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以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。
◆FnO7DEzKDs
('A`)刺すようです
( ^ω^)ブーンは退魔師稼業のようです━╋RETURNS━━

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('A`)刺すようです
12 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[]:2008/05/29(木) 20:53:04.46 ID:43xCdwDW0
夏の日じゃね?
( ^ω^)ブーンは退魔師稼業のようです━╋RETURNS━━
1 : ◆FnO7DEzKDs []:2008/05/29(木) 21:51:38.76 ID:43xCdwDW0
         ,. -‐'''''""¨¨¨ヽ
         (.___,,,... -ァァフ|          あ…ありのまま 今 起こった事を話すぜ!
          |i i|    }! }} //|
         |l、{   j} /,,ィ//|       『やっとネット環境整えてサイト回りしてみたら
        i|:!ヾ、_ノ/ u {:}//ヘ        正義と遊園地がいつのまにか終わっていた』
        |リ u' }  ,ノ _,!V,ハ |
       /´fト、_{ル{,ィ'eラ , タ人        な… 何を言ってるのか わからねーと思うが
     /'   ヾ|宀| {´,)⌒`/ |<ヽトiゝ        おれも何をされたのかわからなかった…
    ,゙  / )ヽ iLレ  u' | | ヾlトハ〉
     |/_/  ハ !ニ⊇ '/:}  V:::::ヽ        頭がどうにかなりそうだった…
    // 二二二7'T'' /u' __ /:::::::/`ヽ
   /'´r -―一ァ‐゙T´ '"´ /::::/-‐  \    催眠術だとか超スピードだとか
   / //   广¨´  /'   /:::::/´ ̄`ヽ ⌒ヽ    そんなチャチなもんじゃあ 断じてねえ
  ノ ' /  ノ:::::`ー-、___/::::://       ヽ  }
_/`丶 /:::::::::::::::::::::::::: ̄`ー-{:::...       イ  もっと恐ろしい逃亡作者仲間入りの片鱗を味わったぜ…
( ^ω^)ブーンは退魔師稼業のようです━╋RETURNS━━
3 : ◆FnO7DEzKDs []:2008/05/29(木) 21:52:16.56 ID:43xCdwDW0
〜前回までのあらすじ〜


やっと仕事が見つかったギコ、しぃ、そして愉快な仲間達。

しかしそれはオマケコーナーのレギュラーだった!!

(*゚ー゚)「もう止めて!!これ以上……あなたのそんな顔見たくない!!」

( ゚д゚ )「止めないでください……。アイツが呼んでる……。
     アイツはオレに止めて欲しいんだ!!
     親友のオレが!! オレが止めなきゃ駄目なんだ!!」

( ゚∋゚)「ぐぅぅぅおぉぉぉぉー―──!!
     体が熱い!! 痛い!! 苦しい!!
     ミルナァー―──!! 早くオレを楽にしてくれぇー―──!!」

たった2分程度の取ってつけたようなコーナーに押しやられた4人。

この屈辱的な扱いに耐える事が出来るのか!?

そして本編への復活はなるか!?


(,,゚Д゚)「………。何やってんのお前ら?」

( ^ω^)ブーンは退魔師稼業のようです━╋RETURNS━━
4 : ◆FnO7DEzKDs []:2008/05/29(木) 21:52:47.29 ID:43xCdwDW0

まとめは内藤エスカルゴさんです
→ http://www.geocities.jp/local_boon/index.html
ありがたいことです


このブーン系小説は

―― トンネルのむこうは、不思議の町でした ──

『孔雀王』

の元ネタでお送りします

( ^ω^)ブーンは退魔師稼業のようです━╋RETURNS━━
5 : ◆FnO7DEzKDs []:2008/05/29(木) 21:53:29.65 ID:43xCdwDW0
∧_∧
(*゚;;-゚)(何じゃあの妖怪は? 1300年も生きて初めて見たぞ)

('A`)(あー、あれはオカマって言ってね。自由すぎる現代社が産んだ悲しい生き物さ)

ξ;゚听)ξ(初めてナマで見たわ……)


辺りを100の異形の魔に包囲されているにも拘らず、彼らはそれを忘れていた。
異形を超える異形を目にしているからだ。

その異形はモリモリの筋肉とケバケバメイクと真っ赤でタイトなボディコンの鎧を纏っている。
やはり真っ赤なハイヒールには、目の細かい網タイツを穿いた足を突っ込んである。
その網目からは所々脛毛が飛び出し、ファンデーションで塗り固めた顎からはポツポツと黒い髭が。

何というか、まぁ……。
現われたのはオカマだった。

( ^ω^)ブーンは退魔師稼業のようです━╋RETURNS━━
6 : ◆FnO7DEzKDs []:2008/05/29(木) 21:53:56.41 ID:43xCdwDW0

川#゚ -゚)「何者だキサマ?」

(;´・ω・)「あれ? どうしたの、クー? 顔がクールじゃなくなってるよ?」


オカマに詰めよるクー。
大きな変化こそないが、その表情からは静かなる怒りが伺える。

  _
( ゚∀゚)「まぁ、美人さんねぇwww。妬いちゃうわ、ショボン 」

川#゚ -゚)「私の主人を誘惑してもらっては困る……」

(#´・ω・)「待てコラ。オレがオカマの誘惑になびくとでも?
       で、どうせこれは流されるんだろうけど、オレの耳が確かなら、今『主人』って言わなかった?」


怒りを沸々と煮え滾らせるクーだったが、オカマは特に気にしている様子もない。
外野では新たに怒りの炎を灯した男が一人いるが……

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7 : ◆FnO7DEzKDs []:2008/05/29(木) 21:54:28.76 ID:43xCdwDW0

