- 僕「そして僕は生まれ変わった」
1 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2011/02/06(日) 02:59:34.49 ID:EO7g49HD0 -
中学時代。 僕はいじられキャラ。 自虐ネタで笑いをとる。 大勢の中では人気者。 2人っきりだと避けられる。 このジレンマから抜け出したかった。
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- 僕「そして僕は生まれ変わった」
4 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2011/02/06(日) 03:01:14.36 ID:EO7g49HD0 -
僕には好きな人がいた。 ◆陸上部 ◆顔は普通 ◆黒いブラ 特筆すべきは声。“一聞惚れ”。 人と話すのは苦手だけど、 頑張ってみることにした。
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- 僕「そして僕は生まれ変わった」
5 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2011/02/06(日) 03:02:48.81 ID:EO7g49HD0 -
彼女とはそこそこ仲良くなれた。 楽しく会話もできるようになった……けど、 2人っきりだと続かない。 会話が途切れて脳内からっぽ ((((;゜Д゜)))ア..ア...ア 沈黙パニック。何を話せば喜ぶの……? なんとも気まずい雰囲気。 このままだと彼女は去ってしまう。 なんとしても引き止めなきゃ!!
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- 僕「そして僕は生まれ変わった」
7 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2011/02/06(日) 03:04:17.33 ID:EO7g49HD0 -
僕は話題作りのため、ネタを捏造した。 「オ、オレ1000円払って9000円お釣りもらったことあるんだw」 「へぇ、そうなんだ……ちょっとごめんね」ガタン 彼女は楽しそうな別のグループへ行った。 大失敗。嘘つくとか最低。内容も最低。 何でいつもこうなるんだよ……。 彼女とはそこそこ仲良くはなれた。 3人以上いれば彼女はそばにいてくれる……けど、 2人っきりだと避けられる。
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- 僕「そして僕は生まれ変わった」
8 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2011/02/06(日) 03:05:40.00 ID:EO7g49HD0 -
ある日。 僕の恋が友達にバレた。 バレたというかバラした。 友達が“つまらなそう”だったから 友達を引き止めるために イジられるのを覚悟で 僕は自分の恋をネタにした。 孤独だけは嫌だから……。 友達は新鮮なネタに喜んだ。 ……友達って何なんだ。
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- 僕「そして僕は生まれ変わった」
9 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2011/02/06(日) 03:07:52.65 ID:EO7g49HD0 -
次の日、背黒板には ≪〇〇は△△が好き≫ みたいな事が書かれていた。 友達は僕の反応を楽しみにしてる。 背黒板とはいえ、サイテーな奴ら。 だが僕の仕事は笑いをとること。 友達を退屈させてはいけない。 黒板消しで“それ”を消すなんて論外。
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- 僕「そして僕は生まれ変わった」
10 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2011/02/06(日) 03:09:06.89 ID:EO7g49HD0 -
「うぉおおおおおいwww」 ……と、大声でつっこむ。 クラスのみんなが背黒板に振り向く。 その中には“あの子”もいた。 友達は手を叩いて笑う。 「ハハッwww 大声出したらバレるってwww」 馬鹿。これでいいんだ。 僕はピエロとしての仕事をしただけ。 僕は身を削ってでも笑いをとるんだ。 明るく振舞えばそれは“イジリ”。 俯いてしまえばそれは“イジメ”。 “いじめられっ子”にはなりたくなかった。
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- 僕「そして僕は生まれ変わった」
11 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2011/02/06(日) 03:10:37.57 ID:EO7g49HD0 -
