トップページ > ニュー速VIP > 2010年04月26日 > hPjhEPuw0

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以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします
◆azNZBc5e2w
http://yutori7.2ch.net/test/read.cgi/news4vip/1272265949/
エロゲスレとくらそう
ラノベ、小説書いてるやつが息抜きに寄るスレ
迷い猫オーバーランを観たんだが
貧乳が羨ましい
マジレスお願いします。すごくなやんでます
1990年が20年前
心太←読めない奴はゆとり
今期No.1の正統派ドタバタ学園ファンタジーアニメについて
なんでアニメって、オヴァになると途端につまらなくなるの?
主人公がリア充なアニメ見ると死にたくなる

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就職記念にここ半年書いたSSを晒してみる
45 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2010/04/26(月) 17:05:25.75 ID:hPjhEPuw0
 僕が思わぬ足止めを食らって二十分弱。ようやく雨を凌ぐための手段が届いた。僕の手元には一本の濡れた傘があり、その傘の持ち主であり配達者でもある彼女は中学校に上がったばかりの僕の妹だった。
艶のあるセミロングの髪は少し水気を含んでおり、走ってきたのだろう、陶磁器のように白い肌は朱色に染まっていて、吐く息も荒い。
僕は彼女の呼吸が整うのを待ってからお礼を言うと、運んでもらった傘を差して家に帰ろうと一歩踏み出し――しかし後ろから抵抗を受けたせいでそれ以上動けなかった。振り返ると、妹が僕のベルトを掴んで踏ん張っていた。
「……何してるの?」その行動は完全に予想外だったため疑問をそのまま口に出してしまった。
彼女は僕の質問には直接答えず、ん、と、僕が差している傘を指差した。これが何か? と重ねて訊くと、彼女はようやく口を開く。
「私はお兄ちゃんと違って傘を常備する用心深さを持っているけど、お兄ちゃんと同じで折り畳み傘は携帯していないの」「知ってるよ」何を今更。
妹が用心深いのは周知の事実であるし、変な所で抜けているのも家族である僕は知っている。だからどうしたのだろうかと小首を傾げると、彼女は、違う、お兄ちゃんは全然解ってないよと前置きしてこう言うのだった。
「お兄ちゃんが一人で勝手に帰っちゃったら残された私はどうするのよ」
「……? ……あぁ、なるほど。そう言うことか」
 彼女の科白を数回繰り返し頭の中で聞くことによって、ようやく理解が追いついた。妹を見ると、僕が理解したのを感じたのか、少々呆れながらも嬉しそうに微笑んでいる。
いつの間にかベルトを掴んでいた手は離され、僕の、傘を持っていない、学生鞄を持っている方の手に重ねられていた。
年頃の男女が手を繋いで歩くと言うのは何か誤解されそうなシチュエーションなのだが、妹は重度のブラコンであり、僕もそれなりに彼女を愛しているため、その全てが誤解であるとは言えないかも知れない。
どちらにせよ明日には僕達の噂が校内に流れていることだろう。会話の内容も近くに居る人間には聞こえていただろうし、シスコンやらブラコンやらそう言う言葉が見出しに使われるであろうことは想像に難くない。
別に僕は特定のガールフレンドを作るつもりは無いのでどんな噂が流れても構わないのだけれど。妹はどうなのだろうか。
僕のようなつまらない男と同列に語られることになるのだが、今の所何も感じていないようだった。興味が無いのかも知れない。
あまり長いこといちゃいちゃしている所を衆目に晒し続けるのも都合が悪いので、僕と妹は相合傘で足早に帰路に着くのだった。
 雨で濡れて冷たいはずの妹の体は、予想に反して熱かった。



Fin

本来10行のもの
改行制限があると辛いね
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46 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2010/04/26(月) 17:06:33.80 ID:hPjhEPuw0
「ねえ師匠、変ってどういうものなんですかね?」
「ぼくの周りにいる人たちのことなんじゃないかな」
 自分で言ってて悲しいけどそれは事実なので素直にそう言ってあげる。
 すると姫ちゃんは「違いますよお」と頬を膨れさせた。まあ自分の周りの人たちを貶されたようなものだから仕方ないけど。ぼくだって自分の友達が貶されるのは嫌だし。
 でも事実だろ?
「そうじゃなくて。どうして心の話をしてるのに急に人間が出てくるんですかー」
 心……?
「ああ、恋のことか」
「そう、それです!」
 嬉しそうに言う姫ちゃん。
 そこまで嬉しそうな顔をされると突っ込む気も失せてしまう。まさかそれが狙いじゃないだろうな……。
 あり得ないと断定できない辺りが怖い。
「それで、恋がどうかしたの? 急にそんなこと訊くなんて」
 まさか好きな人でもできたのだろうか。そんなことは無いとは思うけどもしかしたらということもある。なんてったって姫ちゃんはもう普通の女子高生なんだから。
 普通の。
 だがしかし姫ちゃんは「あ、いえ」と手を振って「別に大した理由はないですけど……」と言った。
「ふうん?」
「ただ、ちょっと気になっただけです。別に深い意味はないですよ」
 少し俯きながらぼそぼそと言っているそんな様子じゃとてもそうとは思えないが姫ちゃんがそう言うのならきっとそうなんだろう。
 そう納得して、部屋の隅に積まれている辞書の山からひとつを取り出してそれをぼくと姫ちゃんの間に置く。
「師匠?」
 姫ちゃんの呼びかけには応えずに、黙々とページを捲る。そして、お目当てのページが見えたからそれを姫ちゃんがよく見えるようにして、そこに書いてある文章を読んであげる。
「えーっと、何々……『男女の間で、相手を好きになり、相手と一緒にいたいと思う強い気持ち。恋愛』だってさ」
 読み終えてほっと一息吐き、姫ちゃんを見やると、何が不満なのかまた頬を膨らませていた。
 可愛い。……じゃなくて。
「どうしたの姫ちゃん。ぼくの説明に何か不満でもあったの?」
「大有りです」
「どんな?」
 尋ねると、姫ちゃんは更に頬を膨らませた。
「だって、こんなの説明でも何でもないじゃないですか」
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47 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2010/04/26(月) 17:07:15.37 ID:hPjhEPuw0
「うーん、そうかな……」
 ぼくとしては普通に説明したと思ってるんだけど。なんだろう、姫ちゃんはもっと面白い回答を期待していたのだろうか? いやしかしぼくという人間を少しでも知っていればそんなことはしないだろう。しかも姫ちゃんだし。
 どんな理屈だ。
 自分に突っ込み。
「えーと……」ぼくは困った風に言う。「それじゃ、どんな回答を期待していたんだい? 姫ちゃんなら解るだろうけど、ぼくに面白い回答を導き出すほどの能力は無いよ」
「そんなの決まってるじゃないですか」
 姫ちゃんは怒りを通り越して、心底呆れているような表情で言う。
「師匠の言葉で答えて欲しかったです」
「ちゃんとぼくの言葉で言ったじゃないか」
「言ってないです」
「それじゃ今話してるぼくの声は誰のものだって言うんだい?」
 そう訊くと姫ちゃんはきょとんとした表情になり、やがてぽんと手を打った。
「師匠の言葉っていうのはですね、師匠の考えって意味です」
「ぼくの考え?」
「そうです。辞書を引くんじゃなくて、師匠独自の、オリジナルな考えが聞きたかったです」
「ああ、そういうことね」
 納得。なるほど、ぼくが恋というものをどのように捉えているかが聞きたかったのか。
 納得はしたけど……。
「だけど姫ちゃん。それをぼくに訊くのは間違ってるよ」
「どうしてです?」
「だってぼくは人を好きになることが出来ないんだから」
 それがぼくという個人だ。誰も好きにならないし誰も嫌いにならない。誰も愛せないし誰も憎めない。感情というものがすっぽり欠けてしまっている欠陥製品。
 そんなぼくに恋がどんなものか訊くなんてお門違いだ。勘違いも甚だしい。
 しかし姫ちゃんは「違いますよ」と首を横に振った。
「師匠は人を好きになれる人です。人を嫌いになれる人です。きちんと感情を持ってるんですよ。ただそれに気がつかないふりをしているだけです」
「どうしてそんなことが解るんだい? これでも自分のことはよく解ってるつもりだよ。ぼくは生まれてこの方人を好きになったことがないんだよ」
「そんなことは無いですよ。だって師匠、みい姉さんのこと好きじゃないですかー」
「え……」
 絶句。
「ど、どうして急にみいこさんが出て来るんだよ。ぼくはみいこさんのことなんてこれっぽっちも……」
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48 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2010/04/26(月) 17:07:35.82 ID:hPjhEPuw0
「絶対そうですよ。それぐらい見てたら分かるです」
「断じて違う」
 きっぱりとそう言うと姫ちゃんは「むむむ」と眉を顰めた。
「それじゃみい姉さんのことどう思ってるですか?」
「別にどうも……。みいこさんには恩があるっていうだけだよ。あの人に出会わなければ今のぼくはいなかったと言ってもいい」
 それは本当のことだ。ぼくが日本でまともに生活できているのは80%以上彼女のおかげだと言っても過言ではないだろう。その点では本当に感謝している。
 そう言うと、姫ちゃんは笑った。
「ほらやっぱり。師匠にはちゃんと人の心があるじゃないですか」
「どこをどうしたらそんな話になるんだ」
「だってみい姉さんに感謝してるって言ったじゃないですか。そんなの、人の心がないと言えないですよ」
「うーん」
 そうだろうか。
 助けてもらった人に感謝するのは当然のことだと思うけど……。
 でも、もしかしたら――
「そうなのかも……しれないね」
 結局選んだ言葉は曖昧なもの。これこそがぼくの武器でありぼくのアイデンティティであるとも言える。
 しかし姫ちゃんはそんな曖昧な言葉でもとりあえず肯定してくれたことが嬉しいらしく、えらく上機嫌な様子だった。
 たまにはぼくの曖昧さも人の役に立つのだということに気付いてこちらとしても悪い気はしない。
「それにですね」
 と、姫ちゃんがにこにこした顔のまま口を開く。
「たとえ師匠が何も想ってなくても、人に好かれる存在は人を好きになれるんですよ?」
「え……?」
 それはどういう意味なのかと質問したかったけど、姫ちゃんは「また来ますねー」と言ってさっさとぼくの部屋から抜け出してしまったため叶わぬ願いとなった。
 うーん。
 ……どういう意味?



