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レースクイーン(アラバマ州)( ^ω^)エアーがクオリティーを育てるようです

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( ^ω^)エアーがクオリティーを育てるようです
72 : レースクイーン(アラバマ州)[]:2007/04/14(土) 00:00:16.47 ID:8EfekdEx0
――まずは、僕達の世界のことについて話そう。

もともと、この世界には『英雄』が居たんだ。
彼はいわゆる正義の味方で、子供にも大人にも信頼され、愛されていた。

その一方で、『悪の組織』も同時に存在していた。
『悪の組織』首領は部下たちを使って悪事をはたらき、街の人々を苦しめていた。
つまり、『英雄』と『悪の組織』との二者の均衡で、この世界は成り立っていたんだ。

しかし、突然、その流れは止まった。
『sks』の反応が急に消えてしまったからなんだ。

――『sks』、それは、この世界の生命源みたいなものさ。

言い換えれば、この世界の時間、空間、物質の創造の全てを司る存在、というところかな?
僕は『sks』と対話を行う役割を担い、この世界の事象をコントロールしていた。

その『sks』の存在が失われることで、この世界は本当の意味での『終末』に向かい始めた。
手始めに起こったのがこの世界の住人に対する浸食だ。

浸食とは『sks』の消失によって人々が受けた影響のことだ。
しかも悪いことにその影響は人を選ばず、無差別に、無作為に降りかかるんだ。

浸食された者の体は腐敗し、心は失われてしまう。
つまり例えるならば、彼等は『生きた屍』、まあ、貴方の世界で言うゾンビのような存在になるんだ。

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75 : レースクイーン(アラバマ州)[]:2007/04/14(土) 00:02:28.41 ID:8EfekdEx0
しかし、彼等が浸食される過程で厄介な問題が起こった。
生を謳歌することの出来なかった彼等の無念の想い、つまり、残留思念が彼等の体に残ってしまったんだ。

そして、遂には無差別に他の人間を襲い、街のあらゆる建物を破壊した。
さらに面倒なことに、屍に殺された人間は屍になり、その屍が別の生きた人間を殺し、新たな屍を作り出す。

こういった悪循環が遂には、この世界に大きな影響を与えてしまう。
『英雄』と『悪の組織』の二者によって保ってきた均衡を崩すほどにね。

はじめに浸食された屍達は『悪の組織』の構成員にその牙を向ける。
構成員たちは為す術も無く、次々と屍と化してしまった。
組織は世界制服の目的で動いていたが、浸食のせいで組織そのものが破綻してしまう。

一方、敵である組織を失った『英雄』は、浸食された亡者達に勇敢に立ち向かった。
だが、彼は『英雄』として称えられることは無かった。

その原因の一つは、浸食の規模が大きすぎたことだ。
もはや、その勢いは彼個人の手に負えるものではなかった。
次第にそれは街をも巻き込み、街の荒廃へと繋がっていった。

そして、『英雄』の無力さに失望した人々は、いつからか、彼の出現を望まなくなっていた。
彼が居ても、浸食に巻きこまれた状況は変わらなかったからね。
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79 : レースクイーン(アラバマ州)[]:2007/04/14(土) 00:03:51.16 ID:8EfekdEx0
一息で長い説明を言い切って、彼は一呼吸する。
そして、間を置いて息を吸い込むと、さらに付け加えた。

( ∵)「『英雄』の目的も、人々を守ることから、屍達を狩ることそのものへと変わっていった。
    それが彼の生きる目的にすり替わってしまったんだ」

('、`*川「……」

一瞬の沈黙が部屋の中を支配した。
彼女が少年の言葉を理解するだけで精一杯だったこともあった。
だが、同時に、真剣な彼の眼差しに飲み込まれていたからでもあった。

( ∵)「……そして、これが今のこの世界の状況さ」

そして、少年は彼女に窓の外を見るように視線で促す。

窓の外に広がる光景は、凄惨なものであった。
建物や道路のあらゆるものは崩壊し、荒れ果てている。
人々はぼろぼろの布を纏い、虚ろな目で、黒雲で覆い尽くされた空を見上げている。

まさに、世界の『終末』を示しているような光景であった。

('、`*川「酷い……これが貴方達の世界の現実…?」

( ∵)「そうだね。辛うじて浸食に巻き込まれていない人達も、あんな感じさ。
    彼らは、もはや生きる事そのものが目的になりつつある。
    生きて何かをするわけでもなく、ただ、この世界が浸食に飲み込まれることを待つしかできないんだ」
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82 : レースクイーン(アラバマ州)[]:2007/04/14(土) 00:05:59.87 ID:8EfekdEx0
('、`*川「……そもそも、なぜ私をこんな所に呼び出したりしたの?
     そりゃあまあ、昔はそれなりにやんちゃもしたけど……」

彼女は、少年と彼女の世界で出会い、そのままこの異世界に召喚される形となった。
しかし、どうしても自身が呼ばれた理由が分からなかった。

('、`*川「私としても、この世界をどうにかしたい所なんだけど、
     こればっかりは私だけでなんとかできる問題じゃないよ。
     もっと力のある、若い人に頼んだほうがいいんじゃないのかい?」

確かに、彼女がこの問題を解決するには荷が重すぎた。
目の前で困っている人々を助けたいという気持ちはあったが、同時に、自分がこの状況を救える力がないことも分かっていた。

だが、少年はそれを否定した。

( ∵)「いや……僕がここに貴方を呼んだのは、力が有るとか無いとかそういうことではないんだ。
    僕が貴方を呼んだ理由、それは貴方の『慈愛』だ。
    この世界を元に戻す為に必要なのは『力』ではない。それは『英雄』がすでに証明しているんだ」

('、`*川「……慈愛?」

( ∵)「この世界を救う手がかりを探す為に、僕は別の世界を彷徨い……そして見つけた。
    周りの人々に『希望』を与える貴方の姿を」

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84 : レースクイーン(アラバマ州)[]:2007/04/14(土) 00:07:31.79 ID:8EfekdEx0
('、`*川「そう言われてもねえ……」

正直、彼女は戸惑っていた。

まるで自分が救世主だと言わんばかりの少年の言葉。
突然目の前に突きつけられた、異世界の現実。
彼女がそれを受け入れるには、いささか時間が少な過ぎた。

('、`*川「では、一体私は何をすればいいの?」

しかし、彼女は最も聞きたかった質問を彼にぶつけた。
自分が非力であることは承知の上で、この世界の為に何か役に立ちたいと思い始めていたからだ。

( ∵)「貴方は――」

少年はそっと目を閉じて、言った。

「――貴方の心の向くままに行動すればいい」

その瞬間だった。

少年の体は突如、眩い光に包まれる。
彼の身につけている服も、その白い肌も、一切見分けのつかないほどに強く輝く。

次に、彼の体の輪郭もおぼろげなものへと変わり、周りの空間と彼との区別が付かなくなる。
そして、少年であった光の塊は次第に小さくなっていく。

('、`*川「ッ!!」

突然の発光に、思わず彼女はその小さな手で顔を覆った。
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88 : レースクイーン(アラバマ州)[]:2007/04/14(土) 00:09:25.95 ID:8EfekdEx0
目を開けていられないほどのに白い光。
まるで、暗闇に埋め尽くされたこの世界を照らすようであった。
輪郭がはっきりしない発光体は、徐々に鮮明に形を帯びていく。

それは、例えるならば光の輪であった。
輪は数秒ほど宙に浮かんだ後、そのままふよふよと彼女の元へと近づいて来る。
そうして、それは彼女の首元へすうっ、と吸い込まれていった。

('、`*川「……う……ん……今のは一体……」

光の世界から覚めると、目の前の少年は跡形も無く消えていた。
今までの出来事が嘘だったかのように、辺りは静まりかえっている。
暫く呆然としていたが、ふと、彼女は首の辺りに違和感を覚えた。

('、`*川「これ……は?」

彼女の首には小さく細い銀の鎖が巻かれていた。
前方には楕円形の宝石が一つ繋げられている。
その形状は、装飾用のペンダントのようであった。

ペンダントは無駄に飾り気も無く、シンプルな造りのものだ。
しかし、宝石の放つ七色の輝きは他の高価な宝石にも劣らない気高さを醸しだしていた。

('、`*川「ペンダント?」

しげしげとペンダントを見つめながら彼女は呟いたが、果たしてその問いに答える者は誰も居なかった。

('、`*川「……さて、どうしたもんかねえ」

彼女は溜息を付きながら、窓の外にそびえ立つ巨大な鉄塔を見つめていた。
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90 : レースクイーン(アラバマ州)[]:2007/04/14(土) 00:10:47.09 ID:8EfekdEx0
('A`)「ああ、マンドクセ」

街の中心にそびえ立つ、赤い鉄塔。
鉄筋の一部は所々で曲がっており、腐食が進んでいる。
しかし、他のどの建物よりも高い三角錐の塔はそれでもなお異様な存在感を放っていた。

