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創る名無しに見る名無し
【リレー小説】TPパニック 〜 殺し屋達の絆 〜

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【リレー小説】TPパニック 〜 殺し屋達の絆 〜
277 :創る名無しに見る名無し[sage]:2020/04/07(火) 09:49:39.86 ID:nh+CTxFo
「ああ。オリジナル曲もあるよ。聴いてくれる?」
「聴きたい!」
「よっしゃ」
ヤーヤは照れ笑いしながらギターケースを取ると、開いた。
中からサンバーストのアコースティックギターが姿を現す。相当弾きまくっているのか、天板は引っ掻き傷だらけだ。
チューニングを済ませ、適当にコードを鳴らすヤーヤの顔が赤くなる。
「あー……。やっぱなんか恥ずかしいな」
「早く〜」
ムーリンは身体を揺らして催促した。
【リレー小説】TPパニック 〜 殺し屋達の絆 〜
279 :創る名無しに見る名無し[sage]:2020/04/07(火) 11:59:16.92 ID:nh+CTxFo
「ギャー!」
ムーリンは叫んだが、キレるまでは行かない。

「あたしゃ女だ! この肉野郎!」
ヤーヤは張り手のダメージを後ろへ退いて軽減すると、ハッケヨイの鳩尾に拳を打ち込んだ。

「フハハハハ! そんな細っちぃ腕のパンチは効かんでゴワス!」
ハッケヨイは両腕を大きく広げ、いやらしく抱き締めるようにヤーヤに鯖折りを仕掛けようとする。

「正当防衛だよっ!?」
ヤーヤはハッケヨイの股間に思い切り蹴りを打ち込んだ。
【リレー小説】TPパニック 〜 殺し屋達の絆 〜
280 :創る名無しに見る名無し[sage]:2020/04/07(火) 17:02:30.16 ID:nh+CTxFo
「ウハハハハ! おいどんのまわしにそんなものは効かんでゴワ……ゴワァッ!?」
金的蹴りは確かに効かなかったが、バランスを崩したハッケヨイは巨大なゴム毬の如く鉄の階段を転がり落ちて行った。
「アアッ……アイ・ウィル・バック!」
それがハッケヨイの最期の言葉だった。
【リレー小説】TPパニック 〜 殺し屋達の絆 〜
281 :創る名無しに見る名無し[sage]:2020/04/07(火) 17:05:19.67 ID:nh+CTxFo
「な……なんだったの?」ムーリンは怯えて聞いた。「あのひと、突然現れた……」
「この板にはよく出るんだ」ヤーヤはゴキブリを退治した後のように手を払った。
「板って!?」
「気にしない、気にしない」
そう言うとヤーヤは再びギターを手に取った。
【リレー小説】TPパニック 〜 殺し屋達の絆 〜
282 :創る名無しに見る名無し[sage]:2020/04/07(火) 17:25:09.11 ID:nh+CTxFo
また恥ずかしくなってしまわないよう、ヤーヤはすぐに歌い始めた。

曲名は「保持你信念在心中(心に信念を持ち続けて)」だった。

♪通りを歩きながら あなたは何を考えるの
人々は流されて行く 見知らぬ場所へ
どこに辿り着くのだろう 何を残して行くのだろう
混沌の中で日々を過ごしている

疲労困憊
欲求不満
信念不在

もしも
全てが最悪のほうに転んで
間違いが繰り返され
私達を実現するために
何度も何度も血が流されても

太陽はまた昇る
星はまた輝く
希望は止まない
昼も夜も
そう
心に信念を持ち続けていれば

心に信念を持ち続けていれば
【リレー小説】TPパニック 〜 殺し屋達の絆 〜
283 :創る名無しに見る名無し[sage]:2020/04/07(火) 17:29:38.40 ID:nh+CTxFo
「わぁ……」
曲が終わるとムーリンは肩を揺らして拍手をした。
ギターを掻き鳴らしながら全身で歌うヤーヤは違う人に見えた。
音楽にあまり興味のなかったムーリンだったが、ヤーヤの歌には心から感動していた。
「へへ……」ヤーヤは頭を掻きながら白い歯を見せて笑った。「照れるね」
【リレー小説】TPパニック 〜 殺し屋達の絆 〜
284 :創る名無しに見る名無し[sage]:2020/04/07(火) 17:32:57.88 ID:nh+CTxFo
「今のはどういう歌なの?」
ムーリンは正直に質問した。

「この国のことを歌ったものでもあるし」
ヤーヤは自作を解説した。
「何かに挫折した人や、失恋した人を励ます歌でもある」

「カッコいい」
ムーリンは目をキラキラさせた。

「でね、ムーリンを励ます歌でもあるんだよ」
ヤーヤはそう言うと、優しく微笑んだ。
【リレー小説】TPパニック 〜 殺し屋達の絆 〜
285 :創る名無しに見る名無し[sage]:2020/04/07(火) 17:38:47.04 ID:nh+CTxFo
「あたしを……?」
「お姉さん亡くなって、ムーリン悲しいよね?」
「……うん」
「この世で一番慕ってた人だったんでしょ?」
「……ん」
「でもほら、お姉さんが残してくれたものはあるはず。ムーリンはきっとお姉さんから何か大事なものを受け継いでるでしょ?」
「んー……」ムーリンの頭にはこけししか浮かばなかったが、とりあえず頷いた。「うん」
【リレー小説】TPパニック 〜 殺し屋達の絆 〜
286 :創る名無しに見る名無し[sage]:2020/04/07(火) 17:43:01.40 ID:nh+CTxFo
「信じるものがあれば生きて行ける……そうでしょ?」
そう言ってヤーヤはまた優しい笑顔を見せた。
自分よりも強く、明るく、頼もしく微笑むヤーヤを見ていると、自然とムーリンも笑顔になった。
「……うん!」
世界で一番信じられるものを目の前にするように目を輝かせ、ムーリンは強く頷いた。
【リレー小説】TPパニック 〜 殺し屋達の絆 〜
287 :創る名無しに見る名無し[sage]:2020/04/07(火) 18:08:05.49 ID:nh+CTxFo
「くっさいのぅ」
自室でモニターを覗き込みながら、タオ・パイパイは呟いた。
「わっかいのぅ」
モニターの中にはムーリンが今見ているのと同じヤーヤの笑顔があった。
「お友達が出来たんじゃなぁ、ムーリン」
タオ・パイパイは面白くなさそうに言った。
「わしのムーリンに……そんなものは要らんのぅ……」
そして部屋の隅に座っている妻のオリビアを振り返る。
「なぁ、オリビア? お前の娘に友達なんか要らんじゃろ?」
オリビアは涎を垂らしてケタケタと笑った。


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