- 【リレー小説】TPパニック 〜 殺し屋達の絆 〜
168 :創る名無しに見る名無し[sage]:2020/03/25(水) 01:17:20.12 ID:mwhAm8vj - 「しかし流石は姉御ですね」
「よっ、日本極道界の誇るNo.1ヒットマン!」 「噂のタオ一家も姉御にかかればこんなもんかぁ」 「おい、そのガキは何だと聞いている」 「どぅっ……」ムーリンは言った。 「あぁ、なんか怪しいオレンジジュースを俺らに飲ませようとして来たんでさ」 「コイツもタオ一家の殺し屋ですかね」 「どぅっ、じぇっ……」ムーリンはまた言った。 「バーカ。どう見てもただのガキだ」姉御はチンピラ達に言った。「しかし見ちまったものは仕方ないねぇ。……始末しな」 「じぇっ……じぇっ……」ムーリンの頬が痙攣を始めた。
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169 :創る名無しに見る名無し[sage]:2020/03/25(水) 01:27:38.95 ID:mwhAm8vj - 「じぇじぇじぇじぇじぇ!!!!!」
ムーリンがそう叫んだ数瞬後、部屋中にパンという軽やかな破裂音が響き渡った。 姉御は何が起こったのかもわからず、ただ呆然とする。 壁には大量の血が飛び散り、3人のチンピラは原型をとどめない肉塊に変わっていた。 金髪の少女はただ元の場所に立っている。ただしその顔は狂気に歪んだ笑顔の仮面をつけていた。 「お……お前、まさか……!」姉御はピストルを構えると、即発砲した。 しかし銃弾は天井に穴を空けた。彼女は既にバラバラにされており、無造作に切り取られた唇が宙を飛びながら、言った。 「『暴れ牛』……」
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170 :創る名無しに見る名無し[sage]:2020/03/25(水) 01:31:20.28 ID:mwhAm8vj - 「ミッション・コンプリート」
モーリンの左の義眼から現場を覗いていたバーバラは、少し離れた一室でモニターの前から立ち上がると、父に報告した。 「ただしモーリンを失ったわ。これより現場を処理して帰還するわね」
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171 :創る名無しに見る名無し[sage]:2020/03/25(水) 01:38:09.93 ID:mwhAm8vj - バーバラが現場の部屋に入ると、モニターで確認していた通り、ムーリンは気を失って倒れていた。
壁も床も天井もズタズタに切り裂かれ、カマイタチにでも遭ったように人間の肉が散乱していた。 床にひっついたモーリンの死体もいくらか切り裂かれていた。 しかし綺麗に残っていた上半身は、悔しそうに目を見開いて肩を怒らせている。 「しくじったわね、モーリン」バーバラはムーリンを背負いながら、言った。「さようなら、アンタはただの負け犬」
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172 :創る名無しに見る名無し[sage]:2020/03/25(水) 01:42:11.48 ID:mwhAm8vj - 赤いドゥカティのタンデムに気を失ったムーリンを乗せ、バーバラがスロットルを捻ると、背後で爆発が起こった。
「これで跡形もないわ。お掃除完了ね」 そう言うとバーバラはバイクを発進させた。 「ミッション・コンプリート」
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173 :創る名無しに見る名無し[sage]:2020/03/25(水) 15:14:27.18 ID:mwhAm8vj - 「お姉ちゃぁん」
幼い頃のムーリンが砂利の上を駆けている。 「お姉ちゃ……あっ!」 砂利に足を取られて転んだ妹に、モーリンが振り返った。 「もう……。本当にアンタは私がいないと何も出来ない子ね。本当にタオ家の一員?」 姉の白い手がムーリンの手を握り、立たせてくれた。 「タオ家の家業を継ぐ者なら一人で立ちなさい。そうなれるまでは……仕方ないから私が面倒見てあげる」
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174 :創る名無しに見る名無し[sage]:2020/03/25(水) 15:23:24.79 ID:mwhAm8vj - ムーリンは目を開けた。涙で一瞬、何も見えなかった。