('A`)「高けえな……落ちたら簡単に死ねそうだ」

塔の頂上近くの鉄骨の上で、男は孤独に立ち尽くしていた。
黒いマントに黒い軍服、そして黒いブーツを纏った全身黒ずくめの妙な格好の男であった。
そして、彼の纏うものには全て、大きく骸骨の刺繍が施されてある。

('A`)「……ハア、本当は俺が征服するはずだったのにな」

男は荒れ果てた街並みを見下ろし、そう呟いた。

男はかつて、人々に『悪の軍団』と恐れられた『しっと団』の首領であった。
しかし、浸食に部下達は巻き込まれ、組織は壊滅。
おまけに永遠の好敵手であったはずの『英雄』は、首領であった男を無視して屍たちを狩り続けている。

('A`)「……現在『しっと団』は俺一人か……あの頃が懐かしい」

彼は、輝かしい過去を思い出していた。

15歳以上20歳未満の女性(美人限定)の下着を盗む計画。
さらには、体育の授業で使われる女子のハーフパンツを全てブルマに摩り替える計画。
そんな悪質な大計画を『しっと団』は行ってきた。
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92 : レースクイーン(アラバマ州)[]:2007/04/14(土) 00:11:59.59 ID:8EfekdEx0
('A`)「極め付けに『15歳以上20歳未満の美女を囲むハーレム大作戦』を行う寸前で、世界は変わっちまった」

男は小さく溜息を漏らした。
しかし、それも吹き荒れる強風に飲み込まれてしまう。

('A`)「飛び降りたら楽になれるかな……」

男は足元を、虚ろに眺めていた。
吸い込まれそうな不思議な感覚がする。
だが、なぜか恐怖はなかった。

('A`)「ま、流石の俺でも即死だろうな」

もはや、男には何も残されてはいないからだ。
忠実な部下も、山積みになったパンティにブラジャーの山も、全て浸食によって奪われていた。

('A`)「もう……生きる気がしねえや」

そして、生きる目的すらも失っていた。

彼は覚悟を決めた。
全てに絶望し、男が飛び降りようとした、

――その瞬間だった。

「そこの君。ちょっと伺いたいのだが」
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98 : レースクイーン(アラバマ州)[]:2007/04/14(土) 00:13:42.99 ID:8EfekdEx0
            ,r'"⌒ヽ 
          /`・ω・´ \   「ここは一体どこなんだい?」
      , .-‐- くJ(      ゝ-rr- 、、
     /Y  ,r 、 `ー r'"^〃 、  つヒヽ
    ,ノ '^` i! =テミ i' 天ニ  ミ、 ='"^ヾ }
   ,/ ''=''" ノ-‐'ヾ-人,,__ノnm、''::;;,,  イ
  i!   ,∠-―-、、     `ー'フヾ、  j
  f'´    ノし   `丶、 ー=ミ-JE=-  /
  ヾ=ニ- 彡^ 〃   ,,>、、`''ー-::,,_,,ノ
    ``ー--┬:, ''"~´フ ソ´`7'' ''"´
         ,に (`゙゙´ノ   f^ヽ
        ,ハ    ,ィ'   ,;-ゝ、
        /ミ`ーt!,_,ィ-‐彡''"^ヽ
        /  ヾ::::::::::::::::r''"  ぃ ;} 
       l   t:::::::::::/    ノ /  
       l!   `'T7′   / /

       そ い や っ さ あ!!

マッチョであった。
一人のマッチョが、いつの間にか塔の頂上に立っていたのだ。

Σ('A`;)「…ッ!?」

そして男が頭上のマッチョに気付いた瞬間、脊髄に電撃が走り、脳髄からはドーパミンが溢れ出す。

これだ――と、男は思った。

太陽のように輝く小麦色の光沢に、アルプスに連なる山々のように険しい筋肉の隆起。
その全てをとっても非の打ち所は無い。
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100 : レースクイーン(アラバマ州)[]:2007/04/14(土) 00:15:29.29 ID:8EfekdEx0
マッチョの美しい筋肉を見て、彼の頭の中を支配していた絶望は一気に消え去ってしまった。
代わりに彼の中を埋め尽くしていたのは、筋肉に対する憧れ。筋肉に対する慈愛。
そして、筋肉に対する希望であった。

('A`;)「……あ、貴方は?」

(`・ω・´) 「私はシャキン――もとい、ゴッド・オブ・マッスル!! まあ、『筋肉神』とでも呼んでくれたまえ」

シャキンは鉄塔の頂上で器用にバランスを取りながら、モスト・マスキュラーのポーズで答えた。
(参考:ttp://club.pep.ne.jp/~mikami1/pose_most-muscular.jpg)

('A`;)「あ、貴方が神かッ!!!」

男は、シャキンの筋肉のバルク(筋肉の大きさ)、カット(筋肉ムキムキ度)、
そして、その黄金比とも呼べる均整さに深い感銘を覚えた。

ちなみに、これがボディビル大会における審査対象でもあるので、
読者の良い子のみんなは、この三点を意識して筋トレに励むとよい。

('A`;)「……決めたぜ!! 俺は貴方に付いていく!!」

(;`・ω・)「いや、ちなみにここはどこなんだい?」

('∀`)「筋肉の、筋肉による、筋肉のための世界!! 俺は新たな世界を創り上げるッツ!!」

こうして、新たなる伝説はここから始まった。

第一話 完
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104 : レースクイーン(アラバマ州)[]:2007/04/14(土) 00:17:16.79 ID:8EfekdEx0
第二話 「ファースト・コンタクト」


「フヒヒヒヒwwwこんな所にガキが寝て居やがるぜwww
 このナリからすると、そうとう金を持ってそうだぜwww
 おっ? この腕輪は高そうだなwwwこりゃイイ値で売れるぜwww」

人々の欲望が渦巻く歓楽街の一角で、ぐったりと横たわる少年が居た。
体の至る部分には青痣が浮かび、その意識は失われている。

そして、その少年の所持品を盗もうと、一人の男が彼に近づいていた。
このような輩はこの街にはごまんと存在しており、決して珍しくない。
そんな見慣れている光景であるせいか、周りの者達も盗人を止めようとはしなかった。

「頂いていくかwww って、ん? なんだこれ? ひっついて離れねえ」

「おい……そこの馬鹿」

盗人が少年の腕時計を引き離そうと苦戦しているその時だった。
不意に一人の男が、盗人の肩を掴み、声を掛けてきたのだ。

「んああ? てめえ何者だ?ぶっ殺さr――」

盗人が不機嫌そうに振り返り、背後の男に凄もうとした瞬間、彼の体は鮮やかに宙へと舞いあがった。

「何だ、口の割に大したことねえな」

男は、痙攣しながら地面に横たわる盗人を横目に、自身の左手をまじまじと見つめながら呟いた。
その左手はネオンの輝きを吸収し、複雑に絡み合う原色を放っていた。
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108 : レースクイーン(アラバマ州)[]:2007/04/14(土) 00:18:54.02 ID:8EfekdEx0
傷だらけの酷い状態を目の当たりにした男は、その表情をしかめた。
男の太い眉は、表情の動きに合わせるかのようにゆっくりと動く。

「おい、しっかりしろ!! 生きてるか!?」

男は乱暴に少年の頬を叩く。
しかし、少年は小さくううっ、と呻き声を上げるものの意識が戻る様子は無い。

「まあ、放っておくわけにはいかねえよな……って、重いな。何喰って育ったんだコイツ?」

反応が無いことを悟った男は、そのまま強引に少年を担ぎ上げる。
男はやれやれといった表情で溜息をつくと、ゆっくりと立ち上がった。

「仕方ねえ。アイツの店に連れて行くか」

少年を連れて行く当てを見つけたのか、男はすぐに足を前に進める。

「フッ……何やってるんだ? 『正義の味方』はとっくに廃業したってのによ……」

男はふと立ち止まり、小さく嘲った。
未だに捨てきれない自身の甘さに苦笑したのだ。

「全く……変なのを拾っちまったぜ……」

男はもう一度溜息をつくと、再び歩き出し、歓楽街の喧騒の中に溶け込んでいった。
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112 : レースクイーン(アラバマ州)[]:2007/04/14(土) 00:20:09.89 ID:8EfekdEx0
廃墟と化した街の一角に、その店はひっそりと存在していた。
お世辞にもきちんとした建物と呼べるものではなく、廃材を無理矢理組み合わせたような粗末な造りである。
そして、店前の看板には、小さく『バーボンハウス』と手書きの文字が記されていた。

('、`*川「バーボン……ハウス?」

彼女はその看板をぼんやりと見つめていた。

('、`*川「ここになら、水と食料に……薬があるかねえ」

彼女は、ビコーズと名乗る少年との会話の後、当ても無く荒廃した街を歩いていた。
建物から眺めるのに比べて、実際に歩いて見る街並みの凄惨さは、ひどく現実味を帯びているように感じられた。

