トップページ > ニュー速VIP > 2011年12月03日 > NOOLkeZo0

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以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします
訂正
ミス。もう一回
忍法帖【Lv=23,xxxPT】
配達少女「お届け物でーす」
IDと!ninjaを確認するスレ
俺より容量持ってるやついんの?
「あん」と入力して、真っ先に出てくる予測変換

書き込みレス一覧

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配達少女「お届け物でーす」
1 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage]:2011/12/03(土) 06:36:52.02 ID:NOOLkeZo0

少女「おはようございまーす、お手紙でーす!」

少女「ええ、一通だけですが?」

少女「それならポストに入れとけ呼び出すな?」

少女「……はーい、すみませんでしたー」

少女(でもそしたら君の顔が見れないじゃん、分かってないなあ)

配達少女「お届け物でーす」
2 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage]:2011/12/03(土) 06:37:35.79 ID:NOOLkeZo0
以前書いたやつを掘り出したらちょっと再構成、別エンド書きがしたくなってしまったので
さるさんいないし一気のsage投下で終わらせるから見逃してもらえるとありがたい
配達少女「お届け物でーす」
4 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage]:2011/12/03(土) 06:38:19.08 ID:NOOLkeZo0

少女「おはようございまーす、お届け物でーす」

少女「いやあ、そろそろ寒くなってきましたねー」

少女「というわけで、包みを開けてみてください!」

少女「どうです、よく編めてるでしょ?」

少女「え? 何って、マフラーですよう」

少女「確かにところどころほつれかけてますが」

少女「わたしが一生懸命編んだんですから、ちゃんと使ってくださいね」

少女「雑巾にする? こら!」

配達少女「お届け物でーす」
5 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage]:2011/12/03(土) 06:39:01.07 ID:NOOLkeZo0

少女「ちわーす、お届け物でーす!」

少女「一抱えくらいの包みですが、なんですかこれ?」

少女「えー、いいじゃないですか見せてくださいよお」

少女「えー、なになに? ボッキンパラダイ……」

少女「……」

少女「あ、備考欄にドラマDVDと書いておいてくださいってありますね。業者さん、失敗しちゃったんだ」



少女「追い出されちゃった」

配達少女「お届け物でーす」
7 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage]:2011/12/03(土) 06:39:47.65 ID:NOOLkeZo0

少女「ちわーす、お手紙でーす!」

少女「え? 自分とこには本来だれからも来るはずないって?」

少女「そんなことないですよ、わたしが毎日出してますから」

少女「余計なことしなくていい?」

少女「でもホントはうれしいんでしょ?」

少女「そんなこと言って、でも本当は〜?」

少女「からの〜?」

少女「と見せかけて〜?」

少女「いったぁい! 女の子叩くなんて最低です!」

配達少女「お届け物でーす」
8 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage]:2011/12/03(土) 06:40:32.79 ID:NOOLkeZo0

少女「ちわーす、お届け物でーす」

少女「よっこらしょっと」

少女「ふー」

少女「あ、ハンコかサインお願いします」

少女「――はいどうも」

少女「ついでにこっちにもお願いします」ムチュー

少女「あ! 人の唇にハンコ押しつけるなんてどういう神経してるんですか!」

配達少女「お届け物でーす」
10 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage]:2011/12/03(土) 06:41:15.17 ID:NOOLkeZo0

少女「ちわーす、お手紙で―す」

少女「そんなこと言われてもお仕事ですから」

少女「ほとんどお前の手紙だろって?」

少女「はは、まあそうですけど」

少女「あ、でも、今日は別のも混じってますよ?」

少女「あ……」

少女「あ、いえ、その、あなたのお母さんからです」

少女「駄目ですよ! そんなこと言わずに読んであげてください」

配達少女「お届け物でーす」
11 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage]:2011/12/03(土) 06:42:00.35 ID:NOOLkeZo0

少女「おはようございまーす、新聞でーす」

少女「受験勉強の調子はいかがですか?」

少女「あー、その顔は芳しくないって顔だ」

少女「そんなんで大丈夫ですか? また浪人ですよ?」

少女「二浪だと、名前とおんなじになっちゃいます」

少女「あいた! また叩きましたね!」

配達少女「お届け物でーす」
12 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage]:2011/12/03(土) 06:44:00.13 ID:NOOLkeZo0
 ブロロ……