さぁ、自虐ネタを加速しようか。 僕は自分の不幸さをネタに置き換え、 次々と新しいテイストで表現していく。 男子全員、愉快そうに笑っていた。 笑いをとると気持ちいい。 泣きたい気持ちが中和され、 「これでいいんだ」って思えてくる。 一方、“あの子”は耳を赤くして見て見ぬふり。 多分、僕のこと嫌いになったと思う。 僕は恋愛を捨て、友情をとったのだ。
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- 僕「そして僕は生まれ変わった」
12 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2011/02/06(日) 03:11:38.25 ID:EO7g49HD0 -
恋愛自虐ネタのバイタリティは強い。 おかげでハブられることなく、 “卒業式”を迎えることができた。 好きな子を傷つけてでも集団に縋りたかった。 それは孤独が嫌だっただけ。 だから奴らは友達でも何でもない。 僕は高校で“真の友達”を見つけると誓った。 ……さて、“最後の仕事”に取り掛かろうか。 悪夢の中学生活から抜け出すために。 ◆要求されたミッション◆ “あの子”に告れ。 尚、告白時はケータイを通話状態にすること。
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- 僕「そして僕は生まれ変わった」
13 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2011/02/06(日) 03:13:16.05 ID:EO7g49HD0 -
僕はまだ“あの子”のことが好きだった。 だから告白するのは別に構わない…… でもさ、 ケータイの件は納得いかないだろ。 『告白した証明』のためらしいけど、 何でお前らに証明しなきゃならねんだよ。 ……でも、僕はピエロ。 客のリクエストにはお応えするよ。 客に見捨てられたくないから。 孤独なステージは嫌だから。
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- 僕「そして僕は生まれ変わった」
14 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2011/02/06(日) 03:14:46.50 ID:EO7g49HD0 -
携帯電話のマイク感度をMAXにして、 僕は“あの子”に声を掛けた。 「ちょっと話いい?」 最後のピエロ・オン・ステージは緊張するぜ。 “あの子”に告白というだけで緊張するのに……。 心臓が爆発しそうで息苦しい。 この場合の“最高のパフォーマンス”とは 【斬新な告白】⇒【大成功】⇒【友達とのハイタッチ】 のシナリオと僕は確信していた。 僕的にも、ピエロ的にも。
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- 僕「そして僕は生まれ変わった」
15 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2011/02/06(日) 03:16:16.56 ID:EO7g49HD0 -
「3年間ずっと好きだった。オレと付き合って欲しい」 あぁ……なんてこったい。 僕は極めて“普通”の告白をしてしまった。 あまりの緊張にピエロを演じる余裕がなかったのだ。 そして彼女は冷静に答える。 「ごめん」 マジで3文字。僕はショックを隠せず口走った。 「あ…やっぱそうだよねwww 実はコレって命令なんだwww」 あの瞬間、僕は地球上で最もカッコ悪い男だったに違いない。 彼女は何も言わず、その場を後にした。
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- 僕「そして僕は生まれ変わった」
16 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2011/02/06(日) 03:18:03.77 ID:EO7g49HD0 -
ふと、自分の立場を思い出す。 ピエロとしてステージに立っていることを。 僕は様々な感情をこらえて、 「やべぇふられたwwww」 と携帯電話のマイクに叫ぶ。 … … … … …。 携帯のディスプレイには止まった通話時間。 ピエロのスベりっぷりに客は帰ったのだ。 会場には化粧の剥がれたピエロが一人だけ。 その正体は、唯の仮性コミュ障害者だった。 恐れていた孤独が一気に押し寄せる。 僕は目を潤わせながら、早歩きで帰宅した。
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- 僕「そして僕は生まれ変わった」
17 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2011/02/06(日) 03:19:37.80 ID:EO7g49HD0 -
