完全に闇に沈んだ裏路地、そんなゴミと不良の溜まり場となっている場 所を少女は全力で駆けていた。紺のブレザーに赤を基調としたチェックのスカート、そして最 後に黒タイツとローファー… …ここら辺で制服がかわいいと言うことで知られた学校のものであるが、こんな場所では浮く 要因にしかならない。しかしそれ以上に彼女を浮かせていたのは、金色の髪と真っ白な肌、何 より美少女と呼んでも差し支えない整った顔立ちを更に引き立てる青い目であった。 そんな裏路地に似つかわしくない人形のような少女は、右手で握り締めていた携帯端末に目 をやり、地図の光点を確認して歯噛みをする。一定時間ごとに更新される緑の光点は彼女の妹 の居場所を示しており、更新された新たな緑の点は一分前の居場所を示す赤い光点からあまり 動いていなかった。もう十五分も走り続けている、いくら普段元気な子といっても所詮は小学 校低学年の体力、限界は近いはず。
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- 上条「お前、本当についてねーよ」フレンダ「……」
2 :以下、5ちゃんねるからVIPがお送りします[]:2021/05/03(月) 09:17:33.445 ID:K9NOROm30 - フレンダ(―あるいは、もう捕まって……)
頭を振って悪い考えを追い払う。考えても仕方が無い、今出来る事は一秒でも早くこの光点 に近づくことだと地面を蹴る足にさらに力を入れる。しかし、考えないようにと思えば思うほ ど、頭はそれに逆らい考えることを強要し押さえきれなくなった感情が口から溢れる。 フレンダ「……なんでこんな日に限ってこんなことが起こる訳よっ!」 今日。そう今日は妹と進級祝いの筈では無かったのか。
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- 上条「お前、本当についてねーよ」フレンダ「……」
5 :以下、5ちゃんねるからVIPがお送りします[]:2021/05/03(月) 09:18:10.549 ID:K9NOROm30 - 普段は別々の寮で過ごす妹を迎えるため、朝早くから部屋を掃除して、飾り付けして、あの
子が欲しいと言っていた帽子を包んでもらって、隣でケーキを落として叫んでいる男子学生を 横目にちょっと奮発してホールのケーキを買ったりして、 それで、後はあの子を待ち合わせ場所まで迎えに行くだけだったはずなのに。 一度部屋に帰って荷物を入れ、靴を履き直した時であった。ケータイから響いたのは聞いた ことの無いけたたましい音。 まさか、と。スカートのポケットから引き抜いたケータイの液晶に浮かんでいる定型文。 鍵もかけずに走り始めていた。
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- 上条「お前、本当についてねーよ」フレンダ「……」
6 :以下、5ちゃんねるからVIPがお送りします[]:2021/05/03(月) 09:18:49.421 ID:K9NOROm30 - ――ご家族様のケータイの緊急用警報が作動しました――
あれからもう十五分、ケータイはあの後すぐ壊されたのだろう、GPSの反応が消えてしま った。今、彼女が妹を追うことができているのは、この間一緒にお風呂に入ったとき仕掛けて おいたGPSのお陰である。 厚さは半ミリ大きさ二センチ四方、対象に貼り付けることで皮膚に浸透、同化し、生態電流 を利用して動く、つまり皮膚が完全に入れ替わる二週間、もしくは対象が死んで生態電流がと まるまで追跡し続けることが出来る寄生型GPS。冗談のように聞こえるが、この街、外より も数十年進んだ技術を持つと言われている『学園都市』では白黒テレビなどと同じぐらい古い 技術、といった扱いだ。
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- 上条「お前、本当についてねーよ」フレンダ「……」
8 :以下、5ちゃんねるからVIPがお送りします[]:2021/05/03(月) 09:19:20.713 ID:K9NOROm30 - 傍からみれば、歪んだ愛情だと言われてもおかしくないこと位理解している。しかし、他人
になんと言われようとも、妹にこのことを知られて避けられるようになったとしても、ここま でしないといけない理由が彼女にはあった。 一つ目は彼女と妹には家族がいない、正確には学園都市内の適当な学校に入学させられ、寮 に入ったことを確認してから一切の連絡を絶たれた子供、いわゆる『置き去り〈チャイルドエ ラー〉』だからである。 唐突にあの人たちと連絡が取れなくなった三年前のあの日、何が起きたのか理解できずにた だ「おかあさんは? おとうさんは?」と聞く妹を見て決めたのだ。この子のためならなんで もしてやる、自分が傷つくことであろうとも、結果として嫌われることになろうとも、この子 が幸せに生きれるようになんでもするんだ、と。妹は彼女が生きるための指針となった。
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- 上条「お前、本当についてねーよ」フレンダ「……」
10 :以下、5ちゃんねるからVIPがお送りします[]:2021/05/03(月) 09:20:14.272 ID:K9NOROm30 - そしてその為に生じた二つ目の理由、それが彼女の『仕事』である。
ここ、学園都市では授業の一環として、『記録術』、『暗記術』などという名称の元に、『頭の開 発』、具体的には脳や脊髄に対しての電気刺激や薬品投与に催眠術、その他ありとあらゆる手 段を使って『超能力者』を生産、そして作られた能力者を研究している。日向ですらこの有様だ、 こんな街の闇がどうなっているかは想像に難く無いだろう。 ―邪魔な存在は濾過してしまえばいい― 彼女の仕事は、そういった上層部の思うがままに動く都合のいい道具みたいなものだった。 例えば、この街から技術を持ち出そうとする人間の始末、暴走した実験動物の抹消、上層部に 対して都合の悪い人間の消去…… 恨みを買っておかしくないと言うより当然、といったことを何度もしてきた。妹の存在は仕 事仲間にも知らせていないし、逆に妹にも仕事のことは隠し通している。しかし情報はどこか ら漏れるか分からない、そして自分と関係があることが分かればこの街の裏側の住人からす ればあの子を狙うには十分な理由となる。そういった”もしも”の時のために例え過剰といわ れるほどの保険をかけなければならなかったのだ。