川#゚ -゚)「……分からんぞ。お前は一時ksmsが公式設定だったからな……」
  _
( ゚∀゚)「あ〜らぁwww。そうなの、ショボン?」

(;´・ω・)「わ〜い、やっぱり2行目は流された。ところで、パラレルワールドの話はまた今度にしない?」


所詮ショボンは外野。
思いは伝わらなかった。


川#゚ -゚)「……この浮気者!! 何だこのオカマは!? どこのデラックスだ!?」


とうとう声を荒らげ始めるクー。
クーの怒りの矛先が向いている浮気者の容疑をかけられているコイツ。
ショボンは何とかその怒りを鎮めようと焦る。


(;´・ω・)「誰って、ホラ。荒巻のジイ様がお前ともう1人、助っ人遣すって言ってたじゃないか 」

川#゚ -゚)「助っ人?」

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8 : ◆FnO7DEzKDs []:2008/05/29(木) 21:55:39.55 ID:43xCdwDW0

そう言えば荒巻が言っていた。
『鬼が悪さしてるんだ。『あの野郎』しかいねぇだろ』と。
つまり『あの野郎』がここに来ているのだ。


(; ^ω^)「じゃ、このオカ……、この人が?」
  _
( ゚∀゚)「うふふwww。初めましてボウヤ♪ アナタも中々カワイイ顔してるじゃない 」

(; ^ω^)「…………そりゃ、どうもだお 」


オカマの投げキッスに不吉な物を覚えるブーン。
可愛い女の子に同じことを言われたならどれだけ嬉しいことか。
身震いするブーンを先頭に、オカマは自分から視線を離せない退魔師達を見回した。

  _
( ゚∀゚)「私はジョルジュ長岡 」


( ^ω^)ブーンは退魔師稼業のようです━╋RETURNS━━
9 : ◆FnO7DEzKDs []:2008/05/29(木) 21:56:10.42 ID:43xCdwDW0
  _
( ゚∀゚)「呪禁道のジョルジュよ 」






          ( ^ω^)ブーンは退魔師稼業のようです━╋RETURNS━━

       ――――第一章・クソジジイの指令・地獄の1丁目へようこそ――――


                     〜その2、四鬼結界〜






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10 : ◆FnO7DEzKDs []:2008/05/29(木) 21:58:37.67 ID:43xCdwDW0

川 ゚ -゚)「何だ。恋のライバルかと思った 」
  _
( ゚∀゚)「うふふふふwww。あなた達の邪魔はしないわwww」


誤解が解け、いつもの素直でクールな彼女が戻ってきた。
ジョルジュの試合放棄を聞き機嫌を直す。
早くも打ち解け合っている2人を見て、この男だけはウンザリしていた。


(;´・ω・)「どうしてこの話題になると、誰もオレの話を聞いてくれなくなるんだろう?」


突然その後ろで強烈な打撃音が響く。
振り返ると堅く拳を握ったドクオの足元に、1匹の鬼が転がっていた。


('A`)「よぉ。今は雑談してる暇なんかなさそうだぜ?」

( ^ω^)「お次が待ってますお。こりゃ、キリがないね 」


わらわらと群がり始める鬼達に対し、1歩前に出て迎撃を図ろうとするブーンとドクオ。
2人の後ろから敵の大群を眺め、ショボンは顎を撫でる。

( ^ω^)ブーンは退魔師稼業のようです━╋RETURNS━━
11 : ◆FnO7DEzKDs []:2008/05/29(木) 22:00:52.37 ID:43xCdwDW0

(´・ω・`)「一々相手してられないな。あの穴まで突っ切るぞ!! ジョルジュ!!」
  _
( ゚∀゚)「何よ?」

(´・ω・`)「せっかくの登場だ。活躍しろよ 」
  _
( ゚∀゚)「フゥムン……」


ジョルジュは1度大きく息を吸い込み、そしてゆっくりと肺から押し出す。
同時に両手を上下に広げ、大きく円を描くように回した。
背後に何らかの圧力を感じたブーンとドクオは揃って振り向く。

( ^ω^)ブーンは退魔師稼業のようです━╋RETURNS━━
12 : ◆FnO7DEzKDs []:2008/05/29(木) 22:01:20.40 ID:43xCdwDW0
  _
( ゚∀゚)「シンイ ジョガク……」


ブーンとは違う言霊と共にジョルジュは両手で空中に大きな円を描く。
時計回りに、反時計回りに。
何度も何度も同じ軌跡を描き、円は次第に目に見え始める。

  _
( ゚∀゚)「シンオン ジョカイ!!」


そして一気に発光。
円は球となり、ジョルジュの腕の動きと共に渦を巻く。

その光の渦の回転の強さが、力が満ちた事を気付かせる。

その瞬間、ジョルジュの光は轟音と共に解放された。
ブーンの発勁によく似た、しかし桁違いに巨大な青い破魔の光線の一撃。

暴風は空気に悲鳴を上げさせた。

( ^ω^)ブーンは退魔師稼業のようです━╋RETURNS━━
13 : ◆FnO7DEzKDs []:2008/05/29(木) 22:01:58.27 ID:43xCdwDW0

ジョルジュの目前から一直線に存在していた鬼達。
その全てが一瞬にしてかき消え、そこに大きな道が生まれた。 

  _
( ゚∀゚)「モーセのジョルジュと呼んで頂戴www」

(´・ω・`)「よし!! 穴まで走れ!!」

( ^ω^)「ツン!! 僕から離れちゃ駄目だお!!」

ξ゚听)ξ「うん!!」


ツンはブーンの真後ろにピタリと陣取った。
その左右をショボンとドクオが、足元にはでぃが、後ろにはジョルジュとクーが続く。

退魔師達はジョルジュによって一時的に開いた道を進むが、次第に左右から鬼達が群がる。
一足早く飛び出してきた鬼達を薙ぎ払い、突き飛ばし、時には打ち砕きながら穴へと急いだ。
遂に穴に辿りつき、即座に飛び込む。

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15 : ◆FnO7DEzKDs []:2008/05/29(木) 22:03:04.06 ID:43xCdwDW0

ジョルジュの目前から一直線に存在していた鬼達。
その全てが一瞬にしてかき消え、そこに大きな道が生まれた。 

  _
( ゚∀゚)「モーセのジョルジュと呼んで頂戴www」

(´・ω・`)「よし!! 穴まで走れ!!」

( ^ω^)「ツン!! 僕から離れちゃ駄目だお!!」

ξ゚听)ξ「うん!!」


ツンはブーンの真後ろにピタリと陣取った。
その左右をショボンとドクオが、足元にはでぃが、後ろにはジョルジュとクーが続く。

退魔師達はジョルジュによって一時的に開いた道を進むが、次第に左右から鬼達が群がる。
一足早く飛び出してきた鬼達を薙ぎ払い、突き飛ばし、時には打ち砕きながら穴へと急いだ。
遂に穴に辿りつき、即座に飛び込む。

