- 【モナギコ】犯人当て推理ミステリー【蜘蛛の会】
84 : ◆7yoEug9Pb2 []:2011/08/27(土) 08:37:47.57 ID:1d1QsD2T - 探偵の皆さん、見えてきました。あれが今回の事件が起きた洋館です。
いやあ、日本随一の薬品メーカーの会長の家だけあって、さすがにでかいですねえ。 とりあえず、車が着く前に今回の事件についてもう一度確認しておきますね。
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85 : ◆7yoEug9Pb2 []:2011/08/27(土) 08:40:01.68 ID:1d1QsD2T - 殺されたのはあの巨大製薬企業、ポートピアの会長、古呂沙錬太郎、享年54歳。
事件が起きたのはちょうど一ヶ月前の会社役員との会食の夜。 その夜8時ごろに、会長の妻が参加者の名前についての共通点を話題にすると、 会長は急に一階のリビングから離れ、誰も自分の部屋に入るなといい、 鍵を掛けて二階の書斎に篭ったといいます。 それどころか、執事に会食の参加者を見張れと命じたんだとか。 当然、場はしらけてしまい役員達は帰る準備を始めたのですが、 そのとき二階から大きな声が響きます。 全員は書斎に駆け寄ってドアを叩くが返事がない。 それで、ドアを蹴破るとうつぶせになった被害者と、 その横に血のついた注射器が落ちていたといいます。 後の司法解剖によって、被害者の死因はニコチンを注射されたことによる心停止だとわかりました。
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86 : ◆7yoEug9Pb2 []:2011/08/27(土) 08:41:53.47 ID:1d1QsD2T - 犯行のあったと思われる時間には被疑者達には、
全員お互いのアリバイがあったということになります。 その夜の戸締りは完璧で、どこかを壊したりピッキングしたりして侵入した痕跡がないので、 外部犯の線も消えてしまいます。それに加えて状況は密室。 会長の書斎には金庫と机があるだけで、犯人が隠れてやり過ごせる場所も無いと来ています。 さあ、困った。 あ、今ニヤリと笑いましたね。人が死んでるってのに不謹慎だなあ。 本当に皆さん、密室とかアリバイとか大好きですねえ。
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87 : ◆7yoEug9Pb2 []:2011/08/27(土) 08:45:12.65 ID:1d1QsD2T - この、密室殺人の時点で十分な難事件だと言えますが、
知ってのとおりこの後の出来事がさらに不可解だったわけです。 数日後、顧問弁護士が預かっていた遺言状が開封されると、 書斎の金庫の中の書状にしたがって財産を分けるようにと書かれていた。 それで、遺言状に記された暗証番号に従って、 馬鹿でかい金庫を開けるとそこには、ぽつんと一枚だけ「告発状」と掛かれた手紙があり、 直筆でこう書かれていたわけです。 『私は自殺などしない』 『私が不審な死を遂げたのだとすれば』 『犯人はやすだ』 おっ死んだ人間がこういうメッセージを残してくれるのは非常に助かるわけですが、 この被害者の間抜けな点は当日に会食に集まった人間が、 一人を除いて全員この告発に当てはまってしまうことです。
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88 : ◆7yoEug9Pb2 []:2011/08/27(土) 08:47:34.03 ID:1d1QsD2T - まず一人目は被害者の妻、古呂沙やす子、30歳。
ソバージュを掛けた髪に、ハスキーボイス、 それでいてしっかりとした巨乳の大人の色気がムンムンの女ですよ。 厚い唇の横にあるほくろが……そんな余計なことはいいからさっさと進めろって? ちぇっ、わかりましたよ。 まあ、会長は彼女のことを普段から『やす』と読んでいたことから、 遺言状の指し示す犯人は彼女だと警察も当初から目をつけていました。 殺害動機も大アリで、つい最近夫の雇った探偵によって、 この女が不倫をしていたことがばれたのです。 しかもあろうことか、この不倫相手というのが高校生。ド淫乱な女ですよまったく。 いやあ、私も高校のころにこんな女に奪われてみたかった。 え、お前は女だろって?そういえばそうでした。 まあそれで、このエロイ女は文無しになって屋敷から放り出される寸前だったわけで、 殺しをたくらむというのは十分ありうるわけです。