少女「風を感じて〜、旅に〜出ようか♪ っと」

少女「うー、朝早くのバイクはしばれるのう」

「ナーゴ……」

少女「ん?」



少女「おはようございまーす、朝刊でーす」

少女「はいどうぞ」

少女「何ですか? 私の胸がそんなに気になりますか? エッチ」

少女「いたた、叩かないでくださいよう。分かってますって、この猫ちゃんですね。ここに来る途中の空き地で見つけたんです。捨て猫でしょうかね」

少女「そうなんですよ。わたしのとこじゃ飼えなくて……」

少女「……」ジー

少女「え、本当ですか!? あなたのところで飼ってくれるって!?」

少女「ありがとうございます! やっぱりわたしの上目づかいは効きますね!」

少女「いたた、叩かないでー」
配達少女「お届け物でーす」
14 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage]:2011/12/03(土) 06:44:41.84 ID:NOOLkeZo0

<一年前>


少女「ここが今日からわたしが住む町、わたしの担当区!」

少女「張り切って配達にいってみましょー!」


     ・
     ・
     ・


少女「迷った……」

配達少女「お届け物でーす」
15 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage]:2011/12/03(土) 06:45:26.43 ID:NOOLkeZo0

少女「こまりましたね……」

少女「わ! ごめんなさい! 前見てなくて……」

少女「ああ、わたしの担当物ですからわたしが拾います、ごめんなさいごめんなさい」

少女「え、ああ、わたし今日からこの町で配達業をすることになった者です。よろしくお願いしますね!」

少女(あ。握手の手、無視された)

少女(それにしても背の高い人だなあ。髪も長めでちょっと怖いけど……でも見ようによればかっこいい、かな?)

少女「あ、えーと、○○って場所を探してるんですけどご存じありませんかね?」

少女「え、知ってる? ついてこいって……いや、ありがたいですけど場所さえ教えてもらえれば、ってちょっと待ってくださいよう!」

配達少女「お届け物でーす」
16 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage]:2011/12/03(土) 06:46:08.23 ID:NOOLkeZo0

少女「ありがとうございました。これで最初の配達完了です!」

少女「まだ、沢山残ってる? あはは、そうですね……」

少女「困ったな、時間をロスしすぎて時間までに配達できるかどうか……」

少女「え、そんな、悪いですよ。わたしの仕事ですから」

少女「どうせ暇だから? で、でも……あ……行っちゃった」

少女「配達物半分持ってかれちゃいました。どうしよう……」


     ・
     ・
     ・


少女「あ、あなたはこの前の! あの時はありがとうございました!」

少女「おかげさまでなんとかこの町にもなじんできました。もう道に迷ったりはしませんよ!」

少女「いやーほんとあの時は助かりました。届け間違いの苦情もありませんでしたし」

少女「……どうしました? なんか顔色悪いですよ?」

少女「え? 受験失敗した? あまり話しかけないでくれ? ご、ごめんなさい」

配達少女「お届け物でーす」
17 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage]:2011/12/03(土) 06:46:49.83 ID:NOOLkeZo0

<現在>


少女「こんばんはー、お手紙でーす」

少女「ええ、まあ、わたしからの手紙ですけれども」

少女「本命は猫ちゃんです、中に入れてくださいよ」

少女「わーい、おじゃましまーす!」


     ・
     ・
     ・


少女「ほーら、おもちゃ飼ってきたぞーポチ」

少女「む、わたしのネーミングセンスにケチつけますか!」

少女「どうせあなただってろくな名前を考えてないでしょう」

少女「ポ、ポッチャレータム? えーと、いやそんなドヤ顔されても……」

配達少女「お届け物でーす」
18 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage]:2011/12/03(土) 06:47:31.13 ID:NOOLkeZo0

少女「ポッチャ、眠いか―い?」

少女「ああ、寝ちゃった」

少女「じゃあ、わたしはこれで失礼します」

少女「わたしの座ってたとこ、嗅がないでくださいよー」

少女「違います、おならじゃありません! もっといい匂いですよう!」

配達少女「お届け物でーす」
19 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage]:2011/12/03(土) 06:48:19.05 ID:NOOLkeZo0

