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使用した名前一覧書き込んだスレッド一覧
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします
こっからジェットコースター入りまーす。鬱に次ぐ鬱でーす
>>320 このドS!!
>>332 朝になったら中断せざるを得ないと思います
カラスの行水
この辺から、>>1の注意書きにある「厨設定」が出張ってきますのでご用心
>>533 SGさんに明確な意志を持たせたのが、最大の厨設定だ
>>601 だいたい3分おき投下を目安にしてます
忍法帖【Lv=14,xxxPT】
お猿さんは働き者でつね

その他13個すべて表示する
岡部「これが、俺たちの選択だよ」
!ninja←お前らの月収
VIPのニコニコ臭いレスもキモいけど
対人ゲーでしょっちゅうありがちなこと挙げてけ
足の親指の爪の間にたまる臭いものの名前教えて

書き込みレス一覧

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岡部「これが、俺たちの選択だよ」
286 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2011/09/28(水) 00:02:11.61 ID:q3/6n3tf0
2010年12月27日。秋葉原駅。
まゆり「紅〜〜莉〜〜栖〜〜ちゃ〜〜〜〜〜ん!!」

紅莉栖「ま〜〜〜ゆ〜〜〜り〜〜〜!!」

ダキッ!

まゆり「紅莉栖ちゃん久しぶりぃ〜! ちょっと背大きくなった?」

紅莉栖「なるか! もうほぼ成長止まってるわよ!」

ダル「……」

紅莉栖「そこのHENTAIどこ見てんだコラ!」

岡部「よくぞ帰ったクリスティィ〜ンナッ! 貴様の居ないあいだ我がラボは激しい戦力ダウンに喘いでいたぞ! お前の終生の地は未ガ研にあると知れ!!」

紅莉栖「はいはい久しぶりの岡部節は聞き応えあるわね。心配しなくても、ラボは私の第二の故郷よ」

岡部「嬉しいこと言ってくれるじゃないの……ラボに来てうーぱクッションをファックしていいぞ」

紅莉栖「死ねHENTAI!! 綯を面倒みてあげたって言うからちょっと見直してたのに……あ、綯!」

綯「紅莉栖おねえちゃん!」

紅莉栖「ごふ! ふ、腹部にタックルはよしなさいタックルは。体にも障るわよ?」

綯「むぅ、みんなそうやっていつまでも心配する。私もう大丈夫ですよ?」

紅莉栖「ふふ、我慢なさい。みんなあんたが大好きなのよ。心配し過ぎなくらいが丁度いいの」
岡部「これが、俺たちの選択だよ」
287 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2011/09/28(水) 00:05:58.84 ID:q3/6n3tf0
るか「お帰りなさい、牧瀬さん」

紅莉栖「相変わらず綺麗ねあんたは……ただいま、るか。あれから素振り「修行だ愚か者!」はどう?」

るか「はい……60回は出来るようになりました」

紅莉栖「……岡部、あんた今度るかと腕相撲してみなさい」

岡部「フッ、なな何をばばばかなことを。師匠より優れた弟子など存在しない!!」

紅莉栖「その論が真なら人類は衰退していく一方じゃないアホか。そして萌郁さん! シャッター音うるさい!」

萌郁「……2ヶ月前と、ポーズ、一緒……」

紅莉栖「う、うっさい! どうせ消してないでしょうから今この場で2ヶ月前含めデータを消させてもらうわ!」

店長「そこら辺にしとけ萌郁。紅莉栖嬢をからかうな」ヒョイ

萌郁「あぁ〜……携帯が……」

店長「嬢ちゃんもいつまでも面白リアクション取ってねーで学習しな。さてはいじめられっこ体質か」

紅莉栖「!? き、禁句!! それ以上の指摘は店長さんと言えど許しませんよ! 人の過去を窺うの禁止!」

店長「お、おぅ、すまんかった……」
岡部「これが、俺たちの選択だよ」
290 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2011/09/28(水) 00:10:00.33 ID:q3/6n3tf0
フェイリス「必死すぎワロニャ」

紅莉栖「留未穂ひさしぶり! 今なんか言った!? 猫耳引っこ抜くわよ!」

フェイリス「やめるニャ! フェイリスの猫耳を外したらアキバに闇の障気が溢れて途端に死のまt」

紅莉栖「しっかし寒い! 日本寒すぎ、夏は蒸し暑くて冬は乾いてて寒いとか誰得よ!」

フェイリス「無視すんニャー!」

岡部「だからこそ四季を感じられるのだよ。メリケン処女には山紫水明は理解できんかな?」

紅莉栖「コンクリジャングルのアキバで白衣男がぶるぶる震えながら何か言ってます本当に(ry」

まゆり「オカリンは骨皮筋えもんさんだから、寒さや暑さをダイレクトに感じちゃうんだよね〜。もっとダルくんみたいにお肉付けなきゃだめなんだよ?」

萌郁「……橋田君は……付けすぎ……」

紅莉栖「言えてる。岡部も橋田も両極端よ。あとデブだからって寒さに強いと思うなよって私じゃなくて橋田が言いなs」

ダル「サムイ」

紅莉栖「はっ、橋田ァァーッ!? く、くちびる紫ワロエナイ! どどどどっかカフェ入ってあったまりましょ!」
岡部「これが、俺たちの選択だよ」
293 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2011/09/28(水) 00:13:59.88 ID:q3/6n3tf0