Fin
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49 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2010/04/26(月) 17:08:59.14 ID:hPjhEPuw0
 ある日、崩子ちゃんに言われた。
「戯言遣いのお兄ちゃんは、いつも無表情ですね」
 ちょうどそのときは二人でババ抜きをしていたところで(お互いの手札が解りきっているので心理戦。楽しい)、ぼくが崩子ちゃんの手札からジョーカーを引いてしまったときだったから、ついつい反応が遅れてしまった。
「え……と、何か言ったかな?」
「戯言遣いのお兄ちゃんは無表情だと言ったのです」
 崩子ちゃんはぼくが聞いてなかったことに呆れたように――実際呆れているのだろう、わざとらしくため息を吐いている――そう言った。
 13歳の女の子がため息を吐くなんてことはあまり無いと思うのだが、崩子ちゃんはため息ばかり吐いていてそれが日常のようになっている。
 誰のせいだ? ぼくのせいだ。
「ぼくが無表情だって言ったの?」
「そう言いました」崩子ちゃんはますます呆れた風に言う。「お兄ちゃんは人の言葉を反復する趣味でも持っているのですか?」
「いや別にそんな趣味は持ってないけどね……」
 少しばかり非難の色が混じった視線で捉えられて、何かぼくが悪いことをしたように思えてくる。
「ぼくが無表情なのがどうかしたの?」なんとなく目を逸らしながら言う。「特に今それを言う意味は無いと思うんだけど」
 もしかしたら何か重大な意味を持ち合わせているのかもしれないというぼくの考えはしかし、崩子ちゃんが「いえ」と首を横に振ったことで否定された。
「特にどうということはありません。強いて言うなれば興味本位というものです」
「興味本位……ね」
「はい。ここ数日の間お兄ちゃんの顔をずっと眺めていたのですが、しかし一度もその無表情が崩れませんでした」
 寝顔も普段と変わらないのには驚きましたよと嘯く崩子ちゃん。
 なるほどここ数日ずっと突き刺さるような視線を感じたと思ったらあれは崩子ちゃんだったのか。納得。
 ……って。
「寝顔、見たの?」
「ええ、バッチリ。暗闇でよく見えませんでしたがそれでも私には充分でした」
「そう……」
 なんてこった……他人に寝顔を晒してしまうなんて。いや、でも崩子ちゃんは友達だし家族みたいなもんだから別にいいけどさ。それでも知らない内に見られるのはやっぱり抵抗がある。
 ぼくの態度に不審を覚えたのか、崩子ちゃんは額に皺を寄せている。
「もしかして、私に寝顔を見られたのが嫌……でしたか?」
 妙なところで勘の良さを発揮する子だった。しかしそのおどおどした様子はどうしたのだろうか。
 気になったけどとりあえず本心を口に出しておく。
「や、別にそんなことはないけどね。ただ他人に寝顔を見られるのに慣れてないだけさ」
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50 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2010/04/26(月) 17:09:25.79 ID:hPjhEPuw0
「そうですか、それは良かったです」
 ほっとした風に微笑む崩子ちゃん。その笑みは13歳にしては落ち着きすぎているが、それが崩子ちゃんというものだろう。
「しかし――」
 崩子ちゃんは少し不思議そうに言う。
「寝顔を見られるのに慣れていないのならどうして私と一緒に寝てくれるんですか?」
「抱き枕が無いとよく眠れないんだよ」
「はい?」
「あ、いや」
 ぼくは一体何を言っているんだ。これではぼくが崩子ちゃんのことを抱き枕として扱っているみたいじゃないか。実際その通りだけど。
「……?」
 崩子ちゃんはしばらくぼくのことを訝しむように見ていたけど、やがて「もういいです」と呟いてぼくから視線を外してくれた。
 ほっと一息吐いていると、その間を狙ったように追撃が待ち受けていた。
「それで、どうしてお兄ちゃんはいつもいつも無表情なのですか?」
「……それ、聞かないんじゃなかったの?」
「いえ、やはり気になってきました。わたしはお兄ちゃんの奴隷ですから。主人を喜ばせられないのは奴隷失格です」
「奴隷……ね」ぼくは言う。「そんなこと気にしなくてもいいんじゃないかな。奴隷とかそういう問題の前に、ぼくたちは友達なんだから。そんな堅苦しいことを考えなくても、今みたいに一緒に遊んでくれたらぼくは充分嬉しいよ」
 ちなみにまだ契約は解除していない。何度か解除しようと思って実行しかけたのだけれど、その度に崩子ちゃんが捨て犬みたいな表情をするものだから解除できないのだ。というか崩子ちゃん、本当に変な方向でキャラ立ちしてるよな……。
 何だかかわいそうだ。
「でもお兄ちゃん、嬉しいとは言っても全然楽しそうじゃないですか」
「いや、普通に楽しいけど」
「ですけど、今も無表情じゃないですか。まるでのっぺらぼうみたいですよ」
「ああ、それね」少し驚きながら言う。いやまさかのっぺらぼうみたいと言われるなんて思ってなかったし。「ぼくは基本的に感情が表に出てこないんだよ」
「? つまり、どういうことですか?」
「心の中ではめちゃくちゃ楽しんでるってことさ」
 言いながら崩子ちゃんの手をとってぼくの胸に押し当てる。その際に崩子ちゃんが何かを言った気がするけど気にしない。
「どう? かなり速いでしょ?」
「……そうですね、平常時の1.3倍といったところでしょうか」
 どうしてぼくのデフォルトを知っているのかと気になったけど、それを言ったらとんでもない答えが返ってきそうなので黙っておく。怖いものを見たら進むんじゃなくて逃げるのがぼくのやり方だ。
 しかし……、と崩子ちゃんはまだ納得していない様子。まあ心臓のビートで感情を見抜けなんて無茶すぎたし当然か。
「これはただ単に狭い室内で私と二人きりという状況に緊張しているだけなのかもしれません」
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51 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2010/04/26(月) 17:11:03.74 ID:hPjhEPuw0
「ぼくはロリコンじゃないよ」
「それは残念です」
「残念って……」
 ぼくが幼女趣味だと警察に通報する気だったのだろうか。いくらなんでもそこまではしないだろうけど、しかし崩子ちゃんならやりかねない。
 うーん。
 怖い。
「あ、そうです」
「なんだい? 悪いけどぼくを犯罪者にはしないでね」
「? 何を言っているのですか、お兄ちゃん」
「……いや、そのつもりが無いんならいいんだ。それで、どうかしたのかな?」
「今からにらめっこしましょう」
「にらめっこ? 別にいいけどどうして急に」
「お兄ちゃんを笑わせたくなりました。それに――」
 ちょうどババ抜きも終わったことですし、ね。と崩子ちゃんは最後の二枚を捨てた。
 ぼくの負けか……。うん、まあそんなこともあるだろう。
「いいよ、やろう。ババ抜きでは負けたけど、次は負けないよ」
「それはわたしのセリフです。次も私が勝ちますよ」
 結果、30回やって崩子ちゃんは一度もぼくに勝てなかった。