さらに、彼女が目を覆いたくなるものが街には存在した。
それは重症を負っているにも関わらず、路上に放置されている人々の姿だった。

彼らを見かけるや否や、彼女はすぐに彼等に手を差し伸べようとする。
傷を負って居る者を介抱したり、治療したりと、彼女は自身の心が赴くままに行動した。

しかし、彼女に出来る事と言えば、布切れを使って傷口を縛る位の気休めに過ぎない程度であった。
そこで彼女は足が棒になるほどの時間を掛けて、薬や水や食料を求めて廃墟を彷徨い歩き、この場所に辿り付いたのだ。

('、`*川「とりあえず入ってみようかしら……」

彼女は、おずおずと建物の扉の前に立つ。
その扉は木製の質素な造りで、少しの振動で崩れそうなほど脆く見える。
彼女はしばらく躊躇していたが、決心をつけると同時に、思い切ってノブを回し、扉を開いた。

('、`*川「失礼……します」
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115 : レースクイーン(アラバマ州)[]:2007/04/14(土) 00:21:35.88 ID:8EfekdEx0
扉が開くと、備え付けられたベルが店内に鳴り響いた。
そして、その次に静かな声が彼女へと向けられた。
落ち着いた男の声だった。

(´・ω・`)「ようこそ、バーバンハウスへ……お客さんとは珍しいね」

その声は店内奥の方から聴こえた。

('、`*川「……」

彼女は店内をゆっくりと見渡す。
店内もその外見と同様、質素な造りになっていた。
手前には、ひび割れた木製のテーブルと破れたソファーが三組。
そして奥には斜めに偏ったカウンターと、歪んだ丸椅子が備え付けられていた。

(´・ω・`)「……どうしたんだい?中に入ったらどうだい?」

('、`*川「……え? ……あ、はい」

彼女は店員の声にハッとして、カウンター席の方へと歩いていった。

(´・ω・`)「このバーボンはサービスだから、まず飲んで落ち着いて欲しい」

彼女がカウンター席に座ると、店員は彼女の前に一杯の茶色い液体の入ったカップを差し出した。

('、`*川「あの……私はお酒を飲みにきたわけでは……」

(´・ω・`)「お金の事は気にしなくていい。こんな世の中じゃ、そんなもの役には立たないからね」

('、`*川「は……はあ」
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118 : レースクイーン(アラバマ州)[]:2007/04/14(土) 00:23:25.59 ID:8EfekdEx0
彼女は、目前の店員の顔をしげしげと見つめた。
見た目は三十代前半ほどであろうか。
しょぼくれた形の眉が印象的な顔であった。

('、`*川「あの……何処かでお会いしませんでしたっけ?」

彼女には、店員の顔に何か見覚えがあるような気がした。

(´・ω・`)「……さあ? 僕みたいな顔は何処にでも居るからね。他人の空似じゃないかな?」

('、`*川「……そうですか」

店員は、さらりと彼女の問いかけをかわす。

(´・ω・`)「しかし、久しぶりのお客さんで嬉しいよ。今日は一体どうしたんだい?」

会話を続けるように、店員は彼女に質問を投げかけた。
だが、それは質問と言うよりは、社交辞令に似たようなものである。

('、`*川「あ、そういえば私は水と食料と薬を求めて歩いてたんですが……」

(´・ω・`)「水と食料はいいとして……薬? 貴方は別に怪我はしていないようだけど」

店員は彼女を軽く一瞥しながら言った。
所々、彼女の体は埃で汚れているものの怪我らしい怪我はしていない。

('、`*川「いえ、あの……路上に沢山の怪我人の人たちが居たものですから……
     私は何も出来なかったのですが、放っておけなくて……」
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121 : レースクイーン(アラバマ州)[]:2007/04/14(土) 00:25:26.75 ID:8EfekdEx0
彼女は遠慮がちにそう答えた。
その一言一言からは、気品が溢れているように感じられる。

(´・ω・`)「……うーん」

彼女の唐突な要求に戸惑っているのか、店員は腕を組みながら首をかしげていた。

('、`*川「やっぱり、駄目ですよね……」

彼女は暫くの間、その様子を心配そうに見つめていた。

見ず知らずの人間にいきなり頼みごとをしたところで、受け入れられる可能性が低いことは彼女にも容易に想像できる。
物資も充分に無いこんな世界ではなおさらだ。

('、`*川「無理だったらいいんですよ、ごめんなさいね」

彼女は、やはり無理かと諦め、返事を聞かないまま店から出ようと席を立ったその時であった。

(´・ω・`)「……素晴らしい」

店員から発せられた次の一声は意外なものであった。

('、`*川「へっ?」

(´・ω・`)「いや、気に入ったよ。
       今時他人を気遣える人間なんて、こんな殺伐とした世の中で滅多に居ないからね」

店員は小さく微笑むと、彼女の両手を取りながら目を輝かせて言った。
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123 : レースクイーン(アラバマ州)[]:2007/04/14(土) 00:26:57.09 ID:8EfekdEx0
('、`*川「は、はあ」

突然手を握られ、彼女は返す言葉を忘れてしまったようだった。
それをよそに、店員はさらに続ける。

(´・ω・`)「残念ながら水と食料は必要最低限しかないから分けられないが、
       酒なら薬代わりに傷口を消毒できるから何本か持っていくといい」

そう言うとすぐに店員は、後ろの棚から次々と酒瓶を取り出し、カウンターの上に次々と置いていく。

('、`*川「え? あ……ありがとうございます」

予想外の店員の厚意に呆然としながらも、とりあえず礼だけは言った。

('、`*川「あ……でも、見ず知らずの私にどうして?」

次々と重ねられていく酒瓶を見つめながら、彼女は聞いた。

(´・ω・`)「これでも僕はこの仕事が長くてね。信用できる人間とそうでない人間の区別はつくつもりだ」

店員は、ふと酒瓶を運ぶ手を止めて、彼女の目を見据えながらこう返した。

(´・ω・`)「それに……」

そしてコホンと咳をして、一間置いてから穏やかに言った。

(´・ω・`)「貴方からは……癒されるというか、懐かしい感じがするんだ。
       まるで母親と話しているような、そんな感じが……ね」

('、`*川「……」
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127 : レースクイーン(アラバマ州)[]:2007/04/14(土) 00:28:16.54 ID:8EfekdEx0
店員は言い終わると照れ臭そうに顔を逸らし、大きく欠けた皿を無言で拭き始める。
やはり彼女は、その姿を呆然と眺めていた。

「邪魔するぜ」

沈黙が支配していた店内に突如、扉を乱暴に開ける音と共に、大声が響いてくる。
  _
( ゚∀゚)「よお、相変わらず寂れた店だな」

中に入ってきたのは、黒い革のジャンバーの下に白いTシャツを着た体格の良い男だった。
特徴的な太い眉とその服装も相まって、その容姿は豪快というに相応しい。

(´・ω・`)「……これまた珍しいお客だ。『J』じゃないか。
       悪いが丁寧に扉を開けてくれないか? 店が崩れてしまう」
  _
( ゚∀゚)「……おいおい、その名前はもう捨てたんだ。今はただのニートだぜ」

店員は入ってきた男を見るなり、親しげに声を掛けた。
男は店員の注意を無視して、ずかずかと彼の方に足を進めていく。
二人は顔見知りのようであった。

(´・ω・`)「……まったく。ところで今日は一体何の用だい?
      『それ』のメンテナンスかい? あれほど乱暴に扱うなって言ったのに」

店員は毎度のことなのか、男が来た目的を分かっていたかのように話を切り出した。
  _
( ゚∀゚)「いやいや、『これ』は大事に扱っているつもりだぜ、たぶん。
     ……まあ、それは置いといて今日は別の用事だ」

太眉の男は、左腕を顔の横に上げて店員に見せびらかすように言った。
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132 : レースクイーン(アラバマ州)[]:2007/04/14(土) 00:31:10.85 ID:8EfekdEx0
('、`*川「えっ……!?」

彼女はそれを見て驚きの声を上げた。

男の左腕は義手であった。
無機質な造りの腕は吊り下げられた電灯を反射し、鈍く金属光を放っている。
  _
( ゚∀゚)「ちょっと待ってくれよ」

驚く彼女を気にも留めず、男は店員に待つように促すと一旦店から出た。
そして再び扉を開け、今度は何かを背負って店内に入ってきた。
  _
( ゚∀゚)「実は、途中でコイツを拾っちまってよ。
     ショボン何とかできねえか? 手当てとか俺はよく分からんからな」

男の背に乗っていたのは、一人の少年であった。
意識が無く、ぐったりと首を垂らして男の背にもたれかかっている。
  _
( ゚∀゚)「またコイツが重いんだ。何喰って育ったんだ? まったく……」

