トップページ > ニュー速VIP > 2010年04月10日 > 0NzTE2lA0

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以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします
◆XSSH/ryx32
女魔術士「魔王探し?」
勇者♀「死にたい」
勇者「魔王は倒したのに世界は平和になんかならないんだ……」
一方通行「どうしてこうなった……」警官『犯人に告ぐ!今すぐ少女
一方通行「凍れる時の秘法…?」
ハルヒ「な、納豆菌セックスですって!?」
ゆとり「なんかおもしろいことないかなあ」
男「どうしてこうなった」
長門「私が……プリキュア……?」
唯「異次元に行く方法…?」

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女魔術士「魔王探し?」
125 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage]:2010/04/10(土) 00:00:12.83 ID:0NzTE2lA0

勇者「……ルフ様は?」

側近「顔をあわせるのがお嫌なのだそうだ。当然だろう」

勇者「そうだな……」

側近「それで? 今回の用事は何だ?」

勇者「ああ、実はな……」

     ・
     ・
     ・

側近「ふむ、地獄の賢者……」

勇者「地獄の場所を教えてほしい」

側近「それなら魔王山を下りてまっすぐ西だ。レジボーン山脈の峰の一つにその入り口がある。ただ気をつけろ、あそこは魔物でもそう気軽には入らん。それなりの覚悟がないと生きて出られんかもしれんぞ」

女魔術士「魔王探し?」
126 : ◆XSSH/ryx32 [sage]:2010/04/10(土) 00:04:06.26 ID:0NzTE2lA0

男の娘「“地獄”って何なんですかぁ?」

側近「この世界と異世界との間の隙間だ。過去と現在とが重なる場所でもある。並みのものでは発狂しかねん。覚悟はあるか?」

男の娘「シェロさんにとっては今更ですよぉ」

勇者「……その通りだ」

女魔術士「……」

側近「そうか、ならいい。……しかし、地獄の賢者か」

勇者「もしかして、知ってるのか?」

側近「もしや……いや、憶測で語るのはやめよう。ただ、過去に世界書の情報を人間界に流した魔物がいるとは聞いている。それかもしれんな」

勇者「なるほど」

側近「ほしい情報は得たのだろう? さっさと行くがいい」

勇者「そうするよ」

女魔術士「魔王探し?」
127 : ◆XSSH/ryx32 [sage]:2010/04/10(土) 00:08:26.30 ID:0NzTE2lA0

勇者「……ところでお前さ」

側近「なんだ?」

勇者「顔色、悪くないか?」

側近「もともとだ」

勇者「いや確かにそうなんだけど、前回に比べるとなんだかちょっと……」

女魔術士(そういえば、確かに……)

側近「……気のせいだろう。早く行け」

勇者「……。もし、さ」

側近「?」

勇者「俺たちに手伝えることがあれば、言ってくれよ。力になるから」

側近「……早く、行け」

勇者「おう」

女魔術士「魔王探し?」
128 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage]:2010/04/10(土) 00:12:07.93 ID:0NzTE2lA0

前回と同じように城の裏口から外に出た。
山頂の西に立って遠くを眺める。はるか向こうに確かに山脈が見えた。あれがレジボーン山脈だろう。目測で一週間強だろうか。

魔王山を下りて最接近領で弾薬や武器や旅用の装備を補給。一路西へ向かった。
今までは草原や平地を行くことが多かったが、今回は荒野だった。しかも街道のない道なき道を行くので今までよりも体力の消耗が激しい。
誰も何も言わなかったが、その無言がむしろ疲労の度合いを表していた。

この中で一番体力があるのはもちろんシェロだ。しかし次がわからない。カシスは男だがひどく華奢だし、そんなに体力があるようには見えない。もしかしたら私のほうが体力があるかもしれない。
と思ったのだが。
一番最初にガタが来たのはわたしだった。

