- (・∀ ・)と兄弟のようです
34 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2012/11/24(土) 12:28:15.11 ID:O5cxbXo50 -
フォックスは奴隷の扱いが悪いことで有名だった。 奴隷をどのように使うかは、本人しだいではあるが、今回のように、公共の場で奴隷を殺すこともしょっちゅうだ。 いたぶることを好まない者や、奴隷を見下していない者からすれば、気分の悪い光景だ。 ゆえに、そういった趣味は自身の敷地内でのみさせる。と、いうのが基本的なマナーとされている。 金があるという意味でも、マナーがなっていないという意味でも、フォックスは有名だ。 ( ´_ゝ`)「オレの記憶が正しけりゃ、あの奴隷だってまだ一ヶ月経ってないだろ」 爪'ー`)「そうだねー」 軽い返事だ。 先ほど黒くなってしまった奴隷は、またんきを盗み出す前に見た耳族の女だった。 あの時は美しい毛並みを持っていたというのに、何をどうすれば、あのような有様になるというのだ。 もはや加虐趣味ではすまされない。 爪'ー`)「だってさ、使ってみたかったんだ。コレ」 フォックスが手を上げる。 何かを持っているらしいが、認識することができない。 爪*'ー`)「見える? 見えないだろ?」 流石兄弟がフォックスの手の内にある物を見ようとしていることに、彼は楽しげに笑った。
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36 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2012/11/24(土) 12:31:19.48 ID:O5cxbXo50 -
爪*'ー`)「これは極細の糸だ。 細いが、ちょっとのことじゃ切れない。そして軽い。 あの奴隷にはこれを巻きつけておいたのさ。この糸はよく燃えるんだって聞いてたからな! いやー。アレほど燃えるとはな!」 最新の道具を試したいがために、一人の命を奪った。 いや、彼の中では奴隷を一人とは数えないのだろう。 ('A`)「……クズガ」 ドクオが吐き捨てた言葉はフォックスに届かない。 彼の脳内は奴隷の死という実験結果でいっぱいだ。 ( ´_ゝ`)「あぁ、本当だ。触れてもわからない」 爪*'ー`)「だろ?」 兄者はフォックスに近づき、糸に触れる。 近づいて目をこらして、ようやく細い線が見える程度だ。 重さも何も感じない。
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38 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2012/11/24(土) 12:34:18.08 ID:O5cxbXo50 -
何やら糸の成分について説明してくれるが、学のない兄者にはさっぱり意味がわからない。 あからさまに聞き流しているものの、フォックスはそれで構わないらしく、一人で勝手に話し続けていた。 兄者が糸を眺めようが、またんきを見ようが、彼の口は止まらない。 爪*'ー`)「次はこれを使って、どんなことをしようかなー。 おっと。その前にまたニュー速に使いを出さないとな!」 しばらく話し続けて満足したのだろう。 糸を手繰る動作をし、胸ポケットに糸をしまったように見える。 離れたところにいる弟者には、糸など見えない。 爪*'ー`)「よーし。首を絞めれるかやってみよう!」 誰にそれを試すのかによっては、警察を呼ばれる台詞だ。 ギョッとした顔をされないのは、彼はいつも奴隷に対してそのような行為をおこなっていると知っているからだろう。 フォックスはスキップでもしそうな勢いで公園を出る。 その際、誰かが「ゴミは片付けておけ」と、忠告をしていた。
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40 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2012/11/24(土) 12:37:38.05 ID:O5cxbXo50 -
(; ∀ )「何だよ、あれ……」 ( ´_ゝ`)「フォックスだ。奴隷をすぐ殺すことで有名な男だ」 (; ∀ )「あの人、何で……」 ( ´_ゝ`)「奴隷だからな。しかたない」 (; ∀ )「しかたないって! そんなの……」 黒コゲになって死んだ。 死後もゴミとして扱われた。 およそ、耳族としての扱いではない。 (´<_` )「またんき。残念だが、これが、オレ達の生きている世界だ」 またんきの背中を撫でる。 暖かい体温が服越しに伝わった。 あの女も、同じ体温を持っていたはずだ。 ('A`)「……ウケイレロ」 (; ∀ )「だって……!」 (; ω )「きもちはわかるお」 ブーンが羽根を使い、宙へ浮く。
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41 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2012/11/24(土) 12:40:36.84 ID:O5cxbXo50 -
(; ω )「でも、これがげんじつなんだお」 明るく優しいブーンは心を痛める。 奴隷という存在は生き物としての扱いさえ受けられない。 どれほど嘆いたところで変わらぬ事実だ。 ( ´_ゝ`)「お前は元奴隷だ。 だが、今は違う。そうだろ?」 (; ∀ )「でも……」 ( ´_ゝ`)「オレ達は国中の奴隷を救うなんてことはできない。 時間も、力も足りない。だから、彼女を助けなかった」 冷たい声だ。 兄者は死んだ女に何の関心も抱いていない。 哀れだとは思っても、涙は流れないし落ち込むこともない。 (´<_` )「……宿屋に戻ろう。 最後の日に、とんでもないものを見ちまったが、 的芽には良い思い出もたくさんあるだろ?」 (; ∀ )「……うん」 どうにか頷けたのは、ほとんど奇跡だった。
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42 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2012/11/24(土) 12:43:41.87 ID:O5cxbXo50 -
気持ちが晴れないままに、またんきは宋咲へ行くこととなった。 陸続きの道のりなので、風景が劇的に変わることはない。 しかし、ドラゴンに乗っているからこそ、よくわかる変化もあった。 (・∀ ・)「くもが黒いぞー」 (´<_` )「あれは雨雲だ。 もう宋咲に入った証拠だな」 雨雲と宋咲の関連がイマイチ理解できない。 またんきがさらなる疑問を口にしようとしたとき、鼻先に水滴があたった。 上を見れば、雨雲から細かな雨が降ってきている。 ( ´_ゝ`)「おっと。降ってきたな。 ドラゴンこれからは歩きだ」 (;^ω^)「あめがふったってことは――」 ブーンが不安気に言う。 すると、空が一瞬光った。 光にまたんきが驚く寸前、辺りを激しい音が襲った。 ( ;゚ω゚)「うおおお! かみなりがおちたおー!」 ('A`)「モチツケ」 ( ;゚ω゚)「こんなところにおもちはないお!」 ('A`)「ダメダコリャ」
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45 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2012/11/24(土) 12:46:15.62 ID:O5cxbXo50 -