( ^ω^)ブーンは退魔師稼業のようです━╋RETURNS━━
18 : ◆FnO7DEzKDs []:2008/05/29(木) 22:04:20.07 ID:43xCdwDW0
 
しかし鬼達はすぐ背後に迫っている。
このままでは穴の中での戦闘は免れない。


(゚- ゚川 彡「………」

('A`)「っ!!」

(´・ω・`)「振り返るんじゃないドクオ!!走れ!!」

('A`)「クーがっ!!」


一瞬後ろに気を取られたドクオにショボンの怒声が飛ぶ。
ショボンにクーが何をしようとしているのか分かっていない筈がない。
ドクオは1人で鬼達の足止めをしようとするクーを放ってはおけない。しかし……


(´・ω・`)「そういう女だ!! ここはアイツに任せろ!!」

('A`)「お……、おう!!」

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20 : ◆FnO7DEzKDs []:2008/05/29(木) 22:04:50.54 ID:43xCdwDW0
 
ショボンの一言。
ドクオは口を噤んだ。
自分より遙かにショボンの方がクーとの付き合いは長い。

∧_∧
(*゚;;-゚)「ふっwww。良い女じゃなぁ、ショボンwww」

(´・ω・`)「……知ってるさ 」


そのショボンの呟きは誰にも聞こえなかった。
彼らは走る。
穴の深淵へと。
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21 : ◆FnO7DEzKDs []:2008/05/29(木) 22:05:23.97 ID:43xCdwDW0
 
彼らの背中が見えなくなるのを穴の淵で確認した彼女は、堂々と振り返る。
眼前には100をいくらか割ったがおぞましい数の鬼。
たった1人の人間の女を見て、鬼達は早くもどの部分を食らうか算段していた。


川 ゚ -゚)「さーて、ここから先は通すわけにはいかんな。
      良い妻とは、夫が仕事に集中出来るように陰ながら支えるものだからな 」


百鬼夜行達はへらへら笑いながらクーに近付いて来る。
全ての鬼がこの女は自分の胃袋に入ると確信して止まない。
ちょっと待て、とクーは手の平で鬼達を制した。


川 ゚ -゚)「先に断っておこう。
      私の名は葛葉ライドウ。デビルサマナーだ。
      この中に私の友となって共に闘う者はいないか?」

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24 : ◆FnO7DEzKDs []:2008/05/29(木) 22:07:36.63 ID:43xCdwDW0
 
鬼達はそれを命乞いと判断する。
クーは近くにいた、ニヤニヤと締まりない口から涎を垂らす1匹の鬼を指差した。


川 ゚ -゚)「おい、そこのお前。お前はどうだ?」


鬼は舌舐りで返す。
お前を食うという意思表示。
しかしクーは何ら慌てることなく『残念だ』と眉を寄せた。


川 ゚ -゚)「これだけの数だ。全員に聞くのは面倒だから、この者の答えを総意とする 」


クーは毛ほども動じることなくあっさりとそう言った。


川 ゚ -゚)「さて。では、お前達全員を殲滅しなければならないな。
      ん? そっちのお前。何を笑っている? 何かおかしい事を言ったかな?」

餌が何か戯言をのたまっている。
鬼達の目にはそうとしか映らなかった。

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25 : ◆FnO7DEzKDs []:2008/05/29(木) 22:08:28.73 ID:43xCdwDW0
 
川 ゚ -゚)「あー。一人では『 無 理 』、だと思ってるのか……。
      ……ふっふふふwww」


クーが息を漏らし吹き出す。
それを機に、その場は蜂の巣を突いたように鬼達の笑い声が反響した。
たった1人の人間の女に群がろうとするこの世ならざるモノ達。
その狂気の宴が始まろうとしている。

しかし、その贄となる女が一緒になって腹を抱えて笑っているのはどういう事か……。


川 ゚ -゚)「はははははははーwwwww ぁ〜ぁ……」


突然笑うのに飽いてしまったかのように溜め息をつく。
身を案じてついた溜め息では決してない。

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26 : ◆FnO7DEzKDs []:2008/05/29(木) 22:09:53.30 ID:43xCdwDW0
 
クーはこれ以上ないほどに皮肉気に唇を吊り上げこう言った。


川 ゚ -゚)「……違うんだな、それが 」


恐怖のあまり気が狂れてしまった。
そう結論付けていた鬼達は、クーの自信に溢れた表情を見て様子がおかしい事に気付く。

何か恐ろしいモノの気配を感じる。
鬼達をして背筋に冷たい物を感じさせるようなモノの気配を。

クーのスラリとした指にいつの間にか挟まれていた2本の銀筒から、途方もない力を持った何かの気配が溢れ出している。


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28 : ◆FnO7DEzKDs []:2008/05/29(木) 22:10:30.24 ID:43xCdwDW0
 
川 ゚ -゚)「我は欲する。最果ての獣、汝の力を!!」


1本の銀筒の蓋が開き、薄い緑に光る円柱が覗く。
その光はクーの口調に比例して強さを増す。

川 ゚ -゚)「我、葛葉ライドウの名において命ずる!! 猛々しき魔獣よ、我に従いて共に戦え!!」

そして使役する友の名を呼んだ。

川 ゚ -゚)「双頭の魔犬『オルトロス』!!」

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29 : ◆FnO7DEzKDs []:2008/05/29(木) 22:10:56.63 ID:43xCdwDW0

目視が難しいほどに力強く発光した後、光は身を震わせる魔獣の咆哮と共に飛び出した。
光が何かの姿を形作る。
それが完了する前にクーが持っていたもう1本の銀筒の蓋が開いた。