女魔術士「魔王探し?」
129 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage]:2010/04/10(土) 00:16:12.00 ID:0NzTE2lA0

女魔術士「……ごめんなさい」

勇者「いや、いいんだ。俺だってそろそろ限界だった。ここらで休もう」

男の娘「無理しちゃだめってことですねぇ。ゆっくり休みましょう」

女魔術士「ごめんなさい……」

勇者「いいっていいって」

女魔術士「魔王探し?」
130 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage]:2010/04/10(土) 00:20:17.70 ID:0NzTE2lA0

シェロはともかく、カシスにまで気を使われたのはショックだった。
わたしは、二人の足を引っ張っているのか。そう思うと、なんだかやるせなくなった。

わたしが再び魔術を使えるようになったら状況は変わるだろうか。こっそり小さな魔術構成を編んでみた。しかしそれを実現するための魔力がない。枯渇してしまっている。
わたしは力なくうつむいた。
シェロは何か気がついているのだろう。わたしのほうを何度かちらちら見ていたが声をかけてはこなかった。

と、そのとき座っていたカシスが音もなく立ち上がった。

女魔術士「魔王探し?」
132 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage]:2010/04/10(土) 00:28:39.01 ID:0NzTE2lA0

男の娘「……」

勇者「どうした?」

男の娘「……」

女魔術士「……?」

男の娘「……来ます!」

女魔術士「魔王探し?」
133 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage]:2010/04/10(土) 00:31:34.82 ID:0NzTE2lA0

その声と同時だった。わたしは背中に衝撃を覚えて転がった。背中を蹴られたと気付いたのは一瞬後だった。そしてそのときには事態は動き出している。

シェロが罵声を上げながら抜刀するのが目のはしに見えた。ついで影が彼に襲い掛かるのも。
私はみっともなく手を振り回して起き上がると、やっとのことでテンペストを抜いた。
同時にカシスの呪文が響く。

女魔術士「魔王探し?」
134 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage]:2010/04/10(土) 00:34:08.63 ID:0NzTE2lA0

男の娘「“狸のスタンピィィード!”」ブワ ビシュシュシュ!

勇者「うわ、うわわ!」

女魔術士「きゃあああ!?」

女魔術士「魔王探し?」
135 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage]:2010/04/10(土) 00:36:09.42 ID:0NzTE2lA0

広く何かが降り注いだ。手足や顔に痛みを覚える。しばらくして降り止んだ無形のそれは、どうやら細かい衝撃波だったようだ。

何をするのかとカシスを怒鳴りつけようとして、七歩ほど離れたところにいる“敵”に気付いた。
荒野の風にはためく黒衣。どんな表情も映さぬ仮面。魔王城の裏口にいた奴らだ。
どうやらカシスは彼らの間合いを外すため、あえて広範囲の魔術を放ったらしい。そのダメージはほとんどないが、攻撃と見れば距離をとらざるを得ない、というわけだ。

相手は、三人。

女魔術士「魔王探し?」
136 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage]:2010/04/10(土) 01:00:24.89 ID:0NzTE2lA0

勇者「カシス、これはどういうことだと思う?」

男の娘「さあ……わかりません。ただ、あの元帥って魔物と一緒にいたのは間違いありません」

女魔術士「……」

女魔術士「魔王探し?」
139 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage]:2010/04/10(土) 01:02:17.81 ID:0NzTE2lA0

こんなときにわたしは何を考えているのだろう。シェロが私じゃなくてカシスの方に質問したのはただの偶然かもしれないのに。

わたしは想像以上に荒野の旅に疲れていたのかもしれない。急いで気持ちを目の前の敵に移した。幸い、いまだ相手は動きを見せていなかった。
ただし先ほどの奇襲を考えるに、いつまた死角を取られるかはわからない。

女魔術士「魔王探し?」
140 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage]:2010/04/10(土) 01:04:06.51 ID:0NzTE2lA0

勇者「なにやらわからないが、どうやらこいつらを倒さなきゃいけないらしいな……」

男の娘「よぉし、がんばりますよぉ!」

女魔術士「……」

黒衣s「……」

勇者「――行くぞ! 遅れるな!」ダッ!

