- 唯「それでも、私の妹なんだ」
85 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2010/10/28(木) 19:58:01.69 ID:z1NbjpKpO -
唯「だといいんだけど……」 頭を撫でられる優しい感覚に、私は目を閉じた。 唯「……うん、そうかな」 私は考えるのをやめて、笑う。 和「そろそろ昼休み、終わるわね」 唯「席戻る?」 和「ええ。じゃ」 そんな私の変化を見取ったのか、和ちゃんは軽く手を振り、 自分の席にすたすた歩いていく。 大丈夫だ。 不安がないと言えば嘘になるけれど、 私が私たちの絆を信じられなくてどうするんだ。 頬を叩いて、私は5限目の支度を始める。
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- 唯「それでも、私の妹なんだ」
87 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2010/10/28(木) 20:00:16.23 ID:z1NbjpKpO -
唯「……っ」 机の引き出しの中に手を入れて、私は奥歯を軋ませた。 がさりと指先に当たる感触は、くしゃくしゃにされたメモ用紙だった。 私はそれを握りつぶしてポケットに入れると、黙って教科書を出す。 ふと、また私たちの今後が気にかかる。 唯「……変わっちゃったのかな」 私たちは。 和ちゃんがずっと見守ってきた平沢姉妹ではなくなってしまったのかもしれない。 小さなメモ用紙によって、制服のポケットが膨らんでいる。 それと同じくらいの大きさで、 私はそれまで抱いたことのない気持ちを、心の中でふくらませていた。 授業が始まるまで、私はなんとなく、 憂がいまどんな顔をしているのかと想像を巡らせていた。
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- 唯「それでも、私の妹なんだ」
89 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2010/10/28(木) 20:03:32.11 ID:z1NbjpKpO -
―――― 放課後、和ちゃんは生徒会があったから、 私は一人でまっすぐ帰ることにした。 一人で学校から帰るのは久しぶりだった。 いつも軽音部のみんなが一緒だったし、みんな用事で部活のない日も、大抵は和ちゃんがついていた。 孤独はすごく懐かしい。 そう思ったけれど、一週間ほど前の夜も十分孤独だった。 憂が襲われた夜。 憂が人を殺した夜だ。 唯「……」 私は暖かくも寒くもない帰路を行く。 遠回りをして、公園の前は通らないようにした。 以前うっかり通ってしまった時、近所のおばさん達が声をひそめたからだった。
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- 唯「それでも、私の妹なんだ」
90 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2010/10/28(木) 20:06:21.67 ID:z1NbjpKpO -
4時前に家に着く。 朝、きちんと施錠して出ていったはずだが、鍵はかかっていない。 憂の卒業式はもう終わっていて、憂は一日中部屋に籠っている。 唯「ういめ……」 私は階段をすとすと上がり、自室にカバンを放り投げる。 隣の部屋で動きがあったが、構わずドアを開けた。 唯「ういー、お姉ちゃんにただいまは無いの?」 憂は髪をほどいたままで床に転がり落ちていた。 今の今まで寝ていたらしい。 憂「気付かなかったよ……びっくりしたぁ」 暢気に笑う妹に、私はさらに近づく。 唯「憂、寝てたの?」 私は両手を後ろに回し、憂の前でしゃがんだ。
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- 唯「それでも、私の妹なんだ」
91 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2010/10/28(木) 20:10:19.42 ID:z1NbjpKpO -
めくれた布団を見れば訊くまでもないことだったけれど、 私はあえて憂に尋ねてみた。 憂「うん……家に一人でいても、眠くなっちゃうだけなんだ。買い物に出たりもしたけど……」 寝ぼけ眼をこすりながら、憂は答える。 唯「だったらっ」 私は左手で憂の首を掴んだ。 私の左手が勝手に、そういうように動いただけかもしれない。 どっちでもよかった。 憂「う、ぎぅ……!」 ギー太のネックを持っていた手が、今は憂のネックをきつく絞めている。 憂は無様に床に倒れ、身悶えて私の手をふりほどこうとする。 私は憂の上に馬乗りになり、腕に体重をかけた。
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- 唯「それでも、私の妹なんだ」
93 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2010/10/28(木) 20:13:23.34 ID:z1NbjpKpO -
