- キョン「俺。未来から来たって言ったら笑う?」
124 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[age]:2009/10/05(月) 01:13:27.25 ID:IsnQjFo50 - 「…………………」
「…………………」 約十秒の沈黙。その間、お互い目が合ったまま。俺の右手は肘が床に付いた形でハルヒの頭を抱え込んでいて、左手はハルヒがマフラーごと両手でギュッと胸の前で握っている そして馬乗り 「……こ、こ、これはだな。あ、頭を守ろうと…」 やっと喉から言葉が出せた。 目が合ったまま5cmの距離で会話する。 もしこれを谷口にでも見られたら、今度こそ言い訳はできまい。いや、谷口じゃなくても、この状況を見られたら言い訳はできまい。端から見れば、完全に俺がハルヒを押し倒し今にも唇を奪おうとしてる様にしか見えないだろう
|
- キョン「俺。未来から来たって言ったら笑う?」
125 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[age]:2009/10/05(月) 01:14:33.25 ID:IsnQjFo50 - ハルヒは下から俺を見上げたまま、口を一文字にし不安そうな表情で俺の瞳を覗いている。
「……ス、スマン!…」 ようやく我に返り俺はハルヒの上から体をどける。退く際、ハルヒの両手から左手は抜け、マフラーだけがスルりと俺の首から解け、ハルヒの手の中に残る。 あーあ、ぐでぐでに伸びちまってら 「?」 ハルヒは俺が離れて尚、横になったまましばらく黙って天井を見上げている。気絶してる訳じゃないよな…? 思いのほか頬が少し紅くなってるかもしれない。
|
- キョン「俺。未来から来たって言ったら笑う?」
128 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[age]:2009/10/05(月) 01:15:48.36 ID:IsnQjFo50 - 「ハルヒ?」
俺は沈黙に耐えかねハルヒの名前を呼んでみる 「…………」 ハルヒはまだ声を発しようとしない。 気まずさもあり、仕方ないので俺は窓の外に目を向ける。そろそろ7時を過ぎる頃だ。教師も誰かしら来ただろう。 外は先ほどより太陽も昇っていて、窓に付着した朝露に光が乱反射していて眩しい。そんな事を考えていると突然、心の声が出てしまったかの様な小さな声でハルヒが呟いた。 「……やっぱり夢とは違うのよ…」
|
- キョン「俺。未来から来たって言ったら笑う?」
129 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[age]:2009/10/05(月) 01:17:07.88 ID:IsnQjFo50 - 「は?」
俺はハルヒが何の事を言ったのか分からず。思わずそう声に出る 「…うるさいわね。独り言よ!」 倒れたままキッと顔だけこちらに向けそう叫ぶと、勢いよく立ち上がり。私先に行くわ!とドアの方に駆け寄る。 ドアノブを捻り部室から出る際ハルヒは一言 「昨日は……昨日は助かったわ」 下を向いてつっけんどんにそう口を動かし 「一応礼は言ったんだからね!」 と顔を真っ赤にしてそれだけで言うと、壊さんばかりに思い切り扉を閉めて行ってしまった… 全く何なんだアイツは…。礼くらい素直に言えば言いのによ。全く。 誰もいない部室で閉められたドアを見つめながら俺は一人思い、そして呟く 「俺のマフラー…」
|
- キョン「俺。未来から来たって言ったら笑う?」
133 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[age]:2009/10/05(月) 01:19:16.52 ID:IsnQjFo50 - その日から2日間は、夜に来る差出人不明のカウントダウンメール以外は特に変わったこともなく。放課後ハルヒによるハルヒの為の映画の構想を俺達はひたすら聞き続けるのみだった。
古泉も特別進展があった訳でもなさそうで、あまりあの事は口に出さない。 肝心な朝比奈さんはと言うと、これまた普段と大して変わってる様子もなく、特別何かを思い詰めてる感じでもない。 もしこれで朝比奈さんが演技で取り繕っていたとしたなら、俺は一生、女を信じる事は出来ないだろう そして、金曜の放課後から二泊三日の映画合宿が始まる。 なんと合宿所は部室。学校側には内緒だ。 一通り今日の撮影を終えた俺達は、ハルヒがわざわざ何処からか持って来た布団を、机を片付け床に敷き今日の反省会を始める ちなみに俺とハルヒはスウェット、古泉と朝比奈さんはパジャマで長門は相変わらず制服だ。風呂は運動部のシャワーを借りた。 「…だから違うわ!みくるちゃん!こう!こうじゃなくて、こう!」 ハルヒは熱心に布団の上で朝比奈さんに演技指導をしている。あぁあぁ、せっかく敷いた布団がめちゃくちゃだ
|
- キョン「俺。未来から来たって言ったら笑う?」