雷の音にドラゴンも慌てて地上へ降りる。 茂っている木々が邪魔だったが、構っていられないとばかりに、枝を破壊しながらの着地だった。 細かな枝がまたんきを襲うが、小さな切り傷を作った程度ですんだ。 (;・∀ ・)「何だ、いまのは」 木のおかげで、大方の雨は防がれている。 またんきは上を見上げた。 空は静かに雨だけを落としているが、先ほどはまったく違うものが落ちた。 ( ´_ゝ`)「雷だ」 (・∀ ・)「雷、かー」 雷は五属性の中にも入っている属性だ。 またんきも存在は知っていたが、こうして実物を見るのは始めてだった。 光以上に音が印象に残る。今もまだ耳の中であの暴力的なまでの音が響いているように感じる。 (;^ω^)「ぼくはきらいだお」 ('A`)「スグ、ビビルモンナ」 ドクオは平気らしく、気落ちしているブーンの頬を突いていた。 (´<_` )「何にせよ、こんな状態で空を飛ぶのは危ない。 ここからは歩きになるぞ」
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46 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2012/11/24(土) 12:49:02.68 ID:O5cxbXo50 -
ドラゴンが申し訳なさそうにしているが、雷は自然現象だ。 彼にどうこうできる問題ではない。 ( ´_ゝ`)「オレの記憶が正しければ、この方向に町があったはずだ」 この雨の中、野宿は勘弁したいところ。 兄者は最も近い町を頭の中で叩きだす。 (´<_` )「しかし、宋咲は変動の激しい地方でもある。 念のため確かめるか」 流石兄弟はお互いを見る。 彼らが全速力で走れば、それほど時間はかからずにすむだろう。 ただし、弟者の体力が心配ではあるが。 ('A`)「オトジャハ、ノコッタラ?」 (´<_` )「そういうわけにもいくまい。 大丈夫だろうけど、何があるかわからんからな」 ( ´_ゝ`)「いやー。兄思いの弟で本当に助かるわー」 (´<_` )「例えば、町で兄者が遊び呆けてるなんてことがあったら困るだろ?」 (;´_ゝ`)「ツンデレ? ねえ、ツンデレだよね? 本気では思ってないよね?」
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48 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2012/11/24(土) 12:52:16.98 ID:O5cxbXo50 -
(・∀ ・)「おれはるすばんかー?」 声に元気がない。 ( ´_ゝ`)「盗みに行くわけじゃないから、すぐに戻るさ。 だが、お前が嫌だって言うなら、行かない」 (・∀ ・)「…………行ったほうが、いいのか?」 (´<_` )「絶対というわけではないさ。 変動がある宋咲といえど、町一つ消えるなんてそうそうないことだし」 (・∀ ・)「そうかー」 またんきは顔を俯けて少し考える。 元気がないのは、何も置いて行かれるという心配だけではない。 (・∀ ・)「……すぐかえってくるんだぞー」 ( ´_ゝ`)「把握した」 (´<_` )「じゃあ、行って来る」 ('A`)ノシ「イッテラ」 (;^ω^)「はやくしてくれお? かみなりがおちちゃうお」
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49 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2012/11/24(土) 12:55:45.29 ID:O5cxbXo50 -
走る流石兄弟を見送り、またんきはドラゴンによりかかる。 降っている雨は、彼の心の靄を払いはしない。 ('A`)「ドウシタ?」 今にもため息をつきそうなまたんきの近くにやって来る。 ドクオが乗った肩と反対の肩にブーンが乗った。 (・∀ ・)「……どれいって、ごみなのか?」 またんきの脳裏には、黒コゲになった奴隷の姿が鮮明に残っている。 あの掠れた叫び声も忘れることはないだろう。 そして、死した彼女がゴミ扱いをされたこと。 兄者も弟者もそれを咎める素振りさえなかったこと。 どれもこれも、彼の中に強くこびりついている。 元奴隷であるまたんきには、思うところがあった。 今さら流石兄弟を疑うようなマネはしない。 彼らはハーフであるまたんきを手放さないし、一度内側へ入れれば守ってくれる。 それくらいはわかっていた。 けれど忘れられない。 灯南でも見たあの冷たい目。 宋咲では手を差し伸べることもなければ、声をかけることもなかった。
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- (・∀ ・)と兄弟のようです
50 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2012/11/24(土) 12:58:13.74 ID:O5cxbXo50 -
( ^ω^)「ぼくも、はじめはとまどったお」 暗い雰囲気の三人を、ドラゴンが心配そうに見つめている。 ( ^ω^)「あにじゃも、おとじゃも、ぼくやどくおにはやさしかったお。 でも、ほかのひとにはぜんぜんだったお」 それは、またんきが的芽で見た光景とほとんど変わらない。 目の前で誰かが飢え死にしても、殺されても、表情一つ変えないのだ。 生まれたときから、そんな風景が当たり前だったとしても、そう簡単に無関心にはなれないはずだ。 ( ^ω^)「だけど、ぼくらをいじめたことはなかったお」 ('A`)「ソレドコロカ、オレタチガ、ツカマリソウニナッタトキハ、ホンキデオコッテクレタ」 他人はその他大勢であり、死のうが苦しもうが気にしない。 その反面、仲間が唯一であり、傷ついた姿を見ることさえ厭う。 流石兄弟が持つ二面性は、恐ろしくもあったが、頼もしくもあったのだ。 ( ^ω^)「めんどうごとに、まきこまれなければ、おかねをまいたり、ごはんをあげたりはするんだお」 他者を助けるのが嫌なわけでない。 また、一人助けたところで。と、思っているわけでもない。 兄者の、そして彼自身は無意識だろうけれど弟者も、行動原理は興味の有無だ。
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52 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2012/11/24(土) 13:01:30.68 ID:O5cxbXo50 -
('A`)「ギコガ、ドレイヲナクシタイッテ、イッタラ、ソウナレバイイナ。ッテ、イウンダ」 ( ^ω^)「だお。 あにじゃも、おとじゃも、どれいせいどなんて、なくなればいいとはおもってるんだお」 (・∀ ・)「でも、どれいはごみだって。ひていしなかった。 おもってるんだ。おれは、もうどれいじゃないけど、ほんとうなら、ごみだったんだ」 奴隷であること、実験体であること。 それらに嫌気が差したことはあるが、劣等感の元になったことはなかった。 しかし、ゴミだという言葉を聞き、それを流石兄弟が否定しなかった。 そんな簡単なことで、奴隷という過去は膿み始める。 (・∀ ・)「ハーフじゃなかったら、ほんとうに、ただのごみだったんだ」 涙は流さない。 国を回り始めてからは、一度も流していない。 けれど、またんきの声は震えていた。 (・∀ ・)「どれいなんて、ごみなんだ……」 雨が強くなる。 またんきの代わりに泣いているようだ。
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- (・∀ ・)と兄弟のようです