男の娘「はぁい!」ダッ!

女魔術士「この……!」ダッ!

黒衣s「……」ススス……

女魔術士「魔王探し?」
141 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage]:2010/04/10(土) 01:06:22.29 ID:0NzTE2lA0

相手は三方に分かれた。わたしたちも同じように分かれる。一対一の構図になった。
わたしはその中の一人に向かって、銃の有効範囲まで一気に距離をつめた。その距離三メートルほど。相手に向けて牽制の一発を放つ。

銃声と共に駆け抜けた弾丸は対象のすぐ脇を飛び去った。だが、それは想定のうちだ。この牽制で相手の動ける範囲を絞りさらに一発、今度は本命弾を放つ。

相手はそのままではあたると見ると横にとんだ。それを追いかけて銃口の先を滑らせた。相手はそのままこちらに対し円を描くように走った。回避行動。しかし当てられそうにないときは撃たない。これはレイに習った基本中の基本だ。

相手はこちらが撃たないと見ると向きをこちらに変えた。チャンスだ。引き金を引き――

その前に目に痛みを覚えた。それに動揺して銃口がぶれ、弾丸があさっての方向にに飛んでいく。
気付く。石を投げられていたのだ。
このままでは踏み込まれる。わたしはあせってさらに引き金を引いてしまった。目標を見失ったまま。

自制は瓦解しそのまま引き金を引き続けた。けれども永遠に続くはずもなくすぐに軽い手ごたえが返ってくる。弾切れ。
そして弾切れとは違う衝撃が手を襲った。

気がついたときには手の中に拳銃がなかった。横から蹴り飛ばされたのだ。悲鳴を上げたような気がする。

女魔術士「魔王探し?」
142 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage]:2010/04/10(土) 01:08:32.39 ID:0NzTE2lA0

左肩に熱い感触があった。激しく肌を焼き、しかし同時に体温を奪い去っていく。
転倒した。土の味が口に広がる。
肩を見るとナイフが刺さっていた。血が吹き出し、服を赤黒く染めた。
唐突に危険を感じて丸まった。けれども一瞬遅く、腹を猛烈な痛みが襲う。蹴り飛ばされて転がった。

起き上がろうとして再び蹴り飛ばされる。そしてもう一度。さらにもう一度。
痛みにうめく。もう起き上がれない。肩のナイフは抜けていた。
それは今、相手の手の中にある。
高々と振り上げられ、そして振り下ろされる。もちろんわたしに向かって。悲鳴を上げようとして失敗した。

刃が下りてくるのがやけにゆっくりと見えた。
ああ、死ぬんだ。
もう終わりか。

終わり?
そんなのだめだ……わたし、まだシェロに言ってないことがあるのに!

女魔術士「魔王探し?」
143 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage]:2010/04/10(土) 01:10:19.02 ID:0NzTE2lA0

勇者「“我は放つ光の白刃ッッ!”」ゴッ!


 ドガァッ!


黒衣1「っ……!」ドサ

勇者「ふっ!」ザク!

黒衣1「ッ……」ビクン!

勇者「……ハル、大丈夫か!?」

女魔術士「……」

勇者「おい! ハル! しっかりしろ!」

女魔術士「ぁ……シェロ……」

女魔術士「魔王探し?」
144 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage]:2010/04/10(土) 01:12:18.83 ID:0NzTE2lA0

わたし、生きてる。まだ生きてる。
痛みでうまく動かせないけど、身体はちゃんと残ってる。

シェロの助けを借りてゆっくりと身を起こした。
さっきまで戦っていた敵は、シェロの剣によって地面に縫いとめられていた。

女魔術士「魔王探し?」
145 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage]:2010/04/10(土) 01:14:09.19 ID:0NzTE2lA0