2ヶ月ぶりの再会。僕らは旧交を暖め合った。たった60日だったけど、とても待ち遠しい旧交に違いなかった。

その日はラボメンのみんなと店長を交えて、お帰りなさいパーティーを催した。

牧瀬氏一人を加えただけで、ラボの空気が以前に戻った気がする。やっぱり彼女は未ガ研になくてはならない人物だ。

たった2ヶ月でこの騒ぎようって、と照れ笑う牧瀬氏のまなじりにはたしかに小さな涙があった。

岡部「これが、俺たちの選択だよ」
295 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2011/09/28(水) 00:17:57.79 ID:q3/6n3tf0



2日経って。12月29日。

橋田がコミケ初日をパスするというウルトラCをやってのけたことで。

私は彼とラボで2人きりになれる時間を得た。



岡部「これが、俺たちの選択だよ」
296 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2011/09/28(水) 00:22:14.74 ID:q3/6n3tf0
紅莉栖「橋田ぁ〜っ!」

ダル「牧瀬氏ぃ〜っ!」

紅莉栖「橋田ぁ……待ちに待った橋田の感触ktkr……あぁ、あったかい……思ってた以上に柔らかい……」

ダル「よ、予想以上にピザで悪かったな! 牧瀬氏こそ柔らかいっての!」

紅莉栖「え!? ふ、太ってはないはずなんだけど」

ダル「オパーイが」

紅莉栖「HENTAI! ……もう。うりゃ、もっと味わえ」

ダル「ちょ、そ、そんな押し付けられたら柔らかいところが固くなってしまいますお!」

紅莉栖「重ね重ねHENTAI! ふーんだ、固くなっちゃえ、うりうり」

ダル「ちょちょ、ちょちょちょ!」
岡部「これが、俺たちの選択だよ」
298 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2011/09/28(水) 00:25:59.67 ID:q3/6n3tf0
紅莉栖「テ、テレビ電話でいろいろしたんだから今さらじゃない。何を恥ずかしがることがある!」

ダル「お、男らしー! ……牧瀬氏がそのつもりならこっちも!」

紅莉栖「ひゃん! い、いきなり胸は、やぁ、ん……」

ダル「うひょー! ままま牧瀬氏の胸やらかすぎワロタ……」

紅莉栖「も、揉みながら奇声を上げるなばか……あぁん、はしだぁ……」

ダル「……ま、牧瀬氏……」

紅莉栖「え、ちょ、ほ、ほんと? し、しちゃうの……?」

ダル「……」

紅莉栖「あ、まってよはしだ……心の準備が、ぁん、ふあ……」

ダル「……」
岡部「これが、俺たちの選択だよ」
302 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2011/09/28(水) 00:29:58.20 ID:q3/6n3tf0
ダル「……ッス、ストップ! っし耐えた! 僕よく耐えた! おぱいの誘惑に耐えてよく頑張った感動した!」

紅莉栖「は、んん……あ、あれ、しないの……?」

ダル「まずちゅっちゅだお!」

紅莉栖「……あはは、そういえばそんなこと約束したわね。流されちゃってたわ」

ダル「このままえっちに雪崩込んでももちろんアリだったけど……やっぱまずちゅーしたい」

紅莉栖「あんたも根っこは純情よねぇ……。……分かった」

ダル「……」ガシッ

紅莉栖「ん……」

ダル「……牧瀬氏、愛してるお」

紅莉栖「私も……橋田、愛してる」
岡部「これが、俺たちの選択だよ」
306 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2011/09/28(水) 00:34:02.26 ID:q3/6n3tf0
莉栖「…………ちゅ」

ダル「……」

紅莉栖「んちゅ、……ふぅ、……ん」

ダル「ん…………ふ……」

紅莉栖「ふあ…………はぁぁ……、はしだぁ……」

ダル「キ、キスって、すごいな……」

紅莉栖「うん……」

ダル「……牧瀬氏……」

紅莉栖「もっと……したいように、してもいいんだよ? はしだ……」

ダル「……オ、オーキードーキー。え、遠慮なしでやっちまうお?」

紅莉栖「うん……来て……」
岡部「これが、俺たちの選択だよ」
310 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2011/09/28(水) 00:38:02.87 ID:q3/6n3tf0

……大檜山ビル前。岡部倫太郎が、階段を上がっていく。



トン トン トン

岡部「しまったしまった、この俺としたことが定期を忘れてしまうとは。なんたる不覚」

トン トン トン

岡部「改札前でもたつく恥ずかしさは異常。照れ隠しについ定時連絡をしてしまったぞ。フゥーハハハ。これもシュタインズ・ゲートの選択か……」

トン トン トン

ガチャ

岡部「ん? 鍵が開いている?」

岡部「誰か居るのかー……?」

岡部「これが、俺たちの選択だよ」
317 :こっからジェットコースター入りまーす。鬱に次ぐ鬱でーす[]:2011/09/28(水) 00:41:58.95 ID:q3/6n3tf0




