- 1957〜1987年あたりの本格ミステリ作家達 4
159 :初代スレの>>3[sage]:2011/10/24(月) 12:38:01.86 ID:Kxt/1G1E - 高木彬光「どくろ観音−千両文七捕物帳」(春陽文庫)★★★☆
初出等の詳細は不明ですが、主に1950年代に発表された、白皙の美男子だが女嫌いの千両文七親分 (神津恭介に共通しますね)と、手下の合点勘八が活躍する捕物帳シリーズ。 「天狗の仇討ち」、人間には不可能な状況での怪事件、天狗の仕業かと思われたが・・・。トリッキー ではあるが、解決がやや唐突かな。 「妖異雛人形」も、駕篭からの人間消失トリックが出てきて期待させるが、真相はあっけない。 その他、「新牡丹燈籠記」では長屋の密室からの消失、「怪談一つ家」はバラバラ死体の謎、「荒寺の 鬼」はアリバイ工作、表題作は作者お得意の刺青ネタに筋書き殺人の変形、更に「離魂病」では クリスティの超有名作品に挑むなど、トリッキーな趣向がてんこ盛りで、その点は満足できた のですが、如何せん、文庫版で各編30ページ弱の分量では、伏線や解明手順があっけなさ過ぎ ますね。 とは言え、全12編、先ず先ずの収穫でした。
|
- 1957〜1987年あたりの本格ミステリ作家達 4
160 :初代スレの>>3[sage]:2011/10/24(月) 12:41:33.21 ID:Kxt/1G1E - 松本清張「失踪」(双葉文庫)★★★
これまでに文庫未収録だった1956〜71年までの作品を収めた短編集。 冒頭の「草」が面白い。病院に入院している、出版社の経営者である「私」。病院長と看護婦の駆け落ち に続いて事務長の自殺など、病院内に怪事件が頻発する。隣室のおせっかいな入院患者の男とともに 一連の事件の真相を探るのだが・・・。後半になって突然、それまでの「私」の語りが変化し、急転直下 の結末に至ります。はっきり言ってアンフェアですが、それでも肝心の部分を登場人物のセリフにす るなど、地の文と「私」の行動には一応整合性をとって注意を払っており、ラスト一行のセリフも含め、 この作者がこんな作品を・・・、という意外性はあります。 「詩と電話」は、病み上がりで九州の地方支局に異動になった新聞記者が、いつも特ダネにありつく地元 紙の古参記者の秘密に迫る話。特ダネに一番乗りするアイディア、作品の雰囲気なども含め、解説に あるとおり、時代風俗を無視すれば、横山秀夫の新作短編といっても通りそうな佳作。 残りの「二冊の同じ本」と表題作は全体に消化不良ぎみの凡作。
|
- 1957〜1987年あたりの本格ミステリ作家達 4
161 :初代スレの>>3[sage]:2011/10/24(月) 12:45:17.84 ID:Kxt/1G1E - 赤羽建美「彼に殺される!?」(集英社文庫)★
1987年のノンシリーズ長編。 真理子は恋人の進一の不可解な行動に悩まされ、更に、自分が高校生時代に書いた日記の「将来、恋人に 殺されることになる」という記述が現実のものになるかも知れないと怯えていた。ところが、進一が轢き 逃げに遭って死亡する事件が起こる。進一はどんな秘密を抱えていたのか、真理子は調査を進める うちに知り合った野口とともに事件を追及するのだが・・・。 アハハ、この作家はミステリを全く理解できていない。過去の日記の一節と現在の事件には繋がりは 無いし、進一を轢き逃げした犯人の設定は伏線無しで藪から棒も良いところだし、ヒロインは言い訳 しつつも節操が無い女だし、何より芥川賞候補になったとは信じられないほど文章も幼稚(まあ、芥川 賞受賞作家にも、宇能鴻一郎や菊村到のような例はありますが、彼らの通俗小説は題材が幼稚であっ ても、流石と思わせる部分もあるのに、この作者と来たら・・・)。 おまけにバブル丸出しで、それも当時の先端を行っていたならともかく、本作より何年も前に出た 「なんとなく、クリスタル」の猿真似に近いとは・・・。 エピローグで、或る人物の思いもよらない真実が明らかになるという意外性もあるのですが、これ また全体の流れから浮いてしまっており、駄作としか言いようがないですね。
|