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◆o1ehmgejyk
>>1
QB「シャワーでも浴びておいで」さやか「な、何…?」

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QB「シャワーでも浴びておいで」さやか「な、何…?」
267 : ◆o1ehmgejyk []:2011/09/20(火) 02:47:02.41 ID:Z1bJNAI/0
ほむら「…それはしない。あなたはこれからもずっと苦しみ続けるべき」

QB「…なら、ここから飛び降りる」

ほむら「それも私がさせない」

QB「どうして?」

ほむら「あなたが死ねば、元通りの計算高いインキュベーターが現れて、まどかに契約を迫る」

QB「…今の僕が、まどかと契約できないとでも思っているのかい?」

ほむら「ええ。その通りよ」

QB「…それはとんだ勘違いだ」

ほむら「…」

QB「僕はまどかと契約する為に、君や杏子を殺すつもりでいるよ…」

ほむら「私はともかく、なぜ佐倉杏子まで?」

QB「杏子から聞いたんだ…。3日後にワルプルギスの夜が来るって…」

ほむら「…」

QB「君達がいなくなれば、あの巨大魔女を倒せるのはまどかだけになる…
   そこで、まどかの正義感に付け入って、半強制的に契約させる…」
QB「シャワーでも浴びておいで」さやか「な、何…?」
269 : ◆o1ehmgejyk []:2011/09/20(火) 02:50:10.06 ID:Z1bJNAI/0
ほむら「立派な策略ね」

QB「…君のこと、ようやくわかって来たよ」

ほむら「?」

QB「君はこの時間軸の人間じゃない…。未来の世界で僕と契約して、
   時間操作の魔術を得たんだ…そうだろう…? 過去の世界に何をしに来たんだ?」

ほむら「それはもう教えたはず。ついでに言うと、過去に戻ったのは
    一度や二度じゃないわ。…繰り返した数だけ、まどかが死ぬところを見て来た」

QB「…」

ほむら「あなただけが悩んでいると思った?」

QB「…君はなぜ、そこまでまどかに…?」

ほむら「…そうね。どうしてかしら」

QB「…」

ほむら「…鹿目まどかは、私の唯一の友達だった。最期はワルプルギスの夜に
    たった1人で立ち向かって、無残に死んでいった…」

QB「…!」
QB「シャワーでも浴びておいで」さやか「な、何…?」
270 : ◆o1ehmgejyk []:2011/09/20(火) 02:54:46.33 ID:Z1bJNAI/0
ほむら「私は、あの子の運命を変えたくて、あなたと契約した。それが始まり…
    なのに歴史を繰り返すうちに歯車の狂いはどんどん大きくなって
    気がつくと、いつの間にかまどかを救うことそのものが
    全ての目的になっていて…今は自分でも何をやってるのかわからなくなる時がある」

QB「…そっか」

ほむら「皮肉なものね。手に入れようとするほど、欲しかったものは遠ざかっていく」

QB「…僕と君は、似たもの同士なのかもしれないね。僕もちょうど、そんな状況だ…」

ほむら「ワルプルギスの夜は2人で倒すわ。あなたの計画は終わり」

QB「…さやかはね、手が焼ける子なんだ」

ほむら「美樹さやか…?」

QB「あの子は本当に言うことを聞かない…」

落ちていく涙が風に流されてちらついた

ほむら「…」

QB「いつも…僕を悩ますんだ」

ほむら「…そうね」
QB「シャワーでも浴びておいで」さやか「な、何…?」
272 : ◆o1ehmgejyk []:2011/09/20(火) 03:00:21.01 ID:Z1bJNAI/0
キュゥべえが泣き顔のまま振り向いた
QB「さやかはどうなるの…? 君のいた未来では、さやかは元気だった…?」

ほむら「…はっきり言って、あの子は魔法少女としては欠点が多すぎる
    あなたと契約した時間軸のほとんどで、ワルプルギスの夜が来るより先に魔女になった」

QB「そんな…」

ほむら「あなたにも予想できていたはずよ。なぜ契約などしてしまったの?」

QB「…断れなかったんだ…」

ほむら「…」

QB「あんな目で駄々をこねられたら『駄目だ』なんて言えないよ…!
   僕はさやかの為に鬼になれなかった…!

   さやかはマミが死んだことを自分のせいにしてて、
   不自由なく暮らしてることにも負い目を感じてて…
   僕は、そんなさやかの希望を叶えてあげたかった…!」

ほむら「…滑稽ね。さやかも、あなたも」

QB「…僕はもう、後戻りできない…。本来の目的だった『まどかとの契約』が、
   今は僕に残された最後の希望だ…だけど、だけどやっぱり、どうしても、
   振り払い切れないんだ、このどうしようもない恐怖と後悔が…!」
QB「シャワーでも浴びておいで」さやか「な、何…?」
273 : ◆o1ehmgejyk []:2011/09/20(火) 03:04:05.64 ID:Z1bJNAI/0
ほむら「…」

QB「さやかが、さやかが死んじゃう…!」
キュゥべえが足元へ近づいて、ほむらを見上げる

QB「さやかを助けて…! あの子は何も関係ない…
   死なせないで…! 魔女にならないように、支えてあげて…!!」

ほむら「…どこまで虫のいいことを言うつもり?」

QB「…!」

ほむら「あなたがやろうとしているのは、私の大切な人を終わらせることなのよ…
    それをやめないつもりでいて、どうして私に頼ろうなどと思えるの?」

QB「だ…だけど…」

ほむら「美樹さやかはどうにもならない。あなたが一番よく理解しているはずよ」

QB「……」

ほむら「思惑通りには行かないわ。まどかだけは、守り抜いてみせる」

ほむらが去っていく

QB「うぅ…」

QB(もう嫌だ…)
QB「シャワーでも浴びておいで」さやか「な、何…?」
275 : ◆o1ehmgejyk []:2011/09/20(火) 03:08:02.58 ID:Z1bJNAI/0
――――――――――
――さやかの家の前