俺は、ゆっくりとドアを開けた。

ダルと紅莉栖の靴を認めて。

玄関からラボへ、ひょい、と顔だけを出して。




岡部「これが、俺たちの選択だよ」
322 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2011/09/28(水) 00:46:28.24 ID:q3/6n3tf0



そう、時計は進んでいた。


俺だけをおいて、時計は着実に進んでいた。


変わらないものなどない。


あるとしたら、それは俺の中の時計だった。


世界線に呪われた哀れな男は、扉を開けた先、SG世界線の無限の意味を思い知らされた。



岡部「これが、俺たちの選択だよ」
325 :>>320 このドS!![]:2011/09/28(水) 00:50:01.79 ID:q3/6n3tf0




時刻は昼過ぎ。

俺に待ち受けていたもの。

差し込む暖かな日差しを受けた大きな何か。

それは抱き合う2つの人の姿。

ラボの真ん中、横に広い大男と、赤い髪の女が、口付けを交わす姿。




岡部「これが、俺たちの選択だよ」
331 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2011/09/28(水) 00:53:42.55 ID:q3/6n3tf0


呼吸が出来なかった。
事態を飲み込めなかった。
全身が凍り付いたように固まり、言うことを聞かなかった。

2人は俺に気付いた様子もなく、ただ一心不乱に互いを求めていた。
紅莉栖が時おり苦しそうに身じろぎし、ダルの背を切なげにさする。
逃がすまいとダルが腕に力を加え、首の角度を変え紅莉栖を貪る。
水音が耳に響く。
体が焦げるように暑い。
心が凍えるように寒い。

林檎のように顔を赤くした紅莉栖が、薄く目を開けてダルの瞳を見つめている。
おもむろに唇を離したダルが、火照った紅莉栖の頬を優しく撫でた。
大きな手に顔を寄せ、安心しきった様子で目を瞑る紅莉栖の表情は、女のそれだった。


岡部「これが、俺たちの選択だよ」
333 :>>332 朝になったら中断せざるを得ないと思います[]:2011/09/28(水) 00:57:22.13 ID:q3/6n3tf0




あぁ、どうして忘れ物などしてしまったのだろう。

どうして俺はここに居るのだろう。

どうして俺は2人の可能性に思い当たらなかったのだろう。

どうして俺は何も知らなかったのだろう。

どうして俺はSGを目指そうと思ったのだろう。

どうして俺はSGに居るんだろう。

どうして俺はSGに至ってから何も行動に移さなかったのだろう。

どうして俺はこの光景にショックを受けているんだろう。

どうして俺は静かにラボを出ようとしているのだろう。



俺は、何を、守ろうとしていたんだろう。この気持ちは、なんだろう。




岡部「これが、俺たちの選択だよ」
335 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2011/09/28(水) 01:00:57.59 ID:q3/6n3tf0


俺は2人に悟られないよう、息を殺してラボを出た。

視界がブレる。下りの階段が波打つ。

1段1段、踏み外さないように降りていく。いやもう踏み外した?

1階。地面に足が着いていない。妙な浮遊感。

雑踏はモノクロ。階段を下りるだけで疲れた。工房前のベンチ。

倒れ込むように座る。首を上向ける。青い空。

緑の服。オレンジのキャップ。赤の髪。白い日差し。朱の入った頬。明滅する男女の横顔。


岡部「これが、俺たちの選択だよ」
340 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2011/09/28(水) 01:05:49.70 ID:q3/6n3tf0
――――――
――――
――

(アキバの空は狭いな)

1時間は経ったか。肌を刺す冷気が、気持ちも少し冷やしてくれた。

背もたれに首を預け、ただ漫然と空を見上げる。
まゆりには昼でも星が見えているのだろうか。透明な星屑が瞬いているのだろうか。
今の俺には何も見えない。心に覆い被さった多色の曇天が、雲ひとつない青空をマーブルに染めあげる。
赤と緑とオレンジがよく目立った。

(タイムリープをしよう)

ふいに思った。
ずっと忌避してきた考えが、すんなりと心の内から浮かび上がってきた。

(Dメールは駄目だ。バタフライ・エフェクトでSG世界線を外れてしまう可能性がある。
 タイムリープなら世界線変動は誤差の範囲内。かつ、ダルと紅莉栖の関係を崩すことは容易だろう。
 人の生死が絡まない今回の件は、”世界線にとってどうでもいいこと”に違いないだろうから)

体にいまだ力は戻っていない。だのにすっと立ち上がり、何かに突き動かされるように体は澱みなく動く。
向かう先はパーツショップ。

岡部「これが、俺たちの選択だよ」
342 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2011/09/28(水) 01:09:30.26 ID:q3/6n3tf0