Fin


一旦休憩
こりゃ思った以上に苦行だわ
帰宅したら妹がお兄ちゃーんって駆け寄ってきて
3 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2010/04/26(月) 17:11:28.44 ID:hPjhEPuw0
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日本語>>>(言語の壁)>>>英語(笑)
2 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2010/04/26(月) 17:13:56.59 ID:hPjhEPuw0
日本語:わたしはサッカーがすきです。
  英語:I like soccer.
今月もまた親から生活費をもらったwwwwww
3 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2010/04/26(月) 17:17:14.06 ID:hPjhEPuw0
てれるじゃねぇか///
チンコが小さいエロゲ主人公をもっと増やすべき
2 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2010/04/26(月) 17:17:43.86 ID:hPjhEPuw0
NTRゲなんかそれだろ
虐待の可能性が少しでもあったら。問答無用で一時保護しろよ
2 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2010/04/26(月) 17:18:06.00 ID:hPjhEPuw0
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え っ  |i      / ・ i     イ:リ::::|    '、        |:::::rイ:::::::: |  え 族
ち た  |i          t    / i:::::ハ    r‐--ー、     /ハi!:::::::::::::::: |  る が
ゃ ね  |i         〃 ●   ハ::::::: \   .イ_ _,,ツ  イ/'/:::::::::::::. <  よ
ん    |i   r一 ヽ      )  /i::ハi::::i:::::>,, ___ _,, ´ /,,ハ/|/:::ii:::::::: |  !!
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     ,ノ フr フ   メ   / ノ  ゝ:::::: ゝ- 、 ヽ     |::::::::::::::::::::ソ /     ./
お前らの特技なによ
2 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2010/04/26(月) 17:18:43.20 ID:hPjhEPuw0
ひきこもり
>>5の口説き文句でコンビニ店員を落としてくる
2 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2010/04/26(月) 17:20:14.33 ID:hPjhEPuw0
天皇殺す
俺を本気にさせたら5000円
2 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2010/04/26(月) 17:20:31.99 ID:hPjhEPuw0
はい5000千円ね
>>5のエロフォルダ全開
3 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2010/04/26(月) 17:21:40.47 ID:hPjhEPuw0
>>5に期待
久しぶりにvipきたら変わってたこと
2 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2010/04/26(月) 17:22:32.58 ID:hPjhEPuw0
暇だから、寂しい等の理由でかまってスレを立てるネットミーハーゲロクズ女の増加
中高生のマジ恋愛相談スレの増加
「w」の連打、「だお」「〜ス」をつけて安価で会話するのがVIPPERだと思っている
Vipperがやる面白くも何とも無い馴れ合いラジオ
専用板があるのに、なんでもかんでもVIPでスレ立ててひたすら馴れ合う
半年ROMという言葉も知らない厨房
「今日学校で……」「会社で……」などといったmixiの日記のようなどうでもいい日常報告スレ
彼氏が・彼女がという聞いてもいない恋愛報告
何十・何百番煎じのネタをまだ引っ張ってる
中高生びっぱあ大好き「安価で痛メール」
「○○才だけど」等の寒い年齢・学年・性別晒し
大して特別な職業、役柄でもない、その辺の一般人の「質問ある?」
何故か伸びる非リアブサイク女子高生の「質問ある?」
スレタイに「妹が……」「姉が……」と書いてあるスレに来た挙句、「なんだ釣りかよ」と文句を言う
ネタにマジレスの嵐
(´・ω・`)や( ^ω^)、ぁぃぅぇぉ等の多用
OFF会大好き地域スレ。びっぱあ同士で実際に会ったりVIP言葉でしゃべったりするのがクオリティ高い行為だと思っている。
mixiやハンゲ等の他サイトにVIPノリ(wwwww、だお、ちょwwwおまwww、kwskなど)を持ち込む。
安価で馴れ合い→「おごる」だの「会ってカラオケ、のみ会しよー」だの、一番2chぽくない俗物ど素人な流れに→そして出会い系へ
「VIPPER」であることがアイデンティティになっているお子さま達
「別に馴れ合ってもいいだろ」とか言い出す奴
ネタでもなんでもない、素の相談事(主に思春期、中二病的な悩み)
女ですが、○歳ですが、とか書けばレスが伸びる
2chはVIPしか見ないお子様達
アド、電話番号晒し、出会い目的のスレは、2chでは特定の馴れ合い板以外禁止だということを知らない
ネタスレだろうが糞スレだろうが安価で馴れ合いチャット出会いチャット
もうただひたすら安価で会話、安価で馴れ合い
面白くもないスレを永遠続けパートスレ化、いつの間にか保守スレになる
自分が知っていることは常識と思ってる
>>5のエロフォルダ全開
15 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2010/04/26(月) 17:23:55.94 ID:hPjhEPuw0
>>1
早くしろよ
オススメのエロマンが教えて下さい
2 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2010/04/26(月) 17:24:31.34 ID:hPjhEPuw0
                  /::::::::::: i::::::::: |:::::::: ヽ::::::::::::::::::::::::::::::::::::::ゝ 
                  イ:::::i:::::::ハ::::::::: ヾ:::: |:::\:::ハ::::| :::::::::::::::::::::::\ 
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た や |i         ヽ   | ト/人7} 〃〃    〃〃´ ∠イr 'ちノ::::: |  ふ 家 
え っ  |i      / ・ i     イ:リ::::|    '、        |:::::rイ:::::::: |  え 族
ち た  |i          t    / i:::::ハ    r‐--ー、     /ハi!:::::::::::::::: |  る が
ゃ ね  |i         〃 ●   ハ::::::: \   .イ_ _,,ツ  イ/'/:::::::::::::. <  よ
ん    |i   r一 ヽ      )  /i::ハi::::i:::::>,, ___ _,, ´ /,,ハ/|/:::ii:::::::: |  !!
!    |i   |   i   ∀"    "  ̄ ̄     ト、  //ヽ  ̄" ̄  |
      |i   |    i   ノi            ノ:r j       :ア` …‐: |
      |i ニ|   |二二◎        __,..'| /        /   :::: |
      |i  i    i   ヽ      __,,:'´   t/       /    :: |
      li           }    ,_:'´     {    ,,___ /     ,,/i \____
      |i           |  /j\    _:ヘ:ニヽ,,,/_,,    , /:::j      j
__ /          / ⌒`)⌒) i:::::ヽ::`r‐'___ `   ヽ ,,:_,,_,,/:::::ノ"ノシ    〃
     ,ノ フr フ   メ   / ノ  ゝ:::::: ゝ- 、 ヽ     |::::::::::::::::::::ソ /     ./
なんで女ってあんなバカ笑いすんのはなんで?
2 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2010/04/26(月) 17:25:00.74 ID:hPjhEPuw0
ギャハハ!マジうけるんですけどーwwwwwww
本物の「にわか」オタク来てください
2 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2010/04/26(月) 17:25:41.15 ID:hPjhEPuw0
矢口真里、レッドカーペット取材にて
「子供の頃からお笑い系が大好きで、はっきり言ってオタクレベルです。
最近好きなお笑い芸人はズバリ!はんにゃです。」

矢口真里、アニマックス取材にて
「子供の頃からアニメが大好きで、アニマックスさんで一日中アニメ見る日も多々あります。
かなりマニアックなアニメも好きで、特に好きなアニメはセーラームーンです。金髪のカツラでコスプレしたいです。」

矢口真里、ファミ通取材にて
「子供の頃からゲームが大好きで、一日中ゲームして過ごす日も多々あります。
かなりマニアックなゲームも好きで、特に好きなゲームはドラゴンクエスト、マリオカート、ぷよぷよです。」

矢口真里、blogにて
「子供の頃から漫画が好きで、芸能界では2〜3位になれる位漫画持ってます。一日中漫画読んで過ごす日も多々あります。
かなりマニアックな漫画も好きで、特に好きな漫画はワンピース、ドラゴンボール、NANAです。」

矢口真里、ジグソーパズル大使任命にて
「ジグソーパズルが本当に好きなので、一日大使に任命されてめちゃくちゃ嬉しいです。
多分、芸能界では一番ジグソーパズルをやっていると思いますよ」

矢口真里、フィギュアを語る
「昔からフィギュアが大好きで、女性芸能人では2位になれる位集めてます。特に好きなフィギュアはドラクエです。
最近はワンピースとドラゴンボールのキャラクターが合体してるフィギュアを集めてます。コレはかなりマニアックですよね。」

矢口真里、冷麺ブームを語る
「私が去年の夏から好きだった冷麺が、今若い女性の間で流行ってるらしくて嬉しいです。
有名女優さんもオススメしてるらしくて、有り難いですね。」
お前らの萌えポイントを大集合させて最強の萌えキャラ作りませんか?
2 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2010/04/26(月) 17:26:22.85 ID:hPjhEPuw0
>>1は腹筋スレに行くべき
就職記念にここ半年書いたSSを晒してみる
53 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2010/04/26(月) 17:27:59.68 ID:hPjhEPuw0
 寂しいなら誰かといればいいじゃない。

 目を開けると目の前に崩子ちゃんがいた。
 本当に目と鼻の先で、超至近距離だった。どちらか一方が少し前に動けば、お互いの鼻がぶつかって非常に痛い思いをするであろう距離。
 崩子ちゃんはいつもの無表情な顔でぼくを見ている。それはいいのだけど、こんな距離でじっと見られるのは結構恥ずかしい。寝顔を見られたことも含めて。
「……何してるの?」
「戯言遣いのお兄ちゃんの寝顔を観察していました」
「……そう」
 寝顔は見られてないという一縷の思いは簡単に打ち抜かれ、天へと散ってしまった。まあ、ばっちりと目が合ったのだから当然と言えば当然なのだけれど。
 しかしながら崩子ちゃん。ぼくの目が覚めたというのにその場から動こうとしないのは何故だろう。布団の上から退いてくれないと起き上がることもできないし、下手に動いたら崩子ちゃんと接触してしまうので身動きもできない。有体に言えばとても窮屈だった。
「崩子ちゃん、いつになったらぼくの上から退いてくれるのかな?」
「え? ……ああ、すみません。今退きます」
 崩子ちゃんはそそくさと立ち上がってそのまま部屋の隅っこまで行ってしまった。その顔が少し赤いような気がするのは、さっきの状況を恥ずかしがっているのかもしれない。
 ぼくは布団から出て、緊張していた体を解すために軽く柔軟をして、それが終わった後に大きく伸びをする。
 一通り眠気も吹き飛んだところで、朝の挨拶をする。
「……ん。おはよう、崩子ちゃん」
「おはようございます、戯言遣いのお兄ちゃん」
 時間が経ったことで落ち着いたのか、それとも忘れたのか分からないけど、崩子ちゃんはいつもどおりの無表情を浮かべている。ひょっとしたらさっきの赤い顔はぼくの見間違いだったのかもしれない。寝起きだったし、それは充分有り得る。
 そんな些細な疑問は心の底に閉まっておいて、とりあえず一番気になるところを質問する。
「どうして崩子ちゃんがぼくの部屋にいるの?」
 というか、どうやって入ってきたんだろう。
 いくら社会不適合者であるぼくでも、さすがに自分の部屋の施錠ぐらいはしている。昨日も寝る前にきちんと確認したから、入ってくる隙間は無いはずなんだけど。
 崩子ちゃんは、そんなことかといった風に「それはですね」と口を開いた。
「天井裏から直接来たんです」
「……またなの?」
「またですね」
 天井を見上げてみると、人一人ぐらい通れそうな穴がぽっかりと開いていた。この前修繕したところだというのに、この子はこのアパートを壊す気なのだろうか。直すのには時間もお金もかかるから、あまり乱暴なことはしないで欲しい。
 崩子ちゃんはぼくの気持ちに気付いているのかいないのか、相変わらずの無表情で何を考えているのかさっぱり分からない。
まあ、ぼくに他人の気持ちが読めるような能力は備わっていないので当然なのだが。というか、自分の気持ちも分からないのに他人の気持ちなんて分かる訳が無い。
「……ま、いいや。それじゃ、最初の質問。どうしてぼくの部屋にいるの?」
就職記念にここ半年書いたSSを晒してみる
54 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2010/04/26(月) 17:28:22.97 ID:hPjhEPuw0
「寂しかったからです」
「寂しかった?」
「寂しかった」
「えっと…………」
 崩子ちゃんの口から『寂しかった』などというおおよそ似合わない言葉が飛び出してきたことに困惑するぼく。まさかそんな理由が返ってくるとは思わなかったので、どう対応すればいいのか分からなくなる。
 どうしたものかと悩むぼくに構わず崩子ちゃんは勝手に話を進める。
「萌太は早朝からバイトに行っていますし、みい姉さんもお友達とどこかへ遊びに行ったようですし」
「だからぼくの所に来たと」
「そうです。お兄ちゃんはいつも暇していますから大丈夫かなと」
「別に、いつも暇を持て余している訳じゃあ無いんだけどね……」
「嘘ですね」崩子ちゃんはばっさりと言い捨てた。「ここ最近のお兄ちゃんは実に暇そうでした。外に出ないで部屋に閉じ篭っている人を暇人と呼ばずして何と呼ぶのですか」
「それは世間一般的に引き篭もりと呼ばれてるんじゃないかな」
 一応ぼくの名誉のために言っておくと、ぼくは引き篭もりではない。ただ、色々な人から借りた本がいい加減溜まってきたので消化していただけだ。
 根暗であることは認めるが、引き篭もりと呼ばれるぐらいまで落ちこぼれているつもりはない。
「ま、ぼくも今日は暇だし、別にいいけどね。でも、ぼくなんかと一緒にいても楽しくないと思うよ?」
「その台詞は、『ぼくも今日は』の間違いではないですか? それにわたしは楽しさを求めている訳ではありません。暇さえ潰せればいいのですから」
「……そう」
 少しはオブラートに包んだ言い方を覚えたほうがいいと思うけどそれは置いておこう。
 崩子ちゃんはあまりにずけずけ言いすぎるきらいがあるけど、そこもまた個性には違いないのだから。
「ん、まあ。ぼくなんかでよければどんどん暇つぶしに使ってくれて構わないよ。今日限定だけど」
「ありがとうございます」
 そう言って素直に頭を下げる崩子ちゃん。
 たまにはこんな日も悪くないかもしれない。