 ブロロ……


少女「ぼーくーら同じまいにぃちをー♪」

少女「あれ?」

少女「おーい!」

少女「へえ……あ、いや、部屋から出てる君は久しぶりに見たので」

少女「どこに行くんですか? ……ってあれ、ポッチャ」

少女「え、動物病院!? ポッチャ病気ですか!?」

少女「え、違う? 元野良みたいなものだから一応? なーんだ、心配させないでくださいよ」

少女「ついでにお前も診てもらえ? それ、どういう意味ですかー!」

配達少女「お届け物でーす」
20 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage]:2011/12/03(土) 06:49:05.39 ID:NOOLkeZo0

少女「ポッチャに会いに来ましたー」

少女「えー、いいじゃないですか入れてくださいよう、さむいですよう」

少女「――おっと、いつまでも叩かれるわたしじゃありませんよーだ」


     ・
     ・
     ・


少女「結局入れてくれるあたり、優しいというか優柔不断というか」

少女「おーポッチャ、こんばんはーうりうり」

少女「今日は夜暇なんですよー、もうちょっとここいていいですか?」

少女「ちょっと、変なこと考えないでくださいよ。え、気のせい? 声上ずってますよ」

配達少女「お届け物でーす」
21 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage]:2011/12/03(土) 06:49:47.31 ID:NOOLkeZo0

少女「いまどきスーパーファミコンですか」

少女「いえ、別に」

少女「カセットは何を?」

少女「これはナイスチョイス!」

少女「では早速やりましょう。えー、いいじゃないですかー」

少女「がちっとな」


 スーパー・プヨプーヨ!

配達少女「お届け物でーす」
22 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage]:2011/12/03(土) 06:50:28.63 ID:NOOLkeZo0

少女「なんでそんなに強いんですかー」

少女「受験勉強の息抜きにやりこんだ? もっと外に出ましょうよ」

少女「頭の体操? 確かにそうかもしれませんが」

少女「大体ぷよぷよ、なんて響きが卑猥です」

少女「――おっと、へっへーはずれでーす」

配達少女「お届け物でーす」
24 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage]:2011/12/03(土) 06:51:12.76 ID:NOOLkeZo0

少女「こんばんはー、おじゃましまーす!」

少女「ナチュラルに入ってくるなって? まあいいじゃないですか」

少女「あはは、やっぱり優柔不断だ」

少女「おっと、はずれー、っていたい! 二段攻撃ですか!」

配達少女「お届け物でーす」
25 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage]:2011/12/03(土) 06:51:54.86 ID:NOOLkeZo0

少女「それにしても浪人生ですか」

少女「いえ、馬鹿にしてるとかそういうんじゃなくて」

少女「逆にすごいなーって」

少女「勉強一本の生活でしょう?」

少女「わたしにはとてもまねできません」

少女「あれ? どうして目をそらすんですかー?」

配達少女「お届け物でーす」
26 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage]:2011/12/03(土) 06:52:36.08 ID:NOOLkeZo0

少女「そういえば、浪人生って普通は予備校とか行くんじゃないですか?」

少女「家に金を入れてるわけでもないのに無理な要求はできない?」

少女「はあ、なるほど」

少女「……」

少女「でもその割にはえっちいDVD買ったりするんですね」

少女「おっと、意外に大きなダメージ」

配達少女「お届け物でーす」
27 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage]:2011/12/03(土) 06:53:17.22 ID:NOOLkeZo0

少女「ポッチャー。そうそうジャンプジャンプ」

少女「あはは、ポッチャ可愛いー!」

少女「え、お前の方が可愛い?」

少女「もう! 何言ってるんですかー」

少女「いた! 叩かないでくださいよう」

少女「いいじゃないですか、たまにはこんな寸劇してみても……」

配達少女「お届け物でーす」
28 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage]:2011/12/03(土) 06:53:59.13 ID:NOOLkeZo0