世界線漂流のおかげで、マシンに必要な材料は全て暗記していた。
今日は12月29日。店舗はぎりぎり開いている。1時間半ほどを費やし一通りを買い揃え、ラボへ戻る。

……遠く、ブラウン管工房前に2人の姿が見えた。



2人とも少し気まずそうに、真っ赤な顔を微妙に逸らしながらも、その手はしっかりと結ばれていた。
指を1本1本絡めて、互いが互いを決して離すまいと、強く握り込まれている。



俺は買い物袋を提げた自分の手を見る。
何も握っていなかった。

2人は俺とは反対方向に歩いていく。細い背中と広い背中を見つめる。2人が離れていく。俺だけを置いて、世界が離れていく。

(はやくマシンを作ってしまおう)

2人を強引に視界から外し、俺はラボへ急いだ。

岡部「これが、俺たちの選択だよ」
346 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2011/09/28(水) 01:13:08.48 ID:q3/6n3tf0

ラボには俺一人。マシン製作はなんの滞りもなく、順調に推移した。
SERNのLHCへの直通回線も問題なく通っていた。心配はしていなかった。これも収束ということだ。

現在時間、2010年12月29日、17時36分。

遡れる時間は、2010年12月27日、17時36分まで。

上限いっぱいまで飛ぼうとは思わない。俺の脳裏にはラボで見たあの光景がこびり付いていた。

「あれは……13時半頃だったか」

遡行時間は今日の13時28分にセット。ラボへ向かう途中の俺へリープする。

あれほど固く誓った決意をたやすく破ってのタイムリープだというのに、今の俺にはなんの躊躇いもなかった。

「これが、シュタインズ・ゲートの選択だよ」

口に出してみた。自分でもびっくりするほど低い声音。

自嘲して。



エンターキーを押した。

岡部「これが、俺たちの選択だよ」
349 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2011/09/28(水) 01:17:03.02 ID:q3/6n3tf0

「っぐ……!」

久しぶりに感じる、尋常ではない脳の痒み。周囲の風景は一変している。目の前に大檜山ビルがある。
タイムリープは成功した。

「……」

ラボを見上げる。記憶の中の光景が、今ここでまた行われているのだ。
根本的な解決になってないのは十分に分かっている。でも今は、俺を苛む2人の姿をとにかく一刻も早くぶち壊したくて、俺はラボへの階段を駆け上がっていた。

ラボの扉を躊躇なく開く。

「きゃぁあッ!?」
「うわぁあッ!?」

甲高い悲鳴と野太い悲鳴が耳朶を打った。2人は抱き合った体勢のまま、目を丸くして硬直している。

「お、お、岡部!? あ、いやあのその、こ、これは」
「オオオオカリンあああああのこここれはえーとえーと」

2人の慌てふためく様を見て、俺の心と体は凍ったままに燃え出す。
どこか遠くから2人を観劇しているような感覚がある。
あるいは、2人のほうが俺を観劇しているのか。

ダルは照れくさそうに帽子の上から頭をかき、もごもごと何かを言っている。
紅莉栖は顔を赤らめたまま足下を見つめ、目線だけを時おりダルとこちらへ寄越してくる。

岡部「これが、俺たちの選択だよ」
356 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2011/09/28(水) 01:20:28.54 ID:q3/6n3tf0

2回目なのに。




さっき見たのに。




改めて2人の仲を目の当たりにして、どうしようもない暗い情念が、ふつふつと沸き上がってくるのを感じる。




2度に渡る目撃は、俺に”激昂する余裕”を与えた。

岡部「これが、俺たちの選択だよ」
359 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2011/09/28(水) 01:24:10.52 ID:q3/6n3tf0

どうしてなんだ。

どうして紅莉栖の隣にダルが居るんだ。

どうして紅莉栖の隣に俺が居ないんだ。

彼女の、あの可愛らしい表情は俺にだけ向けられるべきものだ。

俺と紅莉栖のじれったい様子にまゆりは仲良しだねぇととぼけた感想を言い、ダルはリア充爆発しろとからかい混じりに叫ぶ。

そういうお約束だったはずだろう?

なぁダル、それじゃ横取りじゃないか。

なぁ紅莉栖、あのラボで何度も口付けを交わしたことを忘れたのか?

一回じゃ忘れるかもしれないからって、何度も交わしたよな。

どうして忘れてるんだよ、どうしてダルなんかと、どうして、どうしてどうしてどうして。

岡部「これが、俺たちの選択だよ」
365 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2011/09/28(水) 01:27:29.69 ID:q3/6n3tf0

ふらつきながら鬼気迫る様子で近付く俺に、畏怖を感じたらしい紅莉栖が一歩後ずさった。
そんな一挙動さえ許せなくて、俺は大股で距離を縮める。

忘れたのなら思い出させてやる。

強引にでも何度かやればすぐに思い出すだろう。

アキバで再会を果たしたとき紅莉栖は、クリスティーナでも助手でもない、と知るはずのない答えを返した。

断片的には思い出しているはずなんだ。キスのことも思い出さない道理がない。


と、眼前に大きな体躯をした男が立ちふさがった。

「……オ、オカリン。ちょっと落ち着けって」

落ち着け? 何を言っているんだコイツは。
女を取られて落ち着いていられる男がどこに居るってんだよ。

「どけよ」

男の右肩に手をかけ強引に退かそうとする。しかし動かない。

「牧瀬氏おびえてんじゃん。とりま深呼吸でもして」

「どけよ!!」

岡部「これが、俺たちの選択だよ」
369 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2011/09/28(水) 01:30:58.76 ID:q3/6n3tf0