家に到着。叫んだ。号泣した。 奴らからメールが届いていた。 「ドンマイ(^_^;)」 「フラれたからって俺らのせいにすんなよなw」 「残念、次は期待してるぞ!」 「まあ人生辛いこともあるさ」 ↑こんな感じのメール。 携帯投げつけて、壁殴って、果てるまで泣き続けた。 集団と孤独、どちらが正解だったのかな。 最初から孤独を選んどけば幸せだったのかな。
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18 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2011/02/06(日) 03:21:25.34 ID:EO7g49HD0 -
高校時代。 知ってる奴のいない高校。 ちょっと遠めの工業高校。 ここから新しい人生が始まるんだ。 でも…僕は気づいていた。 知ってる奴がいないから、 自分から友達を作らなきゃならんわけで。 つまりコミュニケーション能力がうんたらで。 だけど僕は相変わらずの、 人と話すのが嫌い、その上孤独も嫌いという、ワガママ人間だった。
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19 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2011/02/06(日) 03:23:00.22 ID:EO7g49HD0 -
僕のクラスには大きく分けて2種類の人間がいた。 ≪オタク≫ or ≪リア充≫ それぞれがグループを作り、楽しそうだった。 で、僕はどちらに分類されるかというと、 ≪どちらでもなかった≫ アニメは大好きだけど、リアルでオタ扱いはされたくない。 リア充の会話にはついていけるけど、受動的&愛想笑い。 非常に中途半端な人間。
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- 僕「そして僕は生まれ変わった」
20 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2011/02/06(日) 03:24:51.86 ID:EO7g49HD0 -
僕は“リア充”と友達になろうとした。 しかし他人以上、友達未満の関係が延々と続く。 どうしても友達になって欲しいから、 自宅で明日何を話すか考えたりしてた。 でもやっぱり 2人っきりだと続かない。 2人っきりだと避けられる。 日々ネガティブが悪化するばかり。 やがて2人っきり以外でも発言力を失って、 集団に金魚の糞のようにくっついていく。 リア充達にとって僕の存在はウンコ以下。 靴紐を結び直す間、誰も僕を待ってくれない。 そして限界は早くも訪れた。 Ready。僕は“孤独”を選んだ。
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- 僕「そして僕は生まれ変わった」
21 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2011/02/06(日) 03:28:43.94 ID:EO7g49HD0 -
リア充A「メシ食いに行こうぜー」 リア充B「おう。今日の定食なんだろなw」 リア充C「やっべぇ。金忘れたッ」 リア充D「しゃーねぇな。貸してやんよ――」 僕「…」 この日、僕は集団に付いて行かなかった。 しかし奴らは至っていつも通りだった。 僕なんか居ても居なくても同じだから。 寧ろいない方が楽しめるんじゃない? 僕は一人で昼食をとった。 初めて自分のペースで食べた。 そして“便所飯”の素晴らしさに感動する。
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- 僕「そして僕は生まれ変わった」
22 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2011/02/06(日) 03:31:18.32 ID:EO7g49HD0 -
僕は学校で全く喋らなくなっていた。 一人最高、気楽すぎワロタ。 でも休み時間になると苦しくなる。 リア充の雑談は耳障りで吐きそうだしwww オタどもの会話もニワカで笑い方キメェしwww 一方、僕は寝たり、寝る格好したりする疲労者っぷり。 5分前には教科書とノートを机の上に用意する優等生っぷり。 毎回ロッカーを整理整頓する几帳面っぷり。 必ずトイレに行って用を足す神経質っぷり。 戻ると僕の席にリア充が座ってたりする大人気っぷり。 自分が座れなくても待っててあげる超寛容っぷり。 そして授業が始まると苦しみは和らぐんだ。 別に寂しくなんかないよ。
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- 僕「そして僕は生まれ変わった」
