- 快楽殺人鬼スネ夫
285 :創る名無しに見る名無し[sage]:2020/09/24(木) 03:07:06.73 ID:lO73dsbK - トリスタンの持つ宝石たちが共鳴し、それらのオーラが渦を巻くようにしてバルログへと絡み付いていく。
既にトリスタンの一撃は、プレートアーマーをも貫き、甲冑ごと切り裂くだけの勢いを持っていた。 敵の剣がトリスタンを襲うと、トリスタンは素早くバルログを返し、剣を断ち切った上でそのまま軌道は敵のプレートに包まれた首を刎ね飛ばした。 敵の槍はそのまま軌道を反らされ、バルログがその槍を握っている腕を落とす。 プレートで包まれた体は腕の一本も落とされれば致命傷である。 兵士は絶望の叫び声を上げながらのたうち回り、やがて失血して死亡した。 「すげぇ、ありゃまるで台風の目だぜ…!」 味方の兵の一人がそう言った。 気がつくとトリスタンは屋敷の裏口から突入し、未だに敵味方でごった返している正門を差し置いて 破竹の勢いで進んでいった。 と、途中で梯子を見つけた。既にドロシーの姿は見失っていたが、今はそれどころではない。 早くキールを討ち取るだけだ。 キールはその時、自室で酒を飲んでいた。 既にフルプレート・アーマーを着こなし、武器も手元にある。 ただし、兜だけは邪魔になるのか、外していた。 「クソっ、下賤の者どもが…俺の意向に従わんとはな…イリシアまでも…あの売女が…!」 手前は護衛の兵たちで固められているのだろう。そろそろ出陣といった雰囲気だ。 それを小窓から見ていたのはトリスタンだ。すでに屋上に取り付いている。 しかし、この窓の大きさではどこからも侵入することはできない。つまり、やれることといえば… 「こうするしかねえぜ!!」 バカァァン!!と屋上の壁が破壊され、崩壊した瓦礫とともにトリスタンが落ちてきた。 それをキールが慌ててかわす。さすがの手馴れた動きだ。 同時に剣による一撃がトリスタンを襲う。切っ先をかわしたかに見えたが、 瓦礫とともに転倒していたこと、それと、「射程が思いのほか伸びたこと」が原因で、肩口に手痛い傷を負うこととなった。 「ぐおっ…」 「おう、貴様はあの時の…随分と威勢がいいな、略奪者め」 「キール様!!」 さらに分が悪いことに、騒ぎに駆けつけた兵が数名、護衛についてしまった。 トリスタンは味方から孤立し、敵だらけの中で、大ボスとご対面となった。 「死ねええええ!!」 再びキールによる一撃が見舞われた。その剣は細長いが、切っ先が特殊で、まるで数倍はあるかのような軌道を取る。 「この剣は…!!ぐっ…」 「俺様の”レッドファルコン”はなぁ、”無敵の剣”って言われてんだよオラァ!」 キールが武器を振るうと、周囲にかまいたちが起こる。 「んにゃっぴ…」 どうやらファルコンの巻き添えになったらしく、部下のアーマー兵の首に外れた一撃が入り、衝撃で頚椎の一部が吹き飛ばされた。 「へぇ〜、そりゃ味方も敵も区別ができないんだな。大したことねえな…!」 血を流しながらも煽るトリスタン。キールをあざ笑うと、キールは明らかに取り乱した顔になった。 「雑魚はみんな死ぬ。こいつらも、てめえもな!!ほら、死ね!イリシアは俺のもんだァァ!!」 留めとばかりに一撃がトリスタンを襲う。それをトリスタンは、素早く弾き飛ばした。 「んぴっ… ん… あれ… グゥォ…!!」 トリスタンはファルコンの軌道を見て、それを弾き返してそのままキールを狙った。それも魔力を込めながら。 兜を被っていなかったキールの頭は見事にハート型に割れ、そのまま脳漿と大量の血を吹きながら崩れ落ちていった。 オォォォォ…!!!!! 周囲の兵たちが崩れ落ちる。残党狩りとばかりにトリスタンは周囲にいた敵をあらかた屠ると、 「キールは死んだ!!もう敵はここにはいない!!!」と大声で叫んだ。 そして、そのまま梯子を降りると、凄い勢いで丘を降りていった。 この日、イリシア勢はキールの屋敷とその周辺施設を陥落させ、 次の日にはニルスの領土にも侵攻しニルス一族を捕虜にした。 バルゲル公爵はハーグ城周辺以外を全て取られ孤立、イリシアは「女王」として正当なマクドネルの後継者を主張し、 王国、王子派につぐ第三の勢力として領地と軍事力を持つに至った。 しかし、トリスタンはその後、姿を現さなかった。
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