長椅子の上に寝かされていた。家族が棘のある笑い声を上げながら、何か話し合っている。 「アイツもおっぱいでも切り取られて死にゃよかったのによ」ガンリーの声が言った。 「クックク……。いいな」ジェイコブの声だ。「ウスノロバーバラも部屋にいれば殺されてくれてたのに……」 「ウスノロじゃないわよ」バーバラは平然とした声で言った。「速すぎたのよ。兄さんならたぶん何が起こったのかすらわからなかった筈よ」 「あ! 起きたよ」四男がムーリンの顔を覗き込みながら言った。
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175 :創る名無しに見る名無し[sage]:2020/03/25(水) 15:28:37.74 ID:mwhAm8vj - 「ムーリン、よくやった」タオ・パイパイが仕事の成功を褒めた。
「お姉ちゃんは……?」 「見ただろう。仕事に失敗し、死んだ」 「やだ……」ムーリンは涙をぽろぽろと零すと、首をめちゃくちゃに振った。「やだやだやだやだ!!」 慌ててジェイコブとバーバラが揃って距離を取る。タオ・パイパイも真っ青な顔になり、宥めようとする格好で飛び退った。 しかしムーリンはキレはしなかった。ただ声を震わせて泣いているだけだ。
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176 :創る名無しに見る名無し[sage]:2020/03/25(水) 15:34:34.70 ID:mwhAm8vj - 「バカだなぁ、お前」ガンリーが笑いながら言った。「俺らだっていつこうなるかわからん。そんな仕事してんだぜ? ハハハ!」
「バカっ! ガンリー!」慌ててバーバラが小声でたしなめる。 「死にたいのかバカ!」ジェイコブも同時にたしなめた。 「誰も……悲しくないの?」ムーリンは責めるように兄弟と父親のほうを見た。「お姉ちゃんが死んでも……悲しくぬゎ……ぬゎ……!!?」
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177 :創る名無しに見る名無し[sage]:2020/03/25(水) 15:41:53.82 ID:mwhAm8vj - ムーリンのうなじに注射針が刺さった。
刺されたことにも気づかぬように、ムーリンの瞼が垂れると、あっという間に眠りに落ちた。 「あっ……、あれっ? 寝たぞ?」ジェイコブが不思議そうにしながら安堵の息を漏らす。 「僕だよ、僕」四男が注射器を持ったまま存在をアピールする。 「なんだ、お前、いたのか。よくやった」 「ムーリン……」父は眠る娘の金髪を撫でながら、言った。「これからはキム姉さんにあやして貰うんだ、いいな?」
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178 :創る名無しに見る名無し[sage]:2020/03/25(水) 15:49:34.69 ID:mwhAm8vj - 「でも、そのキムが、いねぇ……」ガンリーが言った。「マルもいねぇ。2人で遊びに行ってんのか?」
「こんな夜更けにどっか出掛けててもわからねぇからな」ジェイコブが唇を噛んだ。「モーリンの突然の死がなけりゃ、俺も気づかなかった」 「マルにはあたしがお使い頼んだのよ。キムとは一緒じゃないわ」バーバラが嘘を吐く。 「はん。じゃあ、キムは一人で何処行ったんだ? こんな夜更けに? 女一人で?」ジェイコブが殺気を放ちながら突っ込む。 「それは……」バーバラは言った。「あっ! そうだ。あたし、お風呂入んなきゃ……!」
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179 :創る名無しに見る名無し[sage]:2020/03/25(水) 15:53:00.62 ID:mwhAm8vj - ジェイコブは自分の部屋にガンリーを呼ぶと、言った。
「ムカつくぜ」 「探しに出かけて現場でぶち殺そうぜ、兄貴!」 「……しかし、だ。今はそれよりも早急にやるべきことがある」 「ショベンかい? 漏らしそうなのかい、兄貴?」 下品に笑うガンリーを無視すると、ジェイコブは言った。 「生前……つーかつい最近、モーリンから頼まれたことがある」
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180 :創る名無しに見る名無し[sage]:2020/03/25(水) 16:09:39.18 ID:mwhAm8vj - 「へー! あの気持ち悪い金髪の妹に!? 友達?」
「あぁ。その友達とやらを殺したほうがよくはないかと相談された、厄介なことにならないうちに」 「そんなくだらねーこと、兄貴がするわけないだろ。ハハハ!」 「別に騒ぎを起こしてムーリンが射殺されてくれれば助かるからと、断った」 「だろぉ〜? ハハハ、やっぱり兄貴のことは俺が一番……」 「ただ、こうなると……おい、耳貸せ」 「ん?」 笑顔で近づけたガンリーの耳に、ジェイコブは声を潜めて言った。 「ムーリンを殺す必要がある」