54 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2012/11/24(土) 13:04:15.09 ID:O5cxbXo50 -
( ^ω^)「ちがうお」 雨の音に負けない強さで言う。 またんきが顔を上げ、ブーンを見た。 ('A`)「アア、チガウネ」 次はドクオを見る。 二人は呆れたような顔をしていた。 心なしか、ドラゴンも呆れているように見える。 ( ^ω^)「またんきは、ごみにごはんをあげるかお? ふくや、おかねをあげるかお?」 ('A`)「ゴミガ、カラダニクッツイタラ、ハラッテヤルダロ?」 ( ^ω^)「でも、あにじゃもおとじゃも、どれいやうえたひとに、ごはんやふく、おかねをあげるお」 ('A`)「スガッテキタラ、ソットハナスコトハアッテモ、オイハラウコトハナイ」 行動の一つ一つが、対人に対するものだ。 ゴミと人は違う。 人には意思があって、命がある。
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- (・∀ ・)と兄弟のようです
55 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2012/11/24(土) 13:07:26.81 ID:O5cxbXo50 -
(・∀ ・)「でも、だったら……」 ( ^ω^)「ごみじゃない。でも、めんどうだったり、どうでもよかったりはするんだお」 ('A`)「ムカンシン」 ( ^ω^)「そう。でも、それだけだお。 ふたりは、どれいをみくだしたりしてないお」 同じ生き物であることを認めていることと、無関心とは矛盾しない。 流石兄弟は、間違いなく人を人として認めている。 どのようなことがあったとしても、奴隷をフォックスのように扱いはしないだろう。 (・∀ ・)「それでも、あんまりだ」 女の悲鳴が聞こえる。 いつまでも残る声だ。 ('A`)「ソウカモシレナイ」 ( ^ω^)「たすけられたかもしれない。 そのかんがえは、もちろんそうだお。またんきはまちがってないお」 遠くの方で雷が落ちた。 ブーンは一瞬、体を硬くしたが、すぐに力を抜く。 ずいぶんと距離があるようなので心配は必要ない。
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- (・∀ ・)と兄弟のようです
57 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2012/11/24(土) 13:10:26.19 ID:O5cxbXo50 -
('A`)「オマエハ、ジユウダ」 (・∀ ・)「何を、いまさら」 ( ^ω^)「だから、すきにしていいんだお」 雨が強くなる。 町を確認しに行った流石兄弟は無事に帰ってくるのだろうか。 (・∀ ・)「どういういみだよ」 ( ^ω^)「にげてもいいお。とうぞくになんて、ならなくてもいいお。 ねがえば。ほんきでねがえば、あにじゃはかなえてくれるお」 泣かせてやるとは言っていたが、またんきが本気で離れたいといえば、許すだろう。 一度、内側に入った子供だ。身内に甘い兄者が許さないはずがない。 ('A`)「イヤナラ、ナットクデキナイナラ。 イッテモイイ」 ( ^ω^)「もちろん、あにじゃやおとじゃに、じかだんぱんするのもいいお。 でも、ふたりはぜったいにかわらないお」 ブーンは苦笑している。 今までに、彼らの考え方を変えることができたことなどないのだ。
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- (・∀ ・)と兄弟のようです
58 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2012/11/24(土) 13:13:23.18 ID:O5cxbXo50 -
人の考え方を変えるのは難しい。 奴隷をゴミのように見ていないだけ、マシだというべきだろう。 またんきは口を閉ざした。 ('A`)「オマエハ、アニジャトオトジャガ、キライカ?」 (・∀ ・)「……きらい、じゃない」 首を横に振る。 冷たい目は怖いが、優しく抱きしめてくれることを知っている。 盗みの技術を教えてやると言った兄者は好きだ。 物事を教えてくれる弟者は好きだ。 (・∀ ・)「ただ……。あのひとを、わすれられない」 すぐ近くにいた、生きた耳族。 悲鳴を上げて、死んだ耳族。 忘れられるはずがない。 ( ^ω^)「なら、いまはそれだけでいいんじゃないかお」 (・∀ ・)「いいのか? 何かしたほうがいいんじゃないか? もっと、何か……」
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- (・∀ ・)と兄弟のようです
59 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2012/11/24(土) 13:16:36.59 ID:O5cxbXo50 -
('A`)「オボエテテモラエテ、アノヒトモ、ウレシイダロウサ」 ( ^ω^)「あにじゃも、おとじゃも、おなじになれとはいわないお」 仲間だとは言う。しかし、同じような考えを持てとは言わない。 忠告をすることはあっても、押しつけることはしない。 盗みに心を痛めるブーンのことも受け入れてくれる。 できないことを認めてくれる。 ('A`)「イインダ。スキニカンガエロ」 (・∀ ・)「……すきに」 またんきは空を見上げる。 暗くて、青空なんて欠片も見えやしない。 何かを吹っ切るには、これ以上ないほど最悪のシチュエーションだ。 いつか、またんきが大人になって力を得たとき、奴隷を助けようとしても流石兄弟は止めはしないだろう。 手助けをしてくれるかもしれない。傍観しているかもしれない けれど、それを咎めることはしない。 ( ^ω^)「らくにいきるお。すきにいきるお。 それをはじめにねがったのは、あにじゃなんだから」
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61 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2012/11/24(土) 13:19:32.39 ID:O5cxbXo50 -
しばらくして、兄者と弟者が帰ってきた。 二人とも雨に濡れ、毛から水が滴っている。 ( ´_ゝ`)「やっぱりあったぞ」 (´<_` )「宿もとっておいた」 二人はドラゴンの背から、大きなビニールシートを取り出す。 互いに両端を持ち、腕を上げる。 ( ´_ゝ`)「またんき、ここに入れ」 流石兄弟によって作られたのは屋根だった。 二人の間に入れば、雨は入ってこない。 幼いまたんきが風邪をひかぬように考えてくれたのだ。 (・∀ ・)「……ありがとう」 (´<_` )「どういたしまして」 またんきは素直に礼を言う。 作られた屋根の下に入り、雨から守られる。
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63 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2012/11/24(土) 13:22:34.51 ID:O5cxbXo50 -