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- 上条「お前、本当についてねーよ」フレンダ「……」
12 :以下、5ちゃんねるからVIPがお送りします[]:2021/05/03(月) 09:21:23.717 ID:K9NOROm30 - 全てを妹の為に、そう思ってやってきた。
フレンダ(だけど…) 実を言えば妹が危険な目にあうのは二回目だ。二回目の今となってようやく気付く。 フレンダ(…結局私が一人になるのが寂しかっただけ、私の我侭であの子を巻き込んでしまったって 訳よ) 本当に妹のために何でもするというのならこの街の闇に沈んだ時に縁を切ればよかったの だ。後は仕送りをしてあげて、たまに部下でも使って元気なことを確認して…そうやって影か らそっと見守るのが最良だったはずだ。結局、あの子が寂しくなるといけないから、という のは妹のためという自分への言い訳だったという訳か。 フレンダ(せめて前回で気付いてれば……結局、今恐い思いをさせずに済んだのかな)
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- 上条「お前、本当についてねーよ」フレンダ「……」
13 :以下、5ちゃんねるからVIPがお送りします[]:2021/05/03(月) 09:22:48.509 ID:K9NOROm30 - 今更後悔しても遅いことは分かっているが、そう考えずにはいられない。
ふと気付くと足の回転が遅くなっていた、また自分の都合で妹危ない目に合わせるつもりか。 携帯端末で頭を軽くこつんと叩く。 フレンダ(結局、こうなった以上考えても仕方ない訳よ……) もう一度地面を蹴る足に力を入れて、妹の位置を確認するため端末に目を向ける、が…… 以前の位置をしめす赤の光点は増えていなかった。
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- 上条「お前、本当についてねーよ」フレンダ「……」
14 :以下、5ちゃんねるからVIPがお送りします[]:2021/05/03(月) 09:23:36.474 ID:K9NOROm30 - いや、赤の光点は増えているはずだ、今の位置を示す緑の光点で完全に隠れているだけで。
つまりは… フレンダ(…うごいて、ない) 脊髄に直接、凍る寸前の炭酸を叩きつけられたような感覚に襲われる。GPSが生きている ということは、まだ生きているのだろう。だが、それは学園都市の闇に生き、命を啜って来た 彼女にとって、不安を掻き立てるものにしかならない。奴らは文字通りに何でもする、例え相 手が小学校低学年相手だろうが情報のためなら内臓の一つ二つは潰すし、人質にするにしても 五体満足でいるかどうか。
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- 上条「お前、本当についてねーよ」フレンダ「……」
15 :以下、5ちゃんねるからVIPがお送りします[]:2021/05/03(月) 09:24:41.364 ID:K9NOROm30 - 妹はどうなっているのか、頭の中ではもはや悪い情景がただ湧き上がってくるだけだった。
自分が見てきたこと、そしてしてきたこと、全てが妹の顔で再現される。 呼吸も忘れいつの間にか噛んでいた唇から、赤い線が一筋つぅ、と彼女の頬に流れ、口の中 に後悔の味が広がった。泣きたいのはあの子の方だ、そう思っても視界がぼやけていくのは止 められない。それでも走り続ける彼女の耳に、小さいが聞きなれた音が耳に入る。 コォッ、と。広範囲にばら撒かれたガソリンに火が一瞬で広がるような、一瞬で炎が辺りを 嘗める音。 フレンダ(能力による発火音!) 確か、GPSは万一痕になっても目立たないよう足首の後ろに貼った、そして相手は発火能 力者。
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- 上条「お前、本当についてねーよ」フレンダ「……」
16 :以下、5ちゃんねるからVIPがお送りします[]:2021/05/03(月) 09:25:33.729 ID:K9NOROm30 - フレンダ(本気で逃げる相手を殺そうとするならば、結局、相手の足を潰すのが一番って訳。それに
も関わらず、まだ足のGPSが焼かれてないって事は…) 今の状況は相変わらず良くない。だが、もはや先ほどまで彼女を締め上げていた最悪の状況 はまるで漫画の一コマのように現実感を伴うことは無かった。 フレンダ(…本気で殺す気が無い人間、少なくとも同業者じゃ無いって訳よ!) 既に怖い思いはさせてしまったし、怪我をしている可能性も高い、だがまだ取り返しのつか ないような怪我が無い可能性も高い。なにより自分に対しての恨みが妹を襲ったわけではない という事が先ほどまでの延々と廻り続けていた後悔と自責の念を和らげる。 そして同時に、それらに隠れていた感情が表にあふれでる、相手の目的に見当が付かないと いう不安、どうしてまた襲われるのが妹でなければならないのか、というぶつける相手の存在 しない憤り。
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- 上条「お前、本当についてねーよ」フレンダ「……」
17 :以下、5ちゃんねるからVIPがお送りします[]:2021/05/03(月) 09:26:08.900 ID:K9NOROm30 - 前回は運がよかっただけだ。たまたま居合わせたゴリラのようなスキルアウトが妹を助けて
くれたから無事だったものの相手が手にしていたのはボウガン、かなり危ないところだった。 前回のような幸運は無い、今回は私一人でやるしかない。ルートを覚えてケータイをポケッ トに突っ込み噛んでいた唇を緩めて乱れた呼吸を落ち着かせる。妹の目の前で得物を使って は戦えない、体術だけに抑える必要があるが能力頼りの素人相手ならそれでも十分。 ゴオゥ、再び聞こえる炎の生成音。 妹まであと少し、先ほどよりも大きく聞こえた音を聞いて確信する。そしてそれと同時にそ の音に混じった人の声から相手を分析。
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- 上条「お前、本当についてねーよ」フレンダ「……」
18 :以下、5ちゃんねるからVIPがお送りします[]:2021/05/03(月) 09:26:45.660 ID:K9NOROm30 - フレンダ(声の低さからたぶん男…っ三、四人はいる!!)
