- 【モナギコ】犯人当て推理ミステリー【蜘蛛の会】
630 :名無しのオプ[sage]:2011/09/08(木) 12:48:20.07 ID:5arAStDd - 一葉に招き入れられた友人の太子と諭吉、当然一葉はその時点で生きている。
招き入れた後、一葉が鍵を閉めたので外部との出入りができない密室状態となった。 何らかのトラブルが起こり、太子と諭吉は一葉を殺してしまった。 一度は焦ってこの場から逃げようとしたものの、鍵が掛かっていた。 >二人(太子と諭吉)が彼女の部屋のドアを開けようとしてノブに手をかけた時、鍵は閉まっていた (以下小説風に) 鍵を開けようとガチャガチャと錠を動かすが、焦りのあまりうまく開ける事ができない。 錠に触れる自分のうまく動かない指先を見つめ鼓舞するうちに、太子はある事に気付いた。 その事により焦りの気持ちは消えたものの、冷静になったわけではなく思考停止状態、完全な空白になってしまった。 錠を開けようとしていた手も止まった。 「何やってんだ!!早く開けろよ!!」 諭吉の叫びに、抑揚のない太子の声が答えた。 「指紋俺達の…これじゃすぐに捕まっちまう」 少々文法的に怪しいその言葉が、諭吉を我に返らせた。 『俺達二人共、素手であちこち触って、指紋をベタベタと残している。このままにしておくと、俺達が一葉を殺したという事が一目瞭然だ。 なんとかしないと』 諭吉は太子の言外の意味までも、そのように正しく受け取った。 (1/4)
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631 :名無しのオプ[sage]:2011/09/08(木) 12:48:34.45 ID:5arAStDd - 振り返った諭吉の目には、首が切断された一葉の死体が目に入った。
「このままじゃ、俺達童貞をこじらせて死んじまいかねない」 そんな太子の口車に乗って、二人にとって数少ない女性と接点と持てるオンラインゲームのオフ会にこぎつけたのが三日前。 今日開催されたオフ会で、初めてリアルに顔を合わせたチャット仲間の一葉に連れられて、彼女の部屋に上がり込んだのがほんの数十分前。 女性の一人暮らしの部屋に男を招き入れた、という事は彼女もその気だったはずだ。 おそらくオンラインゲームをやる事も、オフ会に参加する事も、彼女が後腐れのない男を探す為の狩りだったのだろう。 俺達が狩ったのか狩られたのか、そんな事にこだわる必要はない。 そのまま彼女のペースに任せておいても、いずれそういう雰囲気になり、俺達は無事卒業を果たせていたはずなのに。 諭吉は、太子の軽はずみな行動を思い返し、そう思わずに居られなかった。 鍵を掛け終えた一葉が振り返ったとき、太子が脳髄まで童貞に支配され、豚のような叫びをあげながら彼女に飛びかかったところまで、 諭吉の記憶にはっきりと残っている。 その後、自分自身も狂気が伝染したかのように彼女の脚に組みつき太子に加勢した事は、まるで他人の記憶ででもあるかのように 朧気にしか浮かんでこない。 一葉の悲鳴や、ブヒブヒという太子の声、暴れる手足が触れでもしたのか積まれていたDVDや本が崩れる音、そういった断片的な音の記憶が 諭吉には残っているものの、既にその前後の繋がりさえはっきりしない。 ただ一つはっきりしているのは最後の光景だけ。 抵抗する一葉が繰り出した鳩尾への蹴りの一撃の痛み。思わずのけぞった身体がスチールラックへぶつかった、背中への痛み。 自分の肩越しに、一葉と彼女を組み伏せる太子へと向かって倒れていく、自分の視界の半分以上を占める黒いスチールラック。 諭吉にはスチールラックに載せられていた、熱帯魚の水槽から伸びる酸素ポンプのパイプが抜ける、プチッという小さい音まで 耳に届いた気がした。 スチールラックは、彼女にのしかかっていた太子の背中をしたたかに打ちつけたのだろう、踏まれた豚があげるような太子の悲鳴と スチールラックが倒れる低い荒々しい音、そして熱帯魚の水槽のガラスが割れる甲高い音が交錯した。 (2/4)