憂「あ、アアぁぁ……!!」 その姿がいつかの暴漢と重なったらしい。 憂の瞳から輝きが消え、涙があふれ始める。 首を絞められながら必死でひり出している悲鳴を聞いて、私は力を抜く。 同時、振り上げられた憂の膝が、私の背中を蹴りつけた。 憂「ハ、はぁ……ゲホッ、ゲホ」 私は咽せ込む憂のそばに腰を据え、憂が落ち着くのを待った。 やがて深い息を吐いてから、涙をこぼしたまま憂は言った。 憂「お姉ちゃん、どうして……」 唯「シミュレーションだよ」 憂「……シミュレーション?」 ゆっくり体を起こし、憂はベッドに頭をのっける。 唯「そう。私たちの家に来たのが私じゃなく、強姦魔だった場合のシミュレート」
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- 唯「それでも、私の妹なんだ」
95 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2010/10/28(木) 20:16:18.76 ID:z1NbjpKpO -
憂はまだ泣いていた。 唯「……憂。鍵は絶対にかけて。家じゅう全部」 唯「扉がついてる箱なんて……私たちに興味を持った連中からしたら」 唯「プレゼントボックスより開けやすいんだから」 手を伸ばし、憂の涙を拭ってあげる。 唯「襲われた時に、相手を殺せることなんて滅多にないんだよ」 憂「お姉ちゃん……」 唯「……殺されることの方が多いくらい」 唯「家の中だからって安心なんかしちゃダメ」 唯「入ってくる人間は絶対にいるよ」 厳しく言って、それから憂の頭を撫でた。 憂「……わかった。ごめんね、お姉ちゃん」 唯「わかればよろしい。……憂」
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- 唯「それでも、私の妹なんだ」
96 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2010/10/28(木) 20:20:04.13 ID:z1NbjpKpO -
私はなんだか久しぶりに、憂に抱きついた。 唯「ごめん、私……怖かったよね」 憂「……ううん。苦しかったけど、お姉ちゃんだから、全然」 耳もとで憂が笑った。 私は洟をすすって、憂の襟足に涙をこすりつける。 唯「こわいの、つらいの……憂が知らない所で一人で暮らすって思うと」 唯「不安で心配で、胸がつぶれそうになるんだ……」 ああ、なんだ。 私は姉のようなことを言っておいて、結局は。 唯「あんまりお姉ちゃんに心配かけるようなこと、しないでよぉ……」 憂「ごめんね……ごめんね、お姉ちゃん」 憂に安心させてもらいたいだけなんだ。
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- 唯「それでも、私の妹なんだ」
97 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2010/10/28(木) 20:23:28.88 ID:z1NbjpKpO -
憂「……お姉ちゃん、心配しないで」 憂がやさしく抱き返してきた。 憂「私は大丈夫だよ」 唯「憂……」 憂「わたし……お姉ちゃんのこと、大好きだもん」 憂「だからもう、絶対悲しませないよ」 あたたかな憂の体温。 やわらかな体。ほんの少しだけ汗っぽい匂い。 唯「……憂、わたし決めたよ」 憂「決めたって、なにを?」 未練がないわけじゃない。 けれど、もう全部失ってしまったことを認めなきゃいけないんだろう。 唯「憂と同じ高校に、行く」
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- 唯「それでも、私の妹なんだ」
101 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2010/10/28(木) 20:26:40.51 ID:z1NbjpKpO -
憂「……それって、桜高をやめるってこと?」 おそるおそるといった感じで、憂は訊ねる。 唯「うん。憂のとこに編入する」 きっぱりと言った私の体を、憂はぐっと押しのけた。 憂「だめだよ、そんなの……」 憂「軽音部の皆さんも悲しむよ。和ちゃんだって」 唯「軽音部は辞めさせられたよ?」 唯「今や特例で部室の使用が認められてるだけの3人組」 唯「来年部員を補充できなきゃ、本当に廃部して……」 憂が私のくちびるに、人差し指を当てた。 憂「……」 無言で、首を横に振る。 ダメ、とサインを送っているのだと理解するのに時間がかかった。
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- 唯「それでも、私の妹なんだ」
102 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2010/10/28(木) 20:30:01.99 ID:z1NbjpKpO -
憂「お姉ちゃんは、桜高に通わなきゃ」 私の胸を、鎖がぎりぎり締め付けた。 唯「どうして……」 憂「……みなさんは、お姉ちゃんの大事な人だから」 唯「でも、憂が一番大事だよ!」 幼馴染、部活仲間。 みんなのことは大好きだけど、家族の憂より大事とはいえない。 私が必死で憂にすがりつくと、くすりと笑い声が降ってきた。 憂「だからだよ、お姉ちゃん」 唯「え……?」 憂「和ちゃんも、律さん達も、友達の一人でしかないから」 憂「お姉ちゃんが大事にしてあげないと、知らない誰かになっちゃうよ?」 唯「けど……」