135 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[age]:2009/10/05(月) 01:21:03.34 ID:IsnQjFo50 - 生乾きの髪が非常にグッジョブですよ朝比奈さん。
俺と古泉は自分達の布団の上に寝転び。ハルヒを横目に肘をつきながら人生ゲームに勤しむ 長門も布団の上でいつも通り本を読んでいる。今日読んでいるのは著、筒井康隆のなんかだ 「あ、僕子供三人目です」 古泉の駒に水色のピンがもう1つ突き刺さる 「お前も頑張るねぇ」 「えぇまぁ仕方ありません…組織の仲間もカウントダウンが残り0日になったら、何が起こるのかを探るのに精一杯ですから…」
|
- キョン「俺。未来から来たって言ったら笑う?」
136 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[age]:2009/10/05(月) 01:22:08.50 ID:IsnQjFo50 - そう小声で古泉は俺に呟く。
違う、人生ゲームの話だ人生ゲームの 「あぁ後、お前が言ってたメールを送れる制限回数だってのは多分違うぞ。昨日の夜もきたよ、残り4日だとさ」 「そうですか…こっちの方でも少し朝比奈さんの行動を調べてみたのですが、特に変わった様子も無いみたいなんです」 「それはよかった。だがこうなると…」 「えぇ完全に長門さんに頼るしかないでしょう。情報璧の突破は最後の日ギリギリになりそうですが」
|
- キョン「俺。未来から来たって言ったら笑う?」
137 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[age]:2009/10/05(月) 01:23:53.06 ID:IsnQjFo50 - やれやれ。またいつも通り長門に頼るしかないのか…
もし長門がいなくなったりしたら俺は、長くは生きられん気がするな。 長門に目をやりながら頭にクリスマスの事件が蘇る 長門のバグとやらで世界が変えられSOS団団長涼宮ハルヒが消し去られたあの大事件。あの時長門はハルヒの能力を抽出し自分の物にして使ったと言っていた。それが可能という事はやはり長門のスペックは相当なものなのだろう。俺には詳しく分からないが漠然とそう感じる そしてそんなとんでもない奴からのハッキングを5日間も防ぎ続ける奴の力もそれに比例するのだろう。 読書に集中している様にしか見えないが、今も恐らく長門の中ではメールの発信源の特定にその能力を最大限向けてるハズだ 長門は本から二秒ほど目を離し、見つめる俺と目を合わせるとまた読書に戻っていった。 「とにかく、メールの発信源が分からない事にはどうにもなりません。今は焦っても仕方ないのは確かですよ」 そう言った古泉は続けて、上がりですと自分の駒をゴールに置いた 人が考えてる隙に
|
- キョン「俺。未来から来たって言ったら笑う?」
138 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[age]:2009/10/05(月) 01:25:51.70 ID:IsnQjFo50 - 結局、総資金で古泉は俺に負け。朝比奈さんの補修稽古もどうやら終わったらしい
「それじゃあ、トランプ大会よ!!」 ハルヒは、はしゃぎながらトランプをケースから取り出しそう言った 勘弁してくれ 「もう一時過ぎだぞ、それに明日も早いんだろ?そろそろ俺は眠い」 ヒットラーも真っ青な性格のハルヒに、無駄とは分かりつつ自分の意見を主張してみる 「SOS団初となる映画合宿なのよ!今夜は絶対寝かせるもんですか」 普通そのセリフは男が言うもんじゃないのか。 ハルヒはやはり俺の意見など問答無用とカードを全員に配り始めやがった。もう好きにしてくれ ピロリロリーン 残り3日
|
- キョン「俺。未来から来たって言ったら笑う?」
181 :1[age]:2009/10/05(月) 02:33:17.41 ID:IsnQjFo50 - 携帯にも猿の手が・・・
ちょうど半分くらいなのでまた明日残ってればここでなかったら僕が立てます というのはどうですか?
|
- キョン「俺。未来から来たって言ったら笑う?」
186 :1[age]:2009/10/05(月) 02:38:48.62 ID:IsnQjFo50 - みなさん保守大変だと思うので明日夕方6時に立てますので落としちゃってください
明日PCと携帯使っていっきに全部投下します
|
- キョン「俺。未来から来たって言ったら笑う?」
190 :1 ◆i.2tW2YWcp3s [age]:2009/10/05(月) 02:40:49.99 ID:IsnQjFo50 - >>185
ごめんなさい 明日絶対来ますすみません 一応酉を
|
- キョン「俺。未来から来たって言ったら笑う?」
191 :1 ◆i.2tW2YWcp3s [age]:2009/10/05(月) 02:41:55.33 ID:IsnQjFo50 - では駄文ホントにすみませんでした
また明日!!