相手の人数と発火能力者、見当がついた。最近ここの近くで活動するようになった『無能力 者狩り』のチームだ。 学園都市にいる学生は全員能力開発を受けている。しかし全員が能力者になれるわけではな い、むしろ六割弱の生徒は一時間かけてようやくスプーンを曲げる、目を凝らしているとたま にちらりとカードが透けて見える、そんな程度の持ってないに等しい能力者、『無能力者』な のである。 入れる学校や奨学金、そういったもの全てが能力によって決まる学園都市の中、無能力者 狩りが生まれるためには大きな出来事は必要なかった。確か最初はささいなの口論だったは ずだ、それが雪だるま式に大きくなっていきやがて”正当な報復”の名の下、一部の能力者に とって反撃の出来ない”無能力者(ウサギ)”に対して思うがままに自分の能力を振るってスト レス発散をする、という娯楽となってしまった。
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- 上条「お前、本当についてねーよ」フレンダ「……」
19 :以下、5ちゃんねるからVIPがお送りします[]:2021/05/03(月) 09:27:22.808 ID:K9NOROm30 - 確か件の集団は全員で三から五人。全員が発火能力者で、相手を追い回して獲物が疲れ果
てて倒れたところを能力を使って死なない程度に末梢部分を焼いてその悲鳴を楽しむ、といった ことを最近繰り返している、と。 妹の動きは止まっているが、相手が探し回るように広域を焼くよう能力を使っているという ことは、なんとかどこかに隠れられたのだろう。少しほっとしながら多対一の戦闘パターンを 構築する。 フレンダ(まずは攻撃をこちらに集中させて……)
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- 上条「お前、本当についてねーよ」フレンダ「……」
20 :以下、5ちゃんねるからVIPがお送りします[]:2021/05/03(月) 09:28:43.296 ID:K9NOROm30 - 戦闘の流れをシュミレート、まずは注意を引くため大声を出せるよう息を吸う。そして最後
の角を曲がる為の一歩を踏み込もうとした時、聞き覚えのある声が耳に入った。 「……どうした。その程度か能力者」 あまり感情を感じさせない平坦な声、それに一瞬遅れてゴッと鈍い音が続き、目の前を男が 体をくの字にへし折られて飛んでいった。 ぎりぎりで人間ブーメランを避けて角を曲がった先には十メートル四方ほどのビルのが谷間 広がっており、捨てられていたごみにでも引火したのかちろちろと赤い舌を出しながら燃え続 ける小さな塊が散乱していた。立っているのは四人の人間。左側には互いに適度な距離をとり ながら、情報どおり全員が発火能力者なのだろう、その手に小さな火を浮かべる三人の男たち。 そしてそれに向かい合って一人、三人から後ろの裏路地を守るように立つ、端が熱で縮んだ ことを差し引いても小さすぎるジャケットにその筋肉の鎧に包まれた肉体を押し込めた他の 男たちよりふた周りは大きな男。いかつく、愛想のない顔を見てほっとした気持ちになれてし まうのは前回助けてもらったせいか。 フレンダ「駒場さんっ!!」
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- 上条「お前、本当についてねーよ」フレンダ「……」
21 :以下、5ちゃんねるからVIPがお送りします[]:2021/05/03(月) 09:30:05.317 ID:K9NOROm30 - その声に反応して、左側に立つ三人のうち一番こちらから近くにいた一人がこちらに顔を向け
瞬間ダウンッ、と先の大男が地面を蹴り飛ばして生身ではありえない速度で水平に飛ぶ、と 同時に部外者の登場に気をとられた男の腹をめがけて構えていた左手がのばされて…… 「がふぁっ……!!」 顔を戻すまもなく斜め上から腹部に男の少なくとも三倍はありそうな体重を拳を通して受け、 悲鳴と息の音が混じったような音を吐きながら勢いよく地面に叩き付けられる。そのまま、ザ リザリ、皮膚が削れる音を出しながら地面をすべり背後にあったビルにぶつかってて動かなく なった。 駒場「舶来の姉御…いや、フレンダ、だったか。久しぶりだな……」 二人の男からは目を離さずもう一度地面を蹴って元の位置に戻りながら、前と変わらぬ重く 平坦な声で大男が答える。一月に一度会っただけだが名前を覚えていたらしい、見た目に似合 わず切れ者だというのは本当なのだろう。 「チッ、これもお前の策か、駒場ぁっ!」
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- 上条「お前、本当についてねーよ」フレンダ「……」
22 :以下、5ちゃんねるからVIPがお送りします[]:2021/05/03(月) 09:31:55.924 ID:K9NOROm30 - 対峙する発火能力者の一人がこちらをちらりと視認して声を荒げる。対する声は変わらず平
坦に。 駒場「……最初から全て偶然だ。知り合いを囮にするなど…俺には考えもつかなかったな」 邪魔していい状況ではないのは分かるが妹のことを聞かないわけにはいかない。 フレンダ「フレメアは!?」 駒場「かすり傷はあるが、大きな怪我は無い。後ろの路地の先で待っているよう指示した。しか しあまり待たせても悪い、すまんが一人頼めるか」 そう言うと駒場は奥のほうの男に向けて拳を構える。 GPSが動かなくなってからかばってくれていたとすると、フレメアと分かれてから三分は 経っているはずだ。暗い路地裏で助けを待ってる妹をこれ以上待たせるわけにはいかない。
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- 上条「お前、本当についてねーよ」フレンダ「……」
23 :以下、5ちゃんねるからVIPがお送りします[]:2021/05/03(月) 09:32:45.627 ID:K9NOROm30 - ゴリラのようなその体格と強面とは裏腹に、知力と人望で無能力者の集団『スキルアウト』
を率い無能力者でありながら何人もの能力者狩りを倒してきた男、駒場利徳。こいつの方が しっかり妹の保護者やってるって訳よ、と苦笑しながら啖呵をきる。 フレンダ「分かった、任せて欲しい訳よっ!!」 叫ぶと同時に近いほうの男に向かって駆け出し、相手の顔に向けて左手を大振りで放ちなが ら、改めて男を観察する。 フレンダ(身長は、私より結局十センチ程度高いけど…) 外見から本当に囮だと思っていたのだろう、自分に向かってくることへの驚きで男の目がわ ずかに見開くが、さっきの一件で緊張感は高まっていたのか機敏に対応する。即座に右手を顔 の前に、そして炎が一瞬でその手を包む。