fin
妹「便所飯おいしいなぁ…ぐすっ…」
4 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2010/04/26(月) 17:28:40.02 ID:hPjhEPuw0
                           __,,:::========:::,,__
                        ...‐''゙ .  ` ´ ´、 ゝ   ''‐...
                      ..‐´      ゙          `‐..
                    /                   \
        .................;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;::´                      ヽ.:;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;.................
   .......;;;;;;;;;;゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙      .'                            ヽ      ゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙;;;;;;;;;;......
  ;;;;;;゙゙゙゙゙            /                           ゙:               ゙゙゙゙゙;;;;;;
  ゙゙゙゙゙;;;;;;;;............        ;゙                             ゙;       .............;;;;;;;;゙゙゙゙゙
      ゙゙゙゙゙゙゙゙゙;;;;;;;;;;;;;;;;;.......;.............................              ................................;.......;;;;;;;;;;;;;;;;;゙゙゙゙゙゙゙゙゙
                ゙゙゙゙i;゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙;l゙゙゙゙゙
              ノi|lli; i . .;, 、    .,,            ` ; 、  .; ´ ;,il||iγ
                 /゙||lii|li||,;,.il|i;, ; . ., ,li   ' ;   .` .;    il,.;;.:||i .i| :;il|l||;(゙
                `;;i|l|li||lll|||il;i:ii,..,.i||l´i,,.;,.. .il `,  ,i|;.,l;;:`ii||iil||il||il||l||i|lii゙ゝ
                 ゙゙´`´゙-;il||||il|||li||i||iiii;ilii;lili;||i;;;,,|i;,:,i|liil||ill|||ilill|||ii||lli゙/`゙
                    ´゙`゙⌒ゞ;iill|||lli|llii:;゙i|||||l||ilil||i|llii;|;_゙ι´゚゙´
ようじょ、ようじょようじょ、ようじょようじょようじょ〜〜♪
2 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2010/04/26(月) 17:29:51.54 ID:hPjhEPuw0
.          \\      ,土ヽ l 十  ├  ゝ‐、ヽ ll               尸  //
            \\  (ノ ) | Cト、.Cト、   ノ l_ノ よ  ̄ ̄ ̄ (⌒/   //
                   .....       .:_ -― ─- 、:.    ......
                  ..::⌒>.、:: ...::/::.::/::.:: ヽ::.::.\::....::x<⌒::.
              ::x-=≦.::.-=`ミO.:/:/:/|:./.:ハ::ヽ::`O::-=ミて`く⌒ヽ::
            ::, イ::ノ⌒'Z _⌒ Y彡::./V  j/ヽ::ハ.::.V::Y⌒/;^)- 入 \:
           ::/ :/八  '(:::::':,\ トV::./⌒     ⌒ヽ.::∨/,.::'::/  /:::∧  '\::
           ::/ `V::/ヽ\ \ :':, 八W __    __ jハ:::l, :':::::, ′ /:::/   ̄ ノ\::
        ::〈   ,.:'::/   ヽ \ \:l:ハ| 〃⌒    ⌒ヾ ハ:|::::/  ,.イ:::/     ∠.::勹::
       ::/ ! :.'::::∧   |  ヽ  \ム .:::::  r ┐ ::::.,'ノ/  / /::/   |__:/::
     ::∠._jハ_ん:ヘ/}ノ /ヘ  ヽゝ_  ヽ ノ   イ/  /⌒ん'⌒)_>::
                     ̄   ̄`ヽ   `=≧r ‐i彡''´  /::     ̄
                      ::\ヽ   ` ´   / /::
                       ::          ,′
                       ::i  :;     :;  i::
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                        ::,′           l::
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55 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2010/04/26(月) 17:31:28.52 ID:hPjhEPuw0
 素直になれない。

 ――誰かが背中に乗ってくる気配で目が覚めた。
 ドスンドスンという音が体に響く。恐らく背中の上で跳んだり跳ねたりしているのだろう、これでぼくの背骨が折れたりしたらどうしてくれるんだ。
 というか、こいつは一体誰だ。結構勢いよくトランポリンしている割にあまり重くないところを見ると子供のようだが。
「師匠ー、早く起きてくださいー」
 姫ちゃんだった。
「10秒以内に起きないと師匠の首が飛ぶですよー」
 中々恐ろしい脅しである。
 姫ちゃんなら本当にやりかねない。
「じゅー、きゅー」
「……起きてるよ」
「わわっ」起き上がりながら声を出すと、姫ちゃんは驚いたようにぼくの背中からずり落ちた。いや、常識的に考えればリアクションは関係無くてぼくの背中が水平になったことが原因だろうけど。「師匠、起きてたですか!」
「ついさっきね。誰かさんが人の背中の上でトランポリンを始めたせいで目が覚めちゃったよ」
「へー、そんな酷いことする人いるんですねー」
「…………」
 きみだよ、きみ。
 ため息をひとつ吐いて枕元に置いてある携帯電話のディスプレイを見る。

 6:30

 とても健康的な朝だった。ほとんどの学生が起床する時間帯だ。
 だけどどうしてこんな時間にぼくを起こしにきたのだろう? 不真面目大学生であるぼくは昼まで寝ていることが多いというのに。
 そこまで考えてそういえば姫ちゃんは高校生だったということを思い出した。なるほど、出発の挨拶をしに来たのか。
 つーか、自分で行かせておいて忘れるなんて、ぼくもかなりやばいな……。
「姫ちゃん、気を付けてね」
「ほぇ? 何のことです?」
「何って、学校行くんだろ? 最近は不審者が出てるらしいから気を付けるんだよ」
「何言ってるですか師匠。姫ちゃん学校になんか行かないですよ」
「姫ちゃんこそ何言ってるのさ。学校サボっちゃ駄目じゃないか」
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56 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2010/04/26(月) 17:31:45.23 ID:hPjhEPuw0
「それ、師匠にだけは言われたくないです……」姫ちゃんは呆れたように言う。「サボりとかじゃなくて。姫ちゃん、今日は学校休みですよ?」
「え?」
 驚いて振り返ると、不思議そうな表情をしている姫ちゃんが目に入った。そして、問題は着ている服だ。
 姫ちゃんは当然セーラー服を着ているものだと思っていたけど、着ているのは普通の服だった。リボンがたくさん付いている、姫ちゃんの外出服。
 ちなみに、背中からずり落ちたそのままの体勢でいるために、ミニスカートが結構な位置まで捲れていてかなり際どかったが、そこはあえてスルーしておく。いや、だってぼくに幼女趣味は無いし。
「姫ちゃん、参考までに教えて欲しいんだけど、今日って何曜日?」
「師匠、そんなことも忘れちゃったですか? 師匠の頭は烏並みですね」
「……烏って頭いいだろ?」
 烏→×
 鳥→○
 かなり惜しい間違いだった。
「今日は土曜日ですよ、師匠。昨日は金曜日だったじゃないですか」
「いやその理屈はおかしい」
 間違っては無いけれど、どこかずれているような気がする。
 でも、そうか……今日は土曜日か。最近は日付の感覚が曖昧で困る。そんなに忙しくしているつもりは無いんだけど。
「師匠、最近は本の牛だったですからねー」
「牛になってどうする」何でこう単語レベルの間違いが多いんだこの子は。「でも、まあ、確かに最近はずっと本を読んでたからね。食事も一日一食だったし」
「不健康極まりないです」
「でもぼくは3日間水だけで生活することもできるからね」
「言い訳になってないです」
 Exactly(そのとおりでございます)
 まさか姫ちゃんに言葉で負けるとは思わなかった。ぼくは両手を上げて降参する。
 姫ちゃんはそんなぼくを物珍しそうに眺めて、その後ようやく体勢を整えた。
「ところで、姫ちゃんは何で起きてるの? 学校が休みならこんな早起きしなくてもいいと思うんだけど」
「師匠みたいに堕ち切った人間と一緒にしないでください」姫ちゃんは頬を膨らませた。「普通の人はこれぐらいの時間に起きるのが当たり前です」
「いや、それはどうかな。ぼくの他にも昼まで寝てるような人間がいるかもしれないだろ」
 そしてぼくの周囲の人間で考えたけど途中で止めた。どう考えてもぼくの周りに普通の人間はいない。
 変質者誘引体質。子荻ちゃんも面倒な言葉を教えてくれたものだ。
「それじゃ、姫ちゃんはどうしてぼくの部屋に来たの? 見ての通り、ぼくはぐっすり眠っていたんだけど」
「もちろん、師匠を起こしに来たですよ」
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57 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2010/04/26(月) 17:32:04.32 ID:hPjhEPuw0
「そりゃまたどうして」
「その前にひとつ」姫ちゃんはぼくを制するように、長い人差し指をぴんと立てた。「師匠に確認したいことがあるのですが」
「何? 言ってごらん」
「理由が無いと遊びに来ちゃ駄目ですか?」
「…………」
 言葉に詰まった。
 ひとつは、まさかそんなことを訊かれるとは思っていなかったから、どう答えればいいのか分からなかったことから。
 ふたつは、ようやく言葉を見つけ出して軽くいなそうと思っても、姫ちゃんがあまりにも率直にその言葉を口にしたために、戯言を遣おうと思えなかったことから。
 戯言遣いが戯言を遣えない、遣わないなど笑止千万だが、仕方無い。飾り気の無い真っ直ぐな言葉を真正面から放たれては、それをかわす術などありはしないのだから。
 だけどぼくは往生際が悪い。
「別に……そんなことはないけど」
 どうしても素直になれないぼくはここまでの譲歩が精一杯で、とてもじゃないが『来てもいい』なんて言えない。
 しかし姫ちゃんはそんな返事に充分満足したようで、花の咲くような穢れの無い笑顔を見せてくれた。
「はいっ!」