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90 : ◆7yoEug9Pb2 []:2011/08/27(土) 11:03:13.85 ID:1d1QsD2T - 二人目は会社役員の泰石彦、45歳。彼も『やす』の一人ですよ。
この会社の元No.2で、会長が死んだことによって現ポートピアの筆頭株主となった男です。 この男に会長を殺す動機があったかといえば、これもまた大有りです。 17年前にポートピアがアメリカの製薬会社とインフルエンザの特効薬で競争になった際に、 副作用が懸念されていた薬の実験台として、 妊娠していた妻を差し出すように命令されたのです。 結果、足のない奇形児が生まれ、 ショックを受けた妻は気が動転し、子供と一緒に飛び降り自殺し命を絶ったといいます。 動機に加え、この男が糖尿病をわずらっていたことも疑わしいんですね。 注射器はインシュリン注射用として簡単に手に入れられるわけですからね。 あと、知っての通り殺人事件の次の日、 自らに大量にインシュリンを打って入院しています。
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91 : ◆7yoEug9Pb2 []:2011/08/27(土) 11:06:54.83 ID:1d1QsD2T - 三人目はこの会社の基幹研究所の所長、早須田千代子、43歳。
犯人『はやすだ』、って考えれば彼女も犯人に。ちょっときついかな? 知っての通り、ドブスです。容姿はいいから、さっさと先に進めろって? でもですね、元々薬学会で将来を嘱望されていたこの女がこの会社に入ったのは、 もてなかった学生時代に会長に、一緒に世界をつかもうと、 甘い言葉で騙されたからなのですよ。 会社に入って数年後、自分と結婚する気はさらさらないと気づいた千代子は、 自分の研究成果を会社から奪還し、独立しようとしたのですが、 そのときには既に顧問弁護士の安多の手によって全ての権利を奪われていて、 以後はずっと会社で飼い殺し。 実を言えば、泰の妻を新薬の実験台として選んだのも彼女ですが、 その理由は泰の妻を気に入って会長がちょくちょく手を出していたからという説もあるのですよ。 つまり嫉妬ですね。あー女って怖いわー。
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92 : ◆7yoEug9Pb2 []:2011/08/27(土) 11:09:26.70 ID:1d1QsD2T - 四人目はこの会社の先ほど出てきた顧問弁護士の安多紙太郎、50歳。
会長の遺言状を預かっていた男です。 犯人は『やすだ』って調子です。 彼は20年前、故郷の自然を守る活動をしていたわけですが、 彼の故郷を工場からの公害で見る影もなくしたのが今の会長なわけです。 当然、安多は法的手段に訴えようとしたわけですが、 ヤクザを父親に持つ泰の手によって住民は完全に黙らされてしまいました。 安多自身も年老いた両親を気にして訴訟を取りやめ、 多額の報奨金によって逆に懐柔され今の地位にいたるわけです。
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93 : ◆7yoEug9Pb2 []:2011/08/27(土) 11:13:03.25 ID:1d1QsD2T - 今までの説明を聞いて、ポートピアの会長は随分恨まれていたと思うかもしれませんが、
驚くことにそうではないみたいなんです。 先ほどの泰、早須田、安多の三人にしろ会長は悪くなく、 泰は早須田を、早須田は安多を、安多は泰を恨んでいるようなのです。 そして全員が何らかの罪悪感と会長との共犯心理を抱いていたといいます。 あの死んだ会長は、金と口車と恐怖で人の心を溶かして操る人心掌握の一種天才だったわけですね。 したがって、この三人のうちの共犯というのは極めてありえないといえると思います。
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94 : ◆7yoEug9Pb2 []:2011/08/27(土) 11:15:26.43 ID:1d1QsD2T - 最後に当日館にいた5人目のとして、執事の林真範を紹介しておきます。
東北出身の何の変哲もない老人で、 この館での食事や掃除などはこの男に皆任せられていました。 ただ、その情報収集能力はなかなか侮れないものがあります。 さきほどの四人の人間関係なんかはほとんどこの男から聞き出したものですから。 当日、会長の書斎を蹴破り、会長に近づき、 即座に異常を確認して救急車と警察を手配したのも彼です。 まあ、怪しくないのが一番怪しいってタイプでしょうか。