1人で出かけるさやかをまどかが待ち受けていた

まどか「ついてっていいかな――さやかちゃんに、一人ぼっちになってほしくないの…だから」

さやか「…あんた、なんでそんなに優しいかな…あたしにはそんな価値なんてないのに」

まどか「そんな…」

さやかが俯いたまま泣いている

さやか「あたしね、今日、後悔しそうになっちゃった。あの時仁美を助けなければって…
    ほんの一瞬だけ思っちゃった…。正義の味方失格だよ…マミさんに顔向けできない…!」

まどかは黙ってさやかを抱き締めた

さやか「仁美に恭介を取られちゃうよ…! でもあたし何もできない!
    だってあたし、もう死んでるんだもん! 『ゾンビ』だもん!!
    こんな体で『抱き締めて』なんて言えない…『キスして』なんて言えないよ…!」

QB「……」

QBが少し距離を置いて見つめている

まどか「あ…キュゥべえ…」
QB「シャワーでも浴びておいで」さやか「な、何…?」
278 : ◆o1ehmgejyk []:2011/09/20(火) 03:11:11.72 ID:Z1bJNAI/0
さやか「っ!」

2人がキュゥべえを見る

QB「…」

さやか「……」

さやか(なんでなんだろ…謝りたかったのに…嫌な言葉しか浮かんで来ない…)

QB(全然立ち直ってないじゃないか…。杏子には気を遣っていただけだったんだ…)

まどか「キュゥべえ…」

QB「…?」

まどかが走って近づく

まどか「さやかちゃんを、さやかちゃんの体を元に戻してあげて…?」

QB「…」

まどか「ねぇ、お願い…こんなの、ひどいよ…ひどすぎるよ…。さやかちゃん、かわいそうだよ…
    さやかちゃんはただ、好きな人の怪我を治してあげたかっただけなのに…」

QB「それができたら…」

まどか「…?」
QB「シャワーでも浴びておいで」さやか「な、何…?」
280 : ◆o1ehmgejyk []:2011/09/20(火) 03:14:06.72 ID:Z1bJNAI/0
QB「できるとしたらどんなに気楽だったか…!」

まどか「キュゥべえはどうしてこんなことをするの…? どうして騙したりしたの…?」

まどかを無視してさやかに近づいていく

まどか「…」

さやかは目のやり場に困って顔を逸らした

QB「さやか」

さやか「…何よ」

QB「…慰めに来た…」

さやか「ふざけないでよ…」

QB「…!」

さやか「あたしをこんな体にしといて、今更『元気出せ』って…?」

QB「そんな風に考えないで…」

さやか「じゃあどう割り切れって言うのよ! どんな風に考えれば元に戻れる訳!?」

QB「さやか」
QB「シャワーでも浴びておいで」さやか「な、何…?」
281 : ◆o1ehmgejyk []:2011/09/20(火) 03:17:10.12 ID:Z1bJNAI/0
さやか「あんたのせいだ! あんたがあたしをこんな目に…!」

QB「…」

さやか(違うよ…違う…! 言ってることと考えてること、全然噛み合ってない…!)

QB「…実は僕、元は感情のない生き物だったんだ…」

さやか「え…?」

QB「だけど今、こうして君と一緒に色々考えながら、悩みながら、泣いている…」

さやか「…」

QB「ある魔法少女が、契約の願いによって僕に感情を与えたんだ…」

さやか「…そう…なんだ」

QB「はっきり言うと、こんなに苦しい思いをするのは、その子のせいだって思ってる…
   だってそれまで、泣きたくなったことなんてなかったもん…!」

さやか「…」

QB「僕には、どうすれば君が立ち直れるのかわからない
   君から離れて、考えた…一生懸命考えたんだ。だけど、やっぱりわからなかったよ…」

さやか「…うん」
QB「シャワーでも浴びておいで」さやか「な、何…?」
283 : ◆o1ehmgejyk []:2011/09/20(火) 03:20:04.35 ID:Z1bJNAI/0
キュゥべえは強く目を閉じた
体が震える

QB「僕を傷つけていいよ…。僕が君を傷つけたように、それと同じくらい痛めつけて…!」

さやか「!」

QB「遠慮はいらない…死んだって構わない…! 君の気が少しでも晴れるなら…!」

さやか「…」

QB「…」

QB(覚悟はできてる…)

さやか「…くっ…!」

さやかがキュゥべえを乱暴に拾い上げ、地面に投げつけようと振りかぶった

まどか「さやかちゃん!」

さやかの手が止まった

QB「うぅ…」

さやか「…できない」

さやかは脱力して膝をついた
QB「シャワーでも浴びておいで」さやか「な、何…?」
284 : ◆o1ehmgejyk []:2011/09/20(火) 03:23:06.59 ID:Z1bJNAI/0
歯を食いしばってキュゥべえを抱き締める

さやか「ごめん……!」

QB「さやか…!?」

さやか「あんたの言うこと、素直に聞いとけばよかった…!
    嫌がってるのに、あたしが無理矢理契約させたんだ…こんなの自業自得じゃん…!」

QB(何を言ってるんだ…!?)

さやか「あたし、自分が魔法少女になれば何もかも上手く行くって思ってたのに…
    現実はそうじゃなくて…。キュゥべえの言葉、軽く考えてたってわかった…」

QB「…」

さやか「きっと、あたしは本当のことを知っててもお構いなしに契約してた…
    それでも、今回みたいに理由つけてキュゥべえを責めたと思う…
    本当は謝りたかった…だって悪いのはあたしだもん…!」

まどか「さやかちゃん…」

まどかがしゃがみ込んでさやかの肩に手を置いた

さやか「あたしもうわかんないんだよ…。自分がどうしたいのか…どうしたかったのか…」

QB「…」
QB「シャワーでも浴びておいで」さやか「な、何…?」
286 : ◆o1ehmgejyk []:2011/09/20(火) 03:26:08.97 ID:Z1bJNAI/0
さやか「キュゥべえには、どうしたらいいかわかるんでしょ…?
    あんた頭いいから…。教えてよ…もうワガママ言ったりしないから…」