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- 監禁され800人とセックスさせられた17歳少女 大阪府公務員逮捕
32 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage]:2010/10/28(木) 20:34:30.81 ID:z1NbjpKpO - 定期乙
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- 監禁され800人とセックスさせられた17歳少女 大阪府公務員逮捕
33 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage]:2010/10/28(木) 20:36:35.70 ID:z1NbjpKpO - て
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35 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage]:2010/10/28(木) 20:38:44.05 ID:z1NbjpKpO - い
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37 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage]:2010/10/28(木) 20:41:18.32 ID:z1NbjpKpO - お
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38 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage]:2010/10/28(木) 20:42:52.23 ID:z1NbjpKpO - つ
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39 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage]:2010/10/28(木) 20:43:45.24 ID:z1NbjpKpO - へ
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40 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage]:2010/10/28(木) 20:45:07.35 ID:z1NbjpKpO - て
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41 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage]:2010/10/28(木) 20:46:51.67 ID:z1NbjpKpO - でる
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42 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage]:2010/10/28(木) 20:50:00.25 ID:z1NbjpKpO - ぬ
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43 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage]:2010/10/28(木) 20:51:05.43 ID:z1NbjpKpO - と
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45 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage]:2010/10/28(木) 20:52:15.46 ID:z1NbjpKpO - り
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46 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage]:2010/10/28(木) 20:54:10.64 ID:z1NbjpKpO - ろ
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47 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage]:2010/10/28(木) 20:55:26.76 ID:z1NbjpKpO - と
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48 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage]:2010/10/28(木) 20:57:11.57 ID:z1NbjpKpO - り