強い雨の中を五人が歩く。その隣をドラゴンが歩いているのは、何だか新鮮だった。 それぞれ違う足音の中に、一際大きくゆっくりな音がしている。 彼の鱗は雨などに負けることはないようで、むしろシャワーを浴びているのだと言わんばかりだ。 (・∀ ・)「なぁ」 ( ´_ゝ`)「どうした?」 水溜りに足を入れ、靴に泥をつけながら口を開く。 (・∀ ・)「おれ、やっぱり、うけいれられない」 雨が降る。 ビニールに落ちた雨が音をたてる。 三人とドラゴンはぬかるんだ地面を踏み、前へ進んでいく。 ブーンとドクオは黙って飛んでいた。 ( ´_ゝ`)「そうか」 (・∀ ・)「うん」
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64 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2012/11/24(土) 13:25:38.67 ID:O5cxbXo50 -
雨の音と、歩く音だけが聞こえる。 時折、雷の音が聞こえたが、何処か遠くの話だ。 ( ´_ゝ`)「それが、普通なんだろうな」 生まれながらの犯罪者でも、闇属性の精霊でもない。 極普通の者が持つべき感情。 兄者にも、弟者にもない気持ちをまたんきは持っている。 (´<_` )「辛いぞ」 (・∀ ・)「つらいって、すこしわかったぞ」 始めはわからなかった感情が、段々とわかってくる。 それは嬉しくもあったし、悲しくもあった。 (・∀ ・)「あのひとが死んだとき、つらかった」 またんきは胸の辺りを握る。 強く握ったため、服にしわができた。 (・∀ ・)「でも、きっと、このつらい、からは、にげられないんだ」
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65 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2012/11/24(土) 13:28:19.81 ID:O5cxbXo50 -
好きに生きてもいいと言われ、またんきは考えた。 本当にしたいこととは何か。 逃げることか、解決することか。 流石兄弟は逃げることも肯定する。 またんきにとって、自由は辛く、迷うものではなかった。 いつでも、後ろに支えてくれる人がいれば、自由も責任も恐ろしくはない。 だから、またんきは自分の心に真っ直ぐ向きあうことができた。 どのような道を選んだとしても、後ろには流石兄弟や、ブーン、ドクオにドラゴンがいてくれる。 ( ´_ゝ`)「……お前は強いな」 兄者は頬を緩めた。 ビニールシートを持っていなければ、またんきの頭を撫でていただろう。 (´<_` )「向きあうことにしたんだな」 (・∀ ・)「だって、わすれられないし、わすれたくないんだ」 助けられるとは思っていない。 手を差し伸べることが絶対的な善だとも思っていない。 行動して何かが変わるわけでもない。 だから、目の前の人を救ってみたい。 辛くて不平等な現実を黙って受け入れたくない。
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66 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2012/11/24(土) 13:31:23.48 ID:O5cxbXo50 -
( ´_ゝ`)「そうか。お前の選んだ道だ。しっかり進め」 (・∀ ・)「うん」 (´<_` )「ところで、他人を救いたいって気持ちと、盗賊になりたいって気持ちは矛盾しないのか?」 (・∀ ・)「え?」 ('A`)「ブーンハ、イツモ、ヌスミマエハオチコムナ」 ( ^ω^)「ふつうのぬすみはちょっと、にがてだお」 (・∀ ・)「えっと……。えっと……?」 またんきは首を傾げる。 他者を救いたいという気持ちはある。 しかし、言われてみれば、他人の物を盗むというのは、誰かを傷つけることにも繋がる。 まだ話にしか聞いたことがないが、流石兄弟は殺しもしているらしい。 教わる技術にも、そういったことは絡んでくるだろう。 (;・∀ ・)「む、むじゅんしない!」 散々頭を悩ませて結論を出す。 些か力のない声ではあったが。
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69 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2012/11/24(土) 13:34:30.97 ID:O5cxbXo50 -
(;・∀ ・)「おかねをいっぱいもってるヤツからとる! できるだけ、ひとはころさない!」 ( ´_ゝ`)「ま、その辺りはおいおい自分で線を引いていけばいいさ」 今回のことも、目の前で現実を見たからこそ出すことができた結論だ。 未来の、それも、そういった事態に直面するのかどうかもわからない段階で、頭を必要以上に悩ませることはない。 兄者の言葉にまたんきは一息つく。 元よりそれほど回転が早い頭ではない。 すぐに答えを出すことなどできはしないのだ。 ('∀`)「マタンキガ、リッパナトウゾクニナッタラ、アニジャヤオトジャガ、イナクナッテモ、オレガテツダッテヤルヨ」 (・∀ ・)「ほんとうか? やくそくだぞー!」 ('∀`)「ナレタラナ」 (#・∀ ・)「ばかにしたなー!」 ( ^ω^)「またんき、おくちはこうだお」 (#・へ ・)「もー!」 ブーンが手を大きく広げてまたんきの口角を下げる。 不満気にまたんきが声をもらすが、周りは笑うばかりだ。
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70 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2012/11/24(土) 13:37:26.79 ID:O5cxbXo50 -
狭い空間ではあるが、兄者と弟者によって作られている屋根の下で精霊の二人とまたんきは暴れる。 水がはねてズボンを汚しているが、気づいてさえいないようだ。 ( ´_ゝ`)「子供は元気でいいねぇ」 (´<_` )「オレ達は風邪をひきそうだ」 弟者が小さなくしゃみをする。 雨に濡れた上に、宋咲は少々寒い気候にある地方だ。体はすっかり冷え切ってしまっていた。 宿屋についたら、風呂に入る算段を脳内でつける。 ( ´_ゝ`)「しっかし、あの町もずいぶん完成してきてたな」 (´<_` )「店もいくつかできてた」 ( ´_ゝ`)「今日は特に酷い雨だから、誰もいなかったが、明日は晴れるだろうなぁ」 (´<_` )「……あぁ、そうだな」 二人の会話は隠されているわけではなかったのだが、楽しげにしているまたんきの耳にはは入らなかった。
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71 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2012/11/24(土) 13:40:22.92 ID:O5cxbXo50 -
途中、大きな雷の音にブーンが逃げ出したことを除けば、無事に宿屋に着くことができた。 ドラゴンとはいつも通り、町の近くでわかれた。 ( ´_ゝ`)「あー。さむかった」 (・∀ ・)「なあ、このまち、へんだぞ」 (´<_` )「ん? 何でだ?」 またんきが弟者の服の裾を引っ張る。 一応、宿屋の者に聞こえぬようにと思っているのか、声は小さい。 (・∀ ・)「だって、ぼうだけのたてものがあるぞ」 町に入ったまたんきが真っ先に思ったことだった。 普通の建物もあるのだが、所々に棒だけで構成されているものがあった。 形からすれば、建物なのだろうけれど、人が住めるとは思えない。 雨や雷のせいで見間違えたわけではない。 またんきはハッキリと不可思議なそれを確認していた。 (´<_` )「それは建ててる途中のものだ」 (・∀ ・)「とちゅう?」