川 ゚ -゚)「憤怒の剣、黒衣の死神、闇を纏いて闇を祓え!!」


やはり薄緑に発光する銀筒。
同じように次第に光は強さを増す。


川 ゚ -゚)「我、葛葉ライドウの名において命ずる!! 誇り高き半魔の剣士、我に従いて共に戦え!!」


1つ目の光とは一線を画す気配。
最初のモノは荒々しく猛々しい野生の気配を持っていたが、こちらは極限にまで研ぎ澄まされた殺気そのもの。


川 ゚ -゚)「漆黒の巨刃『ダンピール』!!」

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30 : ◆FnO7DEzKDs []:2008/05/29(木) 22:11:31.50 ID:43xCdwDW0

名を呼ぶと同時に飛び出す眩い緑の光の螺旋。
それは既に形となりつつあった双頭の獣の横に着地し、1つの人影を生成する。
鬼達は荒々しくも神秘的なその光景を網膜に焼きつけ、呆けたようにクーに飛びかかることを忘れていた。

∧_∧  ∧_∧
(叉)゚,, >|<,,゚(叉)「「グルルルルルルルル……」」

ノ)) - 从「………」


光が形造ったのは強烈な獣気を惜しげも無く四方八方に発する双頭の巨犬。
金色の艶やかな短い体毛、首には荒々しい緑の鬣。
それは世の果ての怪物、ゲリュオンの番犬『オルトロス』。

そして湧き出る隠し難き殺気を、無理やり押さえつけようとしている背に巨剣を背負う大男。
漆黒のマントで体を包み、無表情な顔を伸び放題の髪が隠す。
それは人を憎み、しかし憎み切れなかった悲しき半魔のダンピール『ノーマン』。

( ^ω^)ブーンは退魔師稼業のようです━╋RETURNS━━
31 : ◆FnO7DEzKDs []:2008/05/29(木) 22:13:03.79 ID:43xCdwDW0
 
一方は絶え間なく唸り声を上げ、その口からは時たま舌の様な炎をチラチラと覗かせる。
対照的に、一方は時が止まったかのように静寂の内にある。

クーは両者の間に割って入り、尊大な表情で鬼達を見渡した。


川 ゚ -゚)「今夜の獲物はご覧の通りだ。
     良かったな、オルトロス。今日は腹一杯食え……、どうした?」
∧_∧  ∧_∧
(叉)゚,, >|<,,゚(叉)「「グルルル……。ライドウ、 オレ コイツ 嫌イ……」」

ノ)) - 从「………」

川 ゚ -゚)「?? どうしてだ、オルトロス? ほれ、私に言いなさい 」


これはいけない。
今から共に闘おうというのにチームワークが早くも崩壊の兆しを見せている。
2人の主として、クーは問題解決に立ち上がる。

( ^ω^)ブーンは退魔師稼業のようです━╋RETURNS━━
33 : ◆FnO7DEzKDs []:2008/05/29(木) 22:13:43.59 ID:43xCdwDW0
 
∧_∧  ∧_∧
(叉)゚,, >|<,,゚(叉)「「オレ、前ニ コイツニ 真ッ二ツニサレタ……」」

ノ)) - 从「………」

川 ゚ -゚)「なるほど。詳しくは第一部の 『吸血鬼編その4』 の事を根に持っているワケだな。
     しかしあの時はお前だって、このノーマンを黒焦げにしようとしたじゃないか。
     闘ってたんだからお互い様だ。ホラホラホラ、機嫌を直せ 」
∧_∧  ∧_∧
(叉)゚,, >|<,,゚(叉)「「吸血鬼編? グゥゥゥゥ……、何ノ事カ ワカラナイ。ソレニ…… 」」

川 ゚ -゚)「それに?」
∧_∧  ∧_∧
(叉)゚,, >|<,,゚(叉)「「コイツ イタラ オレガ 食ウ分 減ル……」」
  _, ,_
川 ゚ -゚)「おいおい、オルオルちゃん。これ全部お前だけで食うつもりか?
     少しはノーマンに手伝ってもらわんと余るぞ?」

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36 : ◆FnO7DEzKDs []:2008/05/29(木) 22:15:11.87 ID:43xCdwDW0
 
はっはっは、馬鹿なこと言ってるぞ。何とか言ってやれよ。
クーはそんな顔をしてノーマンの肩を大げさに叩いた。


ノ)) - 从「……オレはこんな物は食わん。全部お前が食えばいい 」
∧_∧  ∧_∧
(叉)゚,, >|<,,゚(叉)「「!! 本当カ!?」」

川 ゚ -゚)「食わないのか? まぁ良かったな、オルトロス 」
∧_∧  ∧_∧
(叉)゚,, >|<,,゚(叉)「「良カッタ。オ前 良イヤツ 」」

ノ)) - 从「………」


ノーマンは釈然としない点を多々感じていたが、その性格上黙っておくことにした。

( ^ω^)ブーンは退魔師稼業のようです━╋RETURNS━━
37 : ◆FnO7DEzKDs []:2008/05/29(木) 22:15:38.18 ID:43xCdwDW0
 
代わりに背に負った巨大な剣を片手で引き抜き眼前に構える。
その剣は電話帳程もある厚みと、ノーマンの巨大な身の丈に迫る長さを持つ。
切る事より叩き潰すことを目的とした、狂った鉄の塊だった。

忘れる所だったとクーは再び鬼達に視線を向ける。
相手は百鬼夜行。
対してこちらはたったの2人と1頭。
圧倒的に数の利は相手にあったが、それでもクーの顔には勝利の確信が浮かんでいた。


川 ゚ -゚)「じゃ、やろうか。ルールは簡単。コイツらを1匹もこの穴の中には入れない 」

ノ)) - 从「あぁ……」
∧_∧  ∧_∧
(叉)゚,, >|<,,゚(叉)「「オレサマ オ前ラ……」」


その瞬間、オルトロスは全身の筋肉を一瞬にして引き絞る。
そして雄叫びと共に前方への爆発的な跳躍。
そこに居た鬼の群れに、2つの大口を限界まで開いて飛びかかった。

∧_∧  ∧_∧
(叉)゚,, >|<,,゚(叉)「「 マ ル カ ジ リ !!!!!!」」


  △  ▼  △  ▼  △  ▼  △  ▼  △  ▼  △  ▼  △  ▼  △  ▼

( ^ω^)ブーンは退魔師稼業のようです━╋RETURNS━━
38 : ◆FnO7DEzKDs []:2008/05/29(木) 22:16:12.08 ID:43xCdwDW0
 