QB「……」
さやか「…」

QB「…世話の焼ける子だ…本当に…」

さやか「…?」

QB「部屋に戻ろう…?」

キュゥべえを抱いたまま立ち上がるさやか

さやか「…うん」

まどか「私…」

QB「まどか…すまないけど、2人だけにしてくれ…」

まどか「あ…うん。ごめんね…じゃあね、さやかちゃん。またね…?」

さやか「え…帰っちゃうの?」

QB「君には少し、時間が必要なんだ…。まどかには帰ってもらおう…?
   まどかはいつだって君を気にかけてくれているよ。明日、また会える…」

さやか「…わかった」
QB「シャワーでも浴びておいで」さやか「な、何…?」
287 : ◆o1ehmgejyk []:2011/09/20(火) 03:29:02.59 ID:Z1bJNAI/0
――さやかの部屋
さやかがベッドに腰掛けている

さやか「…あたしって…ほんと馬鹿…」

QB「…献身と自己犠牲を一括りにしようとするのが間違いだ…君は優しすぎる」

さやか「あたしは優しくなんかないよ…。さっきだって、
    もう少しであんたに取り返しのつかないことするとこだった…」

QB(そんなことはない…悔しいけど、僕は何度死んでも償い切れない…
   代わりのある僕の生命は、人間と比べたらほとんど価値がないんだよ…)

QB「…学校で、何かあったのかい?」

さやか「ん…」

QB「…」

さやか「はぁ…さすが、何でもお見通しだね…」

QB「よかったら話してほしいな…」

さやか「学校終わってから、仁美に『話がある』って呼ばれてさ…
    あの子、前から恭介のこと好きだったみたいで…」

QB「ああ…」
QB「シャワーでも浴びておいで」さやか「な、何…?」
308 : ◆o1ehmgejyk []:2011/09/20(火) 05:10:16.65 ID:Z1bJNAI/0
さやか「抜け駆けしたくないからって、わざわざそのこと教えてくれたんだ…
    それで仁美、丸一日だけ待って、明日の放課後、恭介に告白するって…」

QB「…」

膝に置いた拳を強く握って泣き出すさやか

さやか「恭介の手を治したのはあたしなのに…あたしはずっと恭介に会いに行ってたのに…!
    それなのに、黙って見てるしかないんだよ…! 仁美と恭介が付き合うとこ…!」

QB「…!」

QB(何だろう…この感じは…)

QB「さやか、志筑仁美は君にチャンスをくれたんだね…?」

なぜか声が震えた

さやか「…うん。だけど、あたし…!」

QB「…」

さやかは出かかった言葉を飲み込んだ

QB「…君は、生きてるよ」

さやか「…」
QB「シャワーでも浴びておいで」さやか「な、何…?」
309 : ◆o1ehmgejyk []:2011/09/20(火) 05:11:26.04 ID:Z1bJNAI/0
QB「ゾンビじゃないよ…」

さやか「…だって…」
ソウルジェムを手のひらに乗せた

さやか「これがあたしの姿なんでしょ…?」

QB「…」
キュゥべえはベッドから降りて鏡の前に立った

QB「君は喜びも悲しみも感じてる」

さやか「…」

QB「人間は感情の生き物。感じることが全てだ…」

さやか「…?」

QB「…知り合いがそう言ってた…」

さやか「…うん」

QB「僕は感情をもらってから、いつも苦しくて、苦しくて、それでも我慢して、
   泣いて、泣いて…死にたい時もあった…。だから、感情は病気だと思ってた…」

さやか「……」

QB「だけど、よかったんじゃないかなって、時々思う…」
QB「シャワーでも浴びておいで」さやか「な、何…?」
310 : ◆o1ehmgejyk []:2011/09/20(火) 05:11:59.49 ID:Z1bJNAI/0
さやか「…?」

QB「マミやさやかのこと、こんなに好きになれたから…」

さやか「…!」

QB「辛いことばかりだけど、気がついたら『幸せだな』って感じてる時があるんだ…」

さやか「…そっか」

QB「君は恭介のことが好きだろう?」

さやか「…」

QB「さやかは人間だ。これ以上自分をいじめないで…」

さやか「…そんなこと言ったって」

QB「…君の想いを封殺させたりしない…。それは、僕が許さない…」

さやか「え…?」

QB(汚い手だって構わない…!)

QB「…シャワーでも浴びておいで」

さやか「な、何…?」
QB「シャワーでも浴びておいで」さやか「な、何…?」
311 : ◆o1ehmgejyk []:2011/09/20(火) 05:14:14.44 ID:Z1bJNAI/0
QB「話すことは話した。あとは君が笑顔で戻って来るのを待つだけだ」

さやか「な…」

QB「止まない雨は降らない。特に嵐の翌日は天気がいいものだ」

さやか「う、うん…」

QB「僕はそれに期待してる。それだけだ」

さやか「…ありがとう」

QB「はは」

さやか「なんか…気味悪いな、急に。はいはい、じゃ行って来るね」

QB「行ってらっしゃい」

さやかを見送るキュゥべえ

QB「……」

QB(寄り道か…? 時間はないのに。感情というのはワガママだ…
   …逆だ。急がば回れ。これでいい。さあ行こう…。いいのか? そんなこと…
   いいも悪いもない。さやかの為だ…
   違う。さやかを利用する為だ…まどかと契約する為だ…!)