|
- キョン「俺。未来から来たって言ったら笑う?」
242 :1 ◆i.2tW2YWcp3s [age]:2009/10/05(月) 18:00:03.75 ID:IsnQjFo50 - 9時までは10分に一回のペースで
「でもな長門、自分の命を犠牲にしてまで俺なんかを助ける必要はないぞ。いっつもお前を頼っちまってるが、あくまで俺とお前は対等な仲間なんだからよ」 どうやら分かったのか長門の首が僅かに上下した。そうそうハルヒもこんだけ素直なら少しは可愛げがあるってもんだ。 「アイツに少し分けてやってくれよ…」 思わず声にだしちまった。すると、今度は首を斜めに傾けそのまま静止する長門 「どうした?」 「違う」 だから何がだ長門よ 「涼宮ハルヒに分けるのではなく、私が涼宮ハルヒに分けられた」 「なんの事だ?頼むから主語を言ってくれ」
|
- キョン「俺。未来から来たって言ったら笑う?」
246 :1[age]:2009/10/05(月) 18:10:28.94 ID:IsnQjFo50 - 長門はこう続ける
「涼宮ハルヒが所有している願望実現能力」 あぁその事か。 あの大事件の時バクを起こしちまった長門はハルヒから能力を奪い去り、それを世界改変に使った。 しかし、その事はもう済んだ話で何を今更 「でも、もうその力はハルヒに返ったんだろ?」 不思議に思い聞いてみる 「厳密に言えば殆どを返した」 そう、返したんだよな… うん!? 今なんて言った長門よ。……殆ど?
|
- キョン「俺。未来から来たって言ったら笑う?」
247 :1[age]:2009/10/05(月) 18:19:55.29 ID:IsnQjFo50 - 「何を言ってるんだお前は?つ、つまり…」
「私の中にまだ願望実現を行うだけのエネルギーがおよそ二回分残留している」 おいおい初耳だぞそれは…そういう事はあの時に病院で言っといてくれよな… 「説明は不要。あの後すぐ私の中の残留エネルギーには情報思念体によるロックが施された。私からのエネルギーへの干渉は不可能。よって安全」 そう言ってのけられてもな…まるで原子炉が隣家にあるような気分だぜ。 「長門……今度からはそういう事は前もって言っておいてくれ。何か事が起こってから言われたとしたら流石に心臓がもたん」 了解した。とだけ言って長門は前に向き直った。
|
- キョン「俺。未来から来たって言ったら笑う?」
249 :1[age]:2009/10/05(月) 18:30:51.54 ID:IsnQjFo50 - 買い物を終え。ハルヒに渡す牛丼特盛りと温泉卵が入った袋を右手に、左手に古泉のカレーが入ったコンビニ袋を抱えながら部室の扉開けると。そこには古泉だけがポツリと残されて、お茶をズズズと吸っている。どうやらハルヒと朝比奈さんはいない様子だった。
「よう、帰ったぜ。ハルヒ達はどうしたんだ?」 ご苦労様です、と古泉は俺の右手にある荷物を受け取り机の上に置いた 「涼宮さん達はシャワーを浴びにいかれました」 あぁそう言えばシャワー室の電気がついてたっけな。 「お前はカレーでいいんだよな」 「えぇ。ありがとうございます」 まぁ分かるよ、その気持ち。たまに無性に食べたくなるよな。 珍しく古泉に共感しながらカレーを渡してやる。ほらよ。
|
- キョン「俺。未来から来たって言ったら笑う?」
252 :1[age]:2009/10/05(月) 18:38:36.34 ID:IsnQjFo50 - >>250
9時からペース上げて12時ぐらいに投下し終える予定です
|
- キョン「俺。未来から来たって言ったら笑う?」
255 :1[age]:2009/10/05(月) 18:40:41.95 ID:IsnQjFo50 - 「長門はシャワーどうする?」
昨日も浴びていないが、お前は普段風呂に入ったりするのか?いや、いやらしい意味はない。気になっただけだ やはり長門は首を横に振ると。コンビニ袋を机に置き、椅子の上に座りいつも通り本を開いた。 「暇になっちまったな」 いや、平和にの間違いだった 「フフ、やはり涼宮さんがいないと。物足りないみたいですね。どうです?一局」
|
- キョン「俺。未来から来たって言ったら笑う?」
256 :1[age]:2009/10/05(月) 18:48:36.22 ID:IsnQjFo50 - 俺が頷く前に古泉は将棋盤を棚から引っ張り出し、机に置いた。どんだけやりたいだ、お前。
特に断る理由もなかったので、そのまま一局打つことにして長門の隣に腰かける。 「あ、そう言えば先ほど機関から連絡がありましてね」 ジャラジャラと駒を盤上に出しながら古泉が呟いた。 「どうやら先程、この付近から涼宮さんが力を使った痕跡が検出されたようです」
|
- キョン「俺。未来から来たって言ったら笑う?」