女魔術士「敵……他の敵……」

勇者「大丈夫だ、もう倒した。だから安心しろ。手当てをしよう、な?」

男の娘「こっちも片付きましたよぉ!」

女魔術士「魔王探し?」
146 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage]:2010/04/10(土) 01:16:10.29 ID:0NzTE2lA0

さほど傷もなくカシスがこちらに走ってくる。その向こうには黒衣の死体。
そこから離れたところにももう一つ。これはシェロが倒した分だろう。

ああ、そうか。
殺されそうだったのはわたし一人だったのか。
偉そうなことを言ってた割りにわたし一人だけだったのか。

それに気付いた途端、鼻の奥がきゅうっと詰まった。目の奥が熱くなる。

これじゃあ……

これじゃあわたしがほんとに足手まといじゃないか。

女魔術士「魔王探し?」
147 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage]:2010/04/10(土) 01:18:06.82 ID:0NzTE2lA0

勇者「お、おい、どうしたハル」

女魔術士「っ……うっ……」ジワ……

勇者「どうした? 傷が痛むのか?」

女魔術士「ひっ、うっ……うえっ」ポロ……

勇者「おい、ハル?」

女魔術士「グスッ……」ポロポロ

女魔術士「魔王探し?」
149 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage]:2010/04/10(土) 02:26:15.74 ID:0NzTE2lA0

わたしはかろうじて動く右腕で顔を覆って泣いた。
シェロはそれ以上何も聞かなかった。ただ、頭をやさしくなでてくれた。

その夜、わたしは夢を見た。シェロがわたしをパーティーから外す夢。
そこでも彼は優しくて、あくまでわたしを気遣いながら、それでも連れて行けないと断言した。

違う。わたしは気遣ってほしいんじゃない。やさしい言葉をかけられたいわけじゃない。
わたしを頼って。わたしを信じて。

……でも、そうだ。わたしには力がないのだ。
わたしには言う資格がないのだ。
わたしには……

翌朝泣きながら目を覚ました。



次の日は気が重かった。
前日恥ずかしいところを見せてしまったのもあったし、夢のこともあった。まさか正夢になることはないと思いつつも、もしかしたらと思うとぞっとした。

二人は特にこちらのことには触れてこなかった。わたしの前を並んで歩きながら主に昨日の敵についてあれこれ分析している。

女魔術士「魔王探し?」
150 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage]:2010/04/10(土) 02:27:56.28 ID:0NzTE2lA0

男の娘「あれは間違いなく、あの元帥って奴の手下ですぅ」

勇者「ああ、俺も同じ考えだ。だが、なぜ?」

男の娘「わかりませんけど、人間が嫌いだからっていう単純な理由でもボクは驚きませんよぉ」

勇者「今、魔界もいろいろと揺れてるんだ、きっと」

男の娘「側近の魔物も怪しいんじゃないですか?」

勇者「確かに嫌われてはいるがな。あんまりそういうことするような奴には見えなかったぞ?」

男の娘「そう見せかけてってこともありますぅ」

勇者「うーん」

女魔術士「……」

女魔術士「魔王探し?」
151 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage]:2010/04/10(土) 02:29:24.91 ID:0NzTE2lA0

どことなくギクシャクとした空気を引きずりながら、それでも話は白熱しているようだった。

それから三日が経った。現在レジボーン山脈山中。木一本ない岩肌。切り立った崖。その中の細い道を三人で伝っていく。渇いた風が吹いている。髪がばさばさと舞い上がった。

山中で夜を過ごし、次の日。わたしたちは山腹にぽっかりと空いた穴の前に立っていた。
人一人がぎりぎり通れるぐらいの大きさ。中からは生暖かい風が吹き出している。

女魔術士「魔王探し?」
152 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage]:2010/04/10(土) 02:30:18.06 ID:0NzTE2lA0