少女「それではまた今度ー」

少女「――おっとそう言えば忘れもの」

少女「すみませーん、って何してるんですかそんなところにかがみこんで」

少女「……ははあ、わたしの残り香を嗅いでましたね」

少女「あはは、そんなムキになって否定しなくても」

少女「いったぁい! グーで叩いたー!」

配達少女「お届け物でーす」
29 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage]:2011/12/03(土) 06:54:40.67 ID:NOOLkeZo0

少女「ちわーす、お手紙でーす」

少女「あ、いえ、今日はわたしのじゃなくて。そう、君のお母さんからです」

少女「そんな投げやりに扱わないでくださいよ」

少女「それと、それ、急ぎの手紙らしいですから、今すぐ見た方がいいですよ」

少女「もう! わたしが開けますよ!」ピリピリ

少女「えーと、――え?」

配達少女「お届け物でーす」
30 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage]:2011/12/03(土) 06:55:22.70 ID:NOOLkeZo0

     ・
     ・
     ・



少女「あの手紙が来てから一週間が経ったよ」

少女「あの人は実家に帰ってる」

少女「あの人のお母さん、病気だったんだって。おっもいやつ」

少女「あの人の受験が近いから隠してたんだけど、ホントに危ないから帰って来いって」

少女「あんなにあわてた顔、初めて見たかも」

少女「そろそろ、戻ってくるかな? どう思う、ポッチャ?」

配達少女「お届け物でーす」
31 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage]:2011/12/03(土) 06:56:04.95 ID:NOOLkeZo0

少女「おかえりなさい」

少女「……」

少女「え!?」

少女「な、なーんだ、お母さん持ち直したんですか! 暗い顔してるからてっきり……」

少女「よかったですね! 本当に良かったです!」

少女「え? どうしたんですか、そんなに思いつめた顔して」

少女「相談がある? はあ」

少女「いえ、かまいませんが」

配達少女「お届け物でーす」
32 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage]:2011/12/03(土) 06:56:47.57 ID:NOOLkeZo0

     ・
     ・
     ・


少女「じゃあそっちお願いしまーす」

少女「え、多すぎる? そんなもんですって」

少女「さあさあとっとと出発出発」

少女「そうですよ、時間もあんまりないんですから」

少女「まあ、わたしみたいにベテランになれば余裕ですけどね!」

少女「……最初のころの話はなしですよー!」

配達少女「お届け物でーす」
33 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage]:2011/12/03(土) 06:57:28.58 ID:NOOLkeZo0

少女「お疲れさまでーす」

少女「初めての配達はいかがでした?」

少女「どうってことない? じゃあその死んだ目は何ですか」

少女「大体浪人生という立場に甘えすぎて日々の鍛錬がですね」

少女「あ、聞いてますー!?」

配達少女「お届け物でーす」
34 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage]:2011/12/03(土) 06:58:26.72 ID:NOOLkeZo0

少女「それにしても驚きました。まさか配達のお仕事をしたいとは」

少女「え、配達じゃなくてもよかった。そうですか」

少女「でも大きな転換ですよね。進学をやめて就職なんて」

少女「お母さんを安心させるためですね」

少女「気まぐれ? またまたー」

少女「……一緒に頑張りましょうね」

少女「そんな顔しないでください。このわたしがついてますから大丈夫ですよ二郎さん!」

少女「それじゃ今日はお疲れさまー」


浪人生編 おわり

配達少女「お届け物でーす」
35 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage]:2011/12/03(土) 06:59:08.35 ID:NOOLkeZo0

少女「こんにちはー!」

少女「お爺さん、お元気ですか?」

少女「ああ、いえ、別に配達ってわけじゃないんですけど、ちょっと顔を見に」

少女「あはは、ええ、頑張ってますよ」

少女「あ、今日もお手紙ですか。預かります」

少女「ええ、ちゃんと届けますよ」

少女「きっと、届くはずです……」

配達少女「お届け物でーす」
37 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage]:2011/12/03(土) 06:59:56.93 ID:NOOLkeZo0

少女「ふう。さてと」

少女「あ、お疲れさまでーす」

少女「ずいぶん仕事の手際がよくなりましたね。いいことです」

少女「あ、このお手紙ですか? ある人から預かったものですよ」

少女「……あるお爺さんからお婆さんへの、お手紙なんです」

配達少女「お届け物でーす」
38 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage]:2011/12/03(土) 07:00:45.41 ID:NOOLkeZo0