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- 上条「お前、本当についてねーよ」フレンダ「……」
24 :以下、5ちゃんねるからVIPがお送りします[]:2021/05/03(月) 09:34:08.762 ID:K9NOROm30 - (勝った)
発火能力者の男は既に勝利を確信していた。確かに突然現れた少女が攻撃を仕掛けたのには 多少驚かされたが、あの細い体躯ではまずたいした力も無いだろうしあの制服は近くの学校の もの、自分より低位の能力者なのは明らかである。第一、能力を使ってこない時点で非戦闘系 の能力か弱能力者、強能力者の自分が負けるはずが無い。このまま左手を焼かれた痛みで怯ん だ所を捕まえて人質にしてしまえば、駒場も抑えられたも同然だ、と。 だが、この男は忘れていた。さっきまで対峙していた男が思慮深く、そして情に厚いことを。 そして、そんな男が知り合いが傷つくかもしれない事をさせるのかということを。 「っぐ……!?」 突如腹部を襲う鈍く重い衝撃、悲鳴も出せぬまま無理やり息を吐ききらされた。痛みで能力 を発動するための演算が途切れ、手のひらの炎が四方へ散って行く。男はそのまま意識を失っ た。
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- 上条「お前、本当についてねーよ」フレンダ「……」
25 :以下、5ちゃんねるからVIPがお送りします[]:2021/05/03(月) 09:34:43.017 ID:K9NOROm30 - フレンダ「…能力頼りで筋肉なさすぎ。そんなひょろい男はこっちから願い下げ、って訳よ」
最初から左手はフェイントだった、フレンダが最初の一手で奪いたかったのは相手の視界。 相手は無能力者狩りをするような無能力者を見下した発火能力者、不必要なまでに能力を使っ てくる事まで読んでの行動だった。顔の前で炎の出力を上げた瞬間、即座に左手を引き戻し、 その勢いと走ってきた速度を利用して、踏み込んだ右足を軸に体勢を低くしながら回転、その まま衝撃を引いた左手の肘を使って腹部に伝えてやったのである。 男が崩れ落ちて視界が開けると、最後の男が今まさに壁に後頭部を打ち付け意識を手放した ところであった。
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- 上条「お前、本当についてねーよ」フレンダ「……」
26 :以下、5ちゃんねるからVIPがお送りします[]:2021/05/03(月) 09:36:07.707 ID:K9NOROm30 - フレンダ「結局、私が手伝わなくてもあっという間だったんじゃない?」
汚れが落ちるかは分からないが、先ほど男に接触した肘の部分をぽんぽん、と叩きながら尋 ねる。 駒場「……いや。舶来の姉御のおかげだ」 フレンダ(……結局、私はあの子のおまけって訳?)
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- 上条「お前、本当についてねーよ」フレンダ「……」
27 :以下、5ちゃんねるからVIPがお送りします[]:2021/05/03(月) 09:37:12.515 ID:K9NOROm30 - 別に気になってる訳じゃないけど、それでも女の子と意識されないのはなーと、ちょっとシ
ョックを受けているのに気付いているのかいないのか、駒場がこちらを振り返り、先ほどまで 自分がふさいでいた路地のほうを指差す。 駒場「行こうか。早く終わらせたのだか「きゃああぁぁ!!」」 駒場の声を甲高い悲鳴が遮る。血流がとまってしまったかのように頭も体も動かない。
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- 上条「お前、本当についてねーよ」フレンダ「……」
28 :以下、5ちゃんねるからVIPがお送りします[]:2021/05/03(月) 09:38:10.284 ID:K9NOROm30 - フレンダ「っ……フレメアっ!!」
硬直していた体に自由が戻ったと同時に、叫びながら先ほどよりも少しだけ広い路地に飛び 込む。 妹は十メートルほど先、顔を向こうに向けてうつぶせに倒れていた。 フレンダ「フレメアっ!!」 反応の無い妹の名前をもう一度叫びながら走りよろうとして、 ドゴオッ 間一髪で後ろに一歩跳び下がる。先ほどまで立っていた場所には赤々と燃える火柱が立って いた。
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- 上条「お前、本当についてねーよ」フレンダ「……」
29 :以下、5ちゃんねるからVIPがお送りします[]:2021/05/03(月) 09:39:24.584 ID:K9NOROm30 - 「ほぉ、いい勘してんじゃねーか嬢ちゃん」
フレメアの更に後ろ、動揺していたせいで気付かなかったがそこには左手をポケットに突っ 込んだ男が立っていた。 「あぁ、あいつらの声が聞こえなかったのはこーゆーことか、無能力者風情が調子に乗りや がってよー。ムカついたからちょっとぐらい手加減しなくてもいいよな」 にやにやと笑いながらだらんとぶら下げていた右手のひらをくるりと上に向けると、その手 のひらの上に周囲から赤やオレンジの光線が渦を巻いて集まり、一瞬でボールペンサイズの赤 く発光する杭が形成される。
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- 上条「お前、本当についてねーよ」フレンダ「……」
30 :以下、5ちゃんねるからVIPがお送りします[]:2021/05/03(月) 09:41:44.100 ID:K9NOROm30 - 「おっと、動くなよー。俺の能力は強能力『中空機雷〈スティックマイン〉』。まぁ自在に地雷を作
り出して好きな場所に設置して自由に起爆条件を設定できるって考えてくれりゃあいい、それ でー…」 男が軽く振りかぶって投げた杭は妹の頭の向こう側三十センチほどの地面に突き刺さる。 「こいつは人質っつー事だ。威力はさっき見せたから良いよな?」 完全に油断していた、もう一人いたのか。 フレンダ(だけど近寄ってくれれば一撃で意識を奪って……) 「あ、後いちおー言っとくけど、この杭は俺が炎を制御してるから形を保ってるだけでー。 ま、つまり俺を倒したら暴発しちゃう? みたいなー」 アハハハハハと勝利を確信したのか盛大に笑う。本当のことかどうか確認の仕様が無い以上 起死回生のチャンスもこれで潰された、後ろに立っている駒場がく、と小さく呻く。 駒場(この男の言うことを聞くほか無い……)
