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以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします
くそ間違えた、第二幕最後追加
か・い・か・ん
626
もちつけだった
多分最後まで
急ぎます
眉毛ムリ\(^o^)/
<ヽ`∀´>ブーン系小説練習&総合案内所のようです
(-_-)ヒッキーと火蜥蝪のようです

書き込みレス一覧

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(-_-)ヒッキーと火蜥蝪のようです
57 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2008/12/25(木) 13:11:10.03 ID:o0jTp2oUO

しかし少女はそんなヒッキーに、首を横に振って答えた。

(*゚ー゚)「気にしないで。
物凄く辛そうだもの……
お医者さんに診てもらったほうが……」

少女が他者を引き合いに出した瞬間、ヒッキーは反射的に声を出した。

(;-_-)「駄目、だ……」

(;゚ー゚)「駄目……って、でもそんな身体じゃ……」

(;-_-)「行かない……、行けない」

声を出すのも一苦労で、少女の親切を素っ気なく切り捨てるような口調になる。

少女は少し悩むような仕草を見せ、意を決するように頷くと、

(*゚ー゚)「……分かったわ、じゃあ私の家に行きましょう」

とヒッキーに提案した。

(-_-)ヒッキーと火蜥蝪のようです
58 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2008/12/25(木) 13:14:25.80 ID:o0jTp2oUO

(*゚ー゚)「大丈夫、今日は家には誰もいないから。
誰も呼ばないし」

(;-_-)「……」

ヒッキーは判断をしかね、少しの間、沈黙が漂った。

(*゚ー゚)「……ダメよ、あなた、このままじゃきっと死んじゃうもの」

それは恐らく好意に甘えろという意味だったのだろう、
少女はヒッキーにさらに近寄って、自分と殆ど背丈の同じヒッキーを、肩を貸すようにして支えながら立ち上がらせる。

(*゚ー゚)「歩ける?
家はすぐ近くなの、少し頑張って」

ヒッキーは、身体のあちこちが軋んで痛みを訴えるのを感じる。

けれど、それよりも、この見ず知らずの少女の自分に対する優しさが、
自分の心に染み渡るような暖かさを与えてくれるのを感じた。

( _ )「……」

ヒッキーは少女の力を借りて、そのまま彼女の家に向かった。

(-_-)ヒッキーと火蜥蝪のようです
59 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2008/12/25(木) 13:17:34.09 ID:o0jTp2oUO

−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

(-_-)「うん……?」

目を覚ますと、そこは家屋のなかの一室の、ベッドの上だった。

どうやら、あの後また意識を失ってしまったらしい。

−−−−よー、幸運な浮浪者。
    お目覚めはいかが?

ハインの声が聞こえてくる。

−−−−情けなくも女子に肩を貸してもらってベッドに辿り着くなり爆睡とはいやはや、
疲れ切っていたことを考慮しても中々の豪胆というか、図々しいというか……

(-_-)「……うるさい」

(-_-)ヒッキーと火蜥蝪のようです
60 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2008/12/25(木) 13:19:45.02 ID:o0jTp2oUO

しかし爆睡とは。

ハインの話を聞くかぎり、少女には多大な迷惑をかけてしまったような気がする。

−−−−しかも手当てまでして貰っちゃってよー
地獄から天国へ、ってなもんだよな、オイ

変わらず喋るハインの言葉で、確かに身体の手当てまで施され、
さらには、綺麗な……少なくとも今まで身に纏っていたローブよりは大分マシな衣類に着替えていることにも気付く。

−−−−まぁ至れり尽くせり、あのヒトの良さには感服したぜ

(-_-)ヒッキーと火蜥蝪のようです
61 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2008/12/25(木) 13:22:27.02 ID:o0jTp2oUO