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49 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage]:2010/10/28(木) 20:59:36.32 ID:z1NbjpKpO - ら
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- 唯「それでも、私の妹なんだ」
105 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2010/10/28(木) 21:00:15.28 ID:z1NbjpKpO -
憂は悲しげに笑った。 私の気持ちが、憂の笑顔をそういう風に見せたのかもしれない。 憂「わたしは平気だから。お姉ちゃんは律さん達と仲良くして」 唯「……」 憂は何を求めてこんなことを言うんだろう。 私のため、なんだろうか。 私が和ちゃんやムギちゃんたちと仲良くして、憂は嬉しいんだろうか。 唯「憂は……それでいいの?」 憂「そうしてほしい、かな」 ちょっとだけ目頭の痛くなる答えが返ってくる。 憂「軽音始めたお姉ちゃん、すごく楽しそうだったもん」 唯「でも、私は……」 軽音部には、戻れない。 私は人殺しを庇ったから。
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- 唯「それでも、私の妹なんだ」
107 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2010/10/28(木) 21:03:35.07 ID:z1NbjpKpO -
憂「お姉ちゃん、希望を捨てたらいけないよ」 憂「きっといつか、軽音部に戻れるから」 どうしてだろう。 軽音部のことはもう、とっくに諦めていた。 遊びに行くつもりもなかった。それなのに。 唯「……ありがとう、憂」 憂の声で言われたら、急に軽音部がなつかしくなった。 ギターのコードを覚えたこと、学祭ライブの思い出。 合宿をしたこと、クリスマス会のこと。 私は、無理に忘れようとしていたんだろうか。 唯「えへへっ」 自然と笑いがこぼれた。 唯「うい。戸締まりはしっかりね!」
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- 唯「それでも、私の妹なんだ」
109 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2010/10/28(木) 21:06:41.11 ID:z1NbjpKpO -
―――― 2週間後、私たちは笑顔で別れた。 次に会えるのはゴールデンウィーク。 だけど、不思議と寂しさは無い。 それは多分、私の中に憂がいるから。憂の中にも私はいるから。 その日がとても暖かかったのは、 春がすぐそこまで来ていたせいだけではないんだと思った。 2年生になった私は、りっちゃんとムギちゃんと同じクラスになった。 クラス替えでごちゃごちゃした所為か、私への嫌がらせもぱたりと止んだ。 友達には戻れなかったけれど。 でも憂の言う通り、希望を捨てなくてよかった。 放課後と、家に憂がいないことを除けば、 私の生活はすっかり元に戻り始めていた。
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- 唯「それでも、私の妹なんだ」
110 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2010/10/28(木) 21:10:06.61 ID:z1NbjpKpO -
新1年生も入学し、学校も平凡な日常におさまりつつあったある日のこと。 律「新歓ライブをやることにしたんだ」 りっちゃんがそんな報告をした。 唯「しんかん?」 紬「新入生歓迎ライブよ、唯ちゃん」 律「名目上は、だけどな」 軽音部ではなく、田井中律として講堂の使用許可をとり、 入部者を広く募集するためのライブをやろうということらしい。 唯「確かにあのポスターじゃ部員は獲得できそうにないもんねぇ」 律「去年アレを見て入部届け出したのは誰だ」 唯「そんなこともありましたねぇ」 頬杖をついて、私は掲示板に張られていたポスターを思い返す。 ギタリスト募集の文字の上には、 「入部者にはギター(25万円相当)を貸与!」と書かれていた。
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- 唯「それでも、私の妹なんだ」
111 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2010/10/28(木) 21:13:24.16 ID:z1NbjpKpO -
紬「……演奏は、さわ子先生にお願いすることになったわ」 おずおずとムギちゃんが言う。 唯「うん、それがいいね。私ももうギター弾かなくなってずいぶん経つし」 唯「コードとか忘れちゃったもん」 律「……ったく」 りっちゃんが不機嫌そうに腕組みをした。 唯「いやはやぁ、申し訳ない」 律「ん……いや」 唯「それで、ライブっていつやるの?」 紬「3日後よ。放課後にやるわ」 唯「……3日後かぁ」 私は唇を曲げてみた。 日付なんていつでもよかったんだ。