23 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2011/02/06(日) 03:33:28.31 ID:EO7g49HD0 -
「2人組作ってください」←「死ね」 「隣の人と相談してください」←「死ね」 「リア充なりてー。リア充爆発しろ」←「死ね」 「研修旅行の班は自由で構いません」←「死ね」 「友達とか彼女、家に連れてきていいのよ」←「死ね」 こんな世界嫌だ。 僕が何をしたっていうんだ。 コミュ障とかいうなら生活保護よこせ。 僕が“生(せい)”を感じる時間は≪ゴールデンタイム≫、 夜9時から夜中2時までの“アニメ”、“ネット”の時間だけだ。
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- 僕「そして僕は生まれ変わった」
24 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2011/02/06(日) 03:35:53.31 ID:EO7g49HD0 -
アニメは現実逃避にうってつけ。 アニメの世界は非現実的で興味深く、 目と耳さえあれば誰でも行けるのだ。 口は要らないから喋らなくても生きていける。 そして何よりこの世界では僕が絶対的な神。 電源を切るか切らないかは僕次第。 キャラは常に僕の掌上で生活している。 だから孤独なんてものも感じない。 インターネットも同じである。 用途を限れば口の要らない、目と手だけの世界。 だからコミュニケートも苦ではない。 この2つの世界を徘徊する≪ゴールデンタイム≫。 これがないと僕は死ぬ。
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- 僕「そして僕は生まれ変わった」
25 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2011/02/06(日) 03:38:11.08 ID:EO7g49HD0 -
≪ゴールデンタイム≫が5時間に対して、 ≪リアルタイム≫は12時間もある。 学校での孤独感と嘔吐感は日々増すばかりで、 僕は現実に殺されてしまいそうだった。 そんなある日のこと。 VIPが僕を救ってくれた。 とあるスレにて、 『妄想楽し過ぎ』 …と。
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- 僕「そして僕は生まれ変わった」
27 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2011/02/06(日) 03:41:01.74 ID:EO7g49HD0 -
僕は17才のイケメン高校2年生。不定期通学。 学校生活を味わってみたいという理由で変則編入。 教会育ち。過去にトラウマ有り。 Google、Facebook他の創設者。 数えきれないほどの特許をもつ。 世界一の歌唱力。演奏力。絵画力。料理腕。プログラマー。etc。 数学における予想問題を次々とQ.E.D.。 長者番付、2位に1700億ドル差。 00年以降の神曲と呼ばれるアニソンの6割を作詞作曲。 また、自身もパンクバンドを組んでおり空前絶後の大ヒット。 特技は声帯完全模写。コピーバンドも結成。声優の代替役も。 16リンガル。 如何なる場にも完璧に対応する笑いのセンス。 隔月刊雑誌にて漫画を連載中。空前絶後。 莫大な資産の使い道は、 バーチャル世界創世の研究。
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- 僕「そして僕は生まれ変わった」
28 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2011/02/06(日) 03:43:25.16 ID:EO7g49HD0 -
翌日から電車通学中、授業中、休み時間…… ほとんどの≪リアルタイム≫で妄想した。 妄想の世界は想像力だけのロジックワールド。 目を閉じるだけで凄まじい設定の自分がいる。 常に誰かが自分を求めている世界。 皆々僕を尊敬する世界。 でも、0℃の世界。 目を開けると必ず冷たい涙がこぼれてくる。 だけど妄想はやめない。 やめたら死ぬ。
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- 僕「そして僕は生まれ変わった」
30 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2011/02/06(日) 03:46:09.82 ID:EO7g49HD0 -
大学時代。 僕は隣県の工業大学に進学した。 もちろん妄想癖は続いていた。 言うまでもなく友達は諦めている。 アニメ、ネット、音楽鑑賞で十分。 “孤独”も現代文明の前じゃ怖くねーぜw そう、怖くない……はずだった。 だが突然あの日、何かが僕を襲ったのだ。 そして僕の日常は劇的に変化する。