「――ところで、どうしてぼくを起こしに来たの?」
「あー、それはですね。姫ちゃん早く目が覚めちゃって暇だったですから、師匠で暇潰ししようかと」
「やっぱり帰れ」



fin
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58 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2010/04/26(月) 17:34:56.67 ID:hPjhEPuw0
「よう。起きたか」
 なにやら美味しそうな匂いがしたので目を覚ますと、零崎がキッチンで料理をしていた。
 どうやら身長が届かないらしく、小さな箱の上で器用にバランスを保ちながらナイフで食材を切っている。
 ……いや、問題はそこじゃない。
「零崎。何でお前がここにいるんだ?」
「お前に会いに来たんだよ」
「冗談でも気持ち悪いから止めろ」
「冗談だって」
「冗談でも気持ち悪いから止めろ」
「二度も言うなよ……」
「いやそこで落ち込むなよ」
 ぼくが反応に困るだろ。
 会話を続けながらも零崎はナイフを動かし続けている。時折、バランスを崩して箱から落ちそうになっているが、その都度ナイフを床に投げて、その反動で元の体勢に戻ってくるという荒業を披露してくれた。
 そのうち床を貫通しそうで怖い。いや、いくら零崎でもそこまではしないだろうけど。
「おい、人間失格」
「なんだ、欠陥製品」
「この際『どうして』なんて訊くのは止めてやる」
「そらありがてーや」
「だけど、『どうやって』この部屋に入って来れたんだ?」
 骨董アパート改め塔アパートになったここは、以前よりも防犯設備が整っていて、鍵がかかっていたと思うのだけれど。
 だけど所詮は鍵。その気になればぶち破ることは可能だろう。暴力に訴えれば。
 しかし零崎はこう見えて案外マナーを守るやつなので、そういう非常識な手段は使わないだろう。
 となると――
「あー? んなもんこれが一本ありゃ充分だろ」
 そう言って零崎はエプロンのポケットからナイフを取り出した。ナイフというか錐に近い。
 アンチロックドブレードだった。
 やっぱりか。
「それはぼくのだろ」
「元は俺のだろうが」
「そう言われてみるとそうだったような気がしないでもないでもないでもない」
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59 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2010/04/26(月) 17:35:14.38 ID:hPjhEPuw0
「どっちだよ」
「さあ?」
 零崎はようやく全ての食材を切り終えたみたいで、それら全てを手掴みでボウルの中に放り込んでいき、最後に塩コショウをどっぷりかけてそれをぼくの目の前まで持って来た。
「食え」
「嫌だ」
「なんでだよ。俺の手作りだぜ?」
「きみの手作りとかいうのはどうでもいい」
「どうでもいいってことぁねぇだろ。じゃあ何か他に理由でもあるのか?」
「ある」
「言ってみろ」
「きみは最後に塩とコショウを振りかけたよね」
「ああ。調味料は料理の最後に使うものだぜ?」
「……それについては議論が必要だが今は置いておこう。問題はその量だ」
「量がどうしたよ?」
 零崎は意味が解らないといった風になる。
「ちゃんと味が判るぐらいには入れてやっただろうが」
「きみは味覚音痴なのか?」さすがにぼくも呆れてくる。「こんな大量に入れて、判るもクソも無いだろ。こんなのを食ったら舌が死んでしまうよ」
「んなわけねぇだろうが」
「まあとりあえずぼくは食べない。いや、食べられない」
「じゃあこれどうするんだよ」
「捨てればいいじゃないか」
「アホか。お前、食べ物を粗末にしちゃいけませんって習わなかったのか? お前がそんなことを言っている間にも、子供たちは飢餓で苦しんでるんだぞ」
「……まさか殺人鬼に説教されるとは思わなかったな」木賀峰助教授を思い出したのは秘密ということで。「それじゃあ、きみが食べればいいじゃないか」
「俺が食べるのか?」
「ああ。ぼくが食べれないんだからそうするしか無いだろ。――もっとも、きみは全部を食べきることはできないだろうけどね」
「俺が食べるのかー……」零崎はぼくの言葉に耳を貸さずに、ブツブツと何かを呟いている。「んー……、まあ、しゃーねぇか」
 勝手知ったる他人の家、と零崎は当たり前のように箸を持って来た。
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60 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2010/04/26(月) 17:36:40.02 ID:hPjhEPuw0
「食うのか」
「食えって言ったのはお前だろうが」
「まあそうだけど……」
 ぼくの態度に不審がりながらも、零崎はおもむろに料理をひとつ箸で挟み、それを口の中へと放り込んだ。
「ぶふッ! ……んだこりゃ……」
「だから言っただろ……」
 零崎はとんでもなく料理が下手だった。というか本当に何をしに来たんだろう。



Fin

あ……人間関係買うの忘れてた
そろそろ小悪魔agehaがやらかす頃だよな
2 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2010/04/26(月) 17:37:45.60 ID:hPjhEPuw0
そろそろビックバンが起こってもおかしくない
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61 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2010/04/26(月) 17:39:49.15 ID:hPjhEPuw0
 大事にします。

 恥ずかしながら風邪を引いてしまった。
 正直な話ぼくは風邪を引かない体質だと思っていたので、突然やってきた夏風邪という症状に戸惑いを隠せない。
 体を動かそうとすると節々が痛み出し、起き上がるのを諦めて布団の中でじっとしていても頭痛は絶え間無く襲ってくる。ある意味骨折とかよりもしんどいのかもしれない。
 この状態だから病院に行くこともできないし、ただ布団の中で苦しみを味わうだけ。
 電話で旨くらぶみさんと繋がれば何とかなるかもしれないが、さすがにそれをすることは躊躇ってしまう。というかこの状況であの人のテンションについていく事はできないからやらないけど。
 さてどうしたものかなと思いながら今朝みいこさんが置いていってくれたポカリ(2lペットボトル)を直に口に含もうとすると、何者かにペットボトルを攫われてしまった。
「……誰?」
「わたしです」
 崩子ちゃんだった。
「お兄ちゃんが珍しく風邪を引いたと聞いたので、お見舞いに来ました」
「お見舞い、……ねえ」病室以外の所でその言葉を聞くのは何だか不思議な感じがした。「ん、まあ、ありがとう。見ての通りだからぼく一人じゃどうにもならないし、正直どうしようか迷っていたところなんだ」
「そうでしょうね。正直、わたしも普通の風邪でお見舞いをした経験が無いのでどうすればいいのか分かっていません」
 そんなことを言いながらも崩子ちゃん、2lのペットボトルから500mlのペットボトルへと手馴れた様子でポカリを移している。この辺りの器用さはこの年代の子だと持ち合わせていないもので、素直に感心させられる。
 最後にストロー付きのキャップを取り付けて、崩子ちゃんはそれをぼくの枕元に置いた。
「飲むときはゆっくりと少量で飲んでくださいね。勢いよくがぶ飲みすると戻してしまうかもしれないので」
「それぐらい分かってるよ……。子供じゃないんだから」
「たとえそうであっても、わたしは言うべきことならはっきりと言います」
 何故かそこだけ力を込めて言う崩子ちゃん。少女とはいえ女の子、既に母性を持ち合わせているのかもしれない。
 ま、崩子ちゃんは面倒見いいからな……。
 ストローに口をつけてポカリを飲み、ほっと一息吐く。
「ん……少しは体が楽になったかな」
「それはなによりです」
 言いながら崩子ちゃんは水に浸した手ぬぐいをぎゅっと絞って、ぼくの額の上に被せた。
「どうですか?」
「冷たくて気持ちいいよ。ありがとう崩子ちゃん」
 素直にお礼を言うと、崩子ちゃんは一瞬面食らったような表情をして、その一瞬後には顔を赤くしていた。
 照れてる……?
「寝てください」
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62 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2010/04/26(月) 17:40:08.44 ID:hPjhEPuw0
「え、でも」
「でもじゃありません。風邪を引いたときは寝るのが一番です」
「そうなの?」
「そうなんです」
「しんどいからそう簡単には寝られないよ」
「いつも惰眠を貪っている人の言う台詞じゃありませんね」
 はあ……とため息を吐く崩子ちゃん。どうやら呆れている様子。ぼくが何かおかしいことを言ったような感じだけど、そんなこと言ったかな?
 そんなどうでもいいことを考えていると、不意に左手が柔らかく包まれた。
「何してるの?」
「お兄ちゃんの手を握っているのです」
「いやそれは見たら分かるけど」
 ひんやりとした崩子ちゃんの両手は、火照った体を冷ますのにちょうどよくて、左手から体の熱が逃げていっている。
 だけどそれは触れた部位から熱が移動しているだけであって、逆に崩子ちゃんの体温が上がってしまう。ついでに言うと、汗をかいているからべたべたして気持ち悪い。
「わざわざそんなことしなくてもいいよ、崩子ちゃん。不快なだけだろ?」
「それはわたしが決めることです」崩子ちゃんは言う。「そんなことを言う暇があれば早く寝て、風邪を治してください」
 ぼくが口を開こうとすると、それを制するように崩子ちゃんが頭を撫でてくる。
「お兄ちゃんが元気にならないと、わたしたちも面白くありませんから」
「…………」
「おやすみなさい、戯言遣いのお兄ちゃん」
「……うん。おやすみ」
 そして、ぼくの意識は深い闇へと沈んでいった。