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- (・∀ ・)と兄弟のようです
72 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2012/11/24(土) 13:43:26.38 ID:O5cxbXo50 -
まさか建物が生えてくるとは思っていないが、出来上がる過程というのは想像できない。 意味はわかれど、疑問は多い。 ( ^ω^)「そうさくは、はってんとじょうのくにだって、おしえたお?」 ('A`)「ダカラ、ケンチクトチュウノモノモ、ワンサカアルノサ」 (・∀ ・)「あんなのがたくさんあるのか?!」 ( ´_ゝ`)「あるぞー。この町はずいぶん完成してきてるが、他の町へ行けば、まだ砂利しかないような場所もある」 何もない地方も、何でもある地方も見たまたんきだが、できる途中を見るのは始めてだ。 完成されているものとは違う魅力がそこにはある。 部屋にある窓から外を覗く。 雨がガラスにあたり、まばらな模様を作っている。 (・∀ ・)「あ、光った」 ( ^ω^)「おっ」 雷が落ちる。 そこそこ近い距離のようだ。 (; ω )「――っ!」
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- (・∀ ・)と兄弟のようです
73 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2012/11/24(土) 13:46:23.49 ID:O5cxbXo50 -
ブーンは慌ててベッドの中にもぐりこむ。 この先も、雷に慣れることは一生ないのだろう。 怯えているブーンを横目に、弟者が風呂に入り、兄者が次に入る。 結局、またんきが風呂から上がるまで、ブーンは布団から出てこなかった。 (・∀ ・)「ブーンは、ほんとうに雷がきらいなんだなー」 (;^ω^)「びっくりするんだお……。 ひかりはともかく、おとが……」 ('A`)「ビビリメ」 ( ´_ゝ`)「明日には雷も過ぎ去ってるさ。 今夜は我慢だな」 ( ´ω`)「おー」 ブーンは力なく返事をした。 雨は勢いを増して窓に攻撃をしている。 またすぐにでも雷がなりそうな様子だ。 (・∀ ・)「そうさくにくるのは、たのしみっていってたのになー」 宋咲について説明してくれているときのブーンは楽しそうだった。 これほど雷が怖いのならば、宋咲は恐ろしい場所にしかならないのではないかと思う。
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- (・∀ ・)と兄弟のようです
75 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2012/11/24(土) 13:49:26.14 ID:O5cxbXo50 -
(´<_` )「宋咲だって、年がら年中雷が鳴ってるわけじゃないぞ。 ちょっとばかし発生率が高いだけだ」 ( ´ω`)「ぼくだって、かみなりがなってないそうさくはすきだお……」 またんきは、宋咲に来て一日目から雷雨に見舞われたので、この地方ではそれが当然なのかと勘違いしていた。 どうやら他の地方に比べれば雷雨はよく発生するが、毎日というわけではないらしい。 むしろ、一日目から雷雨に見舞われたまたんきの方が珍しいのかもしれない。 ( ´_ゝ`)「雷が怖い気持ちもわからなくはないがな」 ('A`)「タシカ、ソウサクノハッテンガ、オクレテルノハ、ソコガカンケイシテルンダッケ?」 (´<_` )「強い雨と雷が作業の邪魔をするんだよな。 川が決壊することもあるみたいだし」 ただ、流石兄弟が宋咲へ始めてやって来たころには、何らかの対策が打たれ、 誰もが自然の脅威を気にせずに町の建設に勤しんでいた。 その姿はまるで、いつどこに雷雨が発生するのかがわかっているようだった。 (・∀ ・)「あんなのがいっぱいあって、まちができるのかー」 またんきは棒だけの建物を思い浮かべる。 ( ´_ゝ`)「その辺りは、明日になればもっとよくわかるさ」
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76 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2012/11/24(土) 13:52:34.38 ID:O5cxbXo50 -
兄者の言葉は本当だった。 雷に怯えるブーンと一緒のベッドで眠り、朝に目覚めたまたんきはそう思った。 うるさいくらいだった雨音が消えていることに気づき、彼はすぐさま窓の外を見た。 雨上がりの世界は、太陽の光に照らされて輝いていた。 美しい世界の中で見る棒の建物は、奇妙さを増している。 (・∀ ・)「おー」 感嘆の声をあげる。 さらによく見てみれば、その建物に登っている者が複数いた。 彼らは同じような棒を持ち、建物を組み建てていく。 その様子は非常に興味深く、いつまでも見ていたいような気がした。 (・∀ ・)「ほら! あれ!」 朝食を食べたまたんきは、すぐさま四人に建設途中の建物を見せた。 耳族や人間が各々の仕事をこなし、一つの建築物に取りかかっている。 ( ´_ゝ`)「おー。新築の匂いがするな」 (・∀ ・)「いいにおいだー」 雨の匂いに混じって、木の匂いがする。 その匂いを胸いっぱいに吸い込むと、心が晴れやかになる。
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77 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2012/11/24(土) 13:55:19.28 ID:O5cxbXo50 -
( ^ω^)「……」 (・∀ ・)「ブーン?」 ブーンは無言だった。 新築の匂いにも、建物にも興味がないようだ。 もう雷は鳴っていないというのに、様子がおかしい。 ('A`)「マタンキ、アノヒトタチノ、クビヲミテミナ」 (・∀ ・)「くび?」 ドクオに言われ、またんきは働いている者の首を見る。 露出しているはずの首には、何かが巻きついていた。 黒く、わずかな光沢がある。 またんきはそれを知っている。 (・∀ ・)「――あ」 思い出す。 それは、かつてまたんきもつけていた物だ。 正確には、つけられていた物。 思わず自身の首に触れてしまう。 もうそこには何もない。
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78 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2012/11/24(土) 13:58:17.62 ID:O5cxbXo50 -
(・∀ ・)「くびわだ」 首輪は奴隷の証だ。 またんきが心を躍らせながら見ていたものは、奴隷が作ったものと、彼ら自身だった。 よく見てみれば、彼らの顔色は悪い。 無茶な働かされかたをしているのだろう。 目は虚ろで、淡々と与えられた仕事をこなしているだけのようだ。 (´<_` )「フォックスみたいな奴の方が珍しいんだよ」 弟者が告げる。 (´<_` )「大抵の奴隷は、ああやって働かされる。もしくは、お子様には話せないようなことをする。 わざと傷つけて殺す奴はそうそういない」 (・∀ ・)「……つらそうだ」 ( ´_ゝ`)「昨日の雨で、足場はそうとう悪いだろうからな」 疲れも溜まっているのだろう。 直接的な殺されかたはしないかもしれないが、結果としてはそう変わらないのかもしれない。 見る限り、ここでも奴隷は働くことのできるゴミとして見られているようだ。