少女「こんにちはー」

少女「日向ぼっこですか? 時間あるのでわたしも混ぜてください」

少女「んー……」

少女「ん? 何考えてました?」

少女「あはは、お婆さんのことですか」

少女「……大丈夫、今頃お爺さんの書いた手紙を読んでるはずですよ」

配達少女「お届け物でーす」
39 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage]:2011/12/03(土) 07:01:26.58 ID:NOOLkeZo0

少女「こんにちはー」

少女「今日は猫、連れてきました」

少女「ポッチャレータムっていうんですよ」

少女「ええ? いい名前?」

少女「お爺さんもあの人と同じネーミングセンスですか!」

配達少女「お届け物でーす」
40 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage]:2011/12/03(土) 07:02:08.19 ID:NOOLkeZo0

少女「猫と縁側でまどろむ老人。絵になりますねえ」

少女「あ、カメラ持ってきたんです。撮ってもいいですか?」

少女「いや、一枚だけですから」

少女「恥ずかしい? そんな女子供じゃあるまいし」

少女「あ、ポッチャも逃げないでよう!」

配達少女「お届け物でーす」
41 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage]:2011/12/03(土) 07:02:50.12 ID:NOOLkeZo0

少女「二人とも、っていうか一人と一匹さん、表情がかたーい」

少女「もうちょっと笑って笑って」

少女「こら、ポッチャ。逃げるとまんま、やらないよ」

少女「よーし、二人ともいい感じ」

少女「はいチーズ!」

少女「……え? チーズは嫌い?」

少女「じゃあ、一足す一はー?」

少女「いや、馬鹿にはしてないですって」

配達少女「お届け物でーす」
42 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage]:2011/12/03(土) 07:03:32.27 ID:NOOLkeZo0

少女「デジタルカメラですから即確認できます」

少女「うん、いい感じですね」

少女「え、このボタンですか? スライドショーですけど」

少女「あ、勝手に押さないでくださいよう!」

少女「いや、これは、仕事の同僚と撮った写真です。決してやましいものでは」

少女「ていうかお爺さん、何怒ってるんですか」

少女「どこぞの馬の骨とも知れないやつに……って、お爺さん、わたしのお父さんですか」

配達少女「お届け物でーす」
43 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage]:2011/12/03(土) 07:04:14.01 ID:NOOLkeZo0

少女「何してるんですか?」

少女「これは将棋という奴ですね」

少女「わたしこういう頭を使うものが大の苦手で。いまだにあの人にぷよぷよで勝てませんし」

少女「でも将棋って二人でやるものじゃ?」

少女「詰め将棋?」

少女「ああぷよぷよでいう一人モードですか」

少女「ち、違います! ぷよぷよは卑猥なものじゃありません!」

配達少女「お届け物でーす」
44 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage]:2011/12/03(土) 07:04:55.43 ID:NOOLkeZo0

少女「将棋……よくわかりせんねえ」

少女「あ、終わったんですか? 詰み? おめでとうございます!」

少女「……わたしも将棋強くなればあの人に勝てますかね?」

少女「あの」

少女「わたしにも将棋、教えてもらえませんか?」

配達少女「お届け物でーす」
45 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage]:2011/12/03(土) 07:05:37.26 ID:NOOLkeZo0

少女「じゃあ、今日はこれで帰りますね」

少女「あ……お手紙ですか」

少女「ええ、ちゃんと預かりました」

少女「それではまた今度」

少女「ほら、ポッチャもばいばーいって」

少女「ばいばーい」

配達少女「お届け物でーす」
46 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage]:2011/12/03(土) 07:06:18.27 ID:NOOLkeZo0

少女「おはようございまーす!」

少女「今日は将棋を教えてもらいに来ました!」

少女「前に約束したじゃないですか」

少女「そうそう、写真撮った時のことです」

少女「馬の骨? お爺さん、まだあの人のこと覚えてるんですか!」

配達少女「お届け物でーす」
47 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage]:2011/12/03(土) 07:06:59.88 ID:NOOLkeZo0