小さく愚痴をこぼしながら、男はカウンターの方へ近づいて行く。
そして傍まで来ると、ペニサスはその少年の顔をはっきりと確認できた。

(※)ω`)「……」

('、`;川「ブーンちゃん!?」

少年の顔を見ると、すぐに彼女は狼狽する。
ぼろぼろになった彼の顔は、彼女の知る孫そのものであったからだ。
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136 : レースクイーン(アラバマ州)[]:2007/04/14(土) 00:32:42.46 ID:8EfekdEx0
(´・ω・`)「……? 知り合いかい?」

('、`;川「私の孫です! 大変!! 早く手当てしないと!!」

少年の酷い有様に我を忘れて、彼女は彼のほうへと駆け寄った。

(※)ω`)「……」

('、`;川「え!? いや、違う……でもよく似ているわ」

しかし、間近でその少年の顔を覗き込むと、すぐに彼女は違和感を感じ取った。

確かにその特徴的な面持ちは、彼女の孫に見間違う程にそっくりであったが、よく見ると、彼女の孫よりも体格は一回り大きい。
その上、彼女の肉親のみが感じ取れる直感と言うべきものが、少年が孫ではないと判断していた。

('、`;川「……でも、このまま放っておけないわ。なんとかしないと」

だが、彼女にはそんなことは関係がなかった。
急いで少年をソファーに寝かせ、ハンカチを取り出し彼の顔を拭く。

(´・ω・`)「酷いね……骨が何箇所か折れてるようだ。
       打撲も酷いね……下手すれば内臓も傷ついているかも。早く手当てをしないと」

その横で、店員は丹念に少年の傷の具合を診る。
余りにも惨い状態を見て、彼はその垂れ下がった眉をさらに窄めた。
  _
( ゚∀゚)「とにかくよく分からんがヤバい状態なんだろ? ショボン、どうでもいいから早く何とかしろよ」

( ^ω^)エアーがクオリティーを育てるようです
141 : レースクイーン(アラバマ州)[]:2007/04/14(土) 00:34:18.69 ID:8EfekdEx0
傍らで立ち尽くしながら、男は店員を急かす。

(´・ω・`)「参ったな、息も弱くなっている。何とかしたいのはやまやまだが……
       しかし、ウチに置いてあるのは工具だけだ。医療用の器具は置いて無いよ。
       ここまで酷いとそれなりの設備が必要だが……」

それに対して、店員は困り果てた顔で男に答えた。
  _
(;゚∀゚)「マジかよ……っても、それなりの施設を探すったってこの状況じゃな」

街は、見る影も無く廃墟と化している。
そのような状態で、まともに医療施設が残っている可能性は皆無に等しい。

('、`;川「……」

彼女は心配そうに、二人のやり取りを見つめていた。
だがその内容から、良い方法があることは読み取れない。
落胆したように彼女は溜息をつき、再び少年を介抱する。

(※)ω`)「う……う……」

少年はよほど苦しいのか、苦咽の声を漏らしていた。
顔はひどく腫れ上がり、血の気が引いたように青ざめていた。

('、`;川「しっかりするんだよ……」

一通り、彼女は少年の体を拭き終わり、彼の額に手を当ててみた。
彼の体は、思わず手を離しそうになるほどに熱くなっている。
( ^ω^)エアーがクオリティーを育てるようです
145 : レースクイーン(アラバマ州)[]:2007/04/14(土) 00:36:16.23 ID:8EfekdEx0
('、`;川(お願い……神様。この子を助けてちょうだい……)

彼女は何も出来ないことを悟ると、藁にもすがる思いで必死に祈り始めた。

すると、突然彼女に変化が起こった。
それは眩いばかりの発光だった。
一定の色に留まらない、七色の輝きが彼女達の居た空間を埋め尽くす。

('、`;川「ッ! えっ!? これって!?」

よく見ると、その光の源は彼女のネックレスであった。
銀色の鎖に繋がれた宝石が、彼女の心に呼応するかのように光を放っている。

光は輪郭を為し、円を描くように一つの輪となって少年を包んでいく。
その輝きは、まるで彼を優しく抱きしめるように感じられる。

そして、その直後には、少年の体に変化が起こった。

(※)ω`)「……」

( ´ω`)「……」

( -ω-)「……」
  _
(;゚∀゚);´・ω・)「!?」

('、`;川「こ……これは? 一体?」

光の輪が少年の体に入り込む毎に、傷は塞がり、腫れは引き、表情に生気が戻っていく。
輝きが消える頃には、あれだけ負傷していた体が完全に回復していた。
( ^ω^)エアーがクオリティーを育てるようです
150 : レースクイーン(アラバマ州)[]:2007/04/14(土) 00:37:43.22 ID:8EfekdEx0
(;゚∀゚);´・ω・)「……」

その不可思議な光景を、その場に居た者は目と口を大きく開き、ただ驚くようにぼんやりと見つめていた。
  _
(;゚∀゚)「……なあ、今の見たか?」

(;´・ω・)「ああ。……これは間違いなくべホマ……魔法なんて初めて見たよ」
  _
(;゚∀゚)「違う……これはケアルガだ」

(;´・ω・)「……いや、これはどう考えてもべホマだ」

唐突な出来事に二人は混乱していた。
余りの錯乱振りに、どちらが正しい魔法の名前かを言い争っている。

('、`;川「……」

しかし、一番混乱しているのは当の本人のペニサスであった。
一瞬にして傷が治ることなど、彼女の長い人生の中でも一度とて経験したことがなかったことだ。

('、`;川「この……ネックレスが?」

彼女は再び、自分の首に掛けられた銀の鎖を眺めていた。
そんな中、店員と男の二人は彼女に近づいてこう言った。

(´・ω・`)「これは驚いた! こんな現象見たことも聞いたこともないよ!」
  _
( ゚∀゚)「なんだか分からんが……すげえ!! やるじゃねえか、ばあさん!!」
( ^ω^)エアーがクオリティーを育てるようです
155 : レースクイーン(アラバマ州)[]:2007/04/14(土) 00:39:15.19 ID:8EfekdEx0
二人は興奮が醒めないのだろうか。
感嘆を露わにした大声で、次々と彼女に賞賛の言葉を投げかける。

('、`;川「これは……私がやったの?」

しかし、彼女は未だに戸惑っている様子であった。

(;-ω-)「……う……ん」

(;^ω^)「おっ?」

少年の意識はいつの間にか戻っていた。
横からは、何やら騒がしい声が飛んでくる。

(;^ω^)「……ここは? 僕は一体?」

彼の目に映ったのは、くたびれた家具が並ぶ飲食店らしき室内。
そして、大声を上げている三人の人影であった。

(;^ω^)「確かツンと出会って、DQNにボコボコにされて――」

彼はその様子をおぼろげに見つめながら、頭の中で状況整理を必死に行っていた。
  _
( ゚∀゚)「ばあさん、今度その白魔法教えてくれよ!! いいだろ? なっ! なっ!」

(´・ω・`)「いいや! べホマは僕が教えてもらうんだ!!」
  _
( ゚∀゚)「いやいや俺が!! ……って……ん? 坊主気がついたか?」

( ^ω^)エアーがクオリティーを育てるようです
158 : レースクイーン(アラバマ州)[]:2007/04/14(土) 00:40:46.94 ID:8EfekdEx0
彼が目覚めてすぐに見つけたのは、二人の男と一人の女性。
その内の一人の男は、熱心に手前に居た女性に話し掛けている。
しかし、意識が戻ったことに気付くと、すぐに彼にも声を掛けてきた。

(;^ω^)「えっ!? ジョ……ジョルジュさん?」

少年にその顔は見覚えのあるものだった。
それは目の前に居た男、自分の知り合いであるジョルジュ長岡である。
彼は見慣れたその姿を見て、反射的にその名を呼んだ。
  _
(;゚∀゚)「へ……? なぜ俺の本名を知っている?
     それを知っている奴は、そうは居ないはずだが……」

(;^ω^)「いやいや、みんな普通に知ってますお。ふざけないでくださいお」

男が急に自分の本名を呼ばれて驚く中、少年はさも当たり前のように平然と答える。

(´・ω・`)「『J』の名前を知っているとは……不思議な子だね」

そのやり取りを腕組みしながら聞いていた店員は、男と同様に驚き、思わず呟いた。

(;^ω^)「 あれっ!? ショボンさんまで!! よかったお!!
       まったく……今までみんな何処に行ってたんですかお」

(;´・ω・)「!? なんで僕の名前まで……」
( ^ω^)エアーがクオリティーを育てるようです
161 : レースクイーン(アラバマ州)[]:2007/04/14(土) 00:42:24.25 ID:8EfekdEx0
全く面識の無い少年に自分の名前までも言い当てられてしまい、店員はますます動揺を隠せなかった。

(;´・ω・)「ちょっと落ち着いて欲しい。何で君は僕と『J』の名前を知っているんだい?
       僕達は、君と今までに会ったことがないと思うんだが」
  _
(;゚∀゚)「同感だぜ……何者なんだよお前」