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79 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2012/11/24(土) 14:01:34.44 ID:O5cxbXo50 -
どうするべきなのだろうか。 助けたいとは思うが、彼らを救う術が思いつかない。 しかし、ただ見ているだけというのも、昨日得たばかりの決心を覆してしまうような気がする。 ( ^ω^)「あせらなくてもいいんだお」 またんきの肩に乗って、ブーンが言う。 子供であるまたんきは、どうしてもできることが限られてくる。 彼自身がまだ世間を知らないというのも、弱点の一つだ。 (´<_` )「まずは色々経験して、できるようになってからだな」 ( ´_ゝ`)「自分が困ってるときに、他人を助けようとしても、上手くいかないぞ」 まだ一人で生きていくこともできないまたんきが、すぐに人を助けられるはずがない。 無理に何かをしなければと思い、胸を痛めるくらいならば、未来のために力をつくす方が有意義だ。 (・∀ ・)「わかるけど……」 ('A`)「マズハ、マホウデモオボエタラ、ドウダ?」 (・∀ ・)「うー」 ドクオの言葉に呻き声をあげた。
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80 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2012/11/24(土) 14:04:31.24 ID:O5cxbXo50 -
毎日かかさず練習をしているのだが、またんきが魔法を使えたことは一度もない。 火が駄目なら、水ではどうだ。と、試したこともあるが、結果は変わらない。 またんきも魔法を使いたいという思いが強いので、現状には満足していなのだ。 けれど、どうしても魔法を使うことができない。 またんき自身にはどうすることもできないことの一つだ。 (´<_` )「一度、視点を変えてみるか」 弟者は顎に手をあてて、言葉をもらす。 彼を信頼しているまたんきは目を輝かせた。 何か現状が変わるのではないかという期待だ。 (・∀ ・)「どうするんだー?」 (´<_` )「精霊として、ではなくて、人間として、魔法を使ってみたらどうだ?」 ('A`)「ナルホド」 ( ^ω^)「いいかんがえかもしれなお!」 (・∀ ・)「……どういうことだ?」 精霊二人はわかっているようだが、またんきには意味が理解できない。 兄者もよくわかっていないのか、無言を貫いている。
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81 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2012/11/24(土) 14:07:26.89 ID:O5cxbXo50 -
(´<_` )「つまり、精霊使いになってみたらどうだ?」 わかりやすく、誰にでもわかる言葉を使う。 すると、またんきは目を見開いた。 (・∀ ・)「できるのか?!」 (´<_` )「どうせ、次に行くのはシベリアだ。 あそこでじっくり教えてやるよ」 精霊使いになるには知識が必要だ。 口頭で教えたところで、どこまでまたんきが理解できるのかわからない。 それなりの状況が必要だ。 弟者は口角を上げ、悪魔のような笑みを浮かべた。 ( ´_ゝ`)「またんき、覚悟しとけよ」 (・∀ ・)「え? 何がだ?」 ('A`)「オトジャハ、スパルタダゾ」 (・∀ ・)「え?」 ( ^ω^)「あにじゃのたいりょくづくりよりきびしいお」 (・∀ ・)「え?」
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84 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2012/11/24(土) 14:10:23.43 ID:O5cxbXo50 -
最近は、兄者に盗賊としての訓練も受けている。 その中にある体力づくりが、またんきには中々辛い。 耳族にあわせて作られているであろうメニューに、またんきも参戦させられるのだ。 辛くないはずがない。 それよりも、弟者との勉強は辛いのだという。 どのような地獄が待っているのか、予想もつかない。 ただ、悪寒がまたんきの背筋を走った。 (´<_`* )「いやー。シベリアが楽しみになってきたな!」 (;・∀ ・)「……しべりあがこわいんだぞー」 ( ´_ゝ`)「じゃあ、次の町まではゆっくり歩いていくか」 怯えるまたんきのために、兄者が提案する。 ドラゴンに乗れば、あっという間に宋咲を抜けることができてしまうので、歩くことで時間を稼ぐ。 ( ^ω^)「そうさくはしぜんもいっぱいあるし、どらごんといっしょにあるけるし、 ぼくはさんせいだお!」 ('A`)「ワルクナイ」 弟者を除いた全員が賛成の声を上げた。
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85 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2012/11/24(土) 14:13:43.62 ID:O5cxbXo50 -
かくして、一行は徒歩で次の町を目指すことになった。 徐々に開発が進んでいっている宋咲では、町と町の間にあまり距離がない。 子供連れだとしても二日とかからない距離だ。 (・∀ ・)「おー。じめんが、ぐちゃぐちゃだぞー」 水溜りやぬかるみを蹴り上げながら歩く。 泥が前方に飛ばされ、草木を汚す。 それらの二の舞を避けるべく、他の四人はまたんきの後ろを歩いていた。 ( ^ω^)「こうして、どらごんとあるくのもたのしいお」 ブーンの言葉にドラゴンが喉を鳴らす。 大きな彼の足跡が地面についていた。 ( ´_ゝ`)「この辺りを歩く奴なんていないしな。 気兼ねなく歩けるってもんだ」 (´<_` )「適当なおやつもあるしな」 (・∀ ・)「おやつ?」 前方を歩いていたまたんきが立ち止まり、振り返る。
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95 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2012/11/24(土) 14:37:16.56 ID:O5cxbXo50 -
(´<_` )「ほら、その辺りの木に実がなってるだろ?」 (・∀ ・)「この赤いのかー?」 (´<_` )「そう。それは食べられるんだ。甘いぞ」 (・∀ ・)「へー!」 さっそくまたんきが手を伸ばす。 (・∀ ・)「……」 しかし、あと少しのところで手が届かない。 背伸びをしても、ジャンプをしてみても、届かないものは届かない。 ('A`)「ウーン」 ドクオが手助けに向かったが、非力な彼では木の実をもぎ取ることができない。 力いっぱい羽ばたいても、実がわずかに揺れるだけだ。 非力な二人組はじっと実を見つめるばかり。
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96 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2012/11/24(土) 14:40:53.48 ID:O5cxbXo50 -