259 :1[age]:2009/10/05(月) 18:58:14.68 ID:IsnQjFo50 - そうサラッと言ってのける古泉の顔に不安の色はない。
「というか。お前ら、ハルヒが能力を使ったかどうかなんて知る手段あったのかよ」 だったら最初から言えってんだ。ったくどいつもコイツもよ 「最近、機関の研究により開発されたのですが。要は我々が閉鎖空間を感知できる能力の応用ですよ。使われる力がごくごく小さな時の場合に限り、検知できる装置なんです。 例えば、あなたが買ってくる物が牛丼ならいいのにな。とかの程度ですね。世界改変や時間の切り取り、などといった、使われるエネルギーの桁が膨大なものに関しては、まだ検知出来ませんが。まぁ地震計みたいな物ですよ」 古泉の「説明しよう!」 を最後まで聞いて、何か分かった試しは今まで一度もないが、今のは何となくなく分かった。
|
- キョン「俺。未来から来たって言ったら笑う?」
261 :1[age]:2009/10/05(月) 19:07:56.88 ID:IsnQjFo50 - それにしても、お前の機関とやらはその内ショッカーでも量産しそうだな。
助けてジャンパーソーン!! 「なので、あまり心配する必要はないですよ。恐らくその程度の事ですので」 そう笑う古泉の顔から、さっき買ったコンビニ袋に視線をスライドさせる。 「思う壺と書いて俺と読むのかね」 笑ってんじゃねぇよ古泉 俺が王手をかけ、古泉がそろそろ降参ですと根をあげる頃にハルヒと朝比奈さんは部室の扉を開けた。
|
- キョン「俺。未来から来たって言ったら笑う?」
263 :1[age]:2009/10/05(月) 19:20:05.66 ID:IsnQjFo50 - 「うぅ〜寒い寒い」そう言ってまずハルヒが飛び込んで、続いて朝比奈さんが現れる。
「あ、帰ってたんですか?ちょっと待ってて下さいね。今お茶いれますね」 やっぱり朝比奈さんは、お帰りもありがとうも言わず、いきなりガサゴソと買ってきてやったコンビニ袋を漁る奴とは大違いだ。 ハルヒ。お前の事だよ。 「お!分かってるじゃないキョン!」 そう言ってハルヒはバリバリと牛丼のビニールを破った 「あ、でも温泉卵じゃなくて茹で卵が良かったわ」 善意のオプションにケチつけやがったコイツ。 まぁキョンにしてはやるじゃない。それを食前最後の言葉にハルヒはモグモグと食べることのみに集中した。やっぱりお前も腹減ってたんだな
|
- キョン「俺。未来から来たって言ったら笑う?」
264 :1[age]:2009/10/05(月) 19:28:49.57 ID:IsnQjFo50 - その日は昨日の寝不足もあったせいか、ハルヒも11時頃には床についてくれた。寝る前のハルヒによる明日の撮影の説明を聞くと、なんと今作ではハルヒも出演するらしい。もちろん悪役で。
しかし、そこは俺の布団なんだがな。仕方ないのでハルヒの布団で寝るとする。 「ちょっとトイレ行ってくるわ」 布団を敷き直し、寝る前にトイレでも行っとくかなと俺は部室を後にした。昨日も思ったが夜の学校というのは高校生になっても些か不気味に感じるものだな。 用を済ましSOS団のアジトへと続く暗い廊下を歩いていると不意に後ろに、何かの気配を感じた。 「キョンくん」 振り返ると同時に、その気配の主が声を発する。
|
- キョン「俺。未来から来たって言ったら笑う?」
270 :1[age]:2009/10/05(月) 19:39:29.93 ID:IsnQjFo50 - 「あ、朝比奈さん…」
朝比奈さん(大)だった。 お久しぶりですと軽く会釈する朝比奈さん(大)に俺は少々戸惑いながら挨拶を返す。 「どうしたんですか?こんな夜中に」 まぁ朝比奈さん(大)に時間もへったくれもないのだが 「私はキョンくんにあることを伝えるために来ました」 「また何かあるんですか…」 朝比奈さん(大)には悪いが、この人が現れて何か起こらなかった試しはない…
|
- キョン「俺。未来から来たって言ったら笑う?」
271 :1[age]:2009/10/05(月) 19:48:53.77 ID:IsnQjFo50 - まぁ朝比奈さん(大)は助言しに来てくれてるだけで、諸悪の根源は全部ハルヒなんだけどな
「で、今回はどんな既定事項を満たさなければならないんでしょうか?」 もうヤケだ。こうなったらロープレでもやる感覚でやってやる。 そう勝手に意気込んだ俺に予想外の返答が返ってきた 「分からないんです…」 ………………はい?今、分からないと… じゃあ朝比奈さん(大)は何しにここへ。 「今から2日後あなた達に何かが起きます。それをあなたに伝えるために来ました」
|
- キョン「俺。未来から来たって言ったら笑う?」