(;^ω^)「……えっ? 二人ともどうしたんだお!? 僕だお!! ブーンだお!!」

少年は二人の態度に違和感を覚えたのか、声を荒げて、改めて彼等に問いただした。

すると突然、三人のやり取りを傍観していた女性は、『ブーン』という言葉に反応し、少年に詰め寄った。

('、`;川「!!……やっぱりブーンちゃんなの?」

(;^ω^)「え……? どなたですかお?」

しかし、今度は少年が彼女を知らなかったようであった。
他人行儀の口調で、目の前の彼女に彼は答えた。

(;^ω^)「……」

('、`;川「……」
  _
(;゚∀゚)「……」

(;´・ω・)「……」

店内を微妙な空気と沈黙が埋め尽くす。
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165 : レースクイーン(アラバマ州)[]:2007/04/14(土) 00:43:35.45 ID:8EfekdEx0
('、`;川「とりあえず、落ち着いて整理しましょうか」
  _
(;゚∀゚);´・ω・);^ω^)「……賛成」

とりあえず彼等はカウンター席へと座り、この状況を落ち着いて考えようとした。
全員の表情は狐につままれたような珍妙な面持ちであった。

そんな中、最初にぺニサスが口を開く。

('、`*川「まずは私からね。……こんな事を言っても信じられないかもしれないけど……
     単刀直入に言うと、私はこの世界の人間じゃないの」
  _
( ゚∀゚)「何いってやがんだばあさん? 頭ボケてんじゃねえのか?」

('、`♯川「……あなた死ぬわよ」(ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ)
  _
(;゚∀゚)「あ、いや……その……ごめんなさい」

『J』は途中で茶々を入れたが、彼女の瞳から発せられた殺気に思わず怯んだ。

(´・ω・`)「まあまあ……とにかく興味深いね。詳しく聞こうじゃないか」

その間に入るようにショボンが続く。

('、`*川「ええ……実は――」

彼女は、自分の世界でビコーズという少年に出合ったこと。
そして彼に導かれるままにこの世界にやってきたことなど、これまでの経緯を話した。
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169 : レースクイーン(アラバマ州)[]:2007/04/14(土) 00:45:23.58 ID:8EfekdEx0
(´・ω・`)「成る程ね。ここの住人にしては身なりが綺麗すぎるし、
       貴方は嘘を付くようなような人間には見えないし……
       それに先程の不思議な力といい……わかった、信じよう」

彼女の話に皆が納得するまで、それほど時間は掛からなかった。
彼女がこの世界の住人でないことを示す確かな証拠が、いくつか存在していたからだ。

(;^ω^)「あの……僕も……もしかしたら……」

次に、しばらく黙って話を聞いていたブーンが口を開いた。

(´・ω・`)「おや、君もかい?良かったら話を聞かせてくれないか?」

(;^ω^)「実は僕はカクカクシカジカ、バロバロバーロー……ペロッ……コレハセイサンカリ――」

ショボンに促され、彼もこの世界に来るまでの経緯や、自分の住んでいた世界について事細かに話した。

(´・ω・`)「ふむ……鋼鉄の巨人ダイヴィッパーか。確かにそんなものはこの世界には存在しないが……」
  _
( ゚∀゚)「zzz……」

ショボンは、顎に手を乗せて考え込むように呟く。
その一方で『J』は話に付いて行けず、いつの間にか目を開けたまま眠りこけていた。

そして、ある程度考えがまとまったのか、ショボンは全員に向かってこう言った。

(´・ω・`)「まあ、二人がこの世界に迷い込んできたのも、別に不思議なことではないかもね。
       確かにこの世界は正体不明の物に飲み込まれつつある。
       今更、何が起こってもおかしくはないよ」
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173 : レースクイーン(アラバマ州)[]:2007/04/14(土) 00:47:40.76 ID:8EfekdEx0
(;^ω^)「ええと……一つ聞きたいんですお。
      なんで、この世界には、僕の世界に居るツンやジョルジュさん……
      それにショボンさんと名前が同じそっくりさんがいるんですかお?」

立て続けに自分の知り合いに似ている人物に会ったブーンにとって、それはもっともな疑問であった。

(´・ω・`)「恐らく、僕達の世界と君達の世界の関係は、
       平行世界、いわゆる『パラレルワールド』同士ではないのかな?
       例えば別の『パラレルワールド』では、別の意志をもった君自身が無数に存在する。
       ぺニサスさんの世界では君の同姓同名のそっくりさんが、孫として存在しているようにね」
  _
( ゚∀゚)「zzz……」

(;^ω^)「う〜んややこしいお……」

突然出てきた単語にブーンは困惑する。
『J』に至っては、完全に思考を放棄していた。

('、`*川「ま、いいじゃない。そっくりさん同士が一緒に居るわけでもないし」

ぺニサスは、ビコーズから前もって聞いていたせいか、割とすんなりとその話を飲み込めたようだった。

(´・ω・`)「ところでぺニサスさん。そのビコーズとかいう……
      少年の言っていたことを詳しく聞かせてくれないか?」

('、`*川「ええ。正直完全に把握しきれてないかもしれないけど――」

再び、ショボンは彼女に質問をぶつけた。
この世界に来た経緯は聞いたものの、ビコーズとの会話の内容までは聞いていなかったからだ。
彼女は、覚えている限りのことを皆に話した。
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177 : レースクイーン(アラバマ州)[]:2007/04/14(土) 00:49:47.57 ID:8EfekdEx0
(´・ω・`)「……成る程ね。
       確かに、ビコーズとか言う少年の言っていた現象は、
       この世界に起こっていることと一致しているし、『英雄』も『悪の組織』も実在していた。
       あとは、『sks』とビコーズの関係。その辺について詳しく聞きたいね」

('、`*川「『sks』はこの世界の源……みたいなものかしら?
      彼については『sks』と対話できるとかどうとかって言っていたけど……」

(´・ω・`)「ビコーズ=この世界の神っていうことなのかな?
       しかし、それにしては彼のやっていることは中途半端だ。
       神レベルの力をもっているなら、なぜさっさとこの世界を元に戻さない?
       ペンダントに変化して力を貸す方法は回りくどい気がするのだが」

('、`*川「さあ……彼はペンダントに変わったきり話そうとしないし、
     彼はただ『貴方の心の向くままに行動すればいい』って言っただけで」

(´・ω・`)「うーん……さっぱり解らないな……
       神(?)が、世界を救おうとしているのは確かだが、その手段が謎だよね」

そして、ショボンの言葉の後には沈黙が残った。
ビコーズの言葉の意味も、そしてこの世界を救う方法も全く見当が付かない。

(;^ω^)「あの……」

そこへ、突然ブーンが話題を切り出した。

(;^ω^)「この世界の……『英雄』さんに力を借りればいいと思いますお。
      僕達だけで無理なら、彼の力を借りればいいと思いますお」
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181 : レースクイーン(アラバマ州)[]:2007/04/14(土) 00:51:45.70 ID:8EfekdEx0
『英雄』は未だに屍達を狩り続けている、というのがブーンの聞いた話だ。
ならば、彼と手を組めば世界を救う糸口が見つかるのではないか。
ブーンはそう考えた。

(´・ω・`)「いや、それは無理だ」

しかし、彼の意見をショボンは真っ向から否定した。

(;^ω^)「そんなやぶからぼうな……」

きっぱりと無理だと言われ、ブーンは少し落ち込んだ。
頭を振り絞って考えた策が完全に切り捨てられたからだ。

(´・ω・`)「いや、それもある意味正論なんだが、実はそれについて残念なお知らせがあるんだ……」

ブーンをフォローしつつ、ショボンは続ける。

('、`*川「それは……何?」

(;^ω^)「……気になるお」

次に出てくる言葉を、二人は固唾を飲んで見守る。
そして、それは衝撃的な事実だった。

(´・ω・`)「君達が『英雄』とか呼んでいる人物……それは、横でイビキをかいて寝ているこの馬鹿だ」
  _
( ゚∀゚)「zzz……」

('、`;川(;^ω^)『工工エエエエエ('Д`)エエエエエ工工!!』
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183 : レースクイーン(アラバマ州)[]:2007/04/14(土) 00:53:46.84 ID:8EfekdEx0
   _
Σ(;゚∀゚)「うおっ!!」
  _
( ゚∀゚)「んだよ……人がせっかく気持ちよく寝てたっていうのに……」

突然の大声に驚いたのか、『J』はぴくりと身体を震わせて目を覚ました。

('、`*川「それなら仕方ないねえ。ニートじゃ無理だわね」

(;^ω^)「もっとカッコいいのを想像していたお……ガッカリだお……」
  _
(;゚∀゚)「なんだか知らねえが……酷いことを言われた気がするぜ」

その間の抜けた『英雄』の姿に二人は落胆していた。
思わず辛辣な感想を口から漏らす。
  _
( ゚∀゚)「意味が分からねえから、ショボン産業で説明しろ」

(´・ω・`)「二人は異世界住人。
       この世界を救うためにやってきた。
       元『英雄』の『J』は馬鹿」
  _
(;゚∀゚)「最後は何か聞き捨てならねえが……把握した」