キュゥべえは密かに家を抜け出した
QB「シャワーでも浴びておいで」さやか「な、何…?」
312 : ◆o1ehmgejyk []:2011/09/20(火) 05:15:26.22 ID:Z1bJNAI/0
―――――――――
(ほむら『どこまで虫のいいことを言うつもり?』)

QB(人間にわかるのかい? 遊びじゃないんだ。戦争と同じだ
   僕は聖人でも独裁者でもない。狡猾な蛇で愚かな悪魔
   希望という麻薬の売人であり、宇宙という機械の歯車。やるべきことをやるんだ…)


―――――――――
――仁美の部屋
寝ぼけ眼の仁美にキュゥべえが向かい合う

(杏子『だからって強硬手段かよ? それでさやかが満足すると思うか?』)

QB(仕方ないじゃないか。こうでもしないと次の戦いへ進めないんだ
   僕はさやかをワルプルギスの夜と会わせる…まどかを追い詰めて契約させる為に
   まどかはやがて人類全てを地球ごと破壊し尽くすだろう…それでいい
   少女達が魔女になって行く姿を、僕はもう見たくない)

仁美「あなたは…?」

QB「僕は……死神だよ」

仁美「死神…?」
QB「シャワーでも浴びておいで」さやか「な、何…?」
313 : ◆o1ehmgejyk []:2011/09/20(火) 05:15:52.20 ID:Z1bJNAI/0
QB「…志筑仁美。君に伝えたいことがあって来た」

キュゥべえは耳の羽で仁美の額に触れた

仁美「!」

QB「今から見せるのは、ある魔法少女が下した決断と、その結果だ」

仁美の頭に映像を送り込むキュゥべえ

仁美「さやか…さん…?」

QB「そう…君の友達だ。彼女は自分の魂と引き換えに、僕と契約して上条恭介の手を癒した
   『契約』した者は、願い事が1つ叶う代わりに、魔法少女となる…
   さやかは今、君達の為に血を流して戦っている」

ハコの魔女に操られる仁美達が見えた

仁美「これは…私…! ですの…?」

QB「…ああ。よく見るんだ。君は魔女に取り憑かれ、集団自殺の現場に入った…
   あの時さやかが現れなければ、君は今頃この世にいない」

仁美「…!」

映像の中のさやかがまどかと抱き合って泣いている
QB「シャワーでも浴びておいで」さやか「な、何…?」
315 : ◆o1ehmgejyk []:2011/09/20(火) 05:17:26.90 ID:Z1bJNAI/0
QB「さやかは魂を抜かれた体で恭介と会うことを恐れた
   泣いているのは、志筑仁美に恭介を取られると思ったからだ」

仁美「うぅ…」

QB「誰の為に払った犠牲なのか。…そして何を得られるのか。…何を失ったのか」

仁美「…もう、やめてください」

QB「君にも最低限の素質はあるだろう。志筑仁美。君はなかなか興味深い
   僕と契約すれば、魂は取り出され、あの子のような過酷な運命を背負うことになる」

仁美「お願いですわ、こんなお話、やめてください!」

耳を塞いでうずくまる仁美

QB「…」

仁美「もう聞きたく――」

QB「『お願い』と言ったね。『話をやめろ』…それが君の願い事か」

仁美「!?」

QB「いいだろう。どんな奇跡も君の望むまま。容易い御用だ。君の祈りは遂げられる」

仁美「!!」
QB「シャワーでも浴びておいで」さやか「な、何…?」
318 : ◆o1ehmgejyk []:2011/09/20(火) 05:21:01.79 ID:Z1bJNAI/0
――――――――――
――午前3時
さやかの部屋。土砂降り雨の音がする

キュゥべえがよろよろと机に上った

QB「はぁ…はぁ…」

さやかがベッドで横向きに眠っている

QB(さやか…)

コトッ…

口にくわえていたソウルジェムを机の上に転がした
透き通った『緑色』をしている

QB(杏子もさやかには甘いね…。僕もさやかに振り回されてばかりだ…)

鈍痛を抱えた腹を庇いながらベッドに飛び移った
さやかの横顔を見下ろす

QB「はぁ…はぁ…」

QB(後悔しないと誓ったはずだろう…? 体は元に戻らないけど、それが全てじゃない…
   自分によく尋ねるといい…結果がどうなろうと後悔しない選択が見つかるはず…
   なぜなら、君の運命は君自身のものでしかないからだ…)
QB「シャワーでも浴びておいで」さやか「な、何…?」
319 : ◆o1ehmgejyk []:2011/09/20(火) 05:21:34.86 ID:Z1bJNAI/0
キュゥべえは丸くなって、頭をさやかの額にくっつけた

(ほむら『今は自分でも何をやってるのかわからなくなる時がある』)

QB(僕もそうだ…。こうして奔走しているのが、さやかの為なのか、宇宙の為なのか…
   どっちかを選べば、片方は犠牲になる…だけど比べたら価値の違いは一目瞭然じゃないか
   僕は宇宙を優先するよ…
   なのに、感情が邪魔するんだ…。まるで自分が2人いるみたいに)

QB「うぅ…」

QB(明日は辛い1日になるだろう…ここからが腕の見せ所だ…)

QB「おやすみ…さやか」



QB「シャワーでも浴びておいで」さやか「な、何…?」
320 : ◆o1ehmgejyk []:2011/09/20(火) 05:21:57.73 ID:Z1bJNAI/0
――――――――
――朝。ワルプルギスの夜出現まで、あと2日

さやか「ん…」

さやかが目を覚ました

キュゥべえは机の上で、さやかに背を向けたまま呼吸を整える

さやか「…キュゥべえ」

QB「おはよう。さやか」

さやか「ごめん。泣き疲れてたのかな…先に寝ちゃったみたい。…どこ行ってたの?」

QB「人をさらっていた。魔女の代わりに」

さやか「…はぁ…?」

QB「今日は恐らく君にとって大事な日のはずだ。諦めたつもりなら、考え直したほうがいい」

さやか「…何言ってんのよ」

QB「…すまないね。君が恭介から身を引こうとしているのが気に食わなかったんだ」

さやか「……」
QB「シャワーでも浴びておいで」さやか「な、何…?」
326 : ◆o1ehmgejyk []:2011/09/20(火) 06:03:00.19 ID:Z1bJNAI/0
QB「仁美は待ってくれると言っていたんだろう?」

