- すっげえもん思いついたんや
84 :クマ髭雄汁団子 []:2010/01/06(水) 02:51:19 ID:dvw8w6/W - お待たせしました!!!続きです。
真空水D 《ニュース速報》 ‐本日、サルデ市は本国政府の援助を得、市を襲っている“黒い雨”の浄化に乗り出すことを発表しました。 計画の決行は明日です。 関係者の話によると‐ 今日は、麻緒さんの留学期間が終わる日。 涙のフェアウェル・パーティー(お別れ会) みんなが別れを惜しんだ。 ルーシーが1番寂しそうにしてたのは、なんか意外だったけど。 帰り道。 麻緒さんと一緒に帰るのも、これが最後… せめて今日ぐらい、綺麗な空の下で一緒にいたかったのに。 「ねぇ、ピオ君」 いつもの別れる地点に差し掛かると、麻緒さんは立ち止まって話し出した。 「今まで…ありがとねぇ。 麻緒、ピオ君みたいなお友達…初めてだもんっ」 「え…あ… オレこそ、ありがとう… 麻緒さんに会えてよかったよ」 【“お友達”か…】 友達以上になれたらいいのに。 ちょっと、オレは切ない気持ちになった。 「ピオ君…」
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85 :クマ髭雄汁団子 []:2010/01/06(水) 02:52:35 ID:dvw8w6/W - 「麻緒ね、明日死ぬかもしれない」
「え…!?」 冗談…ではなさそうだった。 麻緒さんの、あんなに不幸を背負った表情…そして口調。 初めてだったもの。 「どういうこと?」 そう聞き返すのが精一杯だった。 「“黒い雨”の浄化計画、知ってるでしょー? 麻緒がサルデ市に来たのはね、そのためなんだぁ…」 口調はいつもの感じに戻っていた。 だけど無理しているのがわかって、逆にオレには痛かった。 「一体、どうやって…?」 見当がつかない。 「空に行くの」 「空??」 麻緒さんは、何ともなしに言う。 空とだけ言われても、オレには今いち想像ができない。 「…ピオ君、傘を外して」 ピオはためらった。 黒い雨を浴びると、ヘドロのようなものが身体に付着する。 そして肺を病み、人体を襲う息苦しさと脱力感。 当然、ほうっておけば死に至る。 日増しに増えている入院患者で、病院がパンク寸前になるほど、黒い雨の影響力は大きかったのだ。 まぁ…洗浄するのに大変な労力を要するが、一瞬で死ぬわけではない。 そう思ってピオは麻緒に従い、傘を外した。 ザァアアァ… ボタ… ベチョッ…
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86 :クマ髭雄汁団子 []:2010/01/06(水) 02:53:23 ID:dvw8w6/W - だんだん息が苦しくなる…
呼吸音が変わっていく。 「ゴメンね…苦しいよね。 こうしないと、麻緒の力は見せられないの」 本当に申し訳なさそうに言う麻緒さん。 「ピオ君、傘持っててねぇ」 近付いてきた麻緒さんは、持っていた傘を渡し、オレに両手をかざした。 状態としては… 正面で向き合う、相合傘…と言ったら、わかるだろうか。 かざした両手からは水色の光が溢れだし、オレを包み込んだ。 まるで、水のような感触。 優しい水の感触。 どんどん苦しみが消えて行く…! ヘドロまで無くなっていく… 一体、これは…? 「なぜか昔から、こういうことができるんだよねぇ」 再びそれぞれ傘を持つと、麻緒さんは話し出した。 「…その力を、まさかあの空に?」 「うん、そうだよぉ。“revi”って、聞いたことあるでしょぉ?」 《revi(リヴィ)》 人間の生命エネルギーを使い、地球環境を治癒する装置。 まさかそんなものが、本当にあったなんて… 「でも、麻緒さん1人で…?」 「うん、麻緒しかできないんだって… それに、空に行けるタイプだと、あまり大きいのは持ってこれないみたいなのぉ」 だからって… 「麻緒さん、そのreviって、何人乗れるの?」 「えっ… えっとぉ‥2、3人ぐらいなら乗れると思うよぉ」 「オレも行くよ」 「麻緒さんを1人で行かせるわけにはいかないからね。 それに、1人より2人なら、生き延びる確率は高まるだろ?」 「でも、ピオ君…」 麻緒さんは、少し困惑した様子だった。 前から思っていたが、この子は表情がよく変わる。 それがたまらなく愛しい。
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87 :クマ髭雄汁団子 []:2010/01/06(水) 02:56:04 ID:dvw8w6/W - 「大丈夫だよ。
オレ、こう見えても、風邪引いたことないんだ。 生命エネルギーとかっていうのも、けっこーあるはずさ」 「アハッ、風邪引かないのって関係あるかなぁー?」 また変わる。今度は“ニパッ”という言葉が似合う表情。 「ハハハ…わかんね」 麻緒さんが笑ってくれたから、少し安心した。 集合時間と場所を決め、オレらは別れた。 決行は明日。 正直、混乱してる。 麻緒さんの不思議な力に、明日のこと。 そして、その子と共に、命を懸ける自分… 帰ってからしばらくすると、家にルーシーが来た。 なんだか心配そうな顔をしている。 「ピオ、明日…一緒に行くの?」 「何のことだよ」 「誤魔化さないでよ! …アタシ、見ちゃったのよ! ピオと麻緒ちゃんが話してるの… 何もピオまで命を懸けることないじゃない!!バカじゃないの!?」 なんで知ってるんだ? まさか… 「うるせーな… もう決めたんだよっ!」 何を言われようと、決意を変えるつもりはなかった。 「お願い…行かないでよ! あんたが行ったって役に立つわけないじゃん‥あたしより体力ないくせにさ! …もう1人必要なら、私が行くよ!!! それで大丈夫でしょ!?」 「うるせぇぇえええ!!!!!!!!!!!」 今までにない叫び声。 さすがにルーシーも怯んでた。 【お前を行かすわけにはいかねーだろーがよ…】 脳裏に浮かんだ感情。 でも、口から出たのは… 「そうやっていっつも、オレより優位に立ってるつもりなのかよ? 変に世話焼きやがって… ハッキリ言ってうぜーんだよ! なんでそんなに干渉する? あーあ、麻緒さんなら、怒鳴り散らしたりしないのになぁ…」 「!」 泣いていた。ルーシーが泣いていたんだ。こんなつもりじゃなかったのに 翌日。ルーシーとはそれ以降顔を合わせていない。 最後に見たのは、泣きながら走り去る後ろ姿だ。ルーシーが泣くとこなんて、初めて見た。 幼馴染みだから何でも知ってるつもりだったけど… 結局オレは、ルーシーのことを何も知らないのかもしれない。 自分が惨めだった。 ‐真空水E《完結》に続く
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- ボビー・オロゴンの肉体
1 :トムソン坊や[]:2010/01/06(水) 03:02:19 ID:dvw8w6/W - 凄いよね。
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