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95 : ◆7yoEug9Pb2 []:2011/08/27(土) 11:18:22.92 ID:1d1QsD2T - さあ、そろそろ館に着きますよ。他に聞きたいことはありませんか。
当日の会食のメンバーは誰が集めたかって?それは妻のやす子ですね。 彼女が数居る会社の役員の中から、この三人を招待したのですよ。 書斎の金庫の大きさ?高さ70cm、幅120cm、奥行き60cm。 人間が隠れられるか?無理ですね。 どんなにがんばって体を丸めても奥行きが足りなくて蓋が閉まらないでしょう。 金庫の構造?やけに金庫に食いつきますね。ダイヤルを回してダイアル中央のボタンを押し込むと、 そのときのダイアルの位置を暗証番号にロックされる仕組みです。 解除の際は、ダイアルを合わせてダイアルの隣にある解除ボタンを押すだけですね。 金庫は毎日拭き掃除をしているらしく、 埃一つ付いていませんでしたよ。金庫を置く台の上にもね。
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96 : ◆7yoEug9Pb2 []:2011/08/27(土) 11:21:28.01 ID:1d1QsD2T - 外部の人間が知らなくて、当日屋敷にいた人間だけが知っていることは何か?
そりゃ今話したこと全部ですよ。外部犯が疑わしい今、 事件前後の出来事については事件当日から全員に強い緘口令が敷かれています。 何でそれをお前が知ってるのかって? だって、あの林とかいう老人が聞いてないことまで、何でもぺらぺらしゃべってくれるんですもん。 まあ、探偵じゃない僕ら以外の外部の人が内容を教えるなんてことないと思いますがね。……たぶん。
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97 : ◆7yoEug9Pb2 []:2011/08/27(土) 11:24:59.05 ID:1d1QsD2T - さあ、館に着きましたよ。車を降りてください。
ささ、玄関へどうぞ。って、私の家でもないんですけどね。 って、何階段で蹴躓いてるんですかあー。 よかったら隣のバリアフリーなスロープを上がってください。 会長の妻が足の弱ってきた夫のために最近新築したものらしいですよ。 なんだかんだで、夫への愛は少しはあったようですね。いや、単なる媚びかな? さあ、ノックしますよ。
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98 : ◆7yoEug9Pb2 []:2011/08/27(土) 11:28:15.46 ID:1d1QsD2T - 助手が館の扉をノックすると、執事の林が現れ、
玄関で曲がって廊下を少し進んだ先にあるダイニングへと通された。 事件当日会食が行われていたこの部屋の、 金持ちらしい長テーブルの左右に4人の男女が並んでいた。 「名探偵の先生方をお連れしました」 執事の林がそう言うと、皆が立ち上がってお辞儀をした。ただ一人泰を除いては。 「どうも。座ったままで悪いね。 しかし、名探偵ねえ。それって自分で名乗ってるの?恥ずかしくない?」 安多は鋭い目つきで泰を睨んだ。 「茶化すなら、病院に戻ってろ。ヤクザ一家が」 「アンタもいちいち、興奮して場を乱さないでくれないかしら」 ヒステリックな口調で早須田は言った。 「なんでもいいけど、早く始めましょうよ」 やす子は不安そうな表情で、ため息混じりにそう言った。
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99 : ◆7yoEug9Pb2 []:2011/08/27(土) 11:33:22.90 ID:1d1QsD2T - 「何、ビビってんの?」
そう言いながら、隣に居た泰は彼女の手をそっと握った。すると、やす子は彼の手を払いのけて、 「それで、犯人は誰なんですか」と言った。 その言葉に、場の空気が凍った。安多は場の空気につんのめるように叫んだ。 「私が犯人だという見当違いはよしてくれよ。 人権系弁護士としてつまらないキャリアしかもっていなかった私に、 こんなチャンスをくれた会長に私は今でも感謝してるんだ」 安多の剣幕を冷笑しながら、泰は言った。 「書斎に落ちていた注射器と同じ注射器を使っていたくらいで、 犯人呼ばわりするような無能じゃあないでしょうね。 あと、インシュリンでの入院の件を、警察の尋問を逃れるためのアリバイ作りだという奴らも居ますがね、 泰家の名誉のために言います。あれは単なる事故ですよ。 実際、一時は死ぬ危険さえあった」 早須田も続いた。 「ニコチンを注射したら死ぬことくらい、 薬学の知識がなくったって、いまどきネットで調べられることだわ。 そんなことを理由に私を犯人にしたりしないでちょうだいね」