反射的に右手を振るっていた。
それは男の顎あたりに命中し、巨体はあっけなく後方へ吹き飛ばされる。
紅莉栖の蚊の鳴くような悲鳴が聞こえ、彼女はすぐに男へすがりついた。

「橋田! 橋田ぁ!」

良いところに当たったのか、男は昏倒し目を覚まさない。
紅莉栖は男のそばに跪いて、必死に男を揺すっている。
目の前まで近付いているというのに、俺を見ようともしなかった。

「紅莉栖」

呼び掛けると、紅莉栖は震えながらもゆっくりと顔を上げた。
怒りに燃えた瞳だった。

岡部「これが、俺たちの選択だよ」
371 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2011/09/28(水) 01:34:28.60 ID:q3/6n3tf0

「岡部……アンタどういうつもり……!」

おびえを怒気で隠し、紅莉栖は俺を詰問する。

こんな表情を向けられたことが今まで一度でもあっただろうか?

こんなにも敵意を剥き出しにした紅莉栖を見たことがあっただろうか?

どうして俺は紅莉栖にこんな顔をさせているんだ?

心の奥底で俺が俺に問いかける。しかし、もう止まれない。


一瞬だけ、紅莉栖の首を絞める中鉢の姿が頭をよぎった。


「お前こそどういうつもりだ、どうして俺以外の奴とキスなんかしてるんだよ」

紅莉栖が明らかに困惑した表情を見せる。

岡部「これが、俺たちの選択だよ」
375 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2011/09/28(水) 01:38:22.58 ID:q3/6n3tf0

返答を待たず、俺は畳みかける。

世界線漂流で培った、俺たち2人の旅路、絆、愛。
その全てを言って聞かせた。

こうやって紅莉栖に別世界線の話をするのはもう何度目だろうか。そのいずれでも例外なく紅莉栖は俺の話を信じてくれた。

紅莉栖はいつだって俺の味方で、最高の助手で、最高のパートナーなんだ。

どんな荒唐無稽な話でも、コイツは俺の瞳を一直線に見つめ、茶化すこともなく、
親身になって、一言も聞き漏らさないよう冷静に聞いてくれるんだ。



それが、不文律だったはずだろう?



なぁ、どうしてそんな目を泳がせているんだ。

どうしてそんな、得体の知れないものを見るような目をしているんだ。

どうしてそんな……可哀想なくらい、震えてるんだ。


話せば話すほど、紅莉栖の心が俺から遠ざかっていくのが分かった。
気付けば俺は涙声だった。
いつだって俺の味方であったはずの女は、今は横たわる男の手に縋っていた。

岡部「これが、俺たちの選択だよ」
376 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2011/09/28(水) 01:42:12.41 ID:q3/6n3tf0

「他の世界線で……マイスプーンはもう持ってるから、今度はマイフォークをって……話してくれたよな……?」

苦し紛れに、俺しか知らないであろうことを話す。返答は、俺の予測を越えていた。

「……橋田から、聞いたの……?」

橋田から、聞いた。

これはつまり、SG世界線においてマイフォークの話は、俺ではなくこの男に話したということだ。
カッと頭が熱くなるのが分かった。
思い出を奪われた、と感じた。

「青森へ行こうって……一緒に行って、父と改めて話をしようって……!」

俺はもう正常な思考が出来ていなかった。

他世界線で俺と紅莉栖は青森へ共に行く約束を交わしたが、このSG世界線では中鉢はすでにロシアで更迭されている。

有り得ないのだ。そんな約束をすることは。

だが俺は一縷の望みに賭けて、紅莉栖へ訴えかけた。
世界線記憶を喚起することに賭けた。

だが、紅莉栖の返答はまたも俺の予想を遙かに越えたものであった。

岡部「これが、俺たちの選択だよ」
377 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2011/09/28(水) 01:45:41.67 ID:q3/6n3tf0

「あ、青森……? ロシア、じゃなくて……? それに、行こうって言ってくれたのは、岡部じゃなくて」

理解した。全身を駆け抜けた驚愕が、知らず、瞳を横たわる男に向けさせた。


あぁ、あぁ、ダル。まったくお前はいつだって予想の斜め上を行く男だな。

実の父に刺し殺されかけるなんて凄絶な体験をした女を、お前は再び向き会わせようというのか。

どんな手を使ったんだよダル。どうやって紅莉栖にそんなことを了承させたんだ。

ロシアへ行ってどうするつもりだ。中鉢に謝らせるのか。

もしくはしっかりと面と向かい合わせることで、今度こそきっぱりと吹っ切らせようというのか。



……そんなこと、俺は思い付きもしなかったよ。

俺は紅莉栖に、早く中鉢のことを忘れてほしかった。そこで思考を止めていた。

なぁ紅莉栖、……もしかしてお前は、俺がそう言ってくれるのを、待っていたのかな。

岡部「これが、俺たちの選択だよ」
382 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2011/09/28(水) 01:49:53.82 ID:q3/6n3tf0