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- 僕「そして僕は生まれ変わった」
31 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2011/02/06(日) 03:49:03.24 ID:EO7g49HD0 -
◆大学2年。2010年12月17日(金)◆ その日は恐ろしい夢から始まった。 『声が出なくなる夢』 まあこんな生活してたら そんな夢をみてもおかしくはないけれど。 苦しいけど誰にも伝えられず、 絶望の果てに声を失い、 結局は殺される。 そんな夢をみた。
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- 僕「そして僕は生まれ変わった」
32 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2011/02/06(日) 03:51:36.73 ID:EO7g49HD0 -
僕は仄暗い蝋燭部屋で仰向けに横たわっていた。 『“顎”“舌”“喉”以外』の神経は麻痺しており、死体のごとく動けない。 そして周囲には何本ものクリスマスツリーが飾ってあった。 どこからか、「jingle bell. jingle bell. jingle bell...」と複数の囁きが聞こえてくる。 すると突然、ツリーが次々と光り、目の死んだ異国人達がうっすら現れた。 その正体は異常な雰囲気を漂わせる、イカれたサンタクロース集団だった。 彼らはボソボソと、「jingle bell. jingle bell...」と唱えながら、 僕の眼球や鼻、陰茎、指、内蔵、腎臓をえグリ削ぎ、絶え間なく僕に喰わせてくる。 『“顎”“舌”“喉”以外』は痛みを感じないので、ショック死することもできない。 僕は助けを乞うために、ひたすら自分を味わい、喰らい続けるしかない。 喰い尽くせば、口が解放され、声を出せるから……そして僕は完食した。 だが叫ぼうと“喉”を開いたそのとき、奴らは僕の“のどちんこ”をブチ抜いた。 「ガァァアアアアアアアアアアアアアッッッッ……!!」 僕は“声”を失った。……「jingle bell」とはそういう意味だった。 サンタ達は終焉のベルに満足し、僕の心臓を引きちぎり靴下に放り込んだ。
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- 僕「そして僕は生まれ変わった」
33 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2011/02/06(日) 03:53:17.61 ID:EO7g49HD0 -
「ウァァアアアアアアアアアアッッ……!!」 僕は目を覚ました。 そして次の瞬間、“金縛り”に襲われた。 冷や汗が止まらない…。怖い……。 すかさず目を閉じ、「助けて」と声をあげようとする。 しかし声にはならず、すかさず口も閉じた。 ああ……金縛りってやつはどうして 誰かががそこにいるような気がするんだろう。 ソイツはサンタクロースかもしれない。 目を開けたら殺されるかもしれない。 口を開けたら喰わされるかもしれない。 早く、朝になってくれ……。
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- 僕「そして僕は生まれ変わった」
34 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2011/02/06(日) 03:56:24.48 ID:EO7g49HD0 -
■12月17日(金)AM7:10 - 起床■ あぁ…喉がカラカラだ。 気分も悪い。 食欲なんてあるわけない。 今日は講義をサボろう。 でも親には大学へ行く素振りを見せないとダメ。 つまりは外出必須なのだ。 どこへ行こうか。 僕は水をがぶ飲みし、家を出た。 母さんはいつも通り僕を見送る。 毎日、毎日、うぜぇんだよ。
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- 僕「そして僕は生まれ変わった」
35 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2011/02/06(日) 03:59:57.47 ID:EO7g49HD0 -
本日の天気、雪。 とりあえず電車に乗ることにする。 寝不足で、一刻も早く寝たいからだ。 電車ほど快適なベッドルームはないからな。 そこそこ田舎なので通勤ラッシュの心配もないし。 ある駅を越えると、もはや貸切状態になるし。 ……にしても、今日は一段と寒いなぁ。 付加装備に、「ニット」「ヘッドホン」「マフラー」「ダウン」「グローブ」。 モコモコすぎてダサい? まぁオシャレなんてどうでもいいけどね。 とにかく防寒対策は完璧。どこか遠くにでも行こうか。 10分程で駅に到着。 今日はやけに人が多いな。
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- 僕「そして僕は生まれ変わった」