ショボンの簡潔な説明のおかげで、どうやら頭の良くない『J』は理解したようだ。

('、`*川「……先程の発言は謝ります。貴方が『英雄』なら話が早いわね。
     是非、私と一緒にこの世界を何とかしましょう」
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189 : レースクイーン(アラバマ州)[]:2007/04/14(土) 00:55:01.69 ID:8EfekdEx0
彼女は気を取り直し、共に世界を救うことを『J』に提案した。
何をすればいいか解らない状況で、目の前に『英雄』がいることは大きい。
正義の為に戦っていた彼ならば、喜んで助力してくれると彼女は考えていた。
  _
( ゚∀゚)「だが断る」

しかし、『英雄』の返事は彼女の予想と正反対のものであった。

('、`;川「そんな……貴方は悪と戦う正義の味方じゃないんですか?」
  _
( ゚∀゚)「御免だぜそんなの。俺はとっくに正義の味方は廃業したんだ」

彼は彼女に対して、平然と悪態を付く。
その態度は彼女が描いていた『英雄』像とは、ひどくかけ離れたものであった。
  _
( ゚∀゚)「それに、こんなボウズとばあさんに何が出来るんだ?
     女子供に助けられるなんて俺はまっぴらごめんだぜ」

('、`;川(;^ω^)『……』
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192 : レースクイーン(アラバマ州)[]:2007/04/14(土) 00:56:53.51 ID:8EfekdEx0
『J』が言うことも一理あった。
ぺニサスが出来る事といえば、先程の治癒能力以外に無い。
ブーンに至っては、ダイヴィッパーが無ければ只の高校生である。
つまり、世界を救うには彼らは余りに無力すぎたのだ。
  _
( ゚∀゚)「ともかく、それについてはアンタたちで勝手にやっててくれ。
     ショボン世話になったな。俺は行くぜ」

そして最後に吐き捨てると、席を立ち、店を後にしようとする。

(´・ω・`)「おい!! 何処に行くんだ!?」

『J』を止めようと、ショボンは叫んだ。
彼はそれに応えるかのように背を向けたまま、面倒臭そうに言い放った。
  _
( ゚∀゚)「……『狩り』だよ、『狩り』」

一瞬、『J』は歪んだ笑みを浮かべると、そのまま乱暴に扉を閉め、『バーボンハウス』から出て行ってしまった。

(´・ω・`)「やれやれ」

ショボンは視線で彼を見送ると、大きく溜息をついた。
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196 : レースクイーン(アラバマ州)[]:2007/04/14(土) 00:57:56.47 ID:8EfekdEx0
一方その頃。

(`・ω・´)b「そこのお嬢さん!!」

d('A`)「我々と一緒に!!」

                     / jjjj      _
                   / タ       {!!! _ ヽ、
                  ,/  ノ        ~ `、  \ 
                  `、  `ヽ.        , ‐'`  ノ  
                    \  `ヽ('A` ) " .ノ/ 
       (`・ω・´)   ̄"⌒ヽ   `、ヽ.  ``Y"   r ' 
      / 〉 ヽ' /    、 `、   i. 、   ¥   ノ  
      γ  --‐ '    λ. ;  !   `、.` -‐´;`ー イ  
     f   、   ヾ    /   )    i 彡 i ミ/     
     !  ノヽ、._, '`"/  _,. '"     )    {   
     |   ̄`ー-`ヽ 〈  < _ ヽ.    /     `\  
      !、__,,,  l ,\_,ソ ノ   /   /ヽ、  ヽ.  
          〈'_,/ /   /   /  ノ    ヽ.   〉  
              | |  イ-、__  \  `ヽ    {   f  
           l.__|   」_  l    \ \   |  i 
           _.|  .〔 l  l    ノ  _>  j  キ 
           〔___! '--'     <.,,_/~  〈   `、
                             `ー-‐'
「美 し い 筋 肉 を 共 に 創 り 上 げ な い か ! !」
( ^ω^)エアーがクオリティーを育てるようです
202 : レースクイーン(アラバマ州)[]:2007/04/14(土) 00:59:48.89 ID:8EfekdEx0
(*゚ー゚)「きゃ〜ス・テ・キ☆
    私もあなた達みたいな大胸筋を作ってみたかったの!!」

(`・ω・´)「うむ。君も3時間で我々のような美しい筋肉になれる」

('A`)「筋肉の道は棘の道!!
   共に『脂肪』という強敵に立ち向かおうではないか!!」

(*゚ー゚)「私…どこまでもあなた方に付いて行きます(はぁと」

(`・ω・´)b「そうと決まれば、早速腹筋1000回だ!!」

d('A`)「君が思っている以上にキング・オブ・マッスルへの道は険しいぞ!!」

(*゚ー゚)「はいっコーチ!!
    私は必ず……あの北斗七星の脇でひっそりと光り輝く……
    『筋肉の星』になってみせます!!」

シャキンと元『悪の組織』首領は、新たに『筋肉教』なる組織を創り上げていた。
一見、カルト集団のような思想『筋肉主義』を掲げていたが、
思いのほかノリと勢いだけで、着実に新しい信者を増やしつつあるという。


第二話 完
( ^ω^)エアーがクオリティーを育てるようです
209 : レースクイーン(アラバマ州)[]:2007/04/14(土) 01:04:50.17 ID:8EfekdEx0
第三話 「英雄の過去、それぞれの決意」


『英雄』が出て行った後、三人は無言のままであった。
ショボンは無言で皿を洗い、ペニサスはペンダントを見つめ、ブーンは自身の腕にあるVIPライザーを弄ぶ。

(´・ω・`)「昔は正義に燃えていたいい男だったんだけどね……でも彼は変わってしまった」

そんな中、始めに口を開いたのはショボンだった。
続くようにして、残る二人も口を開く。

('、`*川「……確か、『悪の軍団』が壊滅してしまったから、って聞いたけど」

(´・ω・`)「それもある。ある意味『悪の組織』を追いかけることが彼の生きがいでもあったからね」

( ^ω^)「それも、ってことは他にも原因があるんですかお?」

(´・ω・`)「というよりはむしろ、もう一つの原因の方が彼を大きく変えるきっかけとなったんだ。
      全てに燃えるようにぶつかっていた彼が、変わってしまった出来事が……ね」

('、`*川「もう一つの原因?」

(´・ω・`)「そうだ。……少し長くなるけど、いいかな?」

ショボンは食器を拭く手を止め、真直ぐに二人のほうを見た。

(´・ω・`)「あれはもう一年前の出来事になる。それはとても雪の多い日だった――」

そして小さく間を開けた後、彼は静かに語り始めた。

( ^ω^)エアーがクオリティーを育てるようです
212 : レースクイーン(アラバマ州)[]:2007/04/14(土) 01:06:21.78 ID:8EfekdEx0
『英雄』である『J』が、まだ躍起になって『悪の軍団』である『しっと団』を追いかけていた頃の話だ。

彼の左腕が義手だっていう事は、先程見た通り知っているよね?
彼はその義手を駆使して『しっと団』と戦っていた。
そして僕は、彼のサポート役として主に彼の左腕のメンテナンスを行っていた。

そして一年前のあの日も、街のパトロール、もとい…おっぱいウォッチンg……
げほっ!!ごほっ!!……いや、失敬。今のは忘れてくれ。
とにかく恒例として街に見回りに行こうとした彼を、僕は『バーボンハウス』で見送っていたんだ。
  _
( ゚∀゚)「んじゃショボン、パトロール行ってくるぜ」

(´・ω・`)「うん。おっぱいの見すぎで他所見して怪我しないようにね」
  _
(;゚∀゚)「ああ大丈夫だ……多分な」

あの頃の彼は、おっぱいに殆どの情熱を注いでいた。
僕はむしろ男の尻のほうが……あ、いや、ごめんなさいしないといけないよね。
真面目にやるから、ペニサスさん……その闘気をしまってくれないか?
まあ……彼はそれくらい熱い男だったんだ。

川 ゚ -゚)「ジョルジュ、またここに居たのか。……今日も、出動するのか?」

彼女はクー。ジョルジュの恋人だ。

その凛とした容姿は美しく、なぜ彼なんかと付き合っているのかわからなかったが、
彼女のクールな性格と、彼の熱い性格が上手い具合に噛み合ったんだろうね。
結婚を約束していたほど二人の仲は熱いものだった。
( ^ω^)エアーがクオリティーを育てるようです
215 : レースクイーン(アラバマ州)[]:2007/04/14(土) 01:07:35.12 ID:8EfekdEx0
ちなみに、彼は彼女の貧乳について気にしていたみたいだ。
……まあ僕は、ガチムチとした兄貴の胸板の方が好k

痛っ!! イテテテテテ!! 折れる!! 折れます!! 折れたことあるんです!!
お願いですからペニサスさん、間接技だけは辞めてくれないか?