決定的な敗北感が俺の身を苛んだ。どうすれば紅莉栖は思い出すか、と冷静に立てていたロジックが崩れさる。
あとに残ったのは目の前の女への妄執。

「”なかったことにしないでくれよ”、紅莉栖……俺たちの、記憶を……」

正体を失った声で俺は詰め寄る。万策尽きた俺は、ただ紅莉栖の情に訴えるほかなかった。

「分かんない……岡部が何を言ってるのか、全然分かんないよ……」

紅莉栖に世界線記憶を思い出した様子は全くなかった。
それでも諦めきれない俺に、脳はある情景を思い出させてくれた。
その最後の一手を、俺は紅莉栖へ伝える。

「紅莉栖……頼む、後生だ。一度でいい。キス、させてくれ」

岡部「これが、俺たちの選択だよ」
386 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2011/09/28(水) 01:53:30.52 ID:q3/6n3tf0

「……な、何を言って……」

「頼む……一度でいいんだ……そうしたら、全部思い出すから……」

「いや……!」

紅莉栖は強く眉根を寄せ、一層激しく首を振った。
聞き分けのない彼女の両肩を押さえ、俺は持てる全てを吐き出す。

「お願いだ紅莉栖! お前だってこんな訳わかんないままでいたくないだろう!?
 バッヂのこととかいろいろ聞いてきたじゃないか! 俺の抱えてる秘密の正体を知りたいんだろ!?
 なら一度だけ! 一度だけ我慢して、キスさせてくれ!
 より強烈な感情とともに海馬に記銘されたエピソード記憶は忘却されにくい、お前はそう言ったよな!?
 このことはお前も例外じゃないはz」

「いやぁぁぁッ!!」

岡部「これが、俺たちの選択だよ」
391 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2011/09/28(水) 01:56:59.08 ID:q3/6n3tf0

手を――払われた。

「紅莉、栖……」

はっきりとした拒絶に、俺は動けないでいた。

「どうして……私と橋田しか知らないことを岡部が知ってるのか知らない……」

「どうして、岡部とばったり会ったあの日……クリスティーナでも助手でもないといっとろーが、なんて返したのか、今でもわからない……」

「でもそれが……岡部の言う、世界線記憶とかいうのによるものだとしたら……もし私が、それを全部思い出したら……!」

「……私は、岡部を『好きになってしまう』んでしょう……!?」

好きになってしまう。
好きになってしまう。
好きになってしまう。

……しまう?

岡部「これが、俺たちの選択だよ」
395 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2011/09/28(水) 02:00:31.75 ID:q3/6n3tf0

しまう。不本意の意。本心は別にあるの意。
ただの言葉尻が、これ以上なく俺の心を切り刻む。

「おまえ……今なんて……」

「私は!」

紅莉栖はしゃがみ込み、横たわるダルの体に縋り付いた。

「橋田が好きなの! 岡部がパパから私を助けてくれたことは感謝してる。
 感謝してるけど、私が好きなのは橋田! この人が好きなの!」

「どうしようもないHENTAIの中のHENTAIで、見てくれはデブでキモいオタクで最低の最悪よ。だけど……」

「だけど! 変なところで鋭くて、欲しいときに優しくしてくれて、結構頼りがいがあって、
 愛してるって気持ちをストレートに伝えてくれて、いつだって私のことを見てくれていて……!」

「私は、そんな橋田を……橋田を愛してるの……!」

岡部「これが、俺たちの選択だよ」
398 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2011/09/28(水) 02:03:57.71 ID:q3/6n3tf0

本気で紅莉栖の頬を張った。ダルのように無様に倒れ込む。
ぶたれた頬に手をやり、恐怖に彩られた表情で俺を見つめている。

そうだ、萌郁の時と同じように、強引にやってしまえばいい。
必要なことだ。紅莉栖が俺を思い出すには、やはりこれをしなければならない。
今の紅莉栖が俺を拒むのは仕方ない。今の紅莉栖は紅莉栖じゃないんだから。
俺が、俺の手で紅莉栖を元に戻してあげなきゃならない。
最初は嫌がるかもしれないが、すぐにあのラボでのことを思い出して、俺の気持ちに応えてくれるだろう。
そうに違いない。そうに違いないんだ。

「ごめんな、紅莉栖……すぐに思い出させてやらなかったせいで、ダルなんかを好きにさせてしまった……」

「あ……いや……」

「俺のせいだ、ごめん……今から、元のお前に戻してやるから……」

「いや、いや、来ないで……はしだ……はしだ……!」





岡部「これが、俺たちの選択だよ」
401 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2011/09/28(水) 02:07:57.38 ID:q3/6n3tf0







「うわああああぁぁぁぁぁっぁぁぁあぁぁぁああああああああああッッ!!!!」







岡部「これが、俺たちの選択だよ」
403 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2011/09/28(水) 02:11:30.44 ID:q3/6n3tf0