 ***

 頬がくすぐったくて目が覚めた。
 目を開けると、崩子ちゃんがぼくの頬を抓ったり引っ張ったりしていた。
「あ、目が覚めましたか」
「……何してるの?」
「何もすることがなくなったのでお兄ちゃんの体で遊んでいました。どうして勝手に寝ちゃったんですか」
「寝ろって言ったのは崩子ちゃんじゃないか……」
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63 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[やっと20%……先は長いな]:2010/04/26(月) 17:41:04.39 ID:hPjhEPuw0
 酷い言い草にショックを受けていると、崩子ちゃんは「冗談です」と笑った。
「体の調子はどうですか?」
「うん? ん、そうだね、だいぶ楽になったよ」
「そうですか。それはよかったです」
「崩子ちゃんのおかげだよ」
「はいはい」
 あっさりといなされてしまった。
 それでは、と崩子ちゃんは立ち上がる。
「もう帰るの?」
「はい。これ以上遅くなると萌太がうるさいですから」
「そっか……気を付けてね」
「すぐ上の部屋なのにどう気を付けるというのですか」
「冗談だよ。今日はありがと」
「また遊びに来ますね」
 最後に「夕飯は台所に置いておきましたから」と一言残して、崩子ちゃんはぼくの部屋からいなくなった。
 いつもなら気にならない扉の音が、今日はやけに気になる。やっぱり病気のときは少し弱気になってしまうのだろうか。
「……とりあえず、おなか空いたな」
 崩子ちゃんが作ってくれた晩御飯を取りに行こうと布団から這い出る。
 ――と、そこでぼくが着ている寝巻きが今朝と違うことに気が付いた。
「………………え?」
 確かに目が覚めたときに汗の感触は感じなかったけど、まさか着替えてたなんて思わなかった。通りで体が軽い訳だ。
 そこまで考えてはっと気付く。一体これは誰が着替えさせたのか。
 常識的に考えてぼくでは無いだろう。寝ながら着替えるなんて芸当はそう簡単にできるものじゃない。
 となると崩子ちゃんか……。
 まったく、どこまで面倒見がいいんだか。将来はきっといいお嫁さんになること間違い無しだな。
「ん、そういえば下着も変わってるような気がするな」
 いやまさかそんなことは無いだろうと思ってこの時点で見るのを止めておけばよかった。そうすればこんな思いをすることは無かったのに。
 ズボンを少し引っ張って、その隙間から中を覗き込むと、トランクスがブリーフに代わっていた。
「――崩子ちゃんッ!?」
 その声はアパート中に響いたらしい。fin
>>5のエロフォルダ全開
49 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2010/04/26(月) 17:42:44.92 ID:hPjhEPuw0
この先zipが貼られたとしたら
>>1は間違いなく「パス教えてください」と言う
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64 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2010/04/26(月) 17:44:27.10 ID:hPjhEPuw0
 予定はないけど。

「師匠の部屋って本当に何もないですよねー」
 姫ちゃんは何の前触れもなく、そう言った。
 それは遠回しにぼくの部屋を非難しているのかと思って文句を言おうとしたが、当の本人はそんなつもりはなかったようで、姫ちゃんは先の発言を忘れたかのように再びお手玉を投げ始めたのでぼくは口を閉じた。
 今日はどうにも調子が悪いみたいで、六個が限界らしい。本日七回目の失敗を終えた姫ちゃんは陰鬱そうにため息を吐く。
「はあ……調子激悪です」
「ぼくから見れば六個でも充分凄いと思うけどね」
「そりゃ師匠みたいな堕落し切った人間から見ればそうでしょうけどー。主観的に見て今日の姫ちゃんは最悪です」
「何気に酷いことを言うじゃない」
 姫ちゃんが愚痴を言うのは非常に珍しいことだが、生きているのだから愚痴の一つや二つはあって当然だから別段驚くことはない。
問題は、愚痴の中にぼくへの嫌味が入っていることだ。愚痴を聞くだけで面倒なのに、その上口撃を受けるのだから堪ったもんじゃない。微妙に的を射ているところも含めて。
 これは話を変えたほうがよさそうだと判断したぼくは、ちょうど数分前に言われた姫ちゃんの言葉を借りることにした。
「そういえば姫ちゃん。さっきぼくの部屋を非難された気がするんだけど」
「そんなこと言ってないですよ?」
「言ったよ。『師匠の部屋って本当に何もないですよねー』って」
 ついでに声帯模写をやってみたが、ぼくには向いていなかったようで、気持ち悪い裏声が部屋に響くだけだった。
 姫ちゃんは冷たい視線でぼくを見ている。
「……一応訊いてみるですけど、今のは姫ちゃんの物真似ですか?」
「そうだよ。そっくりだっただろ」
「全然。純粋に気持ち悪かったです」姫ちゃんは言う。「師匠、本当にそっくりだと思っているのでしたら病院に行ったほうがいいですよ」
 ぼくの一世一代のギャグは姫ちゃんによって抹消された。というか真正面からバッサリと斬り捨てられた。
 やっぱりあの空気でこの冗談は失敗だったようだ(狙ったけど)。
 姫ちゃんは深くため息を吐いた。
「……まあ、確かにそんなことは言ったような気がするです」
「つい数分前のことなんだけどね。あれはどういう意味で言ったの?」
「意味なんてないですよ。ただの感想です」
「ふうん……感想ね」
 まあそんなところだろうとは思っていた。いくらぼくでも、本気で『非難されている』なんて考えるほど頭は悪くない。
 この時点で姫ちゃんの愚痴から逃げるという目的は達せられたのだからこの話題は用済みなのだけど、なんとなく話を続けてみることにする。
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65 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2010/04/26(月) 17:44:54.94 ID:hPjhEPuw0
「すると姫ちゃんはぼくの部屋に遊びに来るたびにそんなことを考えていたのかね?」
「そうですよ。不思議でしょうがなかったです。どうして何もないんだろうってずっと思ってたです」
「まあそうだろうね。ぼくの部屋を見た人はみんなそんなことを言うから、多分みんなが疑問に思ってるんだろう。その疑問を持たない人間なんてこの世に五人もいない」
「じゃあ単刀直入に訊くですけど、どうしてこの部屋には何もないんですか?」
「よく訊いてくれたね。その質問にはこう返すようにしているんだ」ぼくは一泊置いて、そして再び口を開く。「どうして家具がないと駄目なんだい?」
「はい?」
 姫ちゃんはぼくの言葉に面食らったような表情になった。まあ、当然の反応だ。
 まさかこんな言葉が返ってくるとは思わなかったのだろう。「え? え?」といかにも困惑している様子だ。まあ、当然の反応。
「だってそうだろう? 家具なんてなくても生活はできる。最低限の衣食住さえあれば、多少の不自由はあるものの死ぬことはない」
「それはそうですけど……。でも、世間一般で考えれば家具がないなんてのはおかしいです。常識的に異常ですよ」
「世間一般? 常識的? おいおい姫ちゃんしっかりしてくれよ。常識なんてのを信用できるものだと思ってるのか? ぼくに言わせれば常識こそが異常だね」
「…………」
 姫ちゃんは言い返せなくなったみたいで、口をつぐんでしまった。というか、全部屁理屈なんだからこれぐらいは論破してくれないと困る。そんなのじゃぼくの弟子は名乗れないぞ。弟子じゃないけど。
 さすがにこのまま放っておくのは可哀想だったので本当の理由を教えてあげることにする。出血大サービスだ。
「まあ、本当のことを言うと、部屋が狭くなるからってことなんだけどね」
「はい? 部屋が狭くなるから……ですか?」
「そ。まさかさっきのぼくの言葉が本音だなんて思ってないよね? ぼくだって家具は必要だと思ってるよ」ぼくは言う。「だけど、家具なんて置いちゃうとその分部屋が狭くなっちゃうだろ?」
「そりゃそうですよ。部屋が広くなったり、家具が小さくなったりするわけないですから、その分部屋は狭くなるです」
「うん、そうだろ。だから嫌なんだ」
「部屋が狭くなるから?」
「部屋が狭くなるからさ」
「……そうですか」
 姫ちゃんは頭痛を抑えるように頭を押さえた。姫ちゃんが偏頭痛でも持っていない限り頭痛の原因はぼくの言葉だろう。はっきり言ってぼくの理屈は一般常識からかけ離れている。
一般人が聞いたら呆れるか理解できなくて怒るかの二択に違いない。理解しようと努めてくれるだけ、姫ちゃんはまだマシだ。
 しばらく経っていくらか頭痛が治まった様子の姫ちゃん。
「でも、家具がないと不便じゃないですか?」
「はっきり言って不便だね」
「それでも家具を置こうとは思わないのですか?」
「思わないね」
「部屋が狭くなるから?」
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66 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2010/04/26(月) 17:47:47.74 ID:hPjhEPuw0
「それもあるんだけど、隣室に見事な反面教師がいるからね。何かあったらと思うと踏み出せないんだよ」
 反面教師とは言うまでもなくみいこさんのことだと分かったようで、姫ちゃんはなるほどと頷いた。
 結構な回数、骨董品の整理を手伝っているぼくだからこそ同じ失敗を恐れてしまう。
「それに、ものを所有すると言うことは、それだけ自分の責任が増えるってことだからね」
「どういうことですか?」
「んー。言葉で説明するのは難しいんだけど、例えばぼくが部屋に箪笥を置いたとする」
「ふんふん」
「そして地震が起きたとする」
「ふんふん」
「さあどうなる?」
「どうなる? って……どうにもならないと思うですけど。地震に対して人間ができることなんて皆無です」
「ああ、まあそうなんだけど」何て説明すればいいのだろうとぼくは悩む。「地震が起きたら当然建物が揺れる。建物が揺れれば当然部屋も揺れる。部屋が揺れれば家具が揺れる。
すると家具が倒れてくるかもしれない。ひょっとしたら倒れた先にぼくがいて、下敷きになるかもしれない」
「ですね。師匠がヒキガエルになる様子が見えるです」
「……、まあ、この場合は実害を受けるのはぼくだけだから問題はない」
 本当は大有りなのだけどそこは置いておく。
「だけど、例えば何かの拍子に床が抜けたりしたらどうだろう? その下の人に迷惑がかかるかもしれないだろ?」
「そんなの、確率的には零に限りなく近いですよ」
「でも、有り得ないとは断言できないだろう? それに、老朽化が進んだこのアパートなら充分に有り得る」ぼくは言う。「自分の責任を背負うだけでも精一杯なのに、その上所有物の責任も背負わされるなんてことは耐えられないよ」
「…………」
 姫ちゃんはまたも言い返せなくなったようで口をつぐむ。今回もなかなか屁理屈が多いのだがさてさて気付いているだろうか。
 しかしながらこれはぼくの本心なので言い返されても困るのだが。せいぜい戯言を使って曖昧にするぐらいだ。
 ぼくは手を大きく叩いて話をまとめ上げる。
「それに、家具なんて置いてるとアパートから出て行くときに面倒だからね」

fin


匠千暁シリーズって知ってる人居るかな
多分居ないだろうね……
オススメのエロマンが教えて下さい
43 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2010/04/26(月) 17:49:50.10 ID:hPjhEPuw0
>>34
思いました
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67 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2010/04/26(月) 17:51:30.21 ID:hPjhEPuw0
 人間関係は最初が肝心です。