……とにかく彼等はラヴラヴだった。
  _
( ゚∀゚)「おっ、クーじゃねえか。大丈夫だって。俺は強いから誰にも負けはしねえよ」

川 ゚ -゚)「いや、そうではない。他の女子のたわわな胸を見るのは我慢しろ」
  _
(;゚∀゚)「……お前等、俺を何だと思ってるんだ?」

川 ゚ -゚)´・ω・)『変態戦士おっぱいライダー』
  _
(;゚∀゚)「ちょwwwねーよwww俺様は今をときめくスーパーヒーロー、義手の『J』だぜ」

一見ふざけているような彼だが、心の芯はしっかりしている。
街の住民が困っていると聞けば、直ぐに飛んでいくし、
命の危険にさらされれば、身を投げ出してでも助けに行く。

そんな飾らない彼の性格のおかげだろうか、彼は老若男女、全ての人に愛されていた。
いや、巨乳の美人に痴漢で訴えられて留置所に入ったこともあるけど……本当に彼はいい奴なんだよ。
  _
( ゚∀゚)「まったくお前等は……んじゃ、さっさと行ってくるぜ」

そして、彼はいつものようにパトロールに出動して行った。
( ^ω^)エアーがクオリティーを育てるようです
220 : レースクイーン(アラバマ州)[]:2007/04/14(土) 01:09:05.82 ID:8EfekdEx0
('∀`)「ハッハッハッ!! ノコノコと現れたな『J』よ!!
    今回の『2月13日は48時間☆バレンタインなんてないよ☆作戦』は、
    貴様をおびき寄せる為の、いわば餌ッ!!
    今日こそは貴様を倒し、この世界を征服してやるぜ!!」
  _
( ゚∀゚)「ぬうう……14日は乙女達が唯一自分から男に告白できる一日。
     それを無きものにしようとするなんて、非道の極み!!
     許さねえッ!! 絶対に世界はこの俺が守る!!」

('A`)「できるものならやってみろ。
    恋人も出来ずに日々悶々と過ごす毒男たちの痛み……思い知るがいい!!」
  _
( ゚∀゚)「ふん……そんなもの粉砕してやるぜ。この左腕でな」

('A`)「かかれっ!!戦闘員たちよ!!奴を血祭りにあげるんだッ!!」

『ヒ〜〜〜〜〜ッ!!!!』
  _
( ゚∀゚)「『Type-Sword』ッ!! 行くぜッ!! かかってこい!!」

彼は、毎日のように『しっと団』と死闘を繰り広げていた。
そして、どんな窮地に追い込まれても必ず勝つ。
お陰で僕は彼を心から信頼できたんだ。

彼が街に出ている間、僕は資金稼ぎの為に表向きの拠点として、『バーボンハウス』を経営していた。
酒場という形で情報収集もできるからね。

(´・ω・`)「じゃあ、僕は買出しに行って来るよ。クー、いつも手伝ってもらってすまないね」

( ^ω^)エアーがクオリティーを育てるようです
223 : レースクイーン(アラバマ州)[]:2007/04/14(土) 01:10:37.71 ID:8EfekdEx0
川 ゚ -゚)「いや、気にしないでくれ。
     ここで働いていれば、帰ってきた彼を出迎えることができるからな。それに今日は……」

(´・ω・`)「そうか、バレンタインだったね。……では、すまないが、開店準備の方は頼んだよ」

川 ゚ -゚)b「了解した」

僕は、いつものように彼女に店を任せ、買出しに出た。


――しかし、それが間違いだったんだ。
  _
( ゚∀゚)「喰らえッ!! 『ROP』(ロケット・おっぱい・パンチ)!!」

('A`;)「馬鹿な……俺のメカ『メイドちゃんロボット〜絶対領域バージョン〜』があっさりと……」
  _
( ゚∀゚)「とどめだッ!! 『BOK』(ボイン・おっぱい・キック)!!」

('A`;)「や〜ら〜れ〜た〜」

――キラン☆
  _
( ゚∀゚)「……さて、さっさと帰るか」

彼はいつものように敵を一掃し、『バーボンハウス』へ向かっていた。
闘いの後に『バーボンハウス』で一杯やるのが彼の習慣だったからね。
しかもバレンタインデーを彼は楽しみにしていた。
さぞかし彼は舞い上がっていただろう。

……愛する彼女の、心からの贈り物を受け取れるはず、だったからね。
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226 : レースクイーン(アラバマ州)[]:2007/04/14(土) 01:12:18.03 ID:8EfekdEx0
  _
( ゚∀゚)「お〜ねがいマ〜イメ〜ロディ♪って、ん? どうした? 店が暗いな。
     はっは〜ん、さては二人して俺を驚かせようって……」

しかし、彼は直ぐに不穏な空気を感じ取った。
店の外には、割れたガラスが散乱していて……只事ではないってすぐにわかったんだろう。
  _
(;゚∀゚)「おい? ショボン? クー? 冗談が過ぎるぜ……居るんだったら返事しろよ」

彼はすぐに店内に入り、僕達の姿を探した。
  _
(;゚∀゚)「……ッ!! おい!! ショボン!! クー!!」

店内は荒れ果ていて、それまでの面影を残して無かった。
扉は外され、窓は割れ、酒瓶は砕け、壁には銃痕が残っていた。
そして彼は店内に誰も居ないことを確認すると、急いで裏の調理場へと回っていった。

(´・ω・`)「しまったな。渋滞に巻き込まれてすっかり遅れてしまった。
       彼女にすまないことをしt……えっ!?」

僕が店に到着したのはその後だった。
その日に限って、雪のせいで大渋滞が起こってしまったんだ。
『バーボンハウス』に着く頃には、すっかり辺りは真っ暗になっていた。

(;´・ω・)「……これは一体……? くそっ!!」

僕も店の荒れ具合に、只事ではないと思ったんだ。
そして、彼と同様に店内を一通り見て回った後に、裏の調理場へと向かった。
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231 : レースクイーン(アラバマ州)[]:2007/04/14(土) 01:14:42.54 ID:8EfekdEx0
(;´・ω・)「……」

僕は調理場の扉の前で、護身用の銃を持って身構えた。
店内は激しい戦闘の跡が残っていた。
クーは元々某国のスパイ出身で、戦闘の経験もそれなりにあったけど、荒れ具合からかなり苦戦したことが窺い知れたからね。

そして、僕は一呼吸すると、警戒しながら扉を蹴破った。
  _
(  ∀ )「……」

調理場では暗闇の中、電気も付けずに『J』が立ち尽くしていた。

(;´・ω・)「……なんだ『J』か。脅かすなよ。そんなところで突っ立って何やってるんだい?
       クーと喧嘩でもしたのかい?」

僕は安心して銃を下ろし、調理場の電気のスイッチを付けた。


――だがその瞬間、『バーボンハウス』で何が起こったかを僕は見た。

川 ;;。V听)「……」

(;´・ω・)「うわああああああああああああっ!!!!!」

その光景は酷いものだった。
彼女の頭は真ん中から真っ二つに割れていた。
身体全体には、何者かによって噛まれた跡もあった。
彼女の雪のように白い肌も、無残に喰いちぎられていたんだ。
もはや、彼女の美しさは見る影も無かったよ。

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234 : レースクイーン(アラバマ州)[]:2007/04/14(土) 01:16:18.94 ID:8EfekdEx0
(;´・ω・)「ひっ、ジェ……『J』ッ!! こいつは一体!!」

僕は、すごく取り乱したよ。
先程まで元気に言葉を交わした彼女の身体が、変わり果てた姿で横たわったんだからね。
  _
(  ∀ )「……」

彼は僕の問いには答えなかった。
その代わりに、彼は彼女の横を指差した。

<ヽ:::。Д:::゚)「……」

彼女の横には、一体の死体があった。

しかし、それを見た瞬間、僕はその死体がこの世のものではないと悟った。
皮膚は爛れ、骨は突き出し、眼球は飛び出していた。
そんな存在は映画の中でしか見たことが無かったよ。

<ヽ:::。Д:::゚)「あ……ウ……」

僕はさらに驚いた。
驚くべきことに、損傷が激しい死体が喋ったんだからね。
僕は直感したよ。

――ああ、コイツは化け物だって、ね。
  _
(  ∀ )「……」

だが、彼はそれを見ても動じることは無かった。
いや、むしろ驚くべき行動を取ったんだ。
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238 : レースクイーン(アラバマ州)[]:2007/04/14(土) 01:18:14.40 ID:8EfekdEx0
  _
(  ∀ )「うおおおおおおおおおおおおッ!!!!」