「がは……ッ!」

怒声を上げ、全身でタックルしてきたダルに俺は吹き飛ばされる。
PC机の脚に背中を強打し、あまりの痛みに俺は立ち上がることが適わなかった。

「牧瀬氏!」

ダルの方はすぐに体勢を立て直し、紅莉栖の手を急いでひっ掴む。

「あ、あぁ、橋田……!」

表情を一気に弛緩させた紅莉栖が、ダルを惚けた瞳で見つめている。確かめるように、ダルの手をしっかりと握り返していた。

「……紅莉……栖……、ダ……ル……」

背の尋常ではない痛みは、声も満足に上げさせてくれない。俺はドアへと走り去る2人の後ろ姿を見つめることしか出来なかった。

岡部「これが、俺たちの選択だよ」
409 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2011/09/28(水) 02:14:58.14 ID:q3/6n3tf0

ドアが勢い良く開かれた瞬間、2人がちらりとこちらを見た。


ダルの表情には憤怒があった。明確な敵意があった。決然とした拒絶があった。女を守ろうとする男の顔があった。

紅莉栖の表情には悲哀があった。明確な嫌悪があった。信じた父と信じた男に裏切られた子供が居た。男に縋る女の顔があった。





俺は悟った。

紅莉栖にはダルが、ダルには紅莉栖がもう居ると。

SG世界線は、だからこそSG世界線なのだと。

俺の旅路は、”なかったことになった”と。

岡部「これが、俺たちの選択だよ」
411 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2011/09/28(水) 02:18:32.06 ID:q3/6n3tf0

「何でだよ……ダル……やめろよ……どうして紅莉栖なんだよ……」

誰も居ない空間で、俺は言葉を投げかける。

それはダルだけに向けたものではない。紅莉栖にも。俺にも。世界にも向けたもの。

「お前には、コミケで出逢う可愛い嫁さんが居るんだろ……そう鈴羽が言ってたじゃないか……。
 そうだ……お前がその人と結ばれなかったら、鈴羽はどうなるんだよ……なぁ……。
 生まれてこないかもしれないじゃないか……そんなの、悲しいだろ……。
 αでもβでも悲しい未来が待ってたんだ……今度こそ、あいつを幸せにしてやれよ……お前の手でさ……。
 だから……だからさぁ……!」






                    ――ねぇ、岡部



岡部「これが、俺たちの選択だよ」
413 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2011/09/28(水) 02:21:57.77 ID:q3/6n3tf0

だから助手ではないし、ティーナでもないって!


                                           泣いてないわよ。男の人に怖い顔で迫られて恐怖を感じたとか、
                                           その後ほっとして涙が出たとか、そういうこと全然ないし!


                      ガッ


                                        開頭して海馬に電極ぶっ刺してやりたい



                             馬鹿なの!? 死ぬの!?

岡部「これが、俺たちの選択だよ」
417 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2011/09/28(水) 02:25:30.95 ID:q3/6n3tf0


そもそももしRSが正しいなら、あらゆる人間の記憶があんたの主観に引きずられてることになる


       そんなの、無理が有りすぎる。もしそうだったら岡部は文字通り、神よ


              でも、現実には神なんて、いない


                     世界は、あんたを中心に回っているわけじゃない


                            あんたの脳が、そう錯覚させているだけ


                                   世界にとってあんたが神だと言うなら、同体積の脳を持つ私も、世界にとって神になれるわけで


                                          精神はどこにあるか、って話。そして私は、私の精神をあんたの好きにさせたくない




                                                                             未来の可能性は無限よ


岡部「これが、俺たちの選択だよ」
423 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2011/09/28(水) 02:29:02.05 ID:q3/6n3tf0

ACTHの分泌過剰になり、ガンマ波から確率共鳴が起きてヒルベルト曲線のハウスドルフ次元は∞と仮定されるわけだから、
つまり漸近線はポジトロン断層法で計測して……?


                                                 えっ!? と、言いますと!?


                                          し、知りたいのか?


                                   ……目を閉じろ


                            より強烈な感情とともに海馬に記銘されたエピソード記憶は、忘却されにくいのよ


                     どうしても、岡部にだけは、私のこと忘れてほしくなかったから……


              な、生意気なっ。童貞のくせに                     そ、それなら、しょうがないな……


                                                 キスだけ……だぞ……


                                          ちゃんと、その、優しく……して…

岡部「これが、俺たちの選択だよ」
426 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2011/09/28(水) 02:32:29.78 ID:q3/6n3tf0



                                                        時間が――あっという間に過ぎていく




       今だけは……アインシュタインに、文句を言いたい気分




                                                 時間は絶対的じゃない









                     ねぇ、相対性理論って、とてもロマンチックで―― とても、切ないものだね……



岡部「これが、俺たちの選択だよ」
429 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2011/09/28(水) 02:36:01.28 ID:q3/6n3tf0





                「紅莉栖を……連れていかないでくれよぉぉぉぉぉッッ!




                 俺から……紅莉栖を奪わないでくれよぉぉぉ……ッ!