36 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2011/02/06(日) 04:02:25.51 ID:EO7g49HD0 -
「本日は電車が遅れてしまい、誠にご迷惑をお掛けしております」 マジかよ。電車で座れなかったらどうすんだ? 電光掲示板を見上げると、次の電車は30分後だった。 遅れすぎだろ……。 寒さで眠気は覚め、同時に腹が減ってきた。 コンビニで惣菜パンと缶コーヒーを購入。 空腹を満たし、音楽を聴いて待っていると 電車がノロノロとやってきた。
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- 僕「そして僕は生まれ変わった」
37 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2011/02/06(日) 04:04:37.78 ID:EO7g49HD0 -
ガタンゴトン…ガタンゴトン。 車内は混んでいて、座れなかった。 人が多いのは遅延が原因だろう。 電車も止まりがち運転でイライラするぜ。 僕は揺られながらケータイを弄っていた。 なんとなく受信メールBOXを開く。 メルマガや広告が9割をしめ、 残りの1割が母親という、九死に一生、後遺症って感じ。 ついでに送信メールBOXも開く。 高校の頃のメールが余裕で残ってる。 返信のなかったメール達、疑問形で終了もザラ。
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- 咲「パチンコって楽しいよね」
19 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2011/02/06(日) 04:05:30.37 ID:EO7g49HD0 - 紫煙
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- 僕「そして僕は生まれ変わった」
39 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2011/02/06(日) 04:07:00.31 ID:EO7g49HD0 -
衝動的に全メールを削除した。 このままどこか遠くへ行きたい。 雪の所為もあり、そんな気分が一層高まる。 今朝の夢は何だったんだろう? 僕から僕への潜在的メッセージだったのかな。 『声が出なくなり』、『助けを乞えず』、『孤独死する』。 ……僕にどうしろと。 現実で僕に友達を作れってか? 中学、高校でそれは“不正解”って結論出たろ。 人と接してコミュニケーションとれってか? もう既に“真性”コミュ障害者だっつーの。 さもないとサンタが“声”を狩りに来るってか? 構わねーよ。いらねんだよ声なんてよ。 僕は今後一切、助けなんて乞わない。 自分が潜在的に“何”を望んでようが、 孤独は僕の背負っていく運命なんだ……。
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- 僕「そして僕は生まれ変わった」
40 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2011/02/06(日) 04:09:43.31 ID:EO7g49HD0 -
「○○。〇〇です。お降りの方は足元に気をつけて――」 いつもこの駅から電車はほぼ貸切になる。 そして今日もリーマン達がゾロゾロと降車していった。 僕は空いた席に座り、外を眺める。 雪って何でこんなに綺麗なんだろ? 汚れを知らない純白、飛び込んだら洗われるかな? そんなこと考えてる自分に少し酔ったりする。 アニソンを『R-09HR』で再生し、『Edition8』で聴きながら。 僕は大学に入ってから音楽鑑賞の“環境”に興味を持った。 オーディオビギナーとして大学生にしては頑張ってる方だと思うよ♪ プレーヤーとヘッドホン、合わせて20万したんだぜw ※『R-09HR』:プレーヤー(高音質レコーダー) ※『Edition8』:ヘッドホン
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- 僕「そして僕は生まれ変わった」
41 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2011/02/06(日) 04:11:40.16 ID:EO7g49HD0 -
今聴いてるアルバムは『CLANNAD ORIGINAL SOUNDTRACK』。 先日クリアした『CLANNAD』のサントラだ。 もう涙がボロボロ、感動したよっ……!! 他者とのコミュニケーションを嫌っていた主人公が、 ハンデにも負けず真っ直ぐに生きる女の子に出会い、 次第に影響され、共に歩み、変わっていく過程で 家族や友達の大切さに気づき、実感する、そんな作品。 伝わりすぎて泣いた。 『CLANNADは人生』 僕だって分かってるよ。 本来、人生はそうあるべきなんだ。 僕だって本当は……。