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181 :創る名無しに見る名無し[sage]:2020/03/25(水) 16:13:53.82 ID:mwhAm8vj - 「あぁ、わかった」ガンリーは耳を離すと、立ち上がろうとした。「じゃ、今、サッと殺ってくる」
「待て待て待てバカ!」ジェイコブが慌てて引き止める。「そんな簡単なことなら俺がとっくに殺っとるわ!」 「えー? でも簡単だろ? アイツただの娘っ子だぜ?」 「パパにバレねぇように殺んなきゃなんねーだろ!」 「あ、そっかぁ。ハハハ!」
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182 :創る名無しに見る名無し[sage]:2020/03/25(水) 16:19:43.72 ID:mwhAm8vj - 「それに……キレたムーリンは間違いなく一族最強だ。一瞬もキレる隙を与えちゃいけねぇ」
「何言ってんだ、兄貴。俺のほうが強いよ、アレよりは。最強は兄貴だけどな!」 「お前……。密閉されてもない教室で、クラスの生徒43人、皆殺しに出来るか?」 「えっ?」 「一人も逃さずだ。出来るか?」 「うーん」ガンリーは指折り数えながら考えると、答えた。「30人は逃しちまうな。ハハハっ!」
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183 :創る名無しに見る名無し[sage]:2020/03/25(水) 16:29:39.89 ID:mwhAm8vj - 「普段は何も出来ねぇ娘っ子だが、キレたムーリンはそれを実際に、やった。アイツがキレたら最強なんだ」
「ハハハ! そっかぁ」 「今まではモーリンが、妹がキレないよういつも側についていたが、それがなくなったからには家の中に原子爆弾が放置してあるようなもんだ」 「ハハハ! 安心して眠れないね、兄貴?」 「お前もだ、バカ」 「なるほどわかった。安心して眠るためにムーリンを殺すんだね?」 ちゃんと声を潜めて会話できたガンリーをジェイコブは褒めた。 「そういうことだ。賢いな、ガンリー」 褒められたガンリーは目に見えて有頂天になる。
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184 :創る名無しに見る名無し[sage]:2020/03/25(水) 16:46:38.02 ID:mwhAm8vj - 「そこで、だ。俺達が殺ったとバレねぇようにムーリンを始末する方法はないものかと賢いお前に相談したかったのだよ」
「エヘヘ、エヘヘへ。賢い俺にかい? いいよ」 「毒殺すれば当然俺が疑われ、判明すればパパの罰を受ける。お前も同様だ。俺達の作る死体には個性があっていけねぇ」 「うーん。そうだなー」 「一刺しで殺してマルコムのせいにしようかとも考えたが、マルにムーリンを殺す動機がない。何より一刺しで殺れなければ……こちらがバラバラにされる」 「その友達を使おうよ」 「は?」 「ムーリンに友達が出来たって言ってたろ?」ガンリーは楽しそうに笑った。「その友達をムーリンに殺させるんだ」 「は?」ジェイコブはバカを見る目でガンリーを見た。「いや……。は?」
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185 :創る名無しに見る名無し[sage]:2020/03/25(水) 17:03:40.95 ID:mwhAm8vj - 「アイツ、今回キレて暴れ回ったあと、意識失ってたじゃん」
「あ? ああ……」 「あの状態なら、簡単に喉の骨でも折って殺せるじゃん」 「喉の骨折ったらお前の仕業だってバレ……待てよ?」ジェイコブは暫く考えると、言った。「ガンリー、いいぞ。やはり頭のいい自分とは別視点からの意見も聞いてみるもんだ」 「うへへ」褒められたと勘違いしてガンリーは嬉しそうに頭を掻く。「でもどうやったらキレるかな?」
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186 :創る名無しに見る名無し[sage]:2020/03/25(水) 17:05:53.89 ID:mwhAm8vj - 「何でもいいさ。友達に裏切られたと思い込ませればいい」
ジェイコブはニヤリと笑う。 「そいつを信頼していれば信頼しているほど、裏切られた時のショックはでかいもんだ」 「なるほど。じゃあ……そうだな」 ガンリーは兄の真似をして知的に笑った。 「タピオカミルクティーにハナクソでも入れる?」
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