  ▽  ▲  ▽  ▲  ▽  ▲  ▽  ▲  ▽  ▲  ▽  ▲  ▽  ▲  ▽  ▲

後ろの敵をクーに一任し、退魔師達は走る。
これといった光源も無いが、薄ぼんやりと周囲を黙視することが出来た。
そこは壁も地面も薄い靄のようなはっきりしない物で出来た道だった。
しかし踏みしめる足にはしっかりとした感触がある。

かなりの距離を過ぎたはずだが、中々景色が変わる気配はない。
とはいえ、一心不乱に走っていた退魔師達は、特に息を切らしてもいない。


( ^ω^)「ところでジョルジュさん。呪禁道って、もしかして式鬼の呪禁道ですかお?」
  _
( ゚∀゚)「まぁ、勉強家ねwww。でも、モチロンそれだけじゃないわよwww」

('A`)「式鬼って言やぁ、前にブーンが使ってた折り鶴の事か?」

( ^ω^)ブーンは退魔師稼業のようです━╋RETURNS━━
39 : ◆FnO7DEzKDs []:2008/05/29(木) 22:16:51.55 ID:43xCdwDW0
  _
( ゚∀゚)「あらヤダ。誰に教わったの?」

( ^ω^)「おっおっおwww。我流ですお 」
  _
( ゚∀゚)「へぇ〜……。我流ねぇ……」

(´・ω・`)「………」


誇らしげにニヤつくブーンを見て、ジョルジュは意味ありげな視線をショボンに向けた。
ショボンはそれを受けるも、無言を返答とした。
答えはそれで十分とばかりに、ジョルジュは再び前を向く。

( ^ω^)ブーンは退魔師稼業のようです━╋RETURNS━━
40 : ◆FnO7DEzKDs []:2008/05/29(木) 22:17:31.93 ID:43xCdwDW0
 
突然周囲を覆っていた靄が晴れる。
出口を潜ったわけではなく、雲が晴れるように突然。


ξ゚听)ξ「道はここまで、か。代わりに入口が4つ。そして……、何かしらコレ?」
∧_∧
(*゚;;-゚)「嫌な臭いじゃ……」


そこは石を組み合って作った円形の無機質な部屋で、
篝火がぽっかりと黒い口を開けた4つの横穴の前で煌々と燃えていた。
4つの入口はそれぞれの対角線が中央を通るように配置され、
退魔師達が一先ず歩を止めた部屋の中央には、
掌の様な平らな石を積み上げた小さな塚の様な物が鎮座している。

  _
( ゚∀゚)「U〜HUN♪」

(´・ω・`)「ジョルジュ。これが何だか見当がつくか?」


この場に到着した時から、あれやこれやと見て触っていたジョルジュが身の毛もよだつ笑みを見せる。
もっとも本人は至って普通に微笑んだだけだったが。

( ^ω^)ブーンは退魔師稼業のようです━╋RETURNS━━
41 : ◆FnO7DEzKDs []:2008/05/29(木) 22:19:35.11 ID:43xCdwDW0
  _
( ゚∀゚)「四鬼が作り出した結界ね。
     4匹の鬼、それぞれが結界を解くカギになってる。
     結界が解ければここが開いて、その奥―――多分、モララーのいる所に行けるってわけ 」

( ^ω^)「全部締め上げてやればいいんだお 」

('A`)「よ〜し!!じゃ、全員で行って1つずつ―――」


それを聞き、よし来たと早速屈伸などの準備運動を始める者が2人。
しかしその目論見は否定されることとなる。

  _
( ゚∀゚)「ダメよ。この穴の中には1人だけしか入れない。
     藤原千方、自慢の4匹の鬼達とタイマンってわけ 」

( ^ω^)「それならツンはここで……」
  _
( ゚∀゚)「それもダメ。
     結界の入口が開いてるのは、4匹の鬼を全員倒してから物の数分ってとこでしょうね。
     開いたらすぐに突入できるように、ここで待機する人間が必要よ。
     強力な術師でもいれば無理やりこじ開ける事も可能だけど、この面子じゃ厳しいわ。
     つまり……」


ブーンが不安気な表情をしてツンを見た。
当のツンはジョルジュの話に聞き入ってブーンの視線に気づかない。
ツンのここでの為すべき役割を理解したブーンは、一心にジョルジュの話に聞き入るツンを見てやりきれない気持ちを抱いた。

( ^ω^)ブーンは退魔師稼業のようです━╋RETURNS━━
42 : ◆FnO7DEzKDs []:2008/05/29(木) 22:20:27.23 ID:43xCdwDW0
  _
( ゚∀゚)「四鬼を従わせる『何か』を持ったモララーと、戦う事が出来る者がここに残らなければならない。
     恐らく1番危険な仕事よ。女の子に任せるつもり?」

(; ^ω^)「う……。ということはツンは……」

(´・ω・`)「戦わなければならない。1人で、だ 」

(; ^ω^)「……」

ξ゚听)ξ「……」


ツンは言うべき言葉を迷っていた。
自分が戦う事になる事は、元々覚悟してこの場に来ているから特に問題はなかった。
今の話を聞いて、自分の事のように青褪めているブーンにかける言葉を迷っていたのだ。


ξ゚听)ξ「何心配そうな顔してんのよ!! 私なら大丈夫!!」


いつも通りの快活さ。
これがツンの選択だった。

( ^ω^)ブーンは退魔師稼業のようです━╋RETURNS━━
44 : ◆FnO7DEzKDs []:2008/05/29(木) 22:24:15.76 ID:43xCdwDW0

('A`)「で? 後は誰が行く?」
  _
( ゚∀゚)「私は残るわ。鬼の力を悪用する奴はぶっ飛ばしてやらなくちゃwww」

(´・ω・`)「あぁ、ジョルジュはな、鬼と人間のクォーターだ。
      ご先祖様は一族の首領だったか? そういうわけで、悪行を働く鬼専門の退魔師なんだよ 」
  _
( ゚∀゚)「まぁ、それは建前で最近は他にもやってるけどねwww」


それを聞き感心したかようにドクオがジョルジュを改めて観察する。
見た目の奇抜さにばかり捉われていたが、確かに隆々とした筋肉とその巨体からは人間以上の凄まじさを伺わせる。
でもどうしてオカマなんだ?