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- 唯「それでも、私の妹なんだ」
112 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2010/10/28(木) 21:16:21.46 ID:z1NbjpKpO -
律「聴きに来いよ、唯」 りっちゃんが私の肩にぽんと手をのせた。 律「さわちゃんがギター弾いてくれるって言うしさ。めったに聴けないぞ?」 唯「……行きたいけど」 視界が下向いた。 この上履きを買ってから結構経つけれど、汚れはちっともついていない。 紬「唯ちゃん、都合つかないの?」 正直なところ、私は純粋な気持ちでりっちゃんたちの演奏を聴ける自信がなかった。 さわちゃんの立つ場所は、本来私が立っているべき場所だと思ってしまう。 そして、どうして私がそこに立てないのかと思ってしまう。 みんなの演奏も、ギー太の歌も聴きたいけれど。 それで私は満たされるのかと言うと、それとはまったく逆で、 むしろ軽音楽のない今の退屈さを再確認するだけに思えた。
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- 唯「それでも、私の妹なんだ」
113 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2010/10/28(木) 21:20:47.55 ID:z1NbjpKpO -
唯「3日後は、ちょっと用事が……」 私は嘘をついた。 用事なんて一つもない。 律「そうか……」 りっちゃんの手が肩からおりる。 唯「ごめんね。またライブやるときは呼んでほしいな」 律「いいって。今度は早いうちに知らせるよ」 唯「うん。ライブ頑張ってね!」 私は落ちそうになったりっちゃんの手をとる。 律「……ああ、任せろ。絶対部員つかまえるからな」 視線を合わせて、頷き合う。 ムギちゃんが不思議そうな顔をした。 紬「でも唯ちゃん、用事って?」
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- 唯「それでも、私の妹なんだ」
114 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2010/10/28(木) 21:24:35.71 ID:z1NbjpKpO -
軽音部のライブより大事な用事がなんなのか、ムギちゃんは気になるらしい。 そう思ったら、次の嘘は簡単に思い付いた。 唯「憂のとこ行くんだ。三週間ぶりぐらいかな?」 紬「あ、そうだったの……」 ムギちゃんは申し訳なさそうな顔をする。 唯「ほんと、ごめんね」 律「謝るなよ。私らより憂ちゃんを優先するのは当たり前だ」 唯「……そうかもね。ありがと」 憂との約束は、りっちゃん達と仲良くすること。 でも毎日顔を合わせていたって、憂以上の存在にはやっぱりならない。 憂の顔を思い出したとき、 私の吐いた嘘はすでに嘘ではなくなっていた。
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116 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2010/10/28(木) 21:28:15.64 ID:z1NbjpKpO -
三日後、新歓ライブのステージに出向くみんなを見送ってから、 私は電車に乗って憂の町に向かった。 憂にはまだ、私の来ることを知らせていない。 私は簡単な荷物と着替えだけ持って、2時間電車に揺られる。 今日は金曜日だから、憂の家に二晩泊まって、日曜日に帰るつもりだ。 交通費が財布に痛かったけれど、憂の顔を見れるなら安いものだった。 唯「ふふふ……」 憂の一人部屋は、どんな暮らしぶりだろうか。 私は電車の中でにやにや笑い、隣のサラリーマンと会釈を交わした。 一度しか来たことのない駅のホームに降り立って、住所から検索した地図をたよりに歩く。 品のいい街並みに建てられたマンションは、すぐに見つかった。 エレベーターで4階に上がる。
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- 唯「それでも、私の妹なんだ」
117 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2010/10/28(木) 21:32:11.67 ID:z1NbjpKpO -
412号室に、平沢の札が掛けてあった。 呼び鈴を鳴らし、のぞき窓に顔を近づける。 向こう側に、ぼんやりと肌色が浮かぶ。 唯「こんばんわ、憂」 がたりと音を立てて、ドアロックが外された。 憂「お姉ちゃん、なんで……?」 小さく開いた隙間から、憂が顔を出す。 私はただ、歯を見せて笑った。 憂「あ、とりあえず」 憂は大きくドアを開け、私を迎え入れた。 すぐそこにある台所から、だしと醤油の煮立つ匂いが漂ってくる。 私がいなくてもしっかりやっているようで、安心した。
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53 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage]:2010/10/28(木) 21:37:02.45 ID:z1NbjpKpO - と