273 :1[age]:2009/10/05(月) 19:57:59.00 ID:IsnQjFo50 - 先程までのにこやかな顔から一転して朝比奈さん(大)の顔から笑みは消えた。何かってどゆことですか。
「率直に言うと今から2日後のあなた達の未来。つまり私達にとっての過去が未来からは観測出来ないんです。【出来なくなった】のではなく【元から出来ない】んです」 「え?それっておかしくないですか?」 だって朝比奈さん(小)はこれから、その『何か』を経験する筈なんですよね? 「それは分かりません…現に私の時間平面では2日後も何事もなく、部室でメイドさんの格好をしてお茶を淹れてました。でも…」 そう言うと今度は泣きそうな顔になり
|
- キョン「俺。未来から来たって言ったら笑う?」
275 :1[age]:2009/10/05(月) 20:05:58.14 ID:IsnQjFo50 - 「でも…それは、この時間平面とは違うんです…こんな事、他の時間平面上じゃ絶対にありえません。私達にも何が起こるか分からないんです…だから…私……私…キョンくんが…心配で……もしかしたら…って…思って無断で…来たんです…」
ついに泣き出してしまった。 (小)ならともかく、この朝比奈さんが泣き出し、更に無断で過去に来る。それだけで、それがどれほどの事態なのか俺には容易に想像できる 「泣かないで下さい朝比奈さん。あなたのせいじゃ、ありませんよ。それに俺達も2日後に何かあるのは知ってましたから」 俺の言葉を聞いた朝比奈さんはピクリと何かに反応し、泣き顔から急にキョトンとした顔に変化した。 「今…なんて?」 「はい?だから泣かないで下さい、あなたのせいではないですと…」 「違います、その後です」 「えと、俺達も2日後に何か起きると知ってると…」 朝比奈さんの目が見開かれる。まるで朝比奈さん(小)みたいに、え?え?なんで?と何やらあくせくしている。
|
- キョン「俺。未来から来たって言ったら笑う?」
276 :1[age]:2009/10/05(月) 20:06:49.62 ID:IsnQjFo50 - 20分ほどカレータイムをください
|
- キョン「俺。未来から来たって言ったら笑う?」
283 :1[age]:2009/10/05(月) 20:26:29.23 ID:IsnQjFo50 - 「い、一体どうしたんですか?4日前の火曜に話したじゃないですか。メールが来たって」
それは朝比奈さん(小)にだが。 昔の事すぎて朝比奈さん(大)は忘れてしまったのだろうか? 「私…私……私そんなの知らない…」 「え?」 朝比奈さんの目は俺の方を向いてるが焦点は完全に、俺の遥か後ろに合っていた。 俺はそのまま何かを考え込んでいる朝比奈さんに、月曜の深夜から毎日きているメールについて説明したが、朝比奈さん(大)は完全に覚えがないらしい
|
- キョン「俺。未来から来たって言ったら笑う?」
284 :1[age]:2009/10/05(月) 20:35:51.84 ID:IsnQjFo50 - 「や、やっぱり何かが変わってるんだ…私のいた時間平面と…どうしよう…なんとかしなくちゃ…」
そう独り言のようにぶつぶつ呟く朝比奈さん(大)は、差出人のアドレスを教えて下さいと俺に迫り。開いた携帯にパッと目を通すとすぐに、有り難うございますと俺に返還した。 今の一瞬で覚えたのか… 「それじゃあキョンくん。私はやることが出来たので未来に帰りますね。キョンくんは何があっても私が守るから安心してね」 今度はきっちり俺に焦点をあて。それじゃあねと廊下の曲がり角へ退場しながら朝比奈さんは俺に言った。 「朝比奈さん!」 追いかけ、角の向こうを覗くが既に朝比奈さん(大)の姿はなかった
|
- キョン「俺。未来から来たって言ったら笑う?」
286 :1[age]:2009/10/05(月) 20:45:57.55 ID:IsnQjFo50 - 俺の顔がよほど暗かったのか。部室に戻った俺に古泉が心配そうに問いかける
「随分と長かったですね。大丈夫ですか?」 「大丈夫だ。悪かったな」 適当にはぐらかし、俺はハルヒの横でスヤスヤと眠る朝比奈さんを見つめながら、心の中で言った 「朝比奈さん。無茶しないで下さいよ…」 その夜またあの夢を見た。この前と殆同じだったが後ろの女性の声が、いやに近づいている気がした。でも振り返る前にまた俺はハルヒの奴に呼び止められるんだなこれが。
|
- キョン「俺。未来から来たって言ったら笑う?」
287 :1[age]:2009/10/05(月) 20:55:14.37 ID:IsnQjFo50 - 翌朝も携帯を開くと案の定、差出人不明のメールが来ていた。
残り2日か… 朝比奈さん(大)のあのリアクションを見る限り。俺達はどうやら、このメールを楽観視しすぎていたらしい。今頃になって俺は若干焦りを覚え、背中に嫌な汗を感じる。 一体送り主は誰なんだ… そうこう考えている内に俺達は、昨日の廃工場まで来ていた。 どうやらハルヒは本気で今作に出演する気なようで。ドラキュラの衣装に身を包んでいる。こんにちはあららぎくん 「さぁ!最終日なんだからバシバシいくわよ!」 日曜の朝ぐらい寝ていたかったぞハルヒ。 そう心の中でだけ悪態をつきながらも、撮影自体は順調に進んでいった。
|
- キョン「俺。未来から来たって言ったら笑う?」
291 :1[age]:2009/10/05(月) 21:01:49.76 ID:IsnQjFo50 - 「はいカットぉぉ!」
工場にハルヒの絶叫が響きわたり。古泉と長門の出番の終わりを告げる。 ちょうど昼もすぐなので俺はハルヒに昼食の調達を申し出た。 「う〜んまぁいいでしょ。有希と古泉くんよろしくね!」 次は初のハルヒ出演シーンだ。 どうやらハルヒは撮影が待ちきれないらしく、長門らにそれだけ言うと。 「さぁキョン!我らが団長の初演技よ!バッチリしっかり納めないと死刑だからね!」 指先でクルクルとオモチャの銃を回して俺にそう叫ぶ。
|
- キョン「俺。未来から来たって言ったら笑う?」
292 :1[age]:2009/10/05(月) 21:05:26.99 ID:IsnQjFo50 - >>289
アドレス自体はあります。誰のか不明なだけで 皆から注文を受けた古泉は。それじゃあ行ってきますと長門を引き連れ工場をあとにした。去り際長門が一度振り返り、名残惜しそうな目でこちらを見つめて行ったが。そんなに撮影が楽しかったか、長門。 「それじゃあ、ちゃっちゃと撮影に入るわよ!みくるちゃん!」 「は…はい!えと、…えと。次のシーンは…」 昨日の夜、一瞬でアドレスを覚えた朝比奈さんとは違い。朝比奈さん(小)は人差し指を下唇に付け、昨日ハルヒから説明された事を必死で思いだそうとウンウン唸っている。でもそんな朝比奈さんの方が似合ってると俺は思いますよ。
|
- キョン「俺。未来から来たって言ったら笑う?」
293 :1[age]:2009/10/05(月) 21:10:27.79 ID:IsnQjFo50 - えーと、確か次のシーンは。
長門有希を操っていた黒幕ハルヒ涼宮が。長門との激闘を終えた朝比奈ミクルの背後から銃でいきなり不意打ち。という、なんともハルヒらしい登場だったな。 「じゃあ、みくるちゃん。あなたは、激闘直後の感じでハァハァしながら私に背を向けて、そこに立って。んでキョン、アンタは私達二人を真横から撮るのよ!ふふ、観客どものミクルーうしろー!って声が今にも聞こえてきそうだわ!!」 ハルヒー精神科!精神科! そんな訳で、ファインダー越しに二人を覗きみる。 お…おぉ
|
- キョン「俺。未来から来たって言ったら笑う?」
295 :1[age]:2009/10/05(月) 21:14:50.55 ID:IsnQjFo50 - 冬の乾いた空気を通過した太陽光が、崩れ落ちた天井の隙間からハルヒと朝比奈さんの背中を照らす。
埃がいい具合に舞ってることもあり、ファインダー越しに見るその光景はなかなか幻想的であった。 しかし… しかし…なんだこの胸騒ぎは… なぜか…なぜだかは分からないが、俺はその画に物凄い不気味かつ不安な感情を感じた 予定では、俺のスタートの合図とともハルヒが朝比奈さんに向けて引き金を引く。もちろん、ただの爆竹だが
|
- キョン「俺。未来から来たって言ったら笑う?」
297 :1[age]:2009/10/05(月) 21:19:44.04 ID:IsnQjFo50 - 一抹の不安を覚えながらも。クライマックスにもってこいの瞬間を逃す訳にはいくまいと俺は、ハルヒに準備OKの合図をだす。後は「スタート」と叫ぶだけだ。
「よし!それじゃあ、ス!……うん?」 突然マナーモードにしていた携帯がポケットの中で暴れ回る カウントダウンメールは深夜来るから違うな…日曜のこの時間に送ってくるってのは谷口か国木田だな そう思いポケットから携帯を… 「ちょっとキョン!!なにチンタラしてんのよ!とっとといくわよ!」 怒られちまったじゃねーか、谷口および国木田よ 「わかったわかった」
|
- キョン「俺。未来から来たって言ったら笑う?」
298 :1[age]:2009/10/05(月) 21:21:31.56 ID:IsnQjFo50 - ポケットに入れかけた右手をカメラのボタンに再びかける
「よし!次こそいくぞ!よーーーい」 「スタート」
|
- キョン「俺。未来から来たって言ったら笑う?」
301 :1[age]:2009/10/05(月) 21:24:52.65 ID:IsnQjFo50 - パン!
やけにあっけない破裂音が鼓膜に響く 二秒ほどの静寂 「…え?」 呟いたのは俺じゃない。多分ハルヒだ 気がつくと俺は三脚を蹴り倒し走っていた 朝比奈さんの元へ 「朝比奈さん!!!!」
|
- キョン「俺。未来から来たって言ったら笑う?」
303 :1[age]:2009/10/05(月) 21:28:14.86 ID:IsnQjFo50 - 倒れた
朝比奈さんが倒れたのだ。演技でもなんでもない。 天井からの後光に包まれたハルヒの右腕がゆっくりと上がり、引き金に指を掛ける 朝比奈さんの背に狙いを定め…………引き金を 《引いた》 ハルヒが引き金を引いた その瞬間だった 何かが朝比奈さんの体を通り抜け。言葉にならない悲鳴をあげた朝比奈さんは、バネのように体がのけぞり。 そのまま前方に倒れてしまった。
|
- キョン「俺。未来から来たって言ったら笑う?」
304 :1[age]:2009/10/05(月) 21:29:26.14 ID:IsnQjFo50 - 俺はフラッシュバックした映像を脳裏に感じながら朝比奈さんを抱き起こす
「朝比奈さん!朝比奈さん!!」 「な、な、なんで…だ、だって…オモチャでしょ…コ…レ」 「ハルヒ!いいからすぐ古泉に連絡しろ!!」 「だって…」 ハルヒは目の前に広がる血の海を茫然と眺めるだけだった 「クソ!一体どうなってんだ!朝比奈さん!返事をして下さい!朝比奈さん!」 「キ…キョ…ンくん」 「!」 良かった!意識がある!
|
- キョン「俺。未来から来たって言ったら笑う?」
325 :1[age]:2009/10/05(月) 21:56:19.75 ID:IsnQjFo50 - 同時にハルヒの方が気になり。まるで死にかけた何かのように這いつくばってソファまでたどり着いた俺は、電話帳にある古泉の名前を押す。
「ハァ……ハァ…もしもし!?すみません!涼宮さんは長門さんに…長門さんに預けました!おそらく長門さんの家へ!」 ツーコールで出た電話の向こうの相手は明らかに走っている最中で肩で息をしている。 「ど、どうしたんだ古泉!」 古泉のいつもと違う異常な口調に俺は脊椎動物へと戻される。 問いかけに古泉は息も絶え絶え答えた 「ハァ…ハァ…機関から……機関から非常事態宣言が!」 古泉の慌てぶりは尋常じゃない。皮肉にもその言葉からは、今までで一番俺に古泉の人間味がある感情を感じさせた
|
- キョン「俺。未来から来たって言ったら笑う?」
327 :1[age]:2009/10/05(月) 21:58:06.70 ID:IsnQjFo50 - 非常事態宣言?それは国家が出すやつじゃあ…まさか…
「閉鎖空間か!?」 古泉は大声で話し続けた 「ハァ……ハァ…はい!…かつて…かつて例をみない莫大な規模で発生しています!それも複数同時に!」 それは日本の中にだけじゃなく。アメリカ、中国、ロシア。世界の至る所で。そういう意味でだった。 不意に受話器からは風の雑音が消え。古泉の声だけが耳に響いた
|
- キョン「俺。未来から来たって言ったら笑う?」
329 :1[age]:2009/10/05(月) 21:59:26.94 ID:IsnQjFo50 - 「頼みます…」
「?」 「世界を…世界を頼みました」 それだけいってプツリと糸が切れた 「おい!古泉!古泉!!」 クソ!次から次ぎへと! 朝比奈さんはとりあえず、医者に任せるしかない。 俺は病院のロビーを飛び出し駅までの道を走り抜ける。いつの間にか小雨が降ってやがる。早朝散歩した時とはうって変わり、俺の目にこの前と同じ景色はない。縦横無尽に建ち並ぶビルや看板は掠れ、線となり俺の後ろへ飛んでゆく 「キミ!」 右から恐らく俺を呼び止める声がした。誰だこんな時によ! 「はぁ…はぁ………あ、あなたは…」 それはワゴンが突っ込んできた日のサラリーマンだった。今はスーツではなく何かの制服を着ていたので一瞬分からなかったが確かにそうだ
|
- キョン「俺。未来から来たって言ったら笑う?」
331 :1[age]:2009/10/05(月) 22:01:42.17 ID:IsnQjFo50 - サラリーマンに送ってもらいなんとか早く長門の家に着けた。
車の中、サラリーマンの話しによると日本だけで10個以上の閉鎖空間が発生しているらしい。それも莫大な大きさの。更にその中で次々と神人が現れ閉鎖空間を拡大していってるとの事。 あなたを無事送り届けたらすぐに私も一樹達の加勢にいきますとバックミラー越しに俺をみつめるサラリーマンの顔は、どこか死を覚悟しているような表情だった気がした。 「俺のせいで…すみません」 それしか言えない自分が嫌いになりそうだ。まぁ元々好きって訳でもないがな…
|
- キョン「俺。未来から来たって言ったら笑う?」
332 :1[age]:2009/10/05(月) 22:02:49.79 ID:IsnQjFo50 -
「あなたが謝る必要はありません」 地震が起こって謝る人がいますか? そうサラリーマンは励ましの言葉をかけてくれ続けて言う 「私達が閉鎖空間をせき止められるのはこのままのスピードなら、恐らく半日間程度でしょう。」 その間になんとかハルヒの気持ちを鎮める方法を…か。 神は一週間で地球を創ったらしい。でも壊す時は一瞬てか?ふざけんな 降り際にサラリーマンは一言 「世界と…世界と私の息子を救ってください」 いって俺に敬礼をした。挨拶程度にする敬礼ではなく。 背筋を伸ばし、まるで将軍相手でもあるかの様な本物の敬礼だった。
|
- キョン「俺。未来から来たって言ったら笑う?」
334 :1[age]:2009/10/05(月) 22:03:33.78 ID:IsnQjFo50 - もう俺には荷が重すぎるなんて言ってられんな。
ペコリと会釈で返し長門のマンションの前に立ち。見上げる。この中にハルヒが… セキュリティードアは俺を待ち構えていたかのように開いた。 全く…やれやれ 「入って」 出迎えた制服姿の長門の後ろではハルヒが机に突っ伏して泣いていた。
|
- キョン「俺。未来から来たって言ったら笑う?」
335 :1[age]:2009/10/05(月) 22:05:01.72 ID:IsnQjFo50 -
「う…うっ…ひっく…」 ハルヒからは完全にいつもの力強さは消え失せ俺が入って来たことにさえ気が付いていない様子だった。 なんて声をかけたらいいんだ… 俺には全く分からない。ただ名前を呼んでやることしか 「ハルヒ…」 「………キョ…ン?」 目を腫らしたハルヒが俺に視線を預け、すがりつく。 「うぅ…ど…ひっく…どうし…よう………!み…み…くるちゃ…んが」 うわぁーん 泣き声を文字にするならコレが一番相応しいだろう。 ハルヒを知ってる奴なら、想像の真反対。いつもの対角にあるであろうハルヒの表情。 とにかく。とにかくハルヒを安心させなければ古泉達が危ない。 さらには古泉達がいなくなれば世界は灰色に包まれ…その先は神のみぞ知るってか
|
- キョン「俺。未来から来たって言ったら笑う?」
336 :1[age]:2009/10/05(月) 22:06:41.83 ID:IsnQjFo50 - 「ハルヒ。朝比奈さんなら俺が病院に送り届けた。だから…だからきっと大丈夫だ」
ここで、絶対と言ってやれないのがダメだな…俺は… 「そ…うっ…そんなの…ひっく…わ…分からないじゃ…ない…うっ…ア…アンタ…じ…自分…の体みて…うっ…見てみなさい…よ…ひっく…」 「え?」 かなり聞き取りづらい嗚咽混じりの言葉をようやく理解した俺は自分の体を見回す。
|