( ´_ゝ`)「ほい」 二人に代わり、兄者が実を取る。 またんきに一つ。ブーンとドクオに一つ。自分と弟者に一つずつ。ドラゴンの口にも一つ。 計五つの実がもぎ取られた。 (・∀ ・)「いただきまーす」 受け取った実にさっそく齧り付く。 硬さはあるものの、歯は簡単に果肉に食い込む。 果汁が垂れ、口の中を甘くする。 ( ^ω^)「あまくておいしいお。しぜんのめぐみだお」 二人で一つの実を食べながら言う。 ドクオの方は無心で果肉を口にしていた。 (´<_` )「野生でこれだけの甘さがある実は珍しいんだぞ」 弟者も実を齧りながら話す。 彼の一口は、またんきのそれよりもずっと大きい。 (・∀ ・)「へー」 またんきは自分が持っている実と弟者の持っている実を見比べながら、気のない返事をする。
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97 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2012/11/24(土) 14:43:30.16 ID:O5cxbXo50 -
(´<_` )「作物なんかだと、より甘くなるように交配されてるからな」 (・∀ ・)「がったいさせて、いいものをつくるんだなー?」 (´<_` )「そういうことだ」 弟者はまたんきの頭を撫でる。 彼も兄者と同じく、褒めて伸ばす方針を持っているようだ。 ('A`)「ウマカッタ」 ( ^ω^)「どくお! しょくごのうんどうだお! きょうそうするお!」 (;'A`)「エッ」 ( ^ω^)「ごーるは、あのきだお。 あの、ぴんくのはながさいてるき」 ('A`)「アノキカ」 ( ^ω^)「じゃあ、いちについてーよーい――」 (;'A`)「イヤ、イマノハ、リョウカイノイミジャナクテ……」 ( ^ω^)「どーん!」 ブーンが勢いよく飛び出す。 一瞬迷ったが、ドクオもゴールを目指す。
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98 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2012/11/24(土) 14:47:00.44 ID:O5cxbXo50 -
(・∀ ・)「おれもはしるぞー!」 ( ´_ゝ`)「おー。いけいけー」 またんきも駆け出した。 彼の後押しをしたのは兄者だったが、ブーンに勝てないことはわかっていての行動だ。 兄者と同等の速さを持つブーンに勝つのは、並大抵のことでは叶わない。 それをよく知っている弟者は苦笑いだ。 隣にいるドラゴンに目を向ければ、彼も同じような感情を持っているような気がした。 (´<_` )「……体力作りの一環てことで」 ドラゴンはゆっくりと目蓋を閉じた。 彼なりの頷きだ。 ( ´_ゝ`)「なら、お前も走るか?」 (´<_` )「冗談。 むしろ、兄者の方が走りたいんじゃないのか」 ( ´_ゝ`)「いや、こうして後ろからあいつらを見てるのも楽しいもんだとな」 (´<_` )「それには同意しよう」 弟者は微笑んだ。 騒ぐ三人の声が少し遠い。
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- (・∀ ・)と兄弟のようです
99 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2012/11/24(土) 14:50:25.08 ID:O5cxbXo50 -
彼らがゴールとしていた木の下にまで行くと、ブーンが嬉しそうに飛び回っていた。 ドクオは地面に膝をつき、またんきは木にもたれている。 (・∀ ・)「おそいぞー」 ( ´_ゝ`)「歳なもんで」 ( ^ω^)「なにいってるんだお。 それより、ぼく、いっとうしょうだったんだお!」 (・∀ ・)「おれはにとうしょー!」 (´<_` )「ドクオ……。またんきより先に出たのに負けたのか……」 (; A ) 言葉にならぬほどショックだったらしい。 ドクオも自分の身体能力の低さは知っているが、まさかまたんきに抜かされるとは思っていなかった。 その辺りの能力を求められていないとはいえ、悔しいものは悔しい。 幸い、魔法に関する能力とは違い、身体能力はある程度、努力で覆せるものだ。 これからはまたんきと一緒になって、兄者の特別メニューを受けようと決心する。 おそらく、この決心は小一時間と経たずに瓦解するだろう。
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- (・∀ ・)と兄弟のようです
101 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2012/11/24(土) 14:53:26.58 ID:O5cxbXo50 -
( ´_ゝ`)「すっかりドロドロになったな」 (;・∀ ・)「ごめんなさい……」 ( ^ω^)「そのくらい、あらえばいいお」 果実を食べ、昼食に柔らかいパンと肉を食べたまたんきは、すっかり落ち着いていた。 そうなれば、先ほどまでの遊びで汚れてしまった靴にも意識が向く。 (´<_` )「そうそう。何なら、まだ泥蹴りしてもいいぞ」 (;・∀ ・)「もうしないぞー」 泥蹴りをしていると、周囲に誰もいないことにも気づいた。 ドラゴンも汚れたくないので、先ほどまでは後ろにいた。 大人しくすることで、ようやく周りに全員が集まってくれる。 遊ぶのも楽しいが、一人っきりで遊ぶのは味気ない。 楽しげにしてくれている仲間が必要だ。 外に出ることで、知ることができたそれを手放したくはない。
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- (・∀ ・)と兄弟のようです
104 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2012/11/24(土) 14:56:30.63 ID:O5cxbXo50 -
('A`)「デモ、タダアルクダケジャ、タイクツジャナイカ?」 (・∀ ・)「うーん。ちょっとだけなー」 (´<_` )「なら、適当に薬草について説明してやろう」 辺りに生えている雑草のような草を指差して弟者は一つ一つ丁寧に説明を始める。 傷に効く草や、腹痛に効く草。 灯南とは違って様々な種類の草が生えていた。 (・∀ ・)「いっぱいだなー」 ( ´_ゝ`)「雨が多いと、植物も育ちやすいんだよ」 ( ^ω^)「またんきもそだつおー」 (・∀ ・)「おーきくなるぞ!」 ('A`)「チイサクテモイイゾー」 大きくなれば、精霊としての力が強くなる。 ドクオとしては、いっそのこと、幼い姿のままでいてくれても構わない。 (´<_`;)「おまっ……。 自分が一番小さいからって」 (;'A`)「ウルセェ」 (・∀ ・)「あにじゃやおとじゃくらいおーきくなるぞー!」
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- (・∀ ・)と兄弟のようです
105 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2012/11/24(土) 14:59:38.69 ID:O5cxbXo50 -