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54 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage]:2010/10/28(木) 21:38:19.97 ID:z1NbjpKpO - ば
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55 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage]:2010/10/28(木) 21:39:31.74 ID:z1NbjpKpO - る
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56 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage]:2010/10/28(木) 21:46:31.51 ID:z1NbjpKpO - ま
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57 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage]:2010/10/28(木) 21:48:47.75 ID:z1NbjpKpO - と
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- 唯「それでも、私の妹なんだ」
122 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2010/10/28(木) 22:00:08.45 ID:z1NbjpKpO -
ぱたりと閉じたドアに、鍵とチェーンが掛けられる音がする。 憂「お姉ちゃんっ」 唯「おっとと」 かと思うと、靴を脱いでいる私の背中に、ぎゅうっと憂が抱き着いてきた。 私はバランスを崩して、壁に手をつきながらずりずり床に落ちていく。 唯「もう憂、寂しかったの?」 半分脱げた靴を沓脱ぎに落として、憂の頭をなでる。 憂「うん、実を言うとね。けっこう寂しかったりしたかな」 それは憂なりの、私を気遣った表現なのかもしれなかった。 本当はさびしくて仕方ないのに、私を心配させまいとしているんだ。 唯「……」 鍋の噴きこぼれる音がする。 唯「……憂、お料理の途中でしょ?」
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- 唯「それでも、私の妹なんだ」
125 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2010/10/28(木) 22:04:12.95 ID:z1NbjpKpO -
憂は私の首もとに頬をのっけたまま、答えない。 だし汁の沸騰する音が聞こえなくなった。 噴きこぼれで火が消えてしまったのだろう。 唯「憂……?」 憂「……寂しかった」 唯「う、うん」 腕が疲れてしまわないか心配になるほど、憂は強く私を抱きしめる。 唯「ごめんね」 憂「……」 背中を包む、憂のぬくもり。 憂がすこし顔を上げて、私の耳に唇を触れて囁いた。 憂「大好き、お姉ちゃん」 唯「……私も大好きだよ、憂」
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- 唯「それでも、私の妹なんだ」
128 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2010/10/28(木) 22:08:13.27 ID:z1NbjpKpO -
くすりと笑って、憂の体が離れた。 憂「お姉ちゃん、ご飯は食べてきた?」 唯「ううん。久しぶりに憂のご飯食べたかったから」 私が言うと、憂は幸せそうに笑顔を垂れた。 憂「じゃあ、作る量増やすね。ちょっと待ってて」 おもむろに立ちあがって、台所に憂は歩いていく。 かちゃりとコンロの火がつけ直され、料理が再開される。 私も手をついて立ち、部屋の端に荷物を置く。 女の子の部屋としては、少し殺風景だ。 窓はすべて厚いカーテンで遮られ、外の様子をうかがうことはできない。 床には鼠色のマットが敷かれ、あとはテーブルとベッドが置かれているくらいだ。 部屋の隅には筆記用具の散乱した机と、ほこりをかぶった箱型テレビが追いやられている。 唯「……」
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- 唯「それでも、私の妹なんだ」
129 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2010/10/28(木) 22:12:12.32 ID:z1NbjpKpO -
唯「ねぇうい、憂って普段なにしてるの?」 憂「携帯いじってるよ。写真見たり、友達とメールしたり」 唯「友達はできた?」 憂「お姉ちゃん」 私の言葉を遮るように、憂が台所から顔を出して言う。 憂「今日はもう遅いし、泊まっていくんだよね?」 それは私の質問に対する憂の否定にもとれた。 だから憂は、こんなにも寂しがっているんだろうか。 唯「……うん、明日も泊まってくよ」 憂「でも、そしたら寝る場所が……」 唯「んー、あのベッドなら二人で寝れそうだよ」 シーツを撫でて、憂のベッドを眺める。 少し狭くはなるだろうけれど、二人くらいなら横になれそうだった。