さやか「…うん」

QB「事態を甘く考えるな。急いだほうがいい」

さやか「そ、そんな…また大袈裟な…。いいんだよ、あたしなんか…」

コッ コン コト…

緑色のソウルジェムを尻尾で落とすキュゥべえ

さやか「えっ……?」

QB「君1人が我慢すれば済む問題だと思ったら大間違いだ」

さやか「ちょ、ちょっと…これって…」

QB「あの子は緑色の目をしていた」

さやか「…!」

QB「志筑仁美を人質に取った。無理やり契約させて、誰にも見つからない場所へ誘い込んで、
   そこでソウルジェムを盗んだんだ」

さやか「あ…あんたどういう――!」

キュゥべえが目を光らせて振り向く
QB「シャワーでも浴びておいで」さやか「な、何…?」
329 : ◆o1ehmgejyk []:2011/09/20(火) 06:14:38.55 ID:Z1bJNAI/0
QB「あの子の死体はこうしている間にも少しずつ腐食しているだろう
   そして仁美の居場所は僕だけが知っている」

さやか「…!!」

立ち上がって机を叩くさやか

さやか「何てことするの!? 一体どういうつもりよ!」

QB「これは、僕からの、君に対する脅迫だ。日常は終わってしまった
   恭介に全て打ち明けるんだ。君の気持ちも、契約のことも」

さやか「仁美は全く関係ないでしょ!?」

QB「そう思うなら尚更だ。言う通りにすれば仁美に会わせてあげる。迷っている時間はない
   カラスについばまれてボロボロになった仁美にソウルジェムを返したいか?」

さやか「くっ…!」

俯いて膝をつくさやか

さやか「何なの…?」

QB「……」

さやか「なんでこんなことするのよ…!」
QB「シャワーでも浴びておいで」さやか「な、何…?」
330 : ◆o1ehmgejyk []:2011/09/20(火) 06:15:00.35 ID:Z1bJNAI/0
QB(立ち上がってほしいからだよ…。君は自分のことはすぐに諦めてしまう…
   けれど誰かの為なら必死になれるはずだ。さあ、自分の力で走るんだ…!)

さやか「…仁美はどこ?」

QB「恭介に会えばわかる」

さやか「教えて」

QB「…誰の為に?」

さやか「それは…仁美の為だし、あたしの為…!」

QB「…口を割るつもりはない。君自身が放課後までに結果にたどり着けば間に合うだろう
   僕は最後まで見守っている」

さやか「こんなこと…いくらあんたでも赦さないから…!」

QB(悪魔は悪魔らしく…)

QB「…それでどうする? 僕を殺せば仁美はこのまま時間をかけて白骨化するだろう」

さやか「…」

QB「簡単なことだ。恭介に告白すれば仁美は助かる。それが僕の提示した条件だ」
QB「シャワーでも浴びておいで」さやか「な、何…?」
331 : ◆o1ehmgejyk []:2011/09/20(火) 06:15:18.01 ID:Z1bJNAI/0
さやか「…あんたさ…」

QB「…?」

さやか「…もしかして、あたしの為にやってるつもりなの?」

QB「……」

さやか「…だとしたら、あんたは間違ってるよ…。何も悪くない仁美を巻き込むなんて!
    こんなことされて嬉しい訳ないじゃん!!」

QB「僕の真意が何なのかも、君にとって最善かどうかも、どうでもいい
   問題は『諦める』という選択肢がなくなったことだ」

さやか「…見損なった。こんな奴だったなんて」

QB「…」

QB(これでいいんだ…今は…)


QB「シャワーでも浴びておいで」さやか「な、何…?」
332 : ◆o1ehmgejyk []:2011/09/20(火) 06:15:40.29 ID:Z1bJNAI/0
――――――――――
――学校
仁美の姿がない

まどか「――さやかちゃん…それ、本当なの…?」

さやか「うん…ついさっきのこと。どうしよう、あたしがウジウジしてたせいで、仁美が…」

まどか「さやかちゃんのせいじゃないよ…」

さやか「それにしても、キュゥべえは本当何考えてんだろ…
    あたしが仁美のこと助けなきゃよかったなんて言っちゃったから…?」

まどか「さやかちゃん…」

さやか「…やっぱわかんないよ。あのキュゥべえが、あたしの恋愛なんかのことで
    そこまでムキになってこんなことするなんて、やっぱ信じらんないよ…」

まどか「……」

さやか「今朝のあいつ、いつもと違った…。普段あんなに優しくて泣き虫で、
    どんな時も親身になってくれたのに、なんか、人が変わったみたいに…
    それこそ氷みたいに冷たくて、あたしが何言っても何とも思ってないみたいで…
    …顔も少し怖かった」
QB「シャワーでも浴びておいで」さやか「な、何…?」
333 : ◆o1ehmgejyk []:2011/09/20(火) 06:16:00.90 ID:Z1bJNAI/0
まどか「…き、きっとキュゥべえはさやかちゃんに遠慮してほしくなかったんだよ…
    上条君のこと、そのまま諦めないでほしかったんだよ…
    キュゥべえは、さやかちゃんのことが好きで…」

さやか「…あんたはいいよね…気楽でいられて」

まどか「…!?」

さやか「あんたは魔法少女じゃないから、あたしが戦ってる時は後ろで見てるだけでいいもんね
    それで、こんな時も結局傍観者でさ…大変な思いするのは、あたしばっかだ…」

まどか「……」
涙目で下を向くまどか

さやか「大切な友達を人質にされて、助ける為には仁美を出し抜かなきゃいけない…
    どっちにしろあたしが悪者になるんじゃん…」

握っていた仁美のソウルジェムを見つめるさやか

まどか「さやか…ちゃん…」

QB「シャワーでも浴びておいで」さやか「な、何…?」
334 : ◆o1ehmgejyk []:2011/09/20(火) 06:16:20.63 ID:Z1bJNAI/0
――昼休み

屋上でさやかがフェンスに指をかけてうなだれている
その後ろに恭介

上条「さやか…。話って、何…? 深刻そうな顔して…」

さやか「……」

上条「…えっ、と…」

さやか「…恭介」

上条「うん…?」

深いため息をつくさやか

さやか「…仁美のこと、どう思う…?」

上条「志筑さんのこと…? 志筑さんが、どうかしたの?」

さやか(何から話そう…)

さやか「…前からあんたのこと、好きだったんだってさ…」

上条「え…?」
QB「シャワーでも浴びておいで」さやか「な、何…?」
335 : ◆o1ehmgejyk []:2011/09/20(火) 06:16:42.33 ID:Z1bJNAI/0
さやか「昨日聞いちゃった…。それで、本当は今日の放課後、あんたに告白するはずだった…」