∧_∧
(*゚;;-゚)「ワシは行こう。都を荒らした鬼とやらに、特に1番強いのに興味がある 」

('A`)「オレもこっちだな。1人でどこまでやれるか試してみたい 」

( ^ω^)ブーンは退魔師稼業のようです━╋RETURNS━━
45 : ◆FnO7DEzKDs []:2008/05/29(木) 22:24:48.20 ID:43xCdwDW0

(; ^ω^)「僕は……」

(´・ω・`)「お前は残れ、ブーン 」


一歩出ようとするブーンをショボンが静かに制した。
その時、ショボンはジョルジュに視線を移す。

  _
( ゚∀゚)「………」


視線をジョルジュからブーンに戻し、ショボンはその前に出る。

(´・ω・`)「お前なら初めてのコンビでも臨機応変に戦える。4人目はオレだ 」
  _
( ゚∀゚)「よろしくね、ボウヤwww」

(;^ω^)「はいですお……」

無理やり押し切られてしまったような理不尽さが残る。
自分にも言いたい事はあるのに言えないもどかしさ。
ブーンは自分から離れて、各々これと決めた4つの入口の前に向かう仲間たちの背中をただ眺めていた。

( ^ω^)ブーンは退魔師稼業のようです━╋RETURNS━━
47 : ◆FnO7DEzKDs []:2008/05/29(木) 22:26:35.47 ID:43xCdwDW0
∧_∧
(*゚;;-゚)「さて、ワシはこの穴にするかのぅ。どの鬼に当たるか楽しみじゃ 」

ξ--)ξ。o ○(大丈夫!! 大丈夫!! 大丈夫!!)

(´・ω・`)「ドクオ、分かってるだろうな?」

('A`)「『死ぬ気で』、とか馬鹿な事は思わねぇよ 」

(´・ω・`)「分かってるならそれで良い。もし危なくなったら……」

('A`)「なんだよ?」

(´・ω・`)「逃げろ 」

('∀`)「……ちっ。分かったよ……」


ドクオはニヤリと笑い、了解の意思表示をするように握った拳で軽くショボンの肩を叩いた。
そしてしこたま蹴り上げられた。

( ^ω^)ブーンは退魔師稼業のようです━╋RETURNS━━
48 : ◆FnO7DEzKDs []:2008/05/29(木) 22:27:01.49 ID:43xCdwDW0
 
(´・ω・`)「……行くぞ 」

(#)A`)「おう!!」
∧_∧
(*゚;;-゚)「ふっふっふwww。前足が鳴るのぅwww」


3人が穴の中に入るや否や、突然入口に靄が立ち込める。
これ以上の侵入は許さないという事だろうか。
いよいよツンが1人で仕事を成し遂げなければならない事を自覚したブーンは、後ろ髪引かれる思いだった。


(; ^ω^)「ツン、気を付けるんだお 」

ξ゚ー゚)ξ「分かってる。心配しないで 」


他意の無い笑顔を見せて穴の中に入っていくツン。
しかしその笑顔には、どこか覚悟から来る緊張感が浮かんでいた。

( ^ω^)ブーンは退魔師稼業のようです━╋RETURNS━━
49 : ◆FnO7DEzKDs []:2008/05/29(木) 22:27:58.48 ID:43xCdwDW0
 
(´・ω・`)「……行くぞ 」

(#)A`)「おう!!」
∧_∧
(*゚;;-゚)「ふっふっふwww。前足が鳴るのぅwww」


3人が穴の中に入るや否や、突然入口に靄が立ち込める。
これ以上の侵入は許さないという事だろうか。
いよいよツンが1人で仕事を成し遂げなければならない事を自覚したブーンは、後ろ髪引かれる思いだった。


(; ^ω^)「ツン、気を付けるんだお 」

ξ゚ー゚)ξ「分かってる。心配しないで 」


他意の無い笑顔を見せて穴の中に入っていくツン。
しかしその笑顔には、どこか覚悟から来る緊張感が浮かんでいた。

( ^ω^)ブーンは退魔師稼業のようです━╋RETURNS━━
50 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[]:2008/05/29(木) 22:28:28.02 ID:43xCdwDW0
 
靄がかかり次の侵入者を拒絶するツンが入って行った入口。
そこを茫然自失と見続けるブーン。
その背中にドン、とジョルジュの分厚い胸板が当たる。
  
  _
( ゚∀゚)「なによボウヤwww。あの子の事好きなの? 羨ましいわwww」

(; ^ω^)「ちっちちっち、違うお!! そんなこと全然ねーお!!
      誰がいつ僕がツンの事が好きだって言ったんだお!!
      ソースあんなら今すぐ晒せお!!」
  _
( ゚∀゚)。o ○(どこの小学生よwww)


  △  ▼  △  ▼  △  ▼  △  ▼  △  ▼  △  ▼  △  ▼  △  ▼

( ^ω^)ブーンは退魔師稼業のようです━╋RETURNS━━
51 : ◆FnO7DEzKDs []:2008/05/29(木) 22:29:58.26 ID:43xCdwDW0
 
  ▽  ▲  ▽  ▲  ▽  ▲  ▽  ▲  ▽  ▲  ▽  ▲  ▽  ▲  ▽  ▲

長かったのか短かったのか……
来た時と同じ靄に包まれた、不思議な距離感の1本道。
その靄が突然晴れたとき、ショボンはドーム状の天井を持つ空間に立っていた。

 
(´・ω・`)「………」

 
無言で周囲を見渡す。
地面の感触。これは自分が良く知っている何の変哲も無い土の様に思える。
空間の広さ。円形で、一般的な学校のグラウンドの広さに近い。

光の差し込む窓も、火などの光源も無いが不思議と明るい。
それがこの場所がこの世に存在し得る場所ではない事を如実に物語っていた。

ショボンはさして警戒する様子も無く、大股で堂々と10m程適当に歩いた。
そして確信した。

( ^ω^)ブーンは退魔師稼業のようです━╋RETURNS━━
52 : ◆FnO7DEzKDs []:2008/05/29(木) 22:30:22.09 ID:43xCdwDW0
 