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- 唯「それでも、私の妹なんだ」
130 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2010/10/28(木) 22:16:08.40 ID:z1NbjpKpO -
憂「あ、そっか……一緒に寝たらいいんだね」 台所に引っ込んで、憂はちょっと声を大きくする。 憂「なんか、久しぶりだね? 一緒に寝るのって」 唯「そうかもね。子供のころはしょっちゅうだったけど」 雷のよく落ちた夜や、怖い話を聞いた夜は、 しばしば憂が私のベッドに潜りこんでくることがあった。 私たちが大きくなって、二段ベッドを卒業してからもその習慣はしばらく続いたけれど、 時間が経つにつれて、だんだんと憂は私のところに来なくなっていた。 唯「最後に一緒に寝たの、いつだったっけ?」 憂「さあ……」 私もすこし考えてみたが、遠い昔のことしか思い出せなかった。 記憶の中の憂は、顔を真っ赤にしている小学5年生くらいの少女だった。 憂「よし、できたよお姉ちゃん」
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- 唯「それでも、私の妹なんだ」
132 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2010/10/28(木) 22:20:42.03 ID:z1NbjpKpO -
憂が大きな丼に盛ったかけそばを運んできた。 そっと座卓にのせ、熱そうに手を払う。 唯「憂のは?」 憂「いま持ってくるよ」 そう言って憂はまた台所に引っ込み、小鉢のような皿に蕎麦を盛ってきた。 私は目を疑った。 瞼を擦り、テーブルに置かれた丼ぶりと深皿を見比べる。 憂が自らの前に据えた深皿の大きさは、私の丼ぶりの半分もなかった。 唯「……憂、ダイエット中?」 憂「うん、まぁ、少し」 私はよろけながら立って、憂の後ろにまわり、 唯「ちょっと失礼」 憂の服の裾から手を突っ込んだ。
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- 唯「それでも、私の妹なんだ」
133 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2010/10/28(木) 22:24:21.35 ID:z1NbjpKpO -
憂「うひゃっ!? お姉ちゃん……手冷たいよ」 そして手に返ってきた感触に、私は絶句した。 唯「そんな……」 肉を寄せることすらできなかった。前は指でぷにぷにできた憂のお腹が、ぺたんこになっている。 私は服から手を抜くと、テーブルの丼を掴み、憂の前に押しつけた。 唯「これは憂が食べなよ」 憂「えっ? でも……」 唯「ちょ、ちょーっとね。憂は痩せすぎだと思うなぁ」 憂「う……そうかな?」 ばつが悪そうに眉尻を下げて、憂は丼を受け取る。 唯「どうしても食べきれなかったら私にくれていいから、お腹いっぱい食べなよ」 憂「うん……」
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- 唯「それでも、私の妹なんだ」
135 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2010/10/28(木) 22:28:21.00 ID:z1NbjpKpO -
唯「さてと……」 私は床に座って箸をとると、手を合わせた。 唯「いただきます」 憂「いただきます」 憂も同様に手を合わせた。 すこし笑い合って、温かいそばをすすり始める。 唯「うん、うまい!」 私でも、あの大きなどんぶり鉢に入ったそばを食べきれるかは自信がなかった。 憂も長いこと平沢家の家事を担当していたから、私の食べる量くらい把握しているはずだ。 それなのに過剰に盛られた蕎麦、そして少なすぎる憂の食事量。 かなり痩せた腹周り。 憂の中で、食事というものが大事はなくなってしまったんだ。 だから適切な食事量が分からない。 だから食事が退屈で、食べる量が減っていく。
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- 唯「それでも、私の妹なんだ」
138 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2010/10/28(木) 22:34:15.60 ID:z1NbjpKpO -
憂は1時間以上をかけて、どうにか蕎麦を食べきった。 唯「ほんとに一人でちゃんとやってる?」 憂「大丈夫だよ」 お腹をさすりながら、憂は笑う。 憂「お姉ちゃんがいないのは、そりゃ寂しいけど……」 憂「一緒に撮った写真とか見てたら、まぎらわせるんだ」 私は手と膝をついて、四つん這いの格好で憂にすりつく。 唯「ん〜、ういー♪」 憂「おねえちゃん……」 大きくなった憂のお腹を撫でる。 幸せが胸に満ちてきた。 唯「今日と明日は、いっぱいベタベタしようね?」 憂「そだね。エヘヘ」
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