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632 :名無しのオプ[sage]:2011/09/08(木) 12:49:04.06 ID:5arAStDd - ブヒブヒという太子の声は続いていたものの、直前の喧噪と比べると静寂と思える瞬間が訪れた。
一葉は、既に声をあげることも指一本動かす事もなかった。 「畜生」 ブヒブヒという声の合間に、そんなことを呟く太子を無視して、一葉の様子をうかがう諭吉は発見する事になる。首から鮮血を流し、息絶えた彼女の姿を。 彼女の周辺に散らばる、直前まで水槽だったガラス片を見る限り、勢いをつけてスチールラックから落ちた水槽が、最悪な角度をもって彼女を 襲った事は明白だった。 水槽のガラスの一辺が彼女の首に食い込み、その鋭さ、勢い、そして中に入っていた水の重さなどによって、彼女の細い首筋はあまり抵抗 を見せずに、あっさり切断されてしまったのかも知れない。 「し・・・死んでる」 思わず諭吉の口から洩れた言葉は太子の耳に届いたようだ。 「はあ?何言ってんだ?」 先ほどまでの狂気は、背中への痛みが気付け薬となって消散してしまったとでもいうように、平静な声で太子は返事をした。 「ほら」 諭吉が平気で一葉の頭部を持ちあげる事ができたのは、水槽の水で洗われたせいでどこか人形の首を思わせる姿だったからかも知れない。 それとも、単にあまりにも突然の事で現実感を感じなかったからかも知れない。 諭吉がまるで作り物を扱うかのように、気軽に一葉の頭部を持ちあげたせいで、太子は数瞬の間何を見せられたかを理解する事ができなかった。 その数瞬は、自分が見たものを理解し、否定し、そして否定できない事実であると認める為に必要とした時間だったのだろう。 数瞬後には太子も、一葉が死んでいる事を理解し、まるで屠殺される豚のような悲鳴をあげながらドアへと突進し鍵と格闘し始めた。 現実感から遊離していた諭吉も、その太子の様子を見て自体を把握し始めたのか、太子の後を追った。 (3/4)
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633 :名無しのオプ[sage]:2011/09/08(木) 12:49:30.82 ID:5arAStDd - この部屋に来てからの事は悪夢であって欲しい、そんな儚げな願いを込めて室内を振り返った諭吉の目に映った一葉の死体。それは、はっきりと
今までの出来事が現実であると語っていた。 「これは完全犯罪だな……」 太子のまだどこか呆けたような、文法の怪しい言葉を諭吉は再度言外の意味も含めて正しく受け取った。 『この状況は自殺に偽装して警察をごまかす事なんてできない、完全に犯罪でしかあり得ない』と。 そう、これは完全に犯罪である。犯罪である以上、犯人が存在しなければならない。 太子一人に罪を着せ、そのうえで太子を亡き者にするためにはどうすれば…諭吉はそう考えながら、思わず小脇に抱えて逃げようとしてしまって いた一葉の頭部を元の位置にそっと戻した。 (4/4)
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642 :名無しのオプ[sage]:2011/09/08(木) 20:31:35.46 ID:5arAStDd - >>635
なんかゴメン。 >>619さんと同じ発想で、頭を抱えた=切断された被害者の頭部を(小脇に)抱えて持った という、ネタを思いついた自己満ネタ発表だったんです。 >小脇に抱えて逃げようとしてしまっていた一葉の頭部を元の位置にそっと戻した。 このラストを書きたいがためだけに、細部を貴出題から抽出して組み込んでみたら、結果 まぐれ当たり(カスリ)…。 なんか中途半端な事をしてしまったなと反省。
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