- ファラオ島(はらおじま)
48 :創る名無しに見る名無し[sage]:2020/01/11(土) 08:31:22.51 ID:RHtJi0r4 - キモイケくん「どんな音なのか具体的に表現してくれ。たとえてくれ。ダンプが事故ったような音なのか、ソファーに腰を下ろしたような音なのか、大雪が一夜にして降り積もった音なのか、女の子を殴ったような音なのか、」
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- ふみえさんはいつも突然4
872 :創る名無しに見る名無し[sage]:2020/01/11(土) 08:32:26.29 ID:RHtJi0r4 - 杏子「どこまで行ってもヴァーチャル世界はヴァーチャル世界なのよ」
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- 【チャイナ・パニック2】海棠的故事
539 :創る名無しに見る名無し[sage]:2020/01/11(土) 08:39:11.29 ID:RHtJi0r4 - 「こんにちは」
雪の国の大聖堂の大扉を開けて、メイファンは言った。 「だれかいませんか」 するとすぐに赤黒い『気』が糸のように上からゆっくりと降りて来、つららが落ちるようにメイファンめがけて襲いかかって来た。 避けるまでもなく盾にした右手で払うと、メイファンは言った。 「だれかいませんかぁ」 「おりません」と奥のほうから女の声がした。 「じゃ、勝手に奥へ入りますよ」 そう言うとメイファンは短い足をちょこちょこと動かして奥へと進んだ。
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- 【チャイナ・パニック2】海棠的故事
540 :創る名無しに見る名無し[sage]:2020/01/11(土) 08:48:19.89 ID:RHtJi0r4 - 少し進むと足元に赤黒い『気』の糸が横に張られ、足を引っかけようと待ち構えていた。
「うーん」メイファンは少し考えてから、それに足を引っかけて転んでみた。「わぁ、罠だぁ」 赤黒い『気』が無数の手となり、チェンナの魂を掴むのがわかった。 ぐいぐいと引っ張り、身体から引き出してネズミの形に変えようとする。 「あっ、だめですよー」 そう言いながらメイファンは身に纏った真っ黒な『気』を無数の足に変え、ドカドカと相手の手を踏み潰す。 「失礼な子だね!」 たまらず激怒の表情で秀珀が奥から姿を現した。 「失礼を通り越して無礼!」
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- 【チャイナ・パニック2】海棠的故事
541 :創る名無しに見る名無し[sage]:2020/01/11(土) 08:56:10.62 ID:RHtJi0r4 - 「無礼はどっちだ、このドブス」
メイファンの言葉に秀珀の美しい顔が歪んだ。 「ドブスじゃないわよ、この悪たれが」 「私はお客さんだ。さっさと歓迎しろ、このドブスババァ」 「ドブスにとどまらずババァ呼ばわりかい。覚悟おし。アンタは生きて帰さないよ」 「ズーローから紹介されて来たメイファンとチェンナだ。大人一人と子供一人でチェックイン頼む」 「聞いてないよ。大体ズーローなんてただの酒場での飲み友達。アンタの面倒見る義理などないわ」 「やるか?」 「ネズミにしてくれる、この人間の悪ガキが」
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542 :創る名無しに見る名無し[sage]:2020/01/11(土) 09:07:44.42 ID:RHtJi0r4 - 秀珀の顔が強風に