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- 上条「お前、本当についてねーよ」フレンダ「……」
31 :以下、5ちゃんねるからVIPがお送りします[]:2021/05/03(月) 09:42:39.884 ID:K9NOROm30 - キッと男を睨み付けるが、それ以上のことが出来ないのは相手もわかっているのだろう、相
変わらずの下卑た笑顔を変えずに今度は右手の人差し指から小指の指の間、計三本の杭を作り 出し、保険のつもりか妹の上に浮かべて、 「おい、そんな恐い顔すんなよー。今から優しくしてやんのに、せっかくのかわいー顔がだ いなしだぞ」 フレメアの横を通り抜けこちらに歩いてくる。本当にこういった輩の考えることは吐き気が するが、今更何が出来るわけでもない。いや…… フレンダ(これが妹を守るために今出来る事って訳よ。) 二回も危険に巻き込んだことがこの程度のことで清算されるとは思わない。だが今度こそ本当に妹 の為に何でもしてやる。
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- 上条「お前、本当についてねーよ」フレンダ「……」
32 :以下、5ちゃんねるからVIPがお送りします[]:2021/05/03(月) 09:44:19.427 ID:K9NOROm30 - 「おい、服脱げよ」
全身が見える位置なのか、三、四歩離れた位置で立ち止まって欲望を湛えた目で見下ろしてくる。 駒場「フレンダ……」 フレンダ「にひっ、駒場も見たい? でも、悪いけどアンタは私の好みから外れてるから、目はつ ぶってて欲しい訳よ」 申し訳なさそうに名前を呼ぶ駒場に、いつものように少しふざけたように返して、ブレザーのボタンを 外していく。 フレンダ(親からも見捨てられて、実験で体は弄り回されて、手は真っ赤に染まって…) すとん、とブレザーが落ち、冷たい夜風が純白のシャツを通り抜けて直接肌を刺す。 フレンダ(…結局、こんな汚れた私に『普通』の恋愛なんてする権利は無いって訳よ)
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- 上条「お前、本当についてねーよ」フレンダ「……」
33 :以下、5ちゃんねるからVIPがお送りします[]:2021/05/03(月) 09:45:58.560 ID:K9NOROm30 - 嘘だった。親からの愛情を受けれず、実験動物として最低限の扱いしか受けれず、手を血で染めるし
か生きる糧の無かったからこそ、彼女は最後の『普通』として、それを求めていた。しかし本当の感情に 嘘をぬりたくっても胸には痛みも無く、目の前でそれを奪おうとする相手に対して憎いとも感じない。もう 彼女には運命を呪うほどの気力も、神様に文句を言いたいと思うほどの心も残されていなかった。 「あー決めた、追加ルールな。脱いだ服はその場で没収していくから」 新たな杭を投げられて、足元に落ちていた紺のブレザーはオレンジにそして黒へと変わっていった。ど こか他人事のようにお気に入りだったブレザーの末路を見届けて、シャツのボタンに手をかけて ――パキイィィン―― 何かが割れるような音にふと手が止まる。いつの間にか下を向いていた顔を上に向けると、先ほどの男 は路地の向こう側を見ていて、 「おい、テメェ勝手に何やってくれてんだよ」 先ほどと変わらず倒れたままの妹の後ろに誰かが立っていた…いや、一つだけ妹の状態は先ほどと違っ ていた。 「どうやって俺の『中空機雷』を消しやがったてめぇッ!!」 そう、確かに先ほどまで間違いなく妹の上に設置されていたはずの三本の杭。それらが全て 消えている。
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- 上条「お前、本当についてねーよ」フレンダ「……」
34 :以下、5ちゃんねるからVIPがお送りします[]:2021/05/03(月) 09:48:33.350 ID:K9NOROm30 - 上条「別にどうやって消したかなんてどうでも良いだろ」
声の主は何でもないことのように言い放つ。それを見て男は頭をガシガシかきながら答える。 「あー、分かった。お前、自分の能力は知られたくないタイプって事だな、じゃあ詮索はし ねぇよ。まぁ能力者ってことならいいや、途中参加になるけど良かったらお前もこいつら無 能力者(ゴミ)の掃除に付き合わねぇか?」 フレンダ(結局、どうせこいつも参加するに決まってるって訳よ) はなから期待などしていない、ピンチな時に颯爽と現れて助けてくれるヒーローなんている訳が無いし、 仮にそんなのがいたとしても私なんかクズのところに来てくれる訳が無い。 上条「そうか、お前が最近噂になってる『無能力者狩り』か」 「あぁ、そーだ。何だオマエ、元から興味があったのか?だったら早速……」
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- 上条「お前、本当についてねーよ」フレンダ「……」
35 :以下、5ちゃんねるからVIPがお送りします[]:2021/05/03(月) 09:49:49.382 ID:K9NOROm30 - 上条「ゴミはお前だろ、こんな小さな子襲いやがって」
「ぇ……?」 予想外の答えに思わず声がこぼれる。しかし声の主はこちらの驚きにも気付かずに、更に衝 撃的な一言を続ける。 上条「第一俺は無能力者ですよ」 「なっ……」 『中空機雷』の男は一瞬硬直し言葉を失った。が、 「テメェもゴミかよ!! だったらそいつと一緒に焼却処分してやるよ!!」 刹那、最初に地面に刺された杭が渦を巻きながら巨大な火柱へと姿を変えていく。
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- 上条「お前、本当についてねーよ」フレンダ「……」
36 :以下、5ちゃんねるからVIPがお送りします[]:2021/05/03(月) 09:51:13.440 ID:K9NOROm30 - フレンダ「フレメアぁっ!!」