(´・ω・`)「……いつまで隠れているつもりだ?」



―――居る。



姿は見えないが間違いなく自分に殺気を向けている何者かが。

それを証明するかのように、ショボンの周囲の地面が、突如盛り上がる。
土を削る音が大きく響き、地中を何かが動いている。
その軌跡は大蛇のようなうねりを形成し、遂にその先端から金色に輝く何かが恐ろしい速さで飛び出した。

 A_A
爪゚Д゚)「ヒャァッハァー――――ッ!!」


それは飛び出した勢いに任せ、ショボンに土の欠片を目くらましに自身の腕を振りかざした。
ショボンは飛び散る土片は一切無視。
半歩だけ下がり腕による攻撃を回避する。

( ^ω^)ブーンは退魔師稼業のようです━╋RETURNS━━
54 : ◆FnO7DEzKDs []:2008/05/29(木) 22:31:03.81 ID:43xCdwDW0
 
見上げると、襲撃者が10数m上の天井を蹴り付けて居る所だった。
ショボンと正対するように着地する。

ショボンはスーツについた土汚れを払いながら、まじまじとそれを観察した。

金色に輝くメタリックな皮膚。
鋭い2本の角に、赤く充血し強烈に釣り上った両目。
土の中を自在に移動していた事実。

藤原千方の四鬼の中でこれに該当する者は……


(´・ω・`)「ちっ……金鬼か。ハズレだな 」
 A_A
爪゚Д゚)「ヒヒャッ!!ハズレもハズレ。大ハズレだぜぇ!!
     この金鬼様の道に進んだとなりゃ、行きつく先は1つ。オレ様の胃袋の中よ!!」


金鬼はショボンの体を爪先から頭頂まで舐め回すように眺めた。
わざわざ獲物の方から飛び込んで来てくれたとしか認識していない。
しかし、この場に居る2人の間には思考にバラつきがあった。

( ^ω^)ブーンは退魔師稼業のようです━╋RETURNS━━
55 : ◆FnO7DEzKDs []:2008/05/29(木) 22:31:39.21 ID:43xCdwDW0
 
(´・ω・`)「穏形鬼を狙ってたんだが……。仕方ない。この小物で我慢するか 」
 A_A
爪゚Д゚)「な……、小物だと……!!」


金鬼はそれを聞き絶句する。
獲物たる人間から、心底取るに足らない物として見下げられている。
ショボンは面倒臭そうに無言のまま冷淡な目で眺め続けていた。

 A_A
爪゚Д゚)「付け上がってるんじゃねぇぞ、人間風情が!!
      明日の朝にはテメェはオレのクソになる運命d―――」


ショボンのあまりにも不遜な態度に怒り狂う金鬼。
その怒号が突然遮られる。


(´・ω・`)「ピーピー五月蠅いんだよ、この小物が 」


ショボンは刀を鞘にゆっくりと収めながら、胴に居合による一閃を受け、地に沈む金色の鬼を見下ろした。

( ^ω^)ブーンは退魔師稼業のようです━╋RETURNS━━
56 : ◆FnO7DEzKDs []:2008/05/29(木) 22:32:07.26 ID:43xCdwDW0
 
(´・ω・`)「さて、他は首尾良くいってるかな?
      でぃさんは余裕だとして……、ツンもいけるだろ。
      心配なのはドクオだな 」


とは言え自分にはどうする事も出来ない。
ここで泣いても喚いてもドクオが有利になるわけでもないし、単純に力を信じるしかなかった。
実際、それで何とかなると楽観視もしていた。


(´・ω・`)「で? お前はまだ死んだフリを続けるのか?
      まさかオレが油断して背中を向けるまで、そのままでいるつもりじゃないだろうな?」


つまらない事はするな……
その声音にはそう言う意思が込められていた。

沈黙。
ショボンは沈黙のままに倒れたままの金鬼に刺すような視線を向け続けている。

微かにせせら笑いが聞こえ始めた。
最初は控えめに、次第に図々しく、そして遂には腹立たしい程の馬鹿笑いに変わる。

 A_A
爪゚Д゚)「うへへへへへwww。何だよ。
     せっかく苦しまないように、後ろから一思いに食ってやろうと思ってたのによwww」

( ^ω^)ブーンは退魔師稼業のようです━╋RETURNS━━
58 : ◆FnO7DEzKDs []:2008/05/29(木) 22:32:44.02 ID:43xCdwDW0
 
嫌らしい笑みを浮かべた金鬼がゆっくりと立ち上がる。
両手を胸の前で組み、一瞬、力を込めるような仕草。
その瞬間、手の甲から見るからに凶悪な金属の爪が飛び出した。

これでショボンを料理するつもりなのだろう。
必要以上に恐怖を植え付けようと、両手の爪をこれ見よがしに見せつける。


(´・ω・`)「『 人 間 風 情 』 相手に死んだふりとは、随分な念の入れようだな。
      どうした? 面と向かって戦う度胸がないか?」
 A_A
爪゚Д゚)「何だと、この餌が!! お前ら人間は全員オレの餌だ!!
     目玉を刳り抜いてしゃぶりながら、舌を抜いて、鼻を食い千切って、
     生きたまま腸を抉り出して、心臓の鼓動に合わせて咀嚼してやる!!」

(´・ω・`)「そういうのを負けフラグという 」


一切の動揺を見せないショボン。
頭に血が上り罵詈雑言を吐く金鬼。
しかし、金鬼は圧倒的に有利な点を思い出し再び高慢な態度に戻る。

( ^ω^)ブーンは退魔師稼業のようです━╋RETURNS━━
60 : ◆FnO7DEzKDs []:2008/05/29(木) 22:33:12.03 ID:43xCdwDW0
 