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- 僕「そして僕は生まれ変わった」
42 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2011/02/06(日) 04:16:04.75 ID:EO7g49HD0 -
僕はそっと目を閉じた。 次に目を覚ます時が電車を降りる時。 例え定期範囲外でも、その駅で降りることにしよう。 『何かを見つけるために』 J-POPによくある抽象的代名詞だな。 正直、ちょっとカッコつけたいだけ……でも、 『孤独が運命』って決め込んでるけど、 心のどこかでまだ諦めてないのだろう。 自分を変える“キッカケ”探しの旅。 行き先はダーツに委ねる。 ……僕は目を閉じた。
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- おまえらの持病晒していけ
56 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2011/02/06(日) 04:17:51.51 ID:EO7g49HD0 - 漏斗胸
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- 僕「そして僕は生まれ変わった」
44 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2011/02/06(日) 04:20:41.62 ID:EO7g49HD0 -
ムニャムニャ。 目を覚ますと、窓外には知らない風景が広がっていた。 『まもなく△△駅です』、という電光表示。 聞いたこともない駅名だな。 定期範囲外なのは間違いないみたいだ。 ……さぁ、僕の旅は始まった。 「△△。△△です。お降りの方は足元に気をつけて――」 只今9時40分。雪は既に止んでいる。 降車すると、冷たい強風が頬を突き刺した。 風に負け、顔をしからめ、目を細めると、 同時に自分以外にも降車客が“一人”いることに気づく。 そして僕は風の隙間に、 “一人の少女”を見たんだ。
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- 僕「そして僕は生まれ変わった」
45 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2011/02/06(日) 04:22:57.92 ID:EO7g49HD0 -
隣の車両から降りてきた彼女は、 その小さな体で風を受け止めていた。 セミロングの黒髪が靡いている様は まさに理想を描いたような美しさだった。 年は僕より2、3年下だろうか。 風が通り過ぎ、彼女の顔が浮かんでくると 僕の中で時間が止まった。 “一目惚れ”は初めてだった。 一般的に大絶賛される程の顔ではないと思う。 少なくとも“ミス日本”における“美しさ”からは程遠い。 飾っていない素朴で自然な美しさ。 整った顔立ち、その愛くるしい童顔からは どこか田舎っぽさ、懐かしさを感じる。 僕にとっては間違いなく、 この世で最も美しく、可愛い女の子だった。
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- 僕「そして僕は生まれ変わった」
46 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2011/02/06(日) 04:24:59.50 ID:EO7g49HD0 -
音楽を止めろ。 冷静に考えろ。 こんな気持ちは何年ぶりだ? ≪リアルタイム≫で心臓の昂りを感じたのは。 彼女は2次元でなく3次元。 未知なる奥行きがあるんだぞ? 何を考える必要があるんだ!? 今後一切、助けを乞わないって誓ったろ!? いつも通り人と目を合わせるな。 傷つかないよう、隅っこを歩け。 避けられるぐらいなら、避けるのが僕じゃないか。 なのに何でこんなに迷うんだよ……。 『人が迷うのは後悔したくないからである』 そんなのは知ってるって!
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- 僕「そして僕は生まれ変わった」
47 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2011/02/06(日) 04:28:21.23 ID:EO7g49HD0 -
もしかして、 この僕が女の子に話しかける? コミュ障害者が 異性と2人っきりで? できるわけないだろ。 会話が途切れて涙目オチだ。 ……でも、僕は何しにココへ来たんだ? わざわざ遠くまで来た理由は? まだ知らない何かを探しに来たんだろ? その“手掛かり”はそこにあるんじゃないのか!? 僕は自分を変えに来たんだろッ!!
