- - Bjork - Part69
762 :名盤さん[sage]:2022/10/10(月) 21:30:59.59 ID:b/bs6T+3 - 「もぅ、いいっすよ先輩…。/////」
「俺が脱げば済む事っすから。あの糞コーチぃ。俺がプロ入りした暁には見てろよぉ…」 虚しく響くシュウの小さな啖呵。プロ入りの厳しさをシュウが知らないわけはないのに…いや、今はそれらについては触れない。 コーチの命令に背けば背くほど場が静まりかえり否が応でも視線が集中する事を察したシュウはラガーパンツを自ら下ろした…。 「……ほぉおー。なかなかのモン持ってるじゃねーかw」 シュウの顔が赤らむ。それを見逃すはずもなく、 「なんだこの陰毛?おい枝毛だぜ!みんな見ろよ!ほぇ〜キューティクル・ケアちゃんとしてんのか?ww俺がタバコで医療脱毛してやろうか?w」 悪辣な追い討ちをかけるコーチ。……だが、 『……(ドックン!っムックン!っドックン!)……』 「……おい……これ……なんかの冗談だろ?!w」 一同が騒めく。そうなのだ。なんとシュウはコーチになじられながら勃起してしまったのだ。 すかさず股ぐらを隠そうとするシュウ。秒でその手を羽交い締めるコーチ。 「こりゃたまげた!!疲れマラなら知ってるが恥ずかしめられておっ勃っちまう野郎がいるとわなw知らなんだ知らなんだww」 『……(もうそのくらいで充分だろっ!!)……』 普段気位の高いシュウにとって、日頃挑戦的にライバル視している先輩たちに自分の痴態を見られる事は堪え難い屈辱だろう。 そんなシュウのやるせなさを思うと俺は目頭に込み上げてくるモノがあった。 『…(みんなも気持ちは同じだろう?チームメイトへのこんな仕打ちを許せるはずがなっ……おや?)』
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763 :名盤さん[sage]:2022/10/10(月) 21:34:02.53 ID:b/bs6T+3 - そうなのだ。みんな呆れ笑いで平静を装ってはいるが半勃ちなのだ。先の方からミスリード汁が垂れている者もいる。
女っ気のないこの合宿。コーチじゃないが疲れマラだとしてもなんら不自然じゃない。ただ… ヤツらの目には明らかに同情とは違う何かが燻っていた。 ———体育会系。それは得てして雄々しく、それでいて朗らかな…まさに物語の主人公とでも外部の人間は思っている事だろう。 俺はそれを否定しない。ただ動物的な側面にばかりフォーカスを当てる人生を送ってきた彼らは時に信じられないくらいの嗜虐性を発揮する事もまた確かだ。 ———サディスト。いや、そんな横文字は似つかわしくない。それはさながら猛禽類の性(さが)そのものなのだ。 「おい!そこのお前!何喋ってんだ!!」 コーチのターゲットが隣同士で談笑していた他の1年に移る。 『……助かった。』 俺はシュウに立ち上がるように促す。シュウも黙って頷く。お互いヤバい所に来ちゃったねと自分たちの人生を笑い飛ばすかのように気丈に振る舞った……。 ……それがいけなかった。…その楽観が甘かった。そのせいでこれがシュウを見た最後の夏になるなんて……その時は想像だにしなかった。
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764 :名盤さん[sage]:2022/10/10(月) 21:37:29.59 ID:b/bs6T+3 - 時は過ぎ、夕暮れになり、宿のタコ部屋に戻る。
ぶっちゃけ俺にとって合宿の醍醐味はこの時間にあるといってよい。 ケータイやゲーム機で遊んでるヤツ、スカしてポータブル・プレーヤーで音漏れさせてるヤツ、お気に入りのマンガや雑誌をスナックを摘みながら見てるヤツと様々だ。 その群雄割拠の中で俺とシュウと数名はブラウン管テレビの前を陣取っていた。 「なあ!これ絶対おもしれーヤツだからw」 そう言って同輩の1人がそそくさとVHSを入れた。オープニングが始まる。 「……なんだよぉ〜!!wガキンチョ向けのジャリ映画じゃんかぁ〜!!www」 どっと笑いが起こった。それは子供向けの魔法ファンタジー映画だったのだ。 「ちくしょ〜AVだと思ったからバラエティー我慢して譲ったのによぉ〜」 等身大のクレームが微笑ましい。だがそこは野郎は野郎でも男の子。序盤が終われば食い入るように屈託のない瞳たちが画面に釘付けだ。 いよいよ中盤の山場である寮対抗試合が始まった。 ……そう、丁度その時だった……。 「てめぇーら!いつまで起きてんだぁっ!!!」 ……子供の作った砂山を大人が寄ってたかって崩すようなナンセンスな罵声。 そうだ……この合宿には悪魔が居たんだった。それもそのはず…獄卒は待ってはくれない。 こっちの都合などお構いなしに悪意に満ちた不条理劇は幕を開けたのだった…。 遅れて済みません。取り敢えず今日はここまでです。 お気に召したら幸いです。 引き続きリクは受け付けますので今後ともヨロシクです。 寒暖の差が激しい季節がやって参りました。 皆様もご自愛くださいませ。 では。
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