 アメリカはテキサス州ヒューストンから帰国して一週間。
 ぼくはみいこさんに紹介してもらった新住居でのんびりと平日の午前を満喫していた。これでも一応は大学生なのだが、今日はどうにも大学に行こうと思えなかったので学生らしくサボタージュ。
 ただでさえ旅行のせいで授業に遅れているのにこんなので大丈夫なのかと心配ではあるが、まあ何とかなるだろう。授業についていけなくなったら中退すればいいだけの問題だ。最低限クラスメイトとの挨拶は済ませたし。
「んー……挨拶か」
 そういえばアパートのみんなとは挨拶したっけか。したような気もするし、してないような気もする。ぼくは記憶力の悪さに定評があるから、この場合はどっちなのか判断できなかった。
少なくともみいこさんとはしてるはずだけど。というか紹介してもらったんだから当然だ。
 さすがに一週間も経ったのだから挨拶ぐらいはしてるはずだと思うのだけど……自信が無い。だったらこの場合は、まだ挨拶をしていないと仮定して行動するのが吉か。
もしすでに挨拶を済ませていたとしてもぼくが恥をかくだけだし、引っ越して挨拶もしないような男だとレッテルを貼られるよりもマシだろう。
 ということで早速行動開始。
 さすがに寝巻きのまま外に出ることはできないので、簡単にジャケットを羽織ってドアを開けた。冷たいけど気持ちのいい風が吹いてきて未だ寝癖の残る頭を撫でていく。ぼくは軽く身震いをして、それからゆっくりと階段を降りていった。
 一階には歌手の卵の人が住んでいるとかなんとか。そんなことをみいこさんが言っていた気がするので、何か歌ってもらおうと思って来てみたのだけれど、『浮雲』と書かれたネームプレートを見て、そして可愛らしいノッカーのついたドアを見てため息を吐いた。
 正確にはドアに貼られたA4サイズの紙――そこに書かれた文字を見て。
『ボイトレに行ってくるので帰りが遅くなります。用がある人はここにメールしてきてください(メールアドレスは個人情報保護のために秘匿)』
 つまるところ外出中。そういえば今日は平日で、普通の人はどこかに出かけているのが当然の日だった。みいこさんもバイトだって言ってたし。早くもぼくの計画は白紙になってしまった。
 この分だと他の人たちもどこかに行っていると考えるべきかもしれない。どうりでアパートの中にぼく以外の気配が無かった訳だと納得する。納得して、再びため息を吐いた。
「はあ……」
 部屋に戻って昼寝でもしようか……いやいや。せっかく外に出たのだから、少しはそれらしいことをしておかないとぼくの行動に意味が付属しない。天気もいいし散歩でもしてみよう。
 そう思い直して玄関を出たところで、ワンピースを着て大きめの麦藁帽子を被っている女の子と出くわした。
「おおっ?」
「…………」
 しゃがんでいるので背丈はよく分からないけど、たぶん小さいだろう。小・中学生ぐらいだろうか。サンダルのサイズが足に合っていないようでそのうちすっぽ抜けそうだ。
 こちらに背を向けているため何をしているのかさっぱりと分からない。花壇に向かっているところを見ると花の世話でもしているのかもしれない。
 気になったので後ろから近付いてみた。
 虫を殺していた。
 右手に持ったサバイバルナイフでグサグサと。
「……何してるの?」
「虫を殺しているんです」女の子は振り向かないで言った。「それぐらい、見たら分かるでしょう? 戯言遣いのお兄ちゃん」
「いや、そりゃまあ。見たら分かるけどさ……ん?」
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68 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2010/04/26(月) 17:52:38.13 ID:hPjhEPuw0
 この子は今何と言った? ぼくの耳が間違っていなければ「戯言遣いのお兄ちゃん」と言ったように聞こえたのだけれど。
 ぼくが急に黙ったことを不思議に思ったのか、女の子は「どうしたのですか?」とぼくを振り返った。
 振り返ったことでようやく見えた女の子の顔。麦藁帽子で顔の半分が隠れているためほとんどが見えなかったけど、肌がとても白いことは分かった。
いっそ蒼白とでも表現したほうがいいかもしれない。それと対照的に、唇だけが妙に赤い。
 全体的に人形みたいな風貌をしていて、ぼくはしばし見惚れてしまっていた。
「えーと。ぼくのことを知ってるの?」
「はい。最近引っ越してきた方ですよね」
「ああ、やっぱり知ってるんだ」
 ということはさっきのはやはり聞き間違いじゃなかったようだ。さらにぼくの呼び名を知っているところから考えて、ぼくはすでに一通りの挨拶を済ませていたらしい。
ということはぼくもこの子のことを知っているはずなのだけど、何故か記憶に無い。
 こんな特徴的な子、一度見たら忘れないと思うのだけど……。ナイフで虫を殺す可愛い女の子なんて、第一印象からして忘れないはずだ。
 それともぼくの記憶力はそこまで落ちぶれてしまったのだろうか。ありえないと断言できないあたりが恐ろしい。
「……その様子だと、お兄ちゃんはわたしのことを憶えていないようですね」
「うん、ごめん」
「はあ……」
 女の子はため息を一つ吐いた。その動作はあまり似合ってなくて、きっと普段は呆れることが無いのだろうなと思った。逆説的に考えて、ぼくはそれだけこの子を呆れさせたのだろう。
 無表情に少しだけ呆れの混じった目でぼくを見上げて、女の子は口を開く。
「わたしの名前は闇口崩子です」
「崩子ちゃんだね。うん、憶えたよ」
「ちょっとした事情があって兄と一緒に家出中です」
「家出……。ふうん」
「これから、よろしくお願いします」
「ああ、うん。こちらこそよろしく」
 ぺこりと頭を下げる崩子ちゃんにつられて、ぼくも頭を下げる。
 頭を上げると、崩子ちゃんはまだぼくを見ていた。何か訊くことは無いか、ということらしい。
「お兄さんは何ていう名前なの?」
「石凪萌太といいます」
「萌太くんね、うん、憶えたよ。ちなみに、崩子ちゃん、歳はいくつ?」
「12歳です」
「学校はどうしたの? もしかしてサボり? 駄目だよ崩子ちゃん。学校にはちゃんと行かないと」
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69 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2010/04/26(月) 17:53:06.36 ID:hPjhEPuw0
「お兄ちゃんと一緒にしないでください。わたしは家出中ですから、学校には行っていません」
「へえ、そうなんだ。じゃあ、萌太くんも?」
「はい。萌太も学校には行っていません。代わりに生活費を稼ぐためにバイトをしています」
「ふうん……大変だね。もしお金に困ったらぼくに言ってよ。少しぐらいならあげるから」
「戯言遣いのお兄ちゃんがそれを言ったのはこれで二度目です」
「そうなんだ」
「はい。萌太にも同じことを言っていました」
 残念ながら憶えていないが、崩子ちゃんがそういうのなら本当なのだろう。ぼくの記憶力よりは崩子ちゃんの発言を信じたほうがいい。
 ここまで当たり障りの無い質問をしてきたところで、そろそろ一番気になったことを訊いてみることにする。
「どうして崩子ちゃんは家出なんてしたの?」
「……それは、」崩子ちゃんは迷うように口を閉じた。「…………家業が嫌だったからです」
「家業? 魚屋さんとかってこと?」
「いえ……それよりもずっと醜い商売です」
「ふうん……」
 あんまり立ち入ったことは聞かないほうがよさそうだ。
「だから、家出を?」
「はい。普通の女の子になりたかったから――外の世界に出ました」
「……普通の女の子に、ね」ナイフで虫を殺すのは普通なのだろうか。「萌太くんも、同じ理由で?」
「萌太は……よく分かりません。わたしのためだとか言ってましたけど」
「崩子ちゃんのため?」
「はい。『崩子がやりたいことをサポートするのがぼくの幸せですから』と言ってました」
「妹思いのいいお兄さんだね」
「『ぼくの可愛い妹にまとわりつく悪い虫を排除するのも兄の務めです』とも」
「……少し重過ぎないか?」
 排除するって、穏やかじゃないぞ。崩子ちゃんのナイフを見た後だから、なおさら。鉈とか鎌で人殺しするんじゃないだろうな……。さすがにそれは無いか。無いと思いたい。
 訊きたいことも訊けたし、もう充分だろう。ぼくは崩子ちゃんに背を向けてアパートに戻ろうとした。
「自分の部屋に戻るのですか?」
「そうだよ」
「では、何のために外に出てきたのですか」
「天気がいいし散歩でもしようと思ってたんだけどね。崩子ちゃんとのお喋りが楽しすぎたから散歩する気が無くなっちゃったんだよ」
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70 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2010/04/26(月) 17:53:50.07 ID:hPjhEPuw0
「……それでは、もう散歩はしないと?」
「まあ、そのつもりだけど……。どうかしたの?」
「いえ、わたしも散歩するつもりでしたので戯言遣いのお兄ちゃんも一緒にどうかなと思ったのですが」
「あー……そういうことね」
「興味が無くなったのなら仕方ありません。わたしひとりで行ってきますので」
「…………」
 歩く背中が少し寂しそうに見えるのはぼくの気のせいだろうか。ぼくは太陽の傾き具合を確認した。昼ごはんにはまだ早い。
 ぼくは早足で崩子ちゃんの隣に並ぶ。
「……何ですか?」
「いや、何となく散歩したくなっちゃったからね。よければご一緒させてもらえないかな、なんて」
「そうですか」
「一緒にいい?」
「どうぞご勝手に」
「ありがとう」
 おずおずと差し伸べられた左手を右手で優しく握り、ぼくと崩子ちゃんは歩き出した。