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- 刺激的なパンティー作ったwwwwwwwwwwwwwwwwwwww
294 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2011/02/06(日) 04:30:59.54 ID:EO7g49HD0 - ワロタwww
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- 僕「そして僕は生まれ変わった」
48 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2011/02/06(日) 04:32:24.33 ID:EO7g49HD0 -
深呼吸して、何度も咳払いをする。 「あーあーあ…」 良かった、声はまだ出る。 僕は彼女に声をかける! タイトルを付けるなら、『はじめてのなんぱ』! 孤独が嫌なのは変わってない! たとえそれが運命なら抗えばいい!! 神を創った人間には、神に逆らう権利があるんだ!! 「あの…!!」
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- 僕「そして僕は生まれ変わった」
49 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2011/02/06(日) 04:37:33.11 ID:EO7g49HD0 -
女「!」ポカーン だ、大丈夫。 今の僕なら言える! 僕「ひ、、一目惚れしましたっ!!」 女「……」 僕「僕と……友達になってくださいッ!!」 女「……」 僕「……」 女「……す、すみません」 彼女は動揺したせいか、 トーンのずれた声で僕に謝った。 中学のフラれた記憶が蘇る。 なんともいえない虚無感が僕を包み込む。 その正体は生きることへの絶望。 弛緩した涙腺からは涙が零れた。
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- 僕「そして僕は生まれ変わった」
50 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2011/02/06(日) 04:41:27.65 ID:EO7g49HD0 -
女「私、耳が聴こえないんです」 え…。 彼女は、≪私は 聴覚障害者 です≫ と大きく記されたカードを僕に提示する。 女「お役に立てなくてすみません……」 やはり少し音程の外れた声。 僕の覚悟と勇気は、届いてすらいなかった? まさか、そんな――。 女「失礼します……」タタタ ちょっと待ってよ。 こんな形で失敗するのか? 答えを聞くことすらできないのか? 女(……何であの人、泣いてたんだろう?) 女(ヘッドホンにニット帽ってめずらしい人……)
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- 今日徹夜する奴お話ししようぜ
815 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2011/02/06(日) 04:43:51.55 ID:EO7g49HD0 - 眠たいよぉ
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- 僕「そして僕は生まれ変わった」
52 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2011/02/06(日) 04:46:27.13 ID:EO7g49HD0 -
「ま……待って…!!」 僕は呼びとめようと叫んだ。 しかし、彼女はどんどん遠ざかる。 聞こえてないのなら当たり前だ。 僕は走って追いかけようと踏み出した。 しかし、“ストーカー”という概念が頭を横切る。 足が急に重くなり、やがて止まった。 嫌われるくらいなら、僕は追いかけない。 ……でも、それじゃ昨日までの僕と同じだ。 僕は自分を変えに来たんだろッ! 彼女が遠ざかるにつれ、後悔が近づいてくる。 再び足を動かすと、彼女しか見えなくなった。 走れッ!!
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- 僕「そして僕は生まれ変わった」
54 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2011/02/06(日) 04:52:05.58 ID:EO7g49HD0 -
僕は彼女の肩をポンと叩いた。 女「!」 僕はケータイを取り出して、 文章を打ちこみ、それを彼女に手渡す。 彼女が怪訝そうに受け取ると、 僕はその場から離れた。逃げた。 もう耐えられなかったのだ。 だって女の子を走って追いかけ、 せき止めるという積極的行動に加え、 いきなり自分のケータイを相手に渡すという、 相手にとっては理解不能な出来事だからだ。 ……でも、そんなの分かりきってただろ。 その上で行動に移したんだ。自分を変えるために。 なのに僕はギリギリで逃げた。どこまでもヘタレ……。 改札を出ようとすると、“ピーッ”、と警告音が鳴り響く。 同時に僕を逃がすまいと、2枚の板が僕をせき止めた。
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- 僕「そして僕は生まれ変わった」
55 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2011/02/06(日) 04:55:34.98 ID:EO7g49HD0 -
(何で私にケータイなんか渡したんだろ……?) (これ私の落し物じゃないよ?) (誰かと勘違いしてるのかな?) (でも電車からは私と“ニットホン”さんの2人ぐらいしか降りてないし……) (それより早く学校に行かないと) (えーっと…今日は大雪警報のせいで10時スタートだから……) (あと15分か……ん?) ≪ブー、ブー、ブー、ブー≫ ケータイのバイブレーションが突然鳴り響く。 “ニットホン”さんを見ると、改札の方で慌てふためいていた。 ケータイのディスプレイには、 『From:自分 件名:僕の告白、聞いてください!!』
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