彼は思いっきり、その死体を殴ったんだ。
死体の頭はあっさりと潰れた。
それでも彼は殴るのを止めなかった。
彼は殴った。殴り続けた。ただただ殴った。

気がつけば、それが死体であると解らない位まで、粉々になっていたよ。
どれが肉で、どれが骨で、どれが血か、それすら判断できなくなるほど、彼は殴った。
  _
(  ∀ )「……く……」

そして、突然彼は殴るのを止めた。
  _
(  ∀ )「ク――――――ッツ!!!!」

そうして、彼は泣いた。ひたすら泣きじゃくった。
後ろに僕が居たのにも関わらず、感情を抑えようともせずに泣いた。
そんな姿初めてだったよ。
僕は、彼の豪快で勇敢な姿しか見たことなかったからね。

(;´・ω・)「お、おい……『J』……どこへ?」
  _
(  ∀ )「……クー……」

その後、彼は失意のまま『バーボンハウス』からしばらくの間姿を消した。
僕は彼の消息を追ったが、見つけることは無かった。
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240 : レースクイーン(アラバマ州)[]:2007/04/14(土) 01:19:23.70 ID:8EfekdEx0
('、`*川「その後は……どうなったの?」

(´・ω・`)「彼は、それから現在まで屍達を駆り続けている。
       時々、左腕のメンテナンスの為に『バーボンハウス』に来るが、
       それ以外では滅多来なくなってしまった」

(;^ω^)「ジョルジュさんにそんな過去が……」

ペニサスとブーンは余りの壮絶な出来事に、大きな衝撃を受けた。
『英雄』と呼ばれた者の過去は、彼等が入り込むには深過ぎた。

(´・ω・`)「ああ。でも僕も責任を感じているんだ。
       あの日買出しに行かなければ、彼女の命を救えたかもしれない」

(;^ω^)「……でもショボンさんのせいってわけじゃ」

(´・ω・`)「それも彼が言ってくれた。でも、それでは僕の気が済まなくてね。
       彼が心置きなく屍を狩れるように全力でバックアップしている」

('、`*川「……」

(´・ω・`)「彼はもう『英雄』ではないんだ。今の彼の頭に世界を救うなんて考えは無い。
       純粋な屍に対する復讐。彼の行動原理はそれだけだ」

('、`*川「……わかったわ。彼の過去を聞いた以上、これは私が口を挟む問題ではないねえ。
     ところで……ブーンちゃんはどうするの?」

(;^ω^)「へ? 何がですかお? というかその呼び方むず痒いですお……」

聞きなれない自分の呼ばれ方と、唐突な彼女の質問に彼は戸惑った。
( ^ω^)エアーがクオリティーを育てるようです
244 : レースクイーン(アラバマ州)[]:2007/04/14(土) 01:20:54.71 ID:8EfekdEx0
('、`*川「話を聞いてわかるとおり、この世界には危機が迫ってるの。
     私は出来ることならこの世界をなんとかしたい。
     でも、それは危険なことで、たまたまここに飛ばされた貴方が関わる必要はないわ。
     だから貴方は、無理に私に付き合わずに元の世界に帰る事だけ考えればいいのよ」

それは、己の孫に似た姿の少年を危険に晒したくない、という気持ちから出た言葉であった。

彼女は既に決意を固めていた。
荒れ果てた街の姿を見て、住人の話を直接聞いて、この世界を放ってはおけないという想いがさらに強まったのだ。
ただし、同時にそれは危険なことだということも重々理解していた。

( ^ω^)「――僕だって」

だが、彼は言った。

( ^ω^)「僕だってこの世界を何とかしたいお!!
       ……そりゃ戦うのは好きじゃないし、怖いお。
       でも……僕もこの世界で苦しんでいる人たちをこの目で見たんだお。
       だから、僕もペニサスさんと同じ気持ちだお!! 是非、一緒に手伝わせてくださいお!!」

彼は、力強くそう答えた。

彼もまた、自分の世界で鋼鉄の巨人とともに戦っているのだ。
他人が傷き悲しむ姿を見るのを彼は耐えられなかった。
あの、自分の大切な人に似た少女のような、そんな者達を見るのが苦しくて仕方なかったのだ。

('、`*川「そうかい……」

彼女は彼の真に迫る眼差しに気圧され、それ以上は何も言えなかった。
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246 : レースクイーン(アラバマ州)[]:2007/04/14(土) 01:22:40.02 ID:8EfekdEx0
('、`*川「でも……無理はしちゃだめだよ」

しかし、彼のことを気遣うことは止めなかった。
他人と解っていても、やはり彼の姿を自分の孫と重ねてしまうからである。

( ^ω^)「わかってますお。っていうか、どうせ帰り方が分かんないんだお。
       だったら僕も手伝わせてもらいますお」

(´・ω・`)「なんだかすまないね、無関係の君達を巻き込んでしまって。
       この世界の神もいい加減だね、まったく」

ショボンは二人の間を割るように口を挟み、ペニサスの首に掛けられたペンダントをしげしげと眺める。

(´・ω・`)「で、この世界を救うったってどうするんだい?」

(;^ω^)('、`;川「あ……」

彼は核心をついた。

(´・ω・`)「『貴方の心の向くままに行動すればいい』ってのも曖昧だね。
       具体的に何をしろって言ったわけでもないし。
       ペニサスさん、とりあえず貴方は一体どうするんだい?」

('、`*川「そうねえ、とりあえず外で怪我をしている人がいるから、手当てをしないとね」

(´・ω・`)「うん、それがいいだろうね。そのペンダントの力もあるし、屍達と直接戦うには危険すぎる」

( ^ω^)「ところで、屍ってさっきから話に出てきますけど、
       僕が外を歩いている時には一匹も見なかったですお」
( ^ω^)エアーがクオリティーを育てるようです
251 : レースクイーン(アラバマ州)[]:2007/04/14(土) 01:24:24.80 ID:8EfekdEx0
ブーンは先程から思っていた疑問を口に出した。
彼自身もこの街を徘徊していたが、それらしきものとは遭遇していない。

(´・ω・`)「ああ、この付近に居た屍は『J』があらかた狩ってしまったんでね。
       それに奴らは夜に出没する。その点では君達は運が良かったのかもしれないよ」

('、`*川「屍っていうのはそんなに恐ろしいの?」

(´・ω・`)「うん。奴等はちょっと傷つけた位じゃ死なない。腕一本になっても動き続ける程だ。
      それに身体能力もずば抜けて高い。その腕力は岩を切り裂き、その牙は骨をも砕く」

(;^ω^)「そいつはヤヴァイお……それをやっつけるなんてジョルジュさんは相当強いんだお」

(´・ω・`)「まあね。曲がりなりにも元『英雄』だからね。
       だがその数は一向に減らない。これが厄介でね」

(;^ω^)「そうですかお……うーん……せめてダイヴィッパーさえあれば……」

彼が思い浮かべた鋼鉄の巨人。それは、地を割り天を裂くほどの力がある。
だが、残念ながらこの世界にやって来たのは彼のみであった。
そのもどかしさに、彼は思わず歯噛みする。

(´・ω・`)「まあ、ともかく当面は住民の治療にあたるんだろう? だが、じきに暗くなる。
       夜はゴロツキと屍がうろついているから危険だ。今日は良かったらここに泊まるといい」

('、`*川「え? いや……でも……」

(´・ω・`)「お客も来ないし退屈なんだ。良かったら君達の世界の話をもっと聞かせてくれないか?」

こうして、あらかた会話を交わした後、ショボンの唐突な申し出によって、彼らは『バーボンハウス』で夜を過ごすことになった。
( ^ω^)エアーがクオリティーを育てるようです
253 : レースクイーン(アラバマ州)[]:2007/04/14(土) 01:25:55.06 ID:8EfekdEx0
日は完全に沈み、外は完全な暗闇に包まれる。
空を覆う雲は消えることなく、月と星の薄明かりですら遮るのだ。
そんな街の片隅で、闇に溶け込むようにひっそりと佇む廃工場。
そこに、屍達と対峙する元『英雄』の姿があった。

<ヽ:::。Д:::゚)「グ……ググ……」
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( ゚∀゚)「まったくよお、テメエ等は殺しても殺しても減らないのな。
     まるでゴキブリみたいだぜ」

何百もの屍達は彼の周りを囲み、低い唸り声を上げていた。
暗闇の中で、真赤の眼光が無数に浮かんでいる。
倒しても次々に沸いて出る屍達の姿に、彼は溜息をついた。

<ヽ:::。Д:::゚)「グア……ウ……」
  _
( ゚∀゚)「おいおい、そんな目で俺を見るなよ。そんなに俺を喰いたいのか?」

屍の口元からは、唾液が零れ落ちている。
その眼光は獣のように鋭く、『J』を睨む。
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( ゚∀゚)「じゃあ、リクエスト通り……喰らわせてやんよ!!」

彼の言葉と共に左腕の義手は発光した。
屍達はそれを合図に一斉に彼に襲い掛かる。

<ヽ:::。Д:::゚)「グギャアアアアッ!!!!」
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