fin
オススメのエロマンが教えて下さい
53 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2010/04/26(月) 17:55:09.81 ID:hPjhEPuw0
>>50
dd
人を幸せにする能力  or  人を不幸にする能力
12 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2010/04/26(月) 17:56:44.39 ID:hPjhEPuw0
世界中の人々を幸せにするより
不幸せにするほうが遥かに世の為になる
だから俺は後者を選ぶぜ!
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71 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2010/04/26(月) 17:57:45.97 ID:hPjhEPuw0
 遊びましょう。

 散歩がてら、巫女子ちゃんから譲り受けたベスパに乗って鴨川に出かけると、川を挟んだ向こう側に知った顔が二つあった。
 一つは、姫ちゃん。
 もう一つは、崩子ちゃんだった。
 あの二人が一緒にいるなんて珍しい。ぼくはベスパを停めて二人を見遣る。しかし、ぼくの2.0の視力を以てしても二人が何をしているのかよく分からなかった。
 仕方なくぼくはベスパから降りて川を越えることにした。当然、一足で越えることはできないので川の間にある石を渡って行く。
 亀の形をした石からジャンプして、ようやく向こう岸に到着。なんとなく来た方向を見てみると、ベスパが点のように小さくなっていた。
「さてさて、姫ちゃんたちはどっちだったかな?」
 歩き出してしばらくすると、何かに躓いてこけそうになる。左足でどうにか踏ん張って足元を見ると、何匹かの鴨と鳩がいた。
 ただし、そのどれもが死んでいる。鴨は胸に何かで抉られたような穴が開いていて、鳩は首が切断されていた。
「…………」
 なんか、大体予想できたような気がする。
 再び、今度は足元に注意しながら歩を進めると、ようやく姫ちゃんたちが見えてきた。
「まだわたしが勝ちましたね」
「まだまだです! 姫ちゃん諦めませんですよー!」
 二人はは川の浅瀬でばしゃばしゃと走り回っていた。この言葉だけなら何も悪いことは無くてむしろ健康的なのだけれど、問題は二人の両手だ。
 姫ちゃんは両手に黒い手袋をはめていて、崩子ちゃんは右手にナイフを握っていた。
 ぼくは足を停めて、少し離れた位置から二人を観察することにした。いや、そうせざるを得なかった。あんな二人の格好を見て出て行くほどぼくは命知らずじゃない。
 ジグザグが手袋をはめているということは、つまりこの一帯には糸が張り巡らされているということだし、崩子ちゃんは少しでも気配を感じたら容赦なくナイフを投げてきそうな雰囲気だ。
「またわたしの勝利ですね」
「ぐぬぬー。どーして勝てないですか? さては崩子ちゃん、ズルしてますねー!」
「そんなわけ無いでしょう。大体、姫姉さまの糸があるこの状況でズルなんてできるはずがありません」
「ですかー。じゃあ、やっぱり姫ちゃんが弱いってことですかねー」
「弱いというわけでは無いでしょうけれど、姫姉さまの技は基本的に受身ですからね。しかもここは屋外ですし、狙った場所に上手く糸を投げられないのではないでしょうか」
「んー、そうかもしんないですね」
「姫姉さまが糸の位置を変えている間にわたしはナイフを30回は投げられますからね。単純に殺せる量が違いすぎます」
「むー、やっぱりインチキですよー。条件が間違ってるですー」
「そんなことを言われても……。第一、やろうと言い出したのは姫姉さまじゃないですか」
「そうですけどー。……あ、そうです! 崩子ちゃんを束縛すればいいじゃないですか」
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72 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2010/04/26(月) 17:58:20.96 ID:hPjhEPuw0
「それだと勝負にならないですよ」
 会話から察するに、二人はなにか勝負をしているみたいだ。制限時間内に何匹鳥を殺せるかってところか。外で遊ぶのは元気でいいことだけど、もっと健全な遊びは無かったのだろうか。
 そういえば、周りには誰もいないな。まあ、目の前でこんな虐殺ショーを繰り広げられたら誰だって逃げるか。ひょっとしたら警察に通報する人もいるかもしれない。
 ……ん? もしそうだったらやばくないか? その内警察が来て二人を連行するかもしれない。二人ともまだ未成年だから逮捕されることは無いだろうけど、しかし鴨を殺している点でなんらかの罰を受ける可能性も出てくる。
 その前に逃げないと後々面倒くさいことになりそうだな。ぼくには関係ないからどうだっていいけど。いや、ひょっとしたら姫ちゃんの保護者として一緒に連れて行かれるかもしれない。本当の保護者は別だけどそれの代理として。
 うわー、面倒くせえ……。さっさと終わってくれないかな……。
「それでは、次でラストにしましょうか」
「今度こそ負けませんですよ」
 と、二人がラストバトルをおっぱじめようとしたとき、突然背後から強い風が吹いてきて、思わずぼくは前のめりに倒れかけた。なんとか左足を踏み出して踏ん張れたけど、問題はそこじゃない。
 足音を立ててしまったせいで、二人の意識が同時にこっちに向かってくる。
 姫ちゃんは糸でぼくを拘束して、身動きができなくなったぼくに向かって崩子ちゃんが一直線にナイフを突きつけてきて――
「――――!」
 それはぼくの服を一枚刺し貫いたところでぴたりと停まった。
 崩子ちゃんは一瞬驚いたように目を見開いて、だけどすぐ後にはいつもの冷めたような無表情になる。
「……覗き見とは趣味が悪いですね、戯言遣いのお兄ちゃん」
「別に、意図的にそうしたわけじゃあないんだけどね」
「師匠ー」姫ちゃんが息を切らせながら走ってくる。「あ、生きてますねー。残念です」
「残念とはまた酷い言い草だな、姫ちゃん。弟子が師匠に向かってそんな口を利いていいと思っているのか?」
「師匠は師匠だけど師匠じゃないからいいんですよ」
「……そう。まあ、そんなことはどうでもいいから早く糸を解いてくれ。このままじゃ鬱陶しくてたまらない」
「はいです」
 姫ちゃんの手によってかけられた糸は姫ちゃんによって解かれる。
 なんつーか、かけるときは一瞬なのに解くのには時間がかかるってのもおかしな話だよな……。間違いなく姫ちゃんが動いたからだろうけど。
「ねえ、崩子ちゃんのナイフで切ったほうが早くない?」
「だめですよー。切っちゃたりしたらまた買わないといけなくなるじゃないですか」
「使い回すのかよ」
 無駄話をしている内に大半の糸は解けたので、自由になった両手を使ってぼくも糸を解きにかかる。
 崩子ちゃんは最初から最後まで手を貸そうとはしなかった。
「……ん、これで全部かな」
「ですですよ。後は姫ちゃんが周りの糸と合わせて回収するですから、サムライっててくださいです」
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73 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2010/04/26(月) 17:58:34.33 ID:hPjhEPuw0
「切腹しろというのか」
 正しくは待っててください。
 この間違いはすっかり定番になってるのに、未だに正しく言えないのはどうなんだろう。
「そういえば、お兄ちゃんはどうしてここに?」
「ん? 散歩がてらこっちに来たんだけど、そこで崩子ちゃんたちが見えたもんだから、なにをしてるのかなって思って見に来たんだよ」
 まさか鳥殺しゲームをやってるなんて思わなかったけど。
 そう言うと、崩子ちゃんはおかしそうに唇を歪めた。
「わたしがここで鳥を殺しているのはお兄ちゃんも知っているでしょう? それなら、なにをしているかなんて予想できると思いますが」
「崩子ちゃん一人ならね」ぼくは言う。「まさか姫ちゃんも巻き込んで鳥を殺してるとは微塵にも思わなかったよ」
「わたしは巻き込まれたほうなんですけれどね……」
「それはそれ、これはこれだよ。大体、殺した死骸はどうするつもりだったのさ」
「考えていませんでした」
「…………」
 さすがに絶句するぼく。
 まさかこのまま置いておくつもりだったんじゃないだろうな……。
「ああ、それは無いですよ」崩子ちゃんは何故か誇らしげにそう言った。「最終的に何も決まらなければお兄ちゃんに処分していただくつもりでしたので」
「ぼくを巻き込まないでくれよ……。ま、知っちゃったものはしょうがないし、今回はぼくが処分するけどさ」
「ありがとうございます」
 と、会話が一段落したところでようやく姫ちゃんが戻ってきた。
「師匠ー、ちゃんとサムライっててくれましたかー?」
「……いや、どうなんだろう」
 どう答えればいいのか分からず、語尾が曖昧になってしまう。
 姫ちゃんはそんなぼくの態度に首を傾げた。
「ま、いいです。さ、帰るですよ、師匠!」
「どうしてそんなに元気なのか分からないけど確かにそろそろ帰らないとまずいね」時間的にも警察的にも。「だけどその前に殺した鳥を持って帰るから二人も手伝ってね」
「わざわざ持って帰るんですか?」
「こんな所にほっぽっておくのも可哀想でしょ」
「よく分からないですねー。まあ、よく分からないからこその師匠ですけど」
「……それは遠回しに侮蔑しているのか?」
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