                 頼む……頼むよダルゥ……お願いだ……お願いだから……。




                 うう、……ぁ……ぁぁぁぁぁあああ………………あああああああああああああああああああああああ……!!」





岡部「これが、俺たちの選択だよ」
430 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2011/09/28(水) 02:37:42.21 ID:q3/6n3tf0
投下してるだけなのに落ち込んできたぁ……。
キリの良い所なので、ささっと風呂入って眠気飛ばしてきます
岡部「これが、俺たちの選択だよ」
442 :カラスの行水[]:2011/09/28(水) 02:52:34.21 ID:q3/6n3tf0
>>440 正直ダルクリの過程考えてるだけで辛かった。罪悪感がもうパなくてパなくて

再開します
岡部「これが、俺たちの選択だよ」
445 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2011/09/28(水) 02:54:04.22 ID:q3/6n3tf0
――――――
――――
――

「…………………………」

どれだけ時が過ぎただろうか。
今はラボ。PC机に寄りかかった体勢のまま、俺は虚無感の海に身を浸らせていた。

立ち上がる気力はない。身をよじらせる気力すらない。
ただ虚空を見つめる。

感情を少しでも動かせば、その途端に俺は衝動自殺を図っていたかもしれない。
しかし俺は緩慢な自殺を選ぶ。
心を凍らせ、体を凍らせ、無為な時が優しく俺を殺してくれることを望んだ。

壁のシミを見つめる。ただ見つめる。意味はない。それでいい。意味を持たないシミが俺の心を定位置に留め置いてくれる。
俺の心を、浮きも沈みもしない、植物にしてくれるのだ。

岡部「これが、俺たちの選択だよ」
450 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2011/09/28(水) 02:58:35.43 ID:q3/6n3tf0

と、無粋な音が空間を乱した。
ドアノブが回される音。ドアの軋む音。

壁のシミからほんの一瞬、関心が外れる。目だけがゆっくりとドアへ向いた。そこに居たのは。


「……オカリン」


まゆりだった。

岡部「これが、俺たちの選択だよ」
452 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2011/09/28(水) 03:00:57.49 ID:q3/6n3tf0

彼女は最後のダルと紅莉栖の表情を混ぜたような顔をしていた。しかし、その瞳には少なからず俺への憐憫が見えた。

「オカリン」

まゆりは俺の目の前に仁王立ちし、芯の通った言葉を掛けてくる。

やめてくれまゆり。もう一人にさせてくれ。このまま一人で消えさせてくれ。
俺に、感情を取り戻させないでくれ。

「ダルくんと紅莉栖ちゃんから、少しだけど聞いたよ。聞いたけど、さっぱり分からなかった。
 オカリン教えて。あれは一体なんの話なの?」

……あぁ、まゆりもか。
まゆりも、なにも思い出してはくれないのか。

この世界線は、とことん俺が嫌いなようだ。

岡部「これが、俺たちの選択だよ」
453 :この辺から、>>1の注意書きにある「厨設定」が出張ってきますのでご用心[]:2011/09/28(水) 03:04:28.85 ID:q3/6n3tf0

「オカリンの今の様子を見ても、ただの嘘じゃないって分かるよ。本当に何かがあったんでしょ?
 オカリンの口からちゃんと聞けば、まゆしぃでも何か分かるかもしれない。ねぇ、オカリン」

しゃがんで俺に目線を合わせ、光ある瞳で俺を見つめてくる。

……まゆりにも話したとして。
果たして彼女は思い出してくれるのだろうか。
もし思い出さなかったら、今度こそ俺は耐えられない。今だって先程の記憶から目を逸らすのに必死なのだ。

「ねぇ、オカリン、お願い……まゆしぃに、教えて欲しいよ……」

惑う思考を、まゆりの小さな言葉が引き上げた。
彼女は俺に訴えている。俺の苦しみを、自分も共有したい、と言ってくれている。

「…………」

ブレていたまゆりの輪郭がはっきりと見えてくる。俺の目にも彼女の光が灯る。
俺はゆっくり、しかしはっきりと頷いた。

岡部「これが、俺たちの選択だよ」
457 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2011/09/28(水) 03:07:28.06 ID:q3/6n3tf0

長い、長い時間をかけて話した。
とっくにまゆりは門限を過ぎているだろうに、文句一つ言わず俺に付き合ってくれた。
途中、喉を涸らす俺にまゆりはコーヒーやドクペを口に運んでくれた。
余りに信じ難く、聞き辛いであろう俺の話を聞いてくれた。
まゆりの死も話した。全て話した。包み隠さず、今に至る俺の心境を全て話した。





そして俺は話しているうち、一つの仮説に至った。
全てを語り終えた後、まゆりの表情で、その仮説は事実だと確信した。

岡部「これが、俺たちの選択だよ」
459 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2011/09/28(水) 03:09:35.63 ID:q3/6n3tf0


まゆりは、心配していたのだ。



世界線漂流という辛い体験をしてきた俺を心配したのではない。



真剣な調子で荒唐無稽な話を語り出す、頭のおかしくなった幼なじみを、心配していたのだ。


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