上条「…」

さやか「…だけど、仁美は学校休んでる…」

上条「…うん」

さやか「…あのさ、恭介」

上条「…何? さやか」

さやか(…なんでこんなことになっちゃったんだろ…)

不意に涙がこぼれた

さやか(…やばい…何泣いてんのよ)

さやか「ちょっと、待ってて」
恭介に背を向けたまま

上条「…」

さやか(止まってよ…。これじゃ何も言えないじゃんか…)

さやか「……」
QB「シャワーでも浴びておいで」さやか「な、何…?」
336 : ◆o1ehmgejyk []:2011/09/20(火) 06:17:03.33 ID:Z1bJNAI/0
恭介が松葉杖をついて近づいて来る
フェンスを掴む手に力が入った

さやか「ごめん、待って」

横からさやかの顔を覗く恭介
さやかは顔を背けた

上条「…さやか?」

さやか「待ってってば…」

上条「…」

恭介は空いている手をポケットに突っ込んでフェンスに寄りかかった
目を閉じて少しうつむいている

さやか(あー駄目だ…頭真っ白…。仁美のこととか契約のこととか理路整然と話せそうにない…)

さやか「あたし…」

上条「……」

さやか「実は、その…」

さやか(言うぞ、言うぞ…)

QB「シャワーでも浴びておいで」さやか「な、何…?」
337 : ◆o1ehmgejyk []:2011/09/20(火) 06:17:24.56 ID:Z1bJNAI/0
上条「うん…」

さやか「恭介のこと…」

声が震えた

さやか「好きだよ…」

恭介が目を開けた

上条「……」

さやか(言っちゃった…)

上条「…そっか」

さやか「…?」

上条「それで、あんなによくお見舞いに来てくれてたんだ」

さやか「…うん」

上条「ありがとうね。色々と」

さやか「……」
QB「シャワーでも浴びておいで」さやか「な、何…?」
347 : ◆o1ehmgejyk []:2011/09/20(火) 06:48:46.44 ID:Z1bJNAI/0
上条「…さやかの気持ちは、とっても嬉しい」

さやか「……」

上条「…だけど、それならもっと早く言ってくれるべきじゃないかな…」

さやか「な…なんで…?」

上条「…さやかは志筑さんから僕のことを相談されたんじゃないのか…?
   志筑さんの気持ちを知って、焦って抜け駆けするっていうのは、よくないと思うんだ…」

さやか「…!?」

上条「さやかのことは、友達としてこれからも変わらず大事にするよ
   でも…そういう裏を知ってしまうと、恋人になろうっていう気にはなれない…ごめんね」

さやか「違う…」

上条「本当にありがとう。好きって言ってくれて」

さやか「違う…!」

上条「本当、ごめん…。でも、さやかに感謝してるのは嘘じゃない…
   これからも、よろしくね」

泣き崩れるさやか
QB「シャワーでも浴びておいで」さやか「な、何…?」
350 : ◆o1ehmgejyk []:2011/09/20(火) 07:02:01.35 ID:Z1bJNAI/0
上条「…ごめんね…さやか」

さやか「違うって…! 抜け駆けとかじゃないよ…!」

さやかの肩に手をかける恭介

上条「さやか…気持ちはわかるし、こんなことでさやかを嫌いになったりしないから…」

さやか「仕方なかったんだってば…!」

恭介がさやかから目を逸らした

上条(やめよう…言い訳をしたくなるのは仕方ないことだ、さやかは悪くない…
   これ以上聞く耳を持つのは返ってかわいそうだ…そっとしておこう)

上条「ごめんね…先に戻るね…」

歩き出す恭介

さやかは歯を食いしばったまま、震える手で床を殴った
それから少しの間だけ泣くと、走って恭介を押しのけた

上条「!」

泣きながら校舎に駆け込んで行くさやか

上条「さやか…」
QB「シャワーでも浴びておいで」さやか「な、何…?」
351 : ◆o1ehmgejyk []:2011/09/20(火) 07:02:38.87 ID:Z1bJNAI/0
キュゥべえが別の棟から一部始終を見守っていた

QB(充分だ…。杏子?)

杏子(んー? もういいのか?)
杏子がホテルの窓からキュゥべえを見ている

QB(うん。本当にありがとう)

杏子(ったく、付き合ってらんねーっつーの)

杏子は変身を解いた

杏子「終わったってさ。ほら、釈放だ」

一緒にいた仁美の背中を押す

仁美「ご迷惑をおかけしましたわ…」

杏子「いや。こっちこそ、キュゥべえの奴が悪いことしたね。あたしからも謝るよ」

仁美「いいんですの。今回のことがなければ、私は大切なお友達を裏切ってしまうところでしたわ」

杏子「青春してんねぇ。…ま、さやかみたいになりたくなければ、
   あんたはキュゥべえの誘いには死んでも乗らないことだね」

深々とお辞儀をする仁美
QB「シャワーでも浴びておいで」さやか「な、何…?」
353 : ◆o1ehmgejyk []:2011/09/20(火) 07:02:59.84 ID:Z1bJNAI/0
仁美「決心はつきましたわ。私自身が後悔しない為にも、恭介君に伝えて参ります
   さやかさんが言えなかった、本当のことを」

杏子「ははは、あの坊やにはさやかなんかよりあんたのほうがよっぽど相応しいんじゃねーか」






――暗い表情で教室に戻って来るさやか

さやか「……」

まどか「さやかちゃん」

さやか「…ごめん。ちょっと疲れちゃった…」

まどか「大丈夫!? どうしたの、顔色悪いよ…保健室行こう?」

さやか「…ほっといて」

まどか「さやかちゃん…」

さやか「…なんであたしが、こんな目に…」

まどか「…もしかして、告白…」
QB「シャワーでも浴びておいで」さやか「な、何…?」
354 : ◆o1ehmgejyk []:2011/09/20(火) 07:03:20.01 ID:Z1bJNAI/0
冷たい目でまどかを睨むさやか

