- アガサ・クリスティ 21
814 :名無しのオプ[sage]:2011/07/30(土) 16:19:14.85 ID:jPGD8+yv - 以前クリスティをずっと持って読み続けている女性の話が出ていたけど
そういう女性読者に「ナイル」が人気があるのはほんとに良くわかる。 主役級から当て馬並みの脇役まで、事件発生までの長い長い時間のあいだ どんなことを考え、どんな風に心が揺らぎ、どんな風に状況に呑まれて 行っているのかがビリビリ伝わってくる。(個人的にはポワロの言葉に 妙な反応をしてしまって慌てる人物たちの記述の数々に痺れた) まさにオードブルからデザートまで全てが豪華で重層的な大御馳走。 豪華すぎるメロドラマとして、何度も何度も読んでいる女性たちが世に 多いのは極めて自然なことだと思う。
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815 :名無しのオプ[sage]:2011/07/30(土) 16:41:54.37 ID:jPGD8+yv - >「ナイルに死す」で、事件発生前に…
しかもそれが真相発覚後もさらに二重の意味に取れるようになっている あたり、もう当たるを幸いなぎ倒すという感じの天才の腕の冴えですな。 で、「矢の家」なんかが何度も読み返せるのも、身もフタもないことを 言えばそういう「心理を読み返したいと思えるキャラクターの魅力」に よる部分が確かにありますからね。 ひどい言い方をすると、スタイルズとかアクロイドとか、過去や人となりに もっと分け入りたい!と読者が思える魅力的な犯人像か?っていうと ハーレクインロマンスの延長としてミステリを手に取る女性読者陣には …やっぱりキツい部分もあるでしょうねw (スーシェのドラマは「葬儀」「クリスマス」「雲をつかむ」などでも、 犯人像の魅力をさらに上盛りしようと工夫を怠ってなかったのがさすがです) 「ライ麦」はイマジネーションとして犯人の周辺を「想像」はさせてくれる 魅力的な犯人なのですが、文章自体にそうしたドキドキが仕掛けられている 部分が相対的に少ない気がするのですね。貴方の再読が楽しいものであることを お祈りします。
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821 :名無しのオプ[sage]:2011/07/30(土) 23:56:47.06 ID:jPGD8+yv - 「ナイル」については前スレから話題になっていたし、このスレでも色んな
方が論じておられたのでだいたい言い尽くしているのです。それに個人的に 「人間を描く」などということにかまけてミステリとして魅力のない作品と いうものに縁がないままで来ましたので、そっちとの比較は良くわかりません。 何度も語られてますけど、クリスティはとんでもなくミステリの人であって 一見ありそうな世界や人物のドラマに見えて、犯罪の構成は「んなアホな」と 言いたくなるほど吹っ飛んだトリッキーさをデンと話の中核に据えているから とてもじゃないけどつまらない純ブンガクなんかになりようがない代物です。 そして再読の際などのゾクゾクするような登場人物人間の裏の顔のせめぎあいも、 あくまでトリッキーな事件が起きた、というかそういう形で収斂されたからこそ 面白く見られる人間の顔でありドラマであるのは今さら言うまでもないでしょう。 それはカーで言えば「解決篇の面白さ」であるわけで、解決篇でアッと驚く人間 模様が描かれたからってそれがミステリの面白さではない、なんてことになる はずがありません。
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