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100 : ◆7yoEug9Pb2 []:2011/08/27(土) 11:35:34.54 ID:1d1QsD2T - やす子は一人首を振った。
「みんな何を言っているの?当日居た全員のアリバイはお互いで保障できるわ。 少なくとも当日あそこにいた私達が犯人なんてことはありえないじゃない」 助手が林のほうを見ると、林は落ち着いた表情で首を振った。 「私めは何も言いません。義理と口が堅いことだけがとりえでございます」 その答えに、助手は苦笑いをしながら探偵のほうを見た。 その瞬間、彼女の顔はぱあっと明るくなった。 探偵が今まさに例のポーズをとったからである。
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102 : ◆7yoEug9Pb2 []:2011/08/27(土) 12:45:05.79 ID:1d1QsD2T - 「皆さん、落ち着いて聞いてください。探偵の先生はもう既に真相を見抜かれたそうです」
助手がそう言うと、全員がお互いに顔を見合わせた。 「マジかよ」「うそお」「馬鹿な」「本当に?」「へっ?」 助手は皆のあわてた顔に対して得意満面の笑みを浮かべた。 「それでは、名探偵の皆さん!真相をどどんと明らかにしてください」 全員の視線があなたに集まった。そしてあなたは真相を語り始めた。 ※かっこいいキメポーズと一緒に○○探偵と名乗り、謎を解き明かそう。 登場人物がきちんとリアクションしてくれるよ! (連投規制に引っ掛かってしまい、肝心の最後の文を送信が遅れました。 >>101さん、先走らせてしまってすみません。ちなみに想定している答えとはちがいます)
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106 : ◆7yoEug9Pb2 []:2011/08/27(土) 15:38:12.35 ID:1d1QsD2T - >>105
読み方はその通りです。 難しすぎた気がするのでヒントを出しておきます。 細かい言葉尻のトリックよりも、 不可能犯罪を実現させるトリックを地道に考えるほうが真相解決の近道です。 真相を繋ぐ最後の関門に叙述トリックがありますが、 先にそこから崩そうとすると必然性がなくて泥沼に嵌ると思われます。
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111 :名無しのオプ[]:2011/08/27(土) 16:30:19.69 ID:1d1QsD2T - >>108
助手はあっけらかんとした表情で答えた。 「何言ってるんですか。毎晩、余すところ無くみてるくせに。 もしかして、そういうプレイですか。それもなんだか興奮するかも……」 脱ぎ始める助手に、安多は激昂した。 「なんだ、この男と助手は。惚気だったら他でやれ」 周りに居た早須田とやす子が必死に止めに入り、助手の衣服はかろうじて留められた。 取り押さえられながら、助手は叫んだ。 「この人は、脱衣探偵です。私が脱がないとどうも推理が冴えなくて……。 いつもああして口実をつけて、私を脱がすんです。彼は自分が脱ぐとき最も推理力を発揮して……」 「そんな変態はさっさと刑務所にぶち込んで下さらない」 早須田は、正論過ぎる言葉を口にした。 その隅で、林と靖の二人は同時にぼそりとつぶやいた。「おしい」 やす子は二人をにらめつけながら、不機嫌そうにそう言った。 「それで、茶番は終わりにして、誰かまともな探偵さんはいらっしゃらないの」
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114 : ◆7yoEug9Pb2 []:2011/08/27(土) 16:42:20.61 ID:1d1QsD2T - >>112
興を削いでしまってすみません。 靖→泰です。深い意味はありません。
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117 : ◆7yoEug9Pb2 []:2011/08/27(土) 19:10:22.54 ID:1d1QsD2T - >>115