少女「まずは駒の名前からですね」

少女「これはあゆむくんでしょうかあゆみちゃんでしょうか」

少女「え? 『ふ』?」

少女「なんで食べ物に……」

少女「あ、そうじゃない? これは失礼」

少女「で、これが総大将の王と玉。その隣をはさむ金銀に、桂馬、両翼を担う角と飛車」

少女「……」

少女「いえ、別に。金と玉が同時に目に入ったとかそんなんじゃありません」

配達少女「お届け物でーす」
48 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage]:2011/12/03(土) 07:07:42.20 ID:NOOLkeZo0

少女「次に動かし方ですが」

少女「歩は前に一歩ずつ。地道ですね。わたしにはまねできません」

少女「飛車と角はすごいですね。びゅんびゅんいどうします。ちーとです」

少女「あ、王様はけっこう鈍重なんですね」

少女「え!? 何ですかこれ!?」

少女「お馬さんがトリッキーすぎますよ!?」

配達少女「お届け物でーす」
49 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage]:2011/12/03(土) 07:08:24.36 ID:NOOLkeZo0

少女「これは……!」

少女「名前を覚える段で忘れていましたが、これ、香車」

少女「まっすぐ一直線。行ったら戻ってこない。実に潔い……」

少女「まるで私みたいですね!」

少女「おまけに香車と強者は読みが同じです!」

少女「猪突猛進?」

少女「まあそれもよし、です」

配達少女「お届け物でーす」
50 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage]:2011/12/03(土) 07:09:10.17 ID:NOOLkeZo0

少女「今日はここまで、ですか」

少女「分かりました、ありがとうございました」

少女「次は実践編ですね、よろしくお願いします師匠!」

少女「あ、お手紙……」

少女「ええ、お預かりします」

少女「それではー」

配達少女「お届け物でーす」
51 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage]:2011/12/03(土) 07:09:52.12 ID:NOOLkeZo0

少女「あれから数日経ち、実践編も進んできたわけですが」

少女「かたい! かたすぎます、お爺さんの穴熊囲い!」

少女「見た目通り堅実な防御と攻撃です!」

少女「初心者相手に容赦ない!」

少女「行け! 香車ぁ!」

少女「え、王手飛車取り? そんなあ……」

配達少女「お届け物でーす」
52 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage]:2011/12/03(土) 07:10:36.16 ID:NOOLkeZo0

少女「ふー。激戦の後のお茶は美味しいですね」

少女「一方的な蹂躙だった? これは失礼」

少女「じゃあ、そろそろ帰りますね。次は絶対勝ちますから!」

少女「あ、今日もお手紙ですか」

少女「任せてください」

少女「……いつもと違う封筒ですね」

少女「――え、何か言いました?」

少女「気のせい? ならいいんですが」

少女「それでは失礼します」

配達少女「お届け物でーす」
53 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage]:2011/12/03(土) 07:11:25.99 ID:NOOLkeZo0

 夜になってふと思い出した。
 あのときお爺さんは

 『これが最後だから』

 と言ったのだ。
 ……ひどく胸騒ぎがした。

配達少女「お届け物でーす」
54 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage]:2011/12/03(土) 07:12:10.63 ID:NOOLkeZo0

少女「はっ、はっ……」


 タッタッタッタ…… ガラガラ!


少女「お爺さん!」

少女(家の中が暗い……雨戸が閉まったままだ……)

少女「……」

少女「お爺さん!」

配達少女「お届け物でーす」
55 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage]:2011/12/03(土) 07:13:07.27 ID:NOOLkeZo0

 お爺さんの遺体は寝室で見つかった。
 眠るように、実際ベッドに寝たまま亡くなったようだ。

 わたしは立ち尽くした。
 涙は出てこない。
 ただただ呆然としたまま、立ち尽くしていた。

配達少女「お届け物でーす」
56 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage]:2011/12/03(土) 07:13:48.24 ID:NOOLkeZo0

少女「……」

少女「……」

少女「……へ? あ、ああ……二郎さんですか」

少女「ええ、大丈夫ですよ。もうお爺さんのお葬式から十日になりますし」

少女「大丈夫です」

少女「大丈夫ですってば」

少女「ああ、叩かれても反抗する気力がわきません。やっぱり駄目です」

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