楽しい時間は過ぎるのも早い。 あっというまに日が沈む。 (・∀ ・)「きょうはのじゅくかー」 ドラゴンと共に歩くというのは新鮮だった。 途中で、歩くドラゴンに乗ったが、空を飛んでいるときとは違う揺れは面白いものがあった。 彼を踏み台に、普段ならば届かない位置にある木の実を取ったりもした。 始めて自分でもいだ実が、非常に不味かったことだけが悔やまれる。 そんな自然に溢れた一日を過ごした。 恒例となっている魔法の練習は、やはり成果を見せず、 兄者との訓練は相変わらず疲れがたまる。 早く寝てしまおうと思うのだが、はたと気づく。 (・∀ ・)「……ここで?」 地面はぬかるんでいる。 テントを張っても、地味に水分が染み込んでくるだろう。 そもそも、木の根が邪魔でテントが張れない。 何をどうすれば、こんな場所で休むことができるというのだろうか。 またんきは呆然と立ちつくす。
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106 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2012/11/24(土) 15:02:25.51 ID:O5cxbXo50 -
(´<_` )「旅をしていたらな、泥の中で眠ることもある」 ('A`)「ネーヨ」 ( ^ω^)「さらっとうそつくんじゃねーお」 一瞬、信じかけたが、二人のおかげで弟者の言葉が嘘だとわかる。 しかし、結局どのようにするのかはわからないままだ。 またんきは兄者に聞こうと彼の姿を探す。 ( ´_ゝ`)「ばーん!」 (・∀ ・)そ「うわ!」 唐突に視界の中に入ってきた兄者は、またんきにシートを見せる。 (・∀ ・)「あ、それ……」 ( ´_ゝ`)「そう。この前も使ったビニールシート」 (・∀ ・)「それをしくのか!」 ( ´_ゝ`)「ご名答!」
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107 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2012/11/24(土) 15:06:05.55 ID:O5cxbXo50 -
ビニールシートの上にテントを張れば、水分の心配はほとんどしなくてもいい。 残る問題は、どこにそれらを使うかというところだ。 そのことをまたんきが口にすると、兄者は胸を張った。 ( ´_ゝ`)「オレには頼りになる弟がいるからな」 (・∀ ・)「おとじゃか?」 ( ´_ゝ`)「そう」 見れば、弟者はまだマシな地面を探していた。 あまり木の根がなく、盛り上がりや陥没の少ない開けた場所。 (´<_` )「このくらいなら、もう少し平らにすれば大丈夫だろ?」 ( ´_ゝ`)「あぁ」 弟者は不安気に頭をかく。 (´<_` )「灯南から遠いからな……。 上手くいく保障はないぞ」 ( ^ω^)「がんばれおー!」 ('A`)「オウエンシテル」
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116 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2012/11/24(土) 15:41:18.63 ID:O5cxbXo50 -
周りの声援に後押しされ、弟者が口を開く。 (´<_` )「土の精霊、ゼアフォーと契約せし我が命ず。 世界を支える土よ、自然を育む地面よ。 この場を平らにせよ」 ズズッと、地面が音をたてた。 またんきは、弟者が土の魔法を使ったことはわかっているが、それ以外のことはなにもわからない。 (・∀ ・)「おー」 だが、わずかに動く土に驚きを隠すことをしなかった。。 ('A`)「ホントウニ、チョットダナ」 (´<_`;)「遠いんだからしかたないだろ」 魔法を使う前と、使った後ではわずかな変化が見られる。 しかし、それは本当にわずかで、少し無理をすればテントが張れる。と、いうレベルにしかなっていない。 ( ^ω^)「でも、おとじゃのまほうがなかったら、てんとがはれなかったお! ありがとうだお!」 ( ´_ゝ`)「そうそう。ついでにテントも張ってくれたら嬉しいなー」 (´<_` )「宋咲なら雷かー。 雷の精霊、電気王と――」 ( ´_ゝ`)「勿論、兄であるオレが張らせていただきますけどね!」
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118 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2012/11/24(土) 15:45:40.67 ID:O5cxbXo50 -
わいわいと騒ぎながらテントを張り、その中で眠る。 中に入ってしまえばいつも通りかと思ったが、それは違う。 宋咲の森は虫の声がよく聞こえる。 風の音や、木々の匂い。心を落ち着かせる自然の恵みだ。 目を閉じれば、まるで自分が自然の一つになったような気持ちになれる。 地下なんぞとはまったく違う。 またんきは幸せな心地だった。 (-∀ -)「何だか、いいなぁ」 ( ^ω^)「そうさくはいいところだお?」 (-∀ -)「うん。ぶーんのきもちがわかるぞー」 (´<_` )「お前ら、明日も歩くんだぞ。 早く寝ろ」 (-∀ -)「はーい」 ( ^ω^)「おやすみだおー」 ('A`)「オヤスミ」
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- (・∀ ・)と兄弟のようです
119 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2012/11/24(土) 15:48:27.33 ID:O5cxbXo50 - 幸せな心地も、一瞬で崩れ去ることがある。
雷の音で目が覚め、テントから一歩出れば濡れネズミとなるほどの雨が降っていた時がそれだ。。 進むにはテントを片付けなければならない。 塗れぬためにはテントの下にあるビニールシートが必要だ。 木々があっても濡れるほどの雨だ。 またんきにはもはや回避のしようがない。 (・∀ ・)「……ずぶぬれだぞー」 ( ^ω^)「それはみんなおなじだお」 ( ´_ゝ`)「こればっかりは諦めるしかないな」 (・∀ ・)「むー」 ('A`)「モンクヲイッテモ、シカタナイコトダ」 (´<_` )「自然のことだからな。 精々、風邪をひかずにすむことを祈るくらいしかできん」
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- (・∀ ・)と兄弟のようです
120 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2012/11/24(土) 15:51:28.31 ID:O5cxbXo50 -
その日のうちに町につけたのは幸運だっただろう。 すっかり雨に濡れてしまったまたんきは、宿をとるとすぐに風呂へ向かった。 半分は精霊といえど、流石に寒かったようだ。 ブーンとドクオもそれは同じだったらしく、またんきと一緒になって風呂に入っていた。 (´<_` )「この町はもうしっかり形ができてるな」 ( ´_ゝ`)「宋咲の中心になるんだろうな」 建築途中の建物は殆どなく、道もしっかりと舗装されている。 的芽の町と比べても遜色ない作りだ。 (´<_` )「明日、軽く探索して、シベリアに向かうか」 ( ´_ゝ`)「そうだな。宋咲も面白いところだが、シベリアも面白い」 (´<_` )「オレはまたんきを図書館に連れて行ってやりたいな」 ( ´_ゝ`)「精霊使いにするんだっけか」 (´<_` )「適性があるのかはわからんが……。 兄者も興味があるだろ?」 ( ´_ゝ`)「ある。 これで、あっさり精霊使いになれるなら、またんきは人間という性質の方が強いということになるな」 またんきは大切だ。 しかし、それと興味とは別の話だったりする。
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