まどか「…!」

さやか「…あんたは振られて落ち込んでると思ってるんだろうけど、そんなもんじゃないから」

まどか「え…?」

さやか「…仁美の件、うまく説明できなくてさ…なんか勘違いされちゃって
    『友達を騙すような卑怯者と付き合うつもりはない』って…そう言われたんだよ」

まどか「そんな…駄目だよ…さやかちゃんはずるいことなんてしてないよ!
    今からでもきっと遅くないよ…上条君に、ちゃんと本当のこと伝えよう!?」

さやか「言える訳ないじゃん!」

まどか「…!」

さやか「あたしは魔法少女です、あなたの手を治しました、
    告白しないと仁美は死にますだから付き合ってくださいって言えっての?
    あんたは何にも知らない恭介にそんなこと言って、信じてくれると思う訳!?」

まどか「さやかちゃん…」

さやか「…もういいよ。どうでも。これで少なくとも仁美は助けられるんだ…」

まどか「こんなの…おかしい…絶対おかしいよ…!」
QB「シャワーでも浴びておいで」さやか「な、何…?」
355 : ◆o1ehmgejyk []:2011/09/20(火) 07:03:46.61 ID:Z1bJNAI/0
さやか「…帰るわ。早く仁美を探さないと。でなきゃ恭介に嫌われた意味なくなっちゃうから」

まどか「……」





――校門の前
キュゥべえが座っている

さやか「……」

QB「おかえり、さやか」

さやか「…来てたんだ」

QB「『見守っている』って言ったろう」

さやか「…仁美に会わせてよ。あたしは約束守ったよ」

QB「そのことなんだけど…僕はさやかに嘘をついたんだ…」

さやか「は…?」

QB「仁美のソウルジェムを見て」

さやか「な…なんでよ…」
QB「シャワーでも浴びておいで」さやか「な、何…?」
356 : ◆o1ehmgejyk []:2011/09/20(火) 07:04:08.33 ID:Z1bJNAI/0
鞄を開けるさやか

さやか「!?」

仁美のソウルジェムが、小さなセメントの欠片に摩り替わっていた

さやか「何よ、これ…!」

QB「ただの石ころだ。杏子の魔力で、形だけソウルジェムに変えていた
   …仁美とは契約してないよ」

さやか「…!」

QB「シャワーでも浴びておいで」さやか「な、何…?」
357 : ◆o1ehmgejyk []:2011/09/20(火) 07:04:30.16 ID:Z1bJNAI/0
――――――――
――昨夜の出来事
ホテル一室

QB「――このまま見過ごしたくないんだ…これではさやかが報われない…!」

杏子「だからって強硬手段かよ? それでさやかが満足すると思うか?」

QB「…間違いなく怒るだろうね。だけど、恭介の為に沢山尽くしてきたさやかが
   ここで追い出されるなんて、僕はどうしても許せないんだ…」

杏子「…あたしの時は、助けようともしなかったじゃないか」

QB「…!」

杏子「…まー今更文句言うつもりもないけどね
   あの頃のお前と今のお前じゃだいぶ違うみてーだし」

QB「…ごめん」

杏子「悪いけど、お断りだわ。だいたい無茶苦茶なんだよ、さやかの恋敵を誘拐しろだなんてさー
   さやかの奴もちっとはかわいそうだと思うけど…
   人に手伝ってもらわなきゃ告白できないってんなら、所詮その程度の気持ちなんだろ
   あいつのことだし、ほっといても何日かすりゃ忘れるんじゃねーの」

QB「…さやかは、真剣に悩んでる…」

杏子「お前もわかんない奴だね」
QB「シャワーでも浴びておいで」さやか「な、何…?」
358 : ◆o1ehmgejyk []:2011/09/20(火) 07:04:49.72 ID:Z1bJNAI/0
QB「…」

杏子「どうしてもって言うんならさ」

QB「うん…」

杏子「お前1人でやれば?」

QB「…!」

杏子「とにかくあたしは動かねーよ」

QB「…わかった。茶番に付き合わせようとしてごめん」





――その後、仁美の部屋

QB「――君にも最低限の素質はあるだろう。志筑仁美。君はなかなか興味深い
   僕と契約すれば、魂は取り出され、あの子のような過酷な運命を背負うことになる」

仁美「お願いですわ、こんなお話、やめてください!」

耳を塞いでうずくまる仁美
キュゥべえが目を光らせた
QB「シャワーでも浴びておいで」さやか「な、何…?」
359 : ◆o1ehmgejyk []:2011/09/20(火) 07:05:13.90 ID:Z1bJNAI/0
仁美「もう聞きたく――」

QB「『お願い』と言ったね。『話をやめろ』…それが君の願い事か」

仁美「!?」

QB「いいだろう。どんな奇跡も君の望むまま。容易い御用だ。君の祈りは遂げられる」

仁美「――!」

杏子(おい! キュゥべえ! 何やってんだよ!!)

唐突にテレパシーが送られて来た

QB(杏子…!)

杏子(テメェ、気でも触れたか? どういうつもりだ!)

QB(…時間を稼ぐ為に少し脅かそうとしただけだ)

杏子(本当か? とにかく出て来い。お前、イカレてるよ)

QB(……)

杏子(話がある。来ねーんならこっちから行くぞ)

QB(…わかった)
QB「シャワーでも浴びておいで」さやか「な、何…?」
360 : ◆o1ehmgejyk []:2011/09/20(火) 07:05:37.97 ID:Z1bJNAI/0
QB「志筑仁美…契約は中断する」

仁美「え…?」

QB「用事が済んだら戻って来る」

仁美「……」



――仁美の家の前
杏子がリンゴをかじっている

QB「…話って?」

杏子「…お前、さやかに何の思い入れがあるんだ?」

QB「…別に」

杏子「じゃあさっきのは何なんだよ。どっからどう見ても異常じゃねーかよ」

QB「訳があるんだ」

杏子「言ってみろよ」

QB「…それは言えない」
QB「シャワーでも浴びておいで」さやか「な、何…?」
370 : ◆o1ehmgejyk []:2011/09/20(火) 08:00:55.90 ID:Z1bJNAI/0
髪を掻き毟る杏子