駒場「その子を連れて逃げろっ!」 駒場と同時に叫ぶ。しかし無情にも炎の柱は一気に広がり、 ――パキイィィン―― その柱を突如手が貫いたかと思うと、そこを中心に霧散するかのように散っていく。 散っていく赤い光の中、立っていたのは黒いツンツン頭の少年だった。 「は、はは…なんだよ驚かせるなよ。やっぱりお前能力者じゃ……」 何だあれは、考えられるのは同じ炎を使う能力者で干渉したか、風を繰って炎を拡散させた か―いや、どちらにしてもあのような消え方はしない。
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- 上条「お前、本当についてねーよ」フレンダ「……」
37 :以下、5ちゃんねるからVIPがお送りします[]:2021/05/03(月) 09:52:27.179 ID:K9NOROm30 - 上条「だから、上条さんは無能力者なんですってば」
ツンツン頭は右手で頭をガリガリとかきながらため息混じりに答えて視線をこちらに向ける。 上条「えーっと、この子のお姉さんに……お兄…さん…? とにかく、この子にはやけどとか無 いので安心してください」 こちらの方が素なのか、淡々とした声に少しだけやわらかさが混じる。その足元で寝ている 妹は確かに服も髪も燃えたような跡は無かった。 「何だよ、何なんだよオマエわぁあああ!!」 半ば錯乱した能力者の男は、左手もポケットから引き抜き次々と光る杭を生み出しツンツン 頭の顔目がかけて投げつける。
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- 上条「お前、本当についてねーよ」フレンダ「……」
38 :以下、5ちゃんねるからVIPがお送りします[]:2021/05/03(月) 09:54:10.786 ID:K9NOROm30 - 上条「俺か? 俺は……そうだな、『疫病神』っていったところかな」
自嘲気味な笑みを浮かべて右手を気だるげに薙ぐ。それだけで飛んでいた杭は爆発すること 炎の渦を生み出すことも無く、ばらばらとくずれて空へ吸い込まれていった。 「は、ははははは……」 自分の全力がただの右手の一薙ぎで全て打ち消された、その現実に耐えられなくなったのか男は後ろにへたり込む。 上条「不幸だよなぁ……」 それは誰に向けられた言葉なのか、ゆっくりとツンツン頭の少年は座り込んだ男に近づいて、右手を振りかぶり、 上条「俺(疫病神)に会っちまうなんて、お前最っ高に不幸だよなあっ!!」 そのまま男の顔面に拳がぶち込まれた。
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- 上条「お前、本当についてねーよ」フレンダ「……」
39 :以下、5ちゃんねるからVIPがお送りします[]:2021/05/03(月) 09:57:23.927 ID:K9NOROm30 - 〜〜〜〜〜〜〜
フレンダ「はぁ……」 本日何十何回目かのため息が口から漏れる。左手で頬杖をついて視線をスモークの張られた ワゴン車のの外にやるが、行けども行けども同じようなビルの背景と人の山、つまらない風景 は目に入らずただ流れていくばかり。ふぅ、とまたため息が漏れる、ため息の原因はもっぱら 昨日のツンツン頭の少年であった。 あの少年が一撃で発火能力者の男を気絶させた後、意識を失っていたフレメアを病院に連れ て行くことにし、無能力者狩りの処理を駒場に任せていかにもチンピラといった体のスキルア ウトの車に乗って病院へと向かった。それで、「かすり傷以外に目立った外傷は無いけど、一 応脳とかの精密検査とかもやっておくからね?」とカエル顔の医者がMRIなどを取っている 間、二人で冷たい診察室前の長いすに座っていたところまでは確かにあの少年はいたはずだ。
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- 上条「お前、本当についてねーよ」フレンダ「……」
40 :以下、5ちゃんねるからVIPがお送りします[]:2021/05/03(月) 09:59:19.413 ID:K9NOROm30 - フレンダ(それで、「シャツだけじゃ寒いだろ、これ羽織っとけよ」って学生服を掛けてもらったの
は良いけど…) そのまま着てきた少しぶかぶかの学生服の左腕部分を右手でなでる。 フレンダ(結局、服貸したまま消えるってどういう訳よ) カエル先生から呼ばれて診察室で妹の状態を聞いて廊下に戻ると、『用事が出来たので帰り ます』と書かれたメモが置いてあるだけだった。 フレンダ(……しかも、財布、キャッシュカード付きで) そう、彼女も最初は、もしかしたらもう卒業だからくれたのかな。と思ったが、膨らんでい たポケットに手を入れて気付いた、財布が入っていることに。
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- 上条「お前、本当についてねーよ」フレンダ「……」
41 :以下、5ちゃんねるからVIPがお送りします[]:2021/05/03(月) 10:01:14.420 ID:K9NOROm30 - お礼も言いたいし、この学生服も渡さなければいけないから、と学生証を探すために開いた
財布の中身はあまりに悲惨なものだった。紙幣入れの中身は全てレシート、しかもそのほとん どがモヤシで埋め尽くされており、主なタンパク質の供給源は肉ではなく卵。いやな予感と共 に小銭入れの方を開けると真鍮とアルミが計八枚、おまけにカード入れには当初の目的の学生 証は無く、代わりに何故かひびの入ったキャッシュカード……。あまりの悲惨さにもはや沈黙 するしか出来なかった。 カエル顔の医者は「彼は常連さんだからね? 今度来た時に渡しておこうかい?」と言って いたが、出来れば自分の手でお礼と一緒に返したい……なにより一食ぐらいまともな物を食べ させたい、という気持ちから預かってきたのだった。 フレンダ(どちらにしろこれ以上の手がかりはないし、レシートはいつも同じ店だったからそこら辺 をぶらぶらして探すしか……) とそこまで考えたところで、 ガツン、と唐突な頭への衝撃で現実に引き戻される。
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- 上条「お前、本当についてねーよ」フレンダ「……」
42 :以下、5ちゃんねるからVIPがお送りします[]:2021/05/03(月) 10:02:10.333 ID:K9NOROm30 - フレンダ「う、うおぉぉぉ……」