古呂沙やす子は不敵な笑みを浮かべた。 「今度の探偵さんはなかなかまともね。あなたの言う通りよ。 確かにあの告発状は私を告発するためのものだったわ」 「おいおい、何を言い出すんだ」 泰は縮こまった声でそう言った。安多も身を乗り出した。 「じゃあ、あんたが犯人って認めるってことか」 やす子は首を振った。 「私が不倫してると知った途端、 あの人が勝手に私に殺されるという妄想にとりつかれたのよ。 いつも横柄で私に暴力を振るった夫だったけど、 あのときの怯えようは面白かったわ。 私にあの告発状を見せて、金庫に入ってるから俺を殺せばお前は捕まるって何度も言うの」
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118 : ◆7yoEug9Pb2 []:2011/08/27(土) 19:12:23.05 ID:1d1QsD2T - (つづき)
早須田は、やす子に刺すような視線を送った。 「あの人に愛されていながら、なんてひどいことを言うの。この人殺しがっ」 早須田の罵声にもやす子は動じなかった。 「だから、私は殺してないってば。それはあなたが知ってることでしょ」 早須田は再び罵倒の言葉を言おうとしたが、すぐに飲み込んでしまった。 「それで、あの人の被害妄想はいいから、誰があの人を殺したのか教えてくれないかしら」 やす子はソバージュの髪を掻き揚げた。ふわっと、淫靡な香水のにおいがあたりを漂った。 ……助手があたりをスンスン嗅ぎまわっている事を全員が見てみぬフリをしていた。
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120 : ◆7yoEug9Pb2 []:2011/08/27(土) 19:50:15.42 ID:1d1QsD2T - 「確かに筋が通ってるわね、バカ殿の癖に」と、早須田。
「コレなら、わざわざ密室なんか作る必要は無いな。バカ殿の癖に」 泰は椅子の車輪を転がしながら言った。 「でかしたぞ名探偵、バカ殿なのが残念だが」 安田も晴れやかな表情でバカ殿を称えた。 「あとは勝手に動機をでっち上げるだけね、バカ殿の言うとおりにするのは癪だけど」 やす子は下唇を舌で舐めながらそう言った。 「え、ワシがやったの?」 林執事は自分を指してそう言った。 「ほら、若いころの会長に自分の娘を殺されたりしなかった?」泰が言う。 「あれ、そんな気がしてきたかも……」 「それで、50年間会長への復讐だけを誓って生きてきたりしたんじゃなかった?」早須田が言う。 「そうだったかな……」 「会長の執事になってからの、あの過酷ないじめにも耐え抜いてきたんじゃないか」安田が言う。 「それ格好いいのう、いただき」 やす子はすっかりその気になった林を、バカ殿探偵の前に差し出した。 「それじゃあ、解決ってことでいいわね」
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121 : ◆7yoEug9Pb2 []:2011/08/27(土) 19:51:53.85 ID:1d1QsD2T - 「異議あり!」助手が手を上げた。
「だとしたら犯行現場にインシュリンの薬瓶が近くに落ちてないといけない。 でも落ちてたとしたら、初めから事件の論点は薬のすり替えってことになるけど、 だけど、今までだれもそんなこと言い出してない。だからこの説はおかしいよ」 全員が諭されたようにうなづいた。そして同じタイミングでこうつぶやいた。 「やっぱバカ殿か……」
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124 : ◆7yoEug9Pb2 []:2011/08/27(土) 20:49:42.11 ID:1d1QsD2T - >>122
「謎は、すべてふじさん!」 異様な説得力をもつ響きに、集まった人間はみな酔いしれていた。 「なんか、細かいことなんてどうでもよくなってきちゃった。 やっぱり林が犯人でいいんじゃない」と、早須田。 「しかし、この爺さん、若奥さんと不倫とはなかなかやりおる」と、安多。 しかし、その空気にやす子は猛然と反論した。 「なんでこんなクソじじいと私が付き合うわけ?」 「そもそも、このじじい確かに年甲斐もなく女子高生と付き合いたいがために、 高校受験をしたけど、落 ち ち ゃ っ た の よ 」 やす子の放った一言に場に居る全員が、林老人に哀れみの目を向けた。 林は部屋の隅っこに体育すわりでいじけていた。 「いいんじゃよ。どうぜ、わしを犯人呼ばわりでも、 じじい呼ばわりでも、バカ呼ばわりでもすればいいんじゃ」
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125 : ◆7yoEug9Pb2 []:2011/08/27(土) 20:51:32.87 ID:1d1QsD2T - 助手は再び手を上げた。