杏子「ムカつく。あームカつく! はっきりしろよ!
   困った時はあたしに頼るくせに、事情を聞けばダンマリじゃねーか!」

QB「……」

杏子「…説明しろよ。納得のいくようにさ。お前がここまでするぐらいだから、
   何かあるのは想像ついてる。内容によっちゃあ協力しないでもない」

QB「…わかったよ」

杏子はリンゴを食べ終えて、小首をかしげながら腕を組んだ
仁美が窓から見下ろしている

QB「さやかのことは…もちろん好きだ。だけど、放っておけない理由はそれだけじゃない」

杏子「…?」

QB「ソウルジェムは君達の魂そのものだ。感情の状態によって、様々な変化が起こる…
   例えば、深い悲しみや絶望に落ちた時、ソウルジェムは急激に穢れる…」

杏子「…!」

QB「それは長い目で見れば一時的な落胆であっても、穢れの量が一度限界に達すると、
   ソウルジェムはその場で砕けてしまうんだよ…」

杏子「何だって…! それ、本当のことか…?」
QB「シャワーでも浴びておいで」さやか「な、何…?」
371 : ◆o1ehmgejyk []:2011/09/20(火) 08:05:34.54 ID:Z1bJNAI/0
QB「ああ、そうだ…。恭介が親友に取られるところを目の当たりにすれば、
   1つのことに集中しすぎるさやかのことだから…どうなってもおかしくはないよね」

杏子「……」

QB(嘘は言ってない…でも杏子は鋭いから…)

杏子「なんでそんな大事なこと早く言わねーんだよ!」

QB「魔法少女なら、穢れを溜め込まないように普段から心がけてる…
   だから、前もって言うまでもないだろうとたかをくくっていたんだ…」

杏子「ったく…お前は本当に肝心なところが抜けてるな」

QB「ごめん…」

QB(誤魔化し切れた…)

杏子「でもさー、こればっかりはしょうがねーだろ…
   あたしやあんたがいくらバックアップしてやったって、
   あんな立派な家の天才坊やが、こっちのお嬢様よりさやかを選ぶってのも考えらんねーし」

QB「それはわかってる…ただ、これまでの苦労や覚悟を全部タダで仁美に明け渡すよりは、
   真っ向から当たって砕けたほうが後悔は少なく済むんじゃないかな…
   そこまでしても駄目だったなら、僕ももう諦めるしかない」

杏子「…さやかは、死ぬってことか…?」
QB「シャワーでも浴びておいで」さやか「な、何…?」
372 : ◆o1ehmgejyk []:2011/09/20(火) 08:08:40.45 ID:Z1bJNAI/0
QB「…残念だけど。と言っても、打てる手をできる限り打っておけば、
   助かる可能性だってずっと上がるはずだ」

杏子「…かもな」

ガチャ

家の中からパジャマ姿の仁美が出て来た

杏子「!」

QB「仁美…」

仁美「あの…死神さん…」

杏子「…?」

QB「何だい…」

仁美「これ…夢じゃないんですのよね…? さやかさんは、本当に魔法使いなんですのよね…?」

QB「…さっき見せた光景は全て事実だ」

杏子「お前が仁美か?」

仁美「はい…。あなたは…?」
QB「シャワーでも浴びておいで」さやか「な、何…?」
373 : ◆o1ehmgejyk []:2011/09/20(火) 08:13:50.96 ID:Z1bJNAI/0
杏子「あたしは佐倉杏子。さやかと同じ、こいつと契約した魔法少女だ」

仁美「よろしければ…その、契約について詳しくお聞きしたいのですが…」

杏子「やめとけ。魔法少女に興味なんか持つもんじゃねー
   特にお前みたいな、裕福で何一つ不自由なく暮らしてる奴はね」

仁美「あなたはさやかさんのお友達ですの…?」

杏子「んー…まぁ、なんつーか。…否定するほど遠くもねーな。ああ、友達だ
   事情はだいたい知ってるよ。上条って坊やを取り合ってんだろ?」

仁美「……」


―――――――――

QB「僕達は仁美に経緯を説明した。僕の考えた狂言誘拐についても…」

さやか「…」
QB「シャワーでも浴びておいで」さやか「な、何…?」
374 : ◆o1ehmgejyk []:2011/09/20(火) 08:16:18.32 ID:Z1bJNAI/0
―――――――――

仁美「さやかさんは私の大切なお友達であるだけでなく、命を救ってくれた恩人ですの
   単に1日お待ちするだけでは、同じスタートラインに立てませんわ」

QB「君は、恭介がさやかの恋人になっても、さやかと友達でいられるかい?」

仁美「もちろんですわ。寂しくないと言えば嘘になりますけれど…
   恭介君自身がさやかさんを選ぶなら、それが私にとっても一番の幸せです…
   嫉妬の涙は一晩で終わり。心からお二人を祝福しますわ」

杏子(出来た子だな…)

仁美「さやかさんと対等である為にも、進んで協力しなくてはなりません
   そうでなくては、恩を仇で返すことになりますもの」

QB「…ありがとう」

杏子「ったく…どうなっても知らねーからな」
変身する杏子

杏子「キュゥべえ。さやかが嫌がるってのは承知してるんだろうな?」

QB「…ああ」

杏子「なら取っとけ」

ドコッ
QB「シャワーでも浴びておいで」さやか「な、何…?」
375 : ◆o1ehmgejyk []:2011/09/20(火) 08:20:43.16 ID:Z1bJNAI/0
杏子は不意にキュゥべえの腹を蹴り飛ばした

QB「!!」

宙に浮いて背中から落ちるキュゥべえ

QB「うぅ…!」

仁美「死神さん!」

杏子「そいつの名前は『キュゥべえ』だ。死神じゃねーよ」

仁美「…キュゥべえさん。大丈夫ですか…?」

QB「平、気…何ともない…」

むせ返りながら立ち上がる
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