狭い車内なのでごろごろ転げるわけにもいかず、頭を押さえて足をばたばたさせるしかな かった。 麦野「全く。今回の仕事の概要、ちゃんと聞いてたのかにゃフ・レ・ン・ダちゃ〜ん」 押さえていた頭を上げるとそこには、いつものように黄色系色で統一されたしたストッキン グとコートを身につけ、ヒールを装備した脚を組んでいる仕事の上司(その雰囲気から大学生 にしか見えないがれっきとした高校生らしい)がこちらを向いていた。にこにこという擬態語 が全く違う意味を持ちそうなほど、全然笑っていないのに満面の笑顔だし、握った拳がぷるぷ ると震えているし、心なしかわずかにウェーブのかかった長い茶色の髪が蠢いているようにす ら見える。こうなった以上取れる対策は一つしかない。
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- 上条「お前、本当についてねーよ」フレンダ「……」
43 :以下、5ちゃんねるからVIPがお送りします[]:2021/05/03(月) 10:03:43.476 ID:K9NOROm30 - フレンダ「え、えーと…そのー…てへっ☆」
ゴガンッ、結果、失敗。あざとくごまかそうとしたらさっきより威力五割増しでもう一度頭 に拳が飛んで来た。しかも舌を出していたため痛みは更に五割増し。 フレンダ「うぐるぉぉぉ……」 若干巻き舌になりながら再度悶絶している所に、前の助手席から少し幼さの残る声がかかる。 絹旗「これだからフレンダはいつまでたっても超フレンダのままなんですよ」 フレンダ「ひょうふへんはっへ、わはひほははへはへひようひあふはいはわへ?!」 絹旗「もはや超意味が伝わってないどころかどこが口癖なのか超わからないので、フレンダはし ばらくの間超黙っとくべきですね」
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- 上条「お前、本当についてねーよ」フレンダ「……」
44 :以下、5ちゃんねるからVIPがお送りします[]:2021/05/03(月) 10:06:00.178 ID:K9NOROm30 - こちらもいつもどおり、ふわふわニットのワンピースを着た小学生にしか見えない”自称”
中学生の少女がペラペラと何かをめくりながら憎まれ口を叩く。彼女の栗色のボブカットに隠 れて何を読んでるのかは分からないが、またどうせ映画雑誌を見ているのだろう。現に、むむ、 これは超大手製作会社のですから見る気はありませんでしたが、このストーリー……超B級の 香りがします! 超チェックです!! とかいって頭を左右に揺らしてリズムを取りながら、 ふんふんふん、と鼻歌を歌っており、ずいぶんとご機嫌である。 麦野「おい、フレンダぁ……」 フレンダ「は、はひっ」 再度聞こえた地獄の底からの呼び声に背筋がぴんと伸ばして右側へ居直る。 麦野「アンタ、マジで聞いてなかったの?」 フレンダ「う…ごめん麦野、ちょっと考え事してて……」 あーマジかもう一回説明とかめんどくせぇな、とわしゃわしゃ髪を掻き上げながらシートに ドスンと倒れ掛かる。そのシートの後ろからもう一つ、ぼーっとした気の抜けるような声。 滝壺「大丈夫、私はうっかり屋さんなフレンダのせいでもう一度今回のしごとについて説明しな くちゃいけないむぎのんをおうえんしてる」 座っているのは、声に違わぬどこかぬけたような顔立ちの少女。上下ジャージに肩のところ でパッツンと切られた黒髪という、もう女を捨てたのかと突っ込みたくなる出で立ちだが、こ の間年を聞いたら十六と答えたので女を捨てるには若干どころかかなり早すぎる気がする。し かし、ジャージの色がピンクなあたり実は本人的にはおしゃれだったりするのだろうか、真実 は彼女のみぞ知るといったところだ。
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- 上条「お前、本当についてねーよ」フレンダ「……」
45 :以下、5ちゃんねるからVIPがお送りします[]:2021/05/03(月) 10:07:35.684 ID:K9NOROm30 - 麦野「おい滝壺、誰が『むぎのん』だ」
滝壺「ごめん、むぎの。ふれんだのせいで悪くなった車内の空気を和ませようとしたんだけど… …」 麦野「よし分かった。フレンダ、今日でお前は私ら『アイテム』から卒業だ。ああ、大丈夫大丈 夫、フレンダがいなくなっても今日の仕事は三人で回せるし、フレンダ程度の人材そこらへ んにころころ転がってるから」 フレンダ「ちょ、ちょっと待って欲しい訳よ麦野! 何で今の流れで私が悪いことに……いや、確か に結局私が話を聞いてなかったのが悪かったけど!! ほ、ほら絹旗や滝壺も私がいなく なったらさびしいって…」 絹旗「何を超うぬぼれてるんですかフレンダ。別に私にとっては、超肝心なところでミスする上 に、B級映画の良さを超少しも理解しようとしないフレンダなんていてもいなくても変わり ませんから」 フレンダ「ちょっとおぉぉ!! そこは『だめですよ、フレンダは超大切な仲間ですから』って言う ところじゃない訳!? あと完全に映画の件は絹旗の私怨じゃない! た、滝壺は私がいな くなったら寂しいよねっ」
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- 上条「お前、本当についてねーよ」フレンダ「……」
46 :以下、5ちゃんねるからVIPがお送りします[]:2021/05/03(月) 10:09:13.547 ID:K9NOROm30 - 滝壺「そうだね、ふれんだがいなくなったら寂しい、とおもうよ?」
フレンダ「うんうん、結局なんで疑問系なのかは置いといて滝壺もこう言ってるんだし……」 滝壺「でも、最近脚線美自慢が増えてちょっとうっとうしいふれんだは応援できない」 フレンダ「待ってぇええ!! 確かに最近ちょっとしつこかったかなと反省してるケド、そんなこと でクビにしないでぇぇええ!!」 麦野「うるせぇぞフレンダ! まぁともかく、これにより四対〇、満場一致でフレンダの人せ… 『アイテム』からの卒業が決定しました。はい拍手」 絹旗「わー、超ぱちぱち」 滝壺「よかったね、ふれんだ。私は新しく始まるふれんだの生活をおうえんするね」 フレンダ「嫌ぁぁあああああ、クビってそっちの『首』? 組織的な意味じゃなくて肉体的な意味 で!? 後なんで私が私の人生終わらすのに一票投じてる訳よおおおぉ!!」
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- 上条「お前、本当についてねーよ」フレンダ「……」
47 :以下、5ちゃんねるからVIPがお送りします[]:2021/05/03(月) 10:09:51.568 ID:K9NOROm30 - 麦野「おぃ、さっきからキャンキャン吼えやがってうるせぇんだよフレンダぁ! テメェは仕事