「富士山探偵は勢いで説得されそうになるけど、 細かいところがぜんぜんだよこの人! どんな金庫だって総当りすれば簡単に開くよ! でも、それができないくらいに普通はパターン数を多くするし! それに『殺したのはドアを蹴破ったあと』って、おまっ。 結局、何にも解決してないじゃん!」 助手の嵐のようなツッコミの裏で、真犯人だけがひそかにこう思っていた。 (富士山探偵……勢いだけかと思いきや、ちょくちょく鋭い。侮れない男だ)
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126 : ◆7yoEug9Pb2 []:2011/08/27(土) 20:56:37.19 ID:1d1QsD2T - >>123
助手はバカ殿に対して答えた。 「薬瓶を先に入って回収すればだいじょぶだあ、ってことにはなりませんよ。 そもそも部屋のどこに落ちているのか分からないわけだし、 回収しそこなったら執事が百パーセント犯人になってしまいます。 犯人がそんな一か八かの賭けはしないと思うんですが」
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130 : ◆7yoEug9Pb2 []:2011/08/27(土) 21:42:49.87 ID:1d1QsD2T - 「バカ殿の癖になかなかやるな」
泰石彦の息子、泰靖史は乾いた笑いを浮かべた。 「石彦?見てのとおり居ませんよ。父は病院でこん睡状態ですからね。 それで、確かに足の無い私なら金庫に隠れることができる。 それは間違いない。 しかし、それは状況証拠ってやつじゃないですか? なにか僕がやったという決定的な証拠はあるんですか?」
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132 : ◆7yoEug9Pb2 []:2011/08/27(土) 22:00:53.70 ID:1d1QsD2T - 靖史は肩をすくめた。
「さあね、一ヶ月前も前のことを、 詳細に覚えてる奴なんかいたらそれこそ怪しいんじゃないかな」
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134 : ◆7yoEug9Pb2 []:2011/08/27(土) 22:11:33.02 ID:1d1QsD2T - 「そうですね。僕としたことが決定的とも言えることを言ってしまった。
父親からうっかり聞いたって言っても信じてもらえないでしょうね」 靖史は不敵につづけた。 「しかしね、あなたの推理には不完全な点がある。 一つ、僕はどうやって番号を知らない金庫を開けて入ることができたのか? もう一つ、脚の無い僕がどうやって会長を襲うことができたのか? そもそもどうやって屋敷に入ったのか? この点も説明してくださいよ。そうでないと、これは不可能犯だ。 僕を法では裁けませんよ」
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137 : ◆7yoEug9Pb2 []:2011/08/27(土) 22:43:25.11 ID:1d1QsD2T - 何かが切れたように、靖史は手を叩いて大笑いをした。
「大当たりだよ。探偵さん。 でも、あんたその白粉つけてまじめな事いうのやめてくれないかな。 キャラが、ぶれてるんだよね」 空回りする靖史のオーバーリアクションと相反して、 場の空気は静まり返った。
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139 : ◆7yoEug9Pb2 []:2011/08/27(土) 23:08:37.52 ID:1d1QsD2T - 「事件が解決したら脱ぐのかよ」
全員がバカ殿に突っ込んでいた。早須田一人を除いては。 「なんで、錬太郎さんを殺したのよ。復讐するなら私にでしょ」 そう言って、早須田は靖史の胸倉を掴んだ。 靖史ははうっとおしそうに彼女の手を払いのけた。 「なんて、みんなそうセンチメンタルなんだよ。 母親の復讐、足を失った復讐? 物心ついたころからどっちも無いことが普通だったのに、 そんなことをずっと根に持っていられるほど根暗じゃないよ。 その辺は、探偵のあんたらもぜんぜん分かってないね」 靖史はそう言って、事件の動機を語り始めた。 (事件は完全解決です。皆様、お疲れ様でした。 明日、あと少しだけ真相編を投稿して終了します。 真相編の合間にいろんなキャラでみんな茶々を入れてください、 なるべくレスポンスしながら真相編を完成させます)
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