(-_-)「……」

本当に。

何故あの少女は自分にここまでしてくれるのか。

ヒッキーには不思議なことだった。

「……あ」

その声に、伏せていた顔を上げると、部屋の入り口に少女が立っていた。

(*゚ー゚)「起きたのね」

その両腕に洗濯物が詰まったバスケットを抱えたまま、少女はヒッキーが横たわるベッドに近づいてくる。

ヒッキーは慌てて上半身を起こし、痛みも倦怠感も消え去っていることを実感した。

(*゚ー゚)「これ、貴方が着ていたローブ。
すごい汚れていたけど、必要かもと思ったから……」

バスケットから取り出されたのは……本当にこれがあのローブかと言わしめん程に綺麗なローブだった。

(*゚ー゚)「もし必要なら、破れとか縫ってあげるけれど……」

−−−−うはは、オレが人間の雄なら求婚するな

ハインが楽しそうに言う。

(-_-)ヒッキーと火蜥蝪のようです
62 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2008/12/25(木) 13:23:15.19 ID:o0jTp2oUO

(*゚ー゚)「……?どうかした?」

少女には聞こえていないらしい。
ヒッキーは首を横に振った。

(-_-)「もう、十分……です」

(*゚ー゚)「そう、遠慮しないでね?
……お腹、空いてない?」

もう一度首を横に振ろうとした瞬間、腹の虫が勢い良く鳴った。

−−−−wwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwww

ハインの笑い声が頭の中に響く。

(*゚ー゚)「身体は嘘をつかないね」

少女も笑いながら、部屋を出て行き、しかしすぐに戻って来た。

(*゚ー゚)「あの時のリンゴ、今なら食べられるでしょ?」

均等な大きさに切り分けられたリンゴが載った皿を手渡される。

(-_-)ヒッキーと火蜥蝪のようです
63 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2008/12/25(木) 13:25:45.40 ID:o0jTp2oUO

(-_-)「……」

口の中がやたら湿る。

とりあえず、布が掛けられている下半身をテーブル代わりにして皿を置き、
その後にあった躊躇は少しの間だけだった。

ヒッキーは串の刺さったそれに手を伸ばし、口元に運ぶ。

一口齧ると、独特の食感と甘さが口の中に広がった。

(*゚ー゚)「食べおわったら、呼んでね、お皿、取りに来るから」

少女がそう言い残して去る。

しばらくは部屋の中に咀嚼の音だけが聞え、

そして、

ヒッキーに被せられた掛布に、小さな染みが出来た。

(-_-)ヒッキーと火蜥蝪のようです
64 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2008/12/25(木) 13:27:29.93 ID:o0jTp2oUO

( _ )「……ッ」

咀嚼の音に代わって聞こえる、小さな嗚咽。

堰が切れると、後はもう止まらなかった。

涙は次々に頬を伝って掛布に染みを作り、
ヒッキーは口元を押さえて何とかこの嗚咽が少女に聞こえないようにした。

ハインも黙っていた。

しばらくの間、嗚咽は止まなかった。

(-_-)ヒッキーと火蜥蝪のようです
65 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2008/12/25(木) 13:28:12.19 ID:o0jTp2oUO
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

数分後、ヒッキーは何とか体裁を整えて、泣いていた場面は少女に見せずに済んだ、と内心も落ち着いた。

(-_-)「……」

ふと皿に目をやる。
まだ一切れしか食べていない。

もう一つ食べようかと、考えていた、その時だった。

「……しかし脱走とは……前代未聞じゃないか?」

(;-_-)「!」

(-_-)ヒッキーと火蜥蝪のようです
66 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2008/12/25(木) 13:31:26.52 ID:o0jTp2oUO

それは、ヒッキーの背後から少し横にズレた位置にある、壁にはめ込まれた窓の外から聞こえた男の声だった。

「ああ……建物の半分と、その場にいた全員を吹き飛ばしたらしいな」

その話の話題が何か、等ということは、直感で理解できた。

ヒッキーは身を捻って窓から顔を覗かせる。

声の主は二人組で、道を歩きながら会話していた。

「それで、教主様は何と?」

「決まっている、「断罪」さ」

「断罪」という単語に首をかしげる暇もなく、会話は進む。

「野放しにする訳が無いか」

「匿う者があれば、そいつらにも容赦はあるまいよ」

(-_-)「……」

−−−−さて、一難去ってまた一難、か

ヒッキーは窓を覗くのを止め、目を閉じた。

すべきことは一つだ。

(-_-)ヒッキーと火蜥蝪のようです
67 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2008/12/25(木) 13:32:20.12 ID:o0jTp2oUO
はい、第二幕終了。
連投規制が怖いので10分休憩します
(-_-)ヒッキーと火蜥蝪のようです
69 :くそ間違えた、第二幕最後追加[]:2008/12/25(木) 13:34:46.39 ID:o0jTp2oUO
(*゚ー゚)「どう、リンゴ美味しかっ……」

少女が家事やらなんやらの用事を済ませ、再びヒッキーの様子を見に部屋に来たとき、

(*゚ー゚)「え……?」

ベッドの上にはまだリンゴが残っている皿と、彼に着せていたはずの衣類だけがあって、
彼の姿と、元々彼が持っていたローブと服はそこには見当たらなかった。

(-_-)ヒッキーと火蜥蝪のようです
70 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2008/12/25(木) 13:42:36.39 ID:o0jTp2oUO
以下第三幕だよー
(-_-)ヒッキーと火蜥蝪のようです
71 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2008/12/25(木) 13:44:04.12 ID:o0jTp2oUO
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

ヒッキーが少女の前から姿を消した数時間前。

「大失態だな」

大層な造りの椅子に腰掛け、老人は言った。

「申し訳ありません……何しろ想定外の事態が起こりまして……」
老人に対峙する男が俯きながら謝罪する。

「研究所の半分を吹き飛ばして逃走……か」

ふぅむ、と呟いて、老人は椅子の手摺りに肘を突き、顎を手に乗せて思考する。


(-_-)ヒッキーと火蜥蝪のようです
72 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2008/12/25(木) 13:46:22.65 ID:o0jTp2oUO
「……それで、事後処理の方はどうなっている?」

「は、研究所付近は閉鎖、脱走した被検体に関しましては、捜索を進め早急な捕獲を……」

「……発見次第、「つー」を仕向けろ」

「つー、ですか……!?」

男の口調にわずかな驚愕が滲む。

「下手にことを荒立てられては堪ったものではない。
ヤツもたまには鬱憤を晴らさせてやらねば……ただの人間の相手はもう飽きた、とうるさい。
ただし伝えておけ、生け捕りにしなければお前の命もないとな」

「……把握いたしました」

(-_-)ヒッキーと火蜥蝪のようです
73 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2008/12/25(木) 13:49:24.17 ID:o0jTp2oUO
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

(#^Д^)「オイ!」

街の中心から離れた路地裏にある非合法の酒場で、
優しさとか遠慮とかの一切ない、怒号に近い声で呼ばれ、ヒッキーはその声のする方を向いた。

(-_-)ヒッキーと火蜥蝪のようです
75 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2008/12/25(木) 13:50:53.47 ID:o0jTp2oUO
( ^Д^)「コレ捨てとけ」

間髪を入れず投げつけられたのは幾つもをクシャクシャに丸めた状態で縛り上げた麻袋だった。

( ^Д^)「下手なやり方すんじゃねーぞ」

剣呑な視線でヒッキーを睨み付けながらそう命じた男は、この酒場の支配人だ。

(-_-)「……」

ヒッキーは床に置かれた桶の中でグラスを洗う手を止め、
足元に落ちた麻袋を拾い上げると、
そのまま裏口から、とっくに日が暮れて真っ暗な外に出た。


(-_-)ヒッキーと火蜥蝪のようです
76 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2008/12/25(木) 13:56:21.06 ID:o0jTp2oUO
裏口から通じているのは大きな通りからずっと離れた路地裏で、人気は0に等しい。

ヒッキーは路地裏をさらに少し奥に進んで、完璧に人目につかない空間……路地裏の行き止まりに移動する。

そこで立ち止まると、ヒッキーは捨てるように命じられ、手に持っていた麻袋をじっと見た。

(-_-)「……」

瞬間。

麻袋に火が付き、一気に手を巻き込んで燃え上がった。


(-_-)ヒッキーと火蜥蝪のようです
77 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2008/12/25(木) 13:56:59.46 ID:o0jTp2oUO
火があたり一面を明るく照らすが、入り組んだ路地裏のせいで遠くに光が漏れることはない。

ヒッキーは動じる様子もなく、手の上で燃える麻袋を見つめている。

やがて麻袋は完全に燃え尽き、真っ白な繊維の固まりになった。

ヒッキーはそれを握り潰す。

乾いた音を立ててそれはボロボロと崩れ去り、後には火傷一つ見当たらないヒッキーの手だけが残った。

(-_-)ヒッキーと火蜥蝪のようです
78 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2008/12/25(木) 14:00:34.14 ID:o0jTp2oUO

(#^Д^)「チンタラしてんなボケが!
さっさと洗い場に戻れカス!」

店に戻るなり罵倒され、ヒッキーは再び仕事に戻った。

井戸から汲んできた水を張った桶の中に、使われたグラスや皿を突っ込んで濯ぎ、
布でまだ付いている汚れを拭く。

それを繰り返し、ある程度水が濁ってきたら、井戸へ水を汲みに行く。

戻ってくる頃には、洗い場に使われたグラスや皿がまた置かれている塩梅だった。

(-_-)ヒッキーと火蜥蝪のようです
79 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2008/12/25(木) 14:01:04.13 ID:o0jTp2oUO

この酒場は、店をひっそりと構えている割には利用客が多い。

大半は安酒を飲みたがる底辺の労働者が占めているが、
店の収入源は裏腹に彼らとは別の少数の客によって大半が占められている。

その少数派……酒場に不似合いな高級感漂う連中、要するにこの街で何らかの権威を誇る輩……が所望するのは安酒でも、味気ないピーナッツでもない。


(-_-)ヒッキーと火蜥蝪のようです
81 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2008/12/25(木) 14:01:33.58 ID:o0jTp2oUO
ヒッキーがいる洗い場のすぐそば、カウンターの影になる位置に、
先ほどヒッキーが捨てるように命じられたのと全く同じ、しかし中身が詰まった麻袋が置かれている。

その中身は、支配人曰く「灰」らしいが、ヒッキーは真実を知っていた。

(-_-)ヒッキーと火蜥蝪のようです
82 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2008/12/25(木) 14:04:23.29 ID:o0jTp2oUO

ヒッキーとは別の、この店で働く男……接客を任されているのでヒッキーよりは身なりがいい……が、麻袋を開け、さらに小さな麻袋に中身を移した。

サラサラと流れる様にして移されていく、その粉の正体は、
人々に一瞬の快楽と永遠の中毒人生を与える悪魔の誘惑……麻薬だ。



男は小さな麻袋の容量ギリギリまで粉を詰めると、口を縛って、どこかの席へ運んでいった。

おそらくは店の一番奥にある、お偉方ご用達の席へ。

しばらくして、その一番奥にある席から高らかな笑い声が聞こえたが、
ヒッキーにはどうでもいいことだった。

(-_-)ヒッキーと火蜥蝪のようです
83 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2008/12/25(木) 14:05:32.91 ID:o0jTp2oUO

店が日の出を合図とするように看板を下ろし、ヒッキーは全ての皿を洗い終わる。

支配人が乱暴な手つきで、小さなパンと申し訳程度の盛り合わせが乗った皿を、しゃがみ込んでいるヒッキーの脇の床に置いた。

( ^Д^)「外で食えよ。食い終わったら店ン中を片しとけ。
鍵締めんのも忘れんなよ」

一方的に言付けて去っていく支配人を一瞥すると、
ヒッキーは与えられた一日の労働の報酬を手に一度外へ出た。

(-_-)ヒッキーと火蜥蝪のようです
84 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2008/12/25(木) 14:08:57.20 ID:o0jTp2oUO

路地に座り込み、皿の上の食料を手掴みで食べる。

−−−−良い様に使われるたぁこの事だな、オイ

ハインが不機嫌そうに呟く声。

(-_-)「……」

ヒッキーは聞き流して固いパンを齧る。

−−−−楽しいかよ、それで

(-_-)「……楽しいわけないだろ」


もう一口パンを噛み締めて、ヒッキーは答えた。

(-_-)ヒッキーと火蜥蝪のようです
85 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2008/12/25(木) 14:11:52.35 ID:o0jTp2oUO

この酒場で働くようになったのは、彼女の下を去って数日後だ。

生きる為の最低限の食事と、自分の身分がばれないような場所を同時に求めれば、
こんな場所で働かざるをえなかった。

−−−−あのなー。
お前はそれで良いのかも知れねぇが、俺は暇で退屈でつまらな過ぎて大変なんだよ。

(-_-)「……そっちが勝手について回ってくるだけじゃないか」

−−−−お?言ったな?
お前さん、監禁地獄からの脱走の手助けをしてやったのは誰だと思ってんだ?
人生を切り開いてくれた恩人に対して少しくらいは頑張って生きてやろうって気にはならないのかね?ん?

(-_-)「……恩人って……」

(-_-)ヒッキーと火蜥蝪のようです
86 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2008/12/25(木) 14:13:51.93 ID:o0jTp2oUO
−−−−ヒトじゃないだろ、ってか?
馬鹿にすんなよ、お前があんなアホみたいに粗末な食事を1日にたった一度摂取するだけで生き延びられているのは、爬虫類の特性が活きているからなんだぜ?

(-_-)「……別にそんな馬鹿にするようなこと言ってないだろ……」

−−−−とにもかくにも、折角身体は「恵まれてる」っつーか「恵まれた」んだし、折角の人生だろ?
何かしらやりたいこととかねーの?

(-_-)「……無いね」

パンを燕下して、ヒッキーは言った。

(-_-)ヒッキーと火蜥蝪のようです
87 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2008/12/25(木) 14:16:57.20 ID:o0jTp2oUO

ハインの言っていることがおかしいとは思わない。
自分自身、こんな生活に身をやつしてまで生きる意味があるとは思えない。
生きていても、死んでいても同じ。

(-_-)「けれど……簡単に死ぬわけにはいかないんだ」

自身の思考に反論するように呟く。

今、命を自ら断つということは、
自分が彼女から受けた全てを、踏み躙って無駄にすることだから。

−−−−……ヒャハハッ、ずいぶんと健気なんだな

(-_-)「……好きにからかえばいいよ
僕にも言い返せる言葉はないから」

そう言って立ち上がる。

−−−−まぁいい、そんな人生観察もアリか

ハインの言葉を聞きながら、ヒッキーは罵声と命令しか掛けられることのない店内へと再び入っていった。
(-_-)ヒッキーと火蜥蝪のようです
88 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2008/12/25(木) 14:19:18.05 ID:o0jTp2oUO
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

ヒッキーがハイン曰く「まさに奴隷」な生活を送るようになってから十数日が経ったある日に、それは起こった。

(-_-)「……」

酒場が店を開けていない真っ昼間。

店に引きこもる訳にはいかないヒッキーは、大抵この時間帯を本通りに通じる細い路地にじっと座り込んで過ごしていて、
その日もヒッキーはそうやって時間を潰していた。


(-_-)ヒッキーと火蜥蝪のようです
89 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2008/12/25(木) 14:22:20.75 ID:o0jTp2oUO
何時間もじっと動かずにいることは、物乞いをしていたときの必須スキルだったし、
別に苦痛だとは感じない。

一応は追われている身であるし、物乞いとは違ってただ時間を潰せば良いのだから、ヒッキーとしては誰も来ないような場所にいたかったが、
ハインがやたらに「日光を浴びてー」やら、「こんな陰気臭い場所に何時間もいたら気が狂う」やらと身体の無い身分でうるさいので、
仕方なく人目に付きやすいというデメリットを妥協してこの場所を選んだ。


(-_-)ヒッキーと火蜥蝪のようです
91 :か・い・か・ん[]:2008/12/25(木) 14:23:51.21 ID:o0jTp2oUO
(-_-)「……」

ローブを頭まで被って顔が見えないようにしながら、ただぼうっと行き交う人を眺める。
視界に変化があるということは、退屈を紛らわすのには役立っていた。

ある時は歩いていく行商らしき男を、ある時は手を繋いで通り過ぎて行く母子を眺め、対象を変えては観察を続ける。

(-_-)「……?」

観察を始めてから一時間ほど経ったとき、ヒッキーは行き交う人の流れが、一方に偏り始めたことに気付いた。

視線を動かすと、大通りの向かい側、かなり奥手の方に何やら人込みが出来始めているのが見て取れた。
(-_-)ヒッキーと火蜥蝪のようです
96 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2008/12/25(木) 14:27:52.44 ID:o0jTp2oUO
−−−−何かあるみたいだな……

ハインが関心ありげに呟く。
接ぐ二の句はすぐにわかった。

−−−−行ってみようぜ?

(-_-)「……」

−−−−なぁ、もうずっと石みたいに微動だにしてないだろ?
身体に悪いぜ?適度な運動も必要だって

(-_-)「……下手に出ていって見つかったらどうするのさ」

−−−−あの人込みだ、バレやしないって。

ハインはヒッキーの反論に退く様子もなく、ヒッキーを諭そうと話す。

−−−−それにアレだ、いざとなりゃあ、奥の手があるじゃんか

(-_-)「……ハァ」

ヒッキーは溜め息混じりに立ち上がり、フードを被り直して、
ハインが望む場所を目指してゆっくりと歩きだした。

(-_-)ヒッキーと火蜥蝪のようです
98 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2008/12/25(木) 14:30:24.76 ID:o0jTp2oUO
問題の人込みは、誰かが演説を行うために設置された舞台の周りを囲むようにして出来上がっていた。

舞台には誰も立っていないことから、未だ始まってはいないらしい。

−−−−お偉方のご高説か。
酒場に来てた野郎が法について高らかに謳ったりしてくれりゃあ最高のギャグなんだがな

人込みの舞台から離れた位置に潜り込んで、主役の登場を待つと、
現れたのは白を基調にした神父服を着た老人だった。

何処かで見覚えのある、そんな顔立ち。
(-_-)ヒッキーと火蜥蝪のようです
100 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2008/12/25(木) 14:34:08.08 ID:o0jTp2oUO
−−−−コイツは予想外だった

ハインが何処か驚きの感情を編み込んだような口調で言った。

−−−−まさかの教主様かよ。
    大層な大聖堂に引きこもりっきりだったはずだが、はてさて……

ハインの言葉で、ヒッキーも目の前の老人が何者であったのかを思い出す。

スカルチノフ教主。
この街を、信仰と言う名の糸を使い裏で操る、教会の最高権力者。

この街でその顔を知らぬ物はいない。

尤も、ヒッキーにとっては大して興味のない人物だったために、そんな情報は記憶の奥底に突っ込まれていたが。
<ヽ`∀´>ブーン系小説練習&総合案内所のようです
626 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2008/12/25(木) 14:38:59.30 ID:o0jTp2oUO
>>524ですが、猿食らいました('A`)
どなたか>>525のスレに、作者が猿食ったぞプギャー、と書き込んでいただけると有難いです
<ヽ`∀´>ブーン系小説練習&総合案内所のようです
627 :626[]:2008/12/25(木) 14:44:17.00 ID:o0jTp2oUO
書き込んで下さった方、ありがとうございました。
20分程様子を見ます。
(-_-)ヒッキーと火蜥蝪のようです
111 :もちつけだった[]:2008/12/25(木) 14:55:31.66 ID:o0jTp2oUO
/ ,' 3「本日は皆に大事な話があって来た」

しわだらけの顔のスカルチノフが話し始めた。

/ ,' 3「つい先日の事じゃ。
既に知っている者もいると思うが、教会地区内のとある建築物が、突如爆発した」

ドクン、と自分の心臓の鼓動が聞こえたような気がした。

集まっていた人込みが騒つく。

/ ,' 3「その建築物の中にいた数十人もの人々の命も同時に失われた。
彼らの魂に救いがあらん事を祈りたい」


(-_-)ヒッキーと火蜥蝪のようです
112 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2008/12/25(木) 14:58:37.93 ID:o0jTp2oUO
/ ,' 3「そして私は、その事故に関して、
    恐らくは殆ど知るもののいないであろう事実を皆に伝えなければならん」

ヒッキーの動揺など露知らず、スカルチノフは話を進める。

/ ,' 3「教会地区内の建物を破壊し、幾人もの命を奪った犯人についてだ」

民衆が再び騒つく中で、ヒッキーの心拍は跳ね上がっていた。

落ち着け。
別に今ここにいることがバレているわけじゃない。

ヒッキーは自分に言い聞かせ、表面上の冷静さをなんとか保った。

−−−−ハハハ、マジに面白くなってきたなぁオイ

ハインの自分勝手な感想をぼんやりと聞き取る。

(-_-)ヒッキーと火蜥蝪のようです
113 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2008/12/25(木) 15:01:50.50 ID:o0jTp2oUO

/ ,' 3「……単刀直入に言おう。
我々は、悪魔の仕業だと考えている」

(;-_-)「……は?」

スカルチノフが告げた内容に、ヒッキーは一瞬言葉を失った。

(-_-)ヒッキーと火蜥蝪のようです
114 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2008/12/25(木) 15:02:23.79 ID:o0jTp2oUO

−−−−ギャグktkrwwwwwwwww
    お前wwww悪魔だったらしいぞwwwwwwwww
    言い訳するにしてももっとマシな嘘を吐けよジジィwwwwwwwww

実体を持っていれば笑い転げているであろうハインの笑い声を聞きながら、
ヒッキーは同時に教主の言葉も聞き続けた。

民衆の騒めきが静まるのを待って、再び教主が語り始める。

/ ,' 3「皆が驚くのも当然であろう。
    今まで、悪魔というモノは概念としては存在しても、
    実在した、という確かな記録は残っていない。
    しかし、私は状況から判断するに、と言った。
    辛うじて生き延びた人の話から、
    この惨事は全て、たった一人の……或いは一匹の、忌まわしい何かが引き起こしたという証言を、我々は得ておる」


(-_-)ヒッキーと火蜥蝪のようです
115 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2008/12/25(木) 15:03:42.82 ID:o0jTp2oUO
/ ,' 3「その何かは火を纏い、何もかも一切合財を吹き飛ばし、逃げていったと、生存者は言った。
    これを悪魔の所存以外の何だというのか、私には思いつかない。
    ……また最近では、街の特に貧しい民が次々に、忽然と姿を消すという奇妙な事態も起こっておる。
    理由が何であれ、邪悪な存在が我々の生活を脅かそうとしていることは、最早明確だろう」

−−−−あー……魂胆が明け透け過ぎて白けちまったな……

ハインは先の爆笑から一変、冷めた口調で呟いた。

/ ,' 3「我々人間には、神の加護が常にある。
    しかし時として、その加護を打ち破ってくるものが現れることが、稀にある。
    今がその時期と言っても過言では無い。
    そんな状況下において、我々は最早無傷ではいられない。
    しかし、犠牲は最小限に止めなくてはならない」

(-_-)ヒッキーと火蜥蝪のようです
116 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2008/12/25(木) 15:06:09.80 ID:o0jTp2oUO
/ ,' 3「そこで……非常に心苦しいことではあるのだが……。
    教会において、民衆の中から「人柱」を一人選ぶことを決定した」

「人柱」と言う言葉が出た瞬間、民衆はまたしても騒めく。
中には叫ぶ者もいた。



……「人柱」。
かつて、今以上に人々が脆弱で、天災や飢饉に効果的な対策を講じることが叶わなかった頃、
人々には、代償を払い、神に救いを求め、平穏を願う宗教的な習慣があった。

その代償とは他でもない「人間」であり、その人間の事を指して「人柱」と呼んだ。

やがて人々が様々な知恵と技術を手に入れ、天災や飢饉に対して自衛手段を講じることが可能になるにつれ、
そのような「人柱」を必要とする状況に陥ることは次第に少なくなっていった。


(-_-)ヒッキーと火蜥蝪のようです
117 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2008/12/25(木) 15:08:39.78 ID:o0jTp2oUO
最後に人柱が立てられたのは十数年も昔のことであり、
もはや過去の風習となりかけていたそれを、今さらスカルチノフは復活させようとしている。

何が目的なのか。


事件の元凶は他ならぬヒッキーである。
また浮浪者の誘拐も教会が裏で手を引いているとハインが言っていたし、事実ヒッキーも連れてこられた浮浪者達を見ている。

ヒッキーを含む浮浪者を実験に使っていた教会の最高権力者が、
そのことを知らぬはずが無い。

にもかかわらず、居もしない「悪魔」をその理由に置いている事から、
本気で人柱を必要としている訳が無いのは明らかだ。

浮浪者では飽き足らず、一般民すらも実験材料にするつもりか。

だがそれなら、大規模な報せが必要な上に、少人数しか手に入らない「人柱」を口実にするのには疑問がある。


しかし、そんな「理由」についての考察は、ヒッキーの思考の中から吹き飛んでしまうことになった。
(-_-)ヒッキーと火蜥蝪のようです
119 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2008/12/25(木) 15:12:13.54 ID:o0jTp2oUO
/ ,' 3「静粛に!」

大きくなる一方の喧騒を、教主の一言が掻き消した。

/ ,' 3「落ち着くのだ、皆の衆。
    静かに聞いてほしい」

民衆は水を打ったように静かになった。

/ ,' 3「 ……実を言えば、「人柱」は既に決まっておる。
    教会が、神の御下へ捧げられる「人柱」として十分な資格を持つ者を選定したからじゃ。
    そして、今、この場に私が連れてきている」

しん、と静まり返った中。

後ろを向き、
手を差し伸べた教主の奥から、
階段を昇り、
舞台の上に、
姿を表したのは。

(;-_-)「……嘘だ……」

(*゚ー゚)「……」

他ならぬ、ヒッキーに救いの手を差し伸べてくれた、あの少女だった。

−−−−奴隷生活は終わりだな

珍しく慎重なハインの声が、揺さ振られ混乱するヒッキーの頭の中に聞こえた。
(-_-)ヒッキーと火蜥蝪のようです
120 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2008/12/25(木) 15:15:36.14 ID:o0jTp2oUO
それから、ヒッキーの視線は彼女に釘付けになった。

彼女は……しぃは、教主より一歩退いた位置に、俯き加減で立っている。

/ ,' 3「私は敢えて、彼女にここに来てもらった。
    勿論それには理由がある−−−−」

教主が何か言っているが、ヒッキーはもう全く聞いていなかった。

今、この瞬間に、あの舞台の上に駆け上がり、「嘘だ!」と叫びたくて仕方がなかった。

(-_-)ヒッキーと火蜥蝪のようです
121 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2008/12/25(木) 15:17:10.29 ID:o0jTp2oUO
事件の犯人が悪魔?

人柱が必要?

その人柱が、あろうことか彼女?
……嘘だろう、そんなことは!

全ての疑問符を、否定して叩き壊したかった。

拳を強く握り締める。

競り上がる激情に身を任せ、一歩を踏み出す直前。

−−−−まぁ待てよ

ハインの冷静な一言が、波打つヒッキーの感情を打ち消すように聞こえた。

(-_-)ヒッキーと火蜥蝪のようです
122 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2008/12/25(木) 15:21:30.97 ID:o0jTp2oUO

−−−−気持ちは分かるけどな、実際その行動は間抜けだとしか言い様が無いぜ。
    今出ていって事を起こせば、結果がどうなろうが奴らはお前を悪魔扱いして、
    体の良い嘘をより強固に塗り固めるだろーよ。違うか?
    彼女も、何も知らないままにお前に連れていかれてくれるか?
    何より、その後、彼女はどうなる?つーかお前もどうすんだよ?


(;-_-)「……」

ハインには不似合いな理論は、しかし正論だ。

ハインの言う通り、今自分が舞台に上がって真実を叫んでも、暴力的に彼女を連れ去ろうとしても、
ヒッキーは、彼女を含めて、民衆の理解と信用を得られるはずもない。
(-_-)ヒッキーと火蜥蝪のようです
123 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2008/12/25(木) 15:22:32.88 ID:o0jTp2oUO
/ ,' 3「私は、彼女のその勇気と、偉大なほどの慈しみの心を−−−−」

ヒッキーが葛藤する間に、教主が、真実を知るものからすれば暴論以外の何物でもない己の言い分を、正当化、あるいは美化させていく。

(* ー )「……」

その傍らに立つ彼女は何も言わない。
言わせて貰える様子もない。
表情は優れず、何処か不安の色が垣間見える。

教主は教会が彼女を人柱に選んだと言った。
どんな風に彼女を言いくるめ、この場に引き出したか知らないが、
この状況が彼女が心から納得しているものでは無いのはその様子から明白だ。


なのに、それを端で見ながら、今この瞬間、何も出来ない自分が悔しかった。


<ヽ`∀´>ブーン系小説練習&総合案内所のようです
636 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage]:2008/12/25(木) 15:59:47.92 ID:o0jTp2oUO
すんません>>524猿食らいました……回復しないので16:30に投稿チャレンジして出来たら再開します……
(-_-)ヒッキーと火蜥蝪のようです
136 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2008/12/25(木) 16:26:47.44 ID:o0jTp2oUO
もうそろそろええだろ猿さんや……
>>130


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