の話聞く気が無いのかよ!」 フレンダ「えぇ!? ……いや、うん、結局分かってた訳よ。なんかどうせこんな流れになることぐ らい…」 仲間全員に弄られて改めて仲間内での自分の立ち位置を理解し、シートの上で体育座りをし ながら丸まって、シートの上に指で見えない円を描き続ける。
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- 上条「お前、本当についてねーよ」フレンダ「……」
48 :以下、5ちゃんねるからVIPがお送りします[]:2021/05/03(月) 10:10:40.101 ID:K9NOROm30 - 「麦野「まぁ、冗談はこれくらいにして改めて今回の仕事の概要を伝えるわ、今度はちゃんと聞い
ときなさいよフレンダ」 麦野は声を先ほどの冗談交じりの声から一転、透明に通るようでありながら、周りの人間に 有無を言わせないほどの圧力を与えるような調子で話し始める。先ほどまで修学旅行のバスの 中のようだった車内が一瞬で緊張に支配され、全員が姿勢を正す。 麦野「今回の仕事は一言で言えば、スパイの確保ってとこかしら。あくまでも『始末』じゃ無く て『確保』だから間違えて殺してしまわないこと」 先ほどまできゃいきゃいしていた彼女たちだが、彼女ら四人は仲良しグループなどではない。 学園都市の汚れ仕事を請け負う『暗部組織』の一つ『アイテム』。彼女たちにとっては対象は 殺して当たり前、だからこそこのような『殺すな』という注意が必要になるのである。
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- 上条「お前、本当についてねーよ」フレンダ「……」
49 :以下、5ちゃんねるからVIPがお送りします[]:2021/05/03(月) 10:11:50.247 ID:K9NOROm30 - 麦野「情報の受け渡し場所は車に乗るとき言ったと思うけど、第三学区の第二国際展示場。今日
から始まる情報技術関連の展示会に紛れて情報の受け渡しをするらしいわ。相手は二人、一 人は外からの人間、もう一人は中の人間で情報の運び屋、能力は無能力者みたいね」 フレンダ「アレ? 麦野はさっき殺すなって言ったけど、結局外からの人間は殺しちゃまずいのは分 かるけど、運び屋なんてやってるほうも殺しちゃダメな訳?」 麦野「あぁ、所詮そいつは雇われの駒でしかないからな。情報を流そうとした元を潰すために、 誰に雇われたか”教えてもらう”んだとさ」 絹旗「うわぁ、超悲惨な目にしかあわなそうな響きですね、その言い方」
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- 上条「お前、本当についてねーよ」フレンダ「……」
50 :以下、5ちゃんねるからVIPがお送りします[]:2021/05/03(月) 10:14:21.399 ID:K9NOROm30 - 麦野「はっ、そこらは私らが考えるところじゃないわ。とにかく外の奴は無傷で、中の奴は出来
れば無傷で、両方生きたまま回収しろってね」 フレンダ「はー、なんていうか殺さずに捕まえろとか結局めんどくさい仕事な訳よ。そういったこと は『警備員』や『風紀委員』の管轄じゃないの?」 麦野「後々尋問とか記憶消去や修正とかやられるんだから、後々のことを考えると、できれば表 の組織を関わらせない方がいいって事なんじゃない? 詳しくは知んないけど」 仕事の大まかな概要を麦野が話し終わった所で、いままで話を聞いているだけだった滝壺が 反応した。 滝壺「じゃあ、今回はあまり私の出番はないってことになるのかな」 フレンダ「いや、確かに能力を使う機会は無いと思うけど、結局私たちで見つけないといけないって 言う訳なら、四人しかいないんだし人数は一人でも多いほうがいいんじゃない?」 麦野「そういうことだ。ま、一人でいるところを他の暗部に狙われるわけにはいかないし、念の ために私と一緒に中の人間の方を追ってもらうけどな。それと、今回はこれをつけてやるん だとよ」 そう言ってシートにもたれかかったまま、銀色の仕事用アタッシュケースから布製のわっか をとりだし三人に向けて投げる。
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- 上条「お前、本当についてねーよ」フレンダ「……」
51 :以下、5ちゃんねるからVIPがお送りします[]:2021/05/03(月) 10:15:24.703 ID:K9NOROm30 - 麦野「『風紀委員』の腕章。表向きには私らは風紀委員の特別支部からの警備のお手伝い、って
ことで展示場を巡回してターゲットを探すから」 両手でぱすん、と受け止めた緑と白のストライプ柄の腕章にはたしかにジャッジメントの証 である白抜きされた盾のマークが入っていた。 絹旗「うげ、これ超安全ピン付けじゃないですか……こんなのつけるんだったら先に言って欲し かったです。このワンピース超お気に入りのやつなんですから」 フレンダ「超安全ピンって、何かすごそうなものが生み出されてる訳よ。それは置いといて、私もこ の服には出来れば傷は付けたくないんだけど」
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- 上条「お前、本当についてねーよ」フレンダ「……」
52 :以下、5ちゃんねるからVIPがお送りします[]:2021/05/03(月) 10:16:55.988 ID:K9NOROm30 - 麦野「あぁ? 仕方が無ぇな、経費で服代落としてやるからそれで我慢しろ……って、そういや
何でアンタ今日は男物の学生服なんだよ、しかもサイズ合って無いし」 フレンダ「あー、実はこれ借り物なんだ。昨日ちょっと男の子に助けられてね、結局、その時に貸し てもらった訳よ。」 妹のことは伏せて制服の事情を伝える。 麦野「制服貸してもらうって……お前、体は大丈夫なんだろうな」 指に髪をくるくると巻いてどうでもよさそうに振舞ってはいるが、目はこちらをじっと捉え ており口調に反して声には憂いの色が混じっている。口先だけの心配ではないんだなと少しだ け口元が緩んでしまう。 フレンダ「いやいや、麦野が思ってるような事は無かった訳よ。昨日はそこそこ高位の発火能力者に 囲まれちゃって、大通りも近かったから得物を使うわけにもいかず体術だけでやってたらい つの間にか燃え尽きちゃっててね」
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