 A_A
爪゚Д゚)「フンッwww。それはそうとさっきのお前の攻撃、痛くも痒くもなかったぜぇwww。
     人間の刀じゃオレの肌は切れねぇwww。
     お前は為す術もなく食われる運命なんだよwww」

(´・ω・`)「金鬼の名は伊達じゃない……か。外皮が金属とはな 」


ショボンとした顔でショボンが言う。
それを見て勝利を確信し、付け上がる金鬼。
しかし残念ながら、ショボンに関しては顔がショボくれていても『 何 ら 問 題 は な い 』。

 A_A
爪゚Д゚)「命乞いでもしてみろよ、人間。場合によっては楽に殺してやっても―――」

(´・ω・`)「まぁ、大したアドバンテージじゃないな 」
  A_A
爪#゚Д゚)「決まりだ……。テメェはオレに食われながら死ぬ!!」


何ら問題はない。

ショボくれた顔はいつも通りだ。


  △  ▼  △  ▼  △  ▼  △  ▼  △  ▼  △  ▼  △  ▼  △  ▼
( ^ω^)ブーンは退魔師稼業のようです━╋RETURNS━━
61 : ◆FnO7DEzKDs []:2008/05/29(木) 22:36:45.44 ID:43xCdwDW0
 
  ▽  ▲  ▽  ▲  ▽  ▲  ▽  ▲  ▽  ▲  ▽  ▲  ▽  ▲  ▽  ▲


ドクオは目の前に立っている青い肌の何者かと正対し、戸惑っていた。
額には1本の角、顔面には目や鼻や口等のあって当然の器官がない。
代わりに向こう側が丸見えの大きな穴が開いている。

明らかに人間ではない。
しかし一向に襲ってくる気配も殺気も無い。


('A`)「どーも 」
A
| (◎) |「やぁ 」


思いの外、それは優し気な声をしていた。
やりにくい。それがドクオの第一印象。
溢れんばかりの殺気を振り撒いて襲いかかって来られた方がずっと良い。

( ^ω^)ブーンは退魔師稼業のようです━╋RETURNS━━
62 : ◆FnO7DEzKDs []:2008/05/29(木) 22:37:03.21 ID:43xCdwDW0
 
('A`)「あー……、オレが何しに来たのかは分かってるよな?」
A
| (◎) |「モチロン 」

('A`)「アンタ、4匹の鬼の中の1匹だよな?」
A
| (◎) |「そうだよ 」

('A`)「ちょっと私用でね、オレはアンタをぶち殺さなきゃならんのよ 」
A
| (◎) |「それは困るね 」


鬼は鬼でも良い鬼かもしれない。
ドクオの中ではそういう考えが生まれ始めていた。
お互いに妥協して歩み寄ることが出来るかもしれない。

( ^ω^)ブーンは退魔師稼業のようです━╋RETURNS━━
63 : ◆FnO7DEzKDs []:2008/05/29(木) 22:37:21.96 ID:43xCdwDW0
 
('A`)「アンタ、話が分かりそうだ。
    もし良かったら、自主的に封印解いてくんねぇかな?
    それならお互い痛い思いしなくていいし、何より早く事が済む。」
A
| (◎) |「封印を? 僕が解く?」


感じる雰囲気は全く変わらない。
しかしこの先、ドクオは自分達は相容れない存在であると知る事になる。

A
| (◎) |「どうして餌の要望を聞き届けてやらないといけないんだい?
     食い殺されるんだ。
     誰にでも体験できることじゃない。楽しんでよ 」

('A`)「何だ。やっぱり話は分からんか 」
A
| (◎) |「人間も牛や豚の話は分からないだろ?」

('A`)「まーな 」

( ^ω^)ブーンは退魔師稼業のようです━╋RETURNS━━
64 : ◆FnO7DEzKDs []:2008/05/29(木) 22:37:46.13 ID:43xCdwDW0
 
適当な返事を返しながら、ドクオは脳内のスイッチを切り替える。
こういう思考をする相手だ。
これから数分、あるいは数秒の内に戦いは始まる。

A
| (◎) |「自分が食われる側に回ると、途端に泣き叫びながら止めてくれと許しを乞う。
     人間の悪い所だよ 」

('A`)「別にオレは泣いても叫んでもないけどな 」


ドクオは左足を前に出し半身となる。
密かに爪先に力を入れ、地面を強く踏み締めた。
素早く一気に距離を詰めるためだ。


('A`)「それに、人間は牛や豚とは違う。黙って食われると思ってたら……」
A
| (◎) |「思ってたら?」

('A`)「噛み付くぜ?」


  △  ▼  △  ▼  △  ▼  △  ▼  △  ▼  △  ▼  △  ▼  △  ▼
( ^ω^)ブーンは退魔師稼業のようです━╋RETURNS━━
65 : ◆FnO7DEzKDs []:2008/05/29(木) 22:38:04.55 ID:43xCdwDW0
 
  ▽  ▲  ▽  ▲  ▽  ▲  ▽  ▲  ▽  ▲  ▽  ▲  ▽  ▲  ▽  ▲

 A_A
爪゚Д゚)「うりゃっ!! うりゃっ!! うりゃっ!! うりゃっ!!
     ひゃー―っはぁっ!!!!」

(´・ω・`)「……」


金鬼の猛攻。
両拳から生えた爪の猛威もさることながら、体術に関しては相当の自信があるようだ。
金属の硬質性と質量を考慮すれば、その脅威は推して知るべしだ。

 A_A
爪゚Д゚)「どうしたどうしたぁ!? ずいぶん大人しくなっちまってよ!!
     さっきみたいな口をきいてみろよwwww」

(´・ω・`)「……」
 A_A
爪゚Д゚)「今になって後悔してるんじゃねぇだろうな?
     安心しろよwww。予告通り生きたまま食ってやるよwww」


ハンマーの一撃の様な蹴りをかわし、岩をも引き裂く爪の斬撃を刀で捌く。
口先では小物臭が漂っていたが、そこはやはり鬼。
人間を遙かに超える身体能力から繰り出されるのは嵐の様な斬撃、打撃。
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