勇者「ここ、か?」

男の娘「みたいですね」

女魔術士「……」

勇者「ケルベロスはいないんだな」

男の娘「本物の地獄にはいるんでしょうけどねぇ」

女魔術士「……入る?」

勇者「ああ、もちろんだ」

女魔術士「魔王探し?」
153 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage]:2010/04/10(土) 02:31:16.95 ID:0NzTE2lA0

シェロ、カシス、わたしの順番で穴に入った。中には天然の階段が下に伸びている。
明かりとしてシェロが魔術の鬼火を生み出した。無機質な白い明かりが辺りを照らす。

それからどれくらい下りただろうか。もう一時間は下ったんじゃないかと思ったとき、ついに階段が途切れた。
穴から出て愕然とする。

女魔術士「魔王探し?」
155 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage]:2010/04/10(土) 02:33:01.71 ID:0NzTE2lA0

勇者「これは……」

男の娘「空がありますぅ……」

女魔術士「ここ、山の中よね……?」

勇者「……どうやら、ここが地獄で間違いないらしいな。俺たちの世界と異世界との狭間、か」

女魔術士「魔王探し?」
156 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage]:2010/04/10(土) 02:33:57.88 ID:0NzTE2lA0

空は紫色に濁っている。それでも視界に困らない程度には明るい。
辺りにはごつごつとした岩がそこここに転がっていた。草花は全くない。ここに来るまでに見た荒野や山の景色に似ている。

道が一本、足元から伸びていた。
この先に件の賢者がいるのだろうか?

女魔術士「魔王探し?」
157 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage]:2010/04/10(土) 02:34:50.68 ID:0NzTE2lA0

勇者「さあな。だが目当てになるものは他にない。この道をたどってみよう」

男の娘「賛成ですぅ」

女魔術士「ええ……」

女魔術士「魔王探し?」
158 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage]:2010/04/10(土) 02:36:27.89 ID:0NzTE2lA0

シェロとカシスが前、わたしが後ろ。その陣形で、あくまで慎重に歩を進めた。なにが出てくるかわからないからだ。
しばらく何事もなく進んだ。景色は変化を見せずに延々と続く。

変化が訪れたのは数分後だった。
わたしは背後に突然現れた気配に、泡を食って振り返った。
拳銃を引き抜く。

女魔術士「魔王探し?」
159 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage]:2010/04/10(土) 03:00:42.29 ID:0NzTE2lA0

女魔術士「誰!?」ジャキ!

?「……」

勇者「敵か!?」

?「……」

男の娘「……子供?」

少年「……」

勇者「……!」

女魔術士「何でこんなところに……」

女魔術士「魔王探し?」
160 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage]:2010/04/10(土) 03:02:55.85 ID:0NzTE2lA0

十歳ほどの少年がそこにいた。黙ったままこちらを見上げている。憮然とした目つき。
その子の顔に見覚えがある気がした。
いつか見た、というよりはむしろ見慣れているような。

少年が口を開いた。

女魔術士「魔王探し?」
161 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage]:2010/04/10(土) 03:04:30.11 ID:0NzTE2lA0

少年「……僕の村は焼けちゃったんだ」

男の娘「え?」

少年「ううん、違う。焼かれちゃったんだ」

女魔術士「?」

少年「僕は……いや、俺は復讐しなくちゃ……あいつらを殺さなきゃ……」

勇者「……」

少年「……もう行くよ」

女魔術士「え? ちょっとどこへ……」

女魔術士「魔王探し?」
162 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage]:2010/04/10(土) 03:05:19.01 ID:0NzTE2lA0

少年が道を曲がって岩の陰に入った。追いかけて角を曲がるがそこには誰もいない。
訳がわからない。振り返って2人を見る。
カシスも疑問符を浮かべてこちらを見ていた。
シェロは……

女魔術士「魔王探し?」
163 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage]:2010/04/10(土) 03:06:32.96 ID:0NzTE2lA0

勇者「過去と現在が重なる場所、か……」

男の娘「え? どうかしましたぁ?」

女魔術士「何か心当たりでもあるの、シェロ?」

勇者「……あれは俺だ」

男の娘「はい?」

勇者「昔の、俺だ……」

女魔術士「魔王探し?」
164 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage]:2010/04/10(土) 03:07:37.73 ID:0NzTE2lA0

シェロはどこか遠い目をして言った。
先ほどの少年によく似た顔で。

側近の魔物は言っていた。ここは過去と現在が重なる場だと。
ならば先ほどの少年は……

どうやらここは“そういう”場所のようだった。

女魔術士「魔王探し?」
165 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage]:2010/04/10(土) 03:08:43.28 ID:0NzTE2lA0

男の娘「過去の人間が現れる、ってことですか?」

勇者「おそらくそういうことだろうな」

女魔術士「……」

?「あの……」

女魔術士「!?」

女魔術士「魔王探し?」
166 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage]:2010/04/10(土) 03:10:01.73 ID:0NzTE2lA0

不意に声をかけられて、驚きながら振り返る。
そこには先ほどとは違う少年がいた。角が生えている。人間ではない、魔物だ。

魔物の少年は不安そうな目でこちらを見上げていた。

女魔術士「魔王探し?」
167 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage]:2010/04/10(土) 03:10:46.57 ID:0NzTE2lA0

男の娘「あ、かわいい……」

幼魔物「……あの、すみません。僕の父上と母上をご存知ありませんか?」

女魔術士「お父さんとお母さん?」

勇者「……」

女魔術士「ごめんなさい、知らないわ」

幼魔物「そうですか……ありがとうございました……」

女魔術士「魔王探し?」
168 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage]:2010/04/10(土) 03:12:59.42 ID:0NzTE2lA0

そういうと、魔物の少年は道を曲がって岩の陰に消えた。
一応追いかけて岩の後ろを覗いてみたが、やはりそこには誰もいなかった。

少し考えて、思い当たる。
あの魔物の少年は……

女魔術士「魔王探し?」
169 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage]:2010/04/10(土) 04:00:33.48 ID:0NzTE2lA0

勇者「ニギ……」

女魔術士「……」

勇者「絶対助け出すから……」

男の娘「モグリさん……」

女魔術士「魔王探し?」
170 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage]:2010/04/10(土) 04:02:50.23 ID:0NzTE2lA0

再び道に沿って歩き始めた。途中で数人の人間や魔物に出くわした。
不思議なことに彼らは常に視界の外から現れた。そういうルールらしい。

過去に親交のあった友人やら、学校の先生やら、昔付き合ってたあいつやら。その中に、家を飛び出して以来会っていない両親の姿も見つけた。最後に見たときよりもどちらも若い。母が赤ん坊を抱いている。おそらく私だろう。

わたしに関係のある人だけでなく、シェロやカシスの過去も現出した。

女魔術士「魔王探し?」
171 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage]:2010/04/10(土) 04:04:07.84 ID:0NzTE2lA0

女魔術士「あまり、居心地は良くないわね。変な感じ」

勇者「そうだな、同感だ」

男の娘「そうですかぁ? 楽しいじゃないですか」

?「楽しむだけの余裕がなければここではやっていけんよ」

勇者「!? 誰だ!」

女魔術士「魔王探し?」
172 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage]:2010/04/10(土) 04:06:20.41 ID:0NzTE2lA0

いつの間にか道は途切れ、わたしたちは湖のほとりについていた。
湖の水は血のように赤い。もしかしたら本当に血なのかもしれない。湖の周りにだけ、気味の悪い植物が生えていた。

声は目の前の岩陰から聞こえてきた。
低く、しわがれた声。地獄にふさわしい、地の底から這い出してくる亡者の声。
その主がゆっくりと姿を現した。

女魔術士「魔王探し?」
173 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage]:2010/04/10(土) 04:14:06.62 ID:0NzTE2lA0

?「ようこそ、勇者であり鋼の後継であるシェロ・フィンランディ。その仲間、ハル・ケットシーにカシス・ブルーベリー」

勇者「お前が“世界書の賢者”か。なぜ俺たちの名前を知っている」

賢者「名はユイスだ。君たちのことはゴーストたちが教えてくれたよ」

男の娘「ゴースト、ですか?」

賢者「君たちも見ただろう。地獄に渦巻く過去たちだ」

女魔術士「魔王探し?」
174 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage]:2010/04/10(土) 04:16:21.66 ID:0NzTE2lA0

ただれた肌、つりあがった目、耳まで裂けた口、枯れ木のような体躯、こうもりに似た翼。
ユイスの見た目はそのまま伝説上の悪魔のそれだった。賢者と呼ぶには人間らしさがなさすぎて違和感を覚える。

ユイスはこちらを見て口のはしを吊り上げた。
見ているものを恐怖させる悪鬼の笑みだ。
手に持った古い本を掲げてみせる。

女魔術士「魔王探し?」
175 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage]:2010/04/10(土) 04:18:09.10 ID:0NzTE2lA0

賢者「知っているぞ勇者。君の目的はこれだろう?」

勇者「それが、世界書か?」

賢者「その通り」

勇者「……渡してもらえないか」

賢者「そうやすやすと手に入るとでも?」

勇者「あんたと戦う理由はない」

賢者「私にもないな。だが、君たちがこれを持っていきたいとなれば話は別だ。私は全力で君たちを排除する」

勇者「……なぜ?」

賢者「君が知る必要はない。“ここで死ね”」

女魔術士「魔王探し?」
176 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage]:2010/04/10(土) 04:19:07.01 ID:0NzTE2lA0

それが呪文だったのだろう。急激に膨らんだ光が目を焼いた。
わたしは悲鳴を上げる。魔術が使えない今、私に防御手段はない。

爆音が轟き土煙が舞い上がる。わたしは自分が死んだと錯覚した。が、生きている。

土煙が吹き去り展開していた防御壁が消滅する。シェロが盾になってくれたらしい。

女魔術士「魔王探し?」
177 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage]:2010/04/10(土) 04:20:06.89 ID:0NzTE2lA0

賢者「ほう、完全に不意をついたつもりだったが……防いだか」

勇者「……あんたは過去に人間に世界書を渡している。今は駄目な理由があるのか?」

賢者「……」

勇者「あんたは人間の可能性に期待したんだろう? それで世界書を一度は譲ったんだろう? ならなんで……」

賢者「……私は絶望したのだよ」

勇者「……」

賢者「あんな絶望、一度で十分だ……」

女魔術士「魔王探し?」
178 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage]:2010/04/10(土) 04:21:14.45 ID:0NzTE2lA0

そう言うとユイスは世界書を岩陰に投げ、その手を掲げた。
瞬間、わたしたちは気圧される。それだけの圧迫感があった。

呪文の声と共に光熱波が空間を支配した。シェロが再び展開した防御壁をたたき、殴りつけ、打ち壊そうとする。
ようやく止んで視界が確保できたときにはユイスは先ほどの場所にはいなかった。

突如カシスが吹き飛ぶ。驚いてそちらを向くと、ちょうど蹴り足を戻したユイスと目が合った。
次はお前だ。視線がそう言っていた。

わたしは慌てて拳銃を抜いてそちらに向ける。そのときにはすでにユイスはわたしの懐に踏み込んでいた。

女魔術士「魔王探し?」
179 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage]:2010/04/10(土) 05:00:40.19 ID:0NzTE2lA0

賢者「シッ――!」シュッ!

女魔術士「がッ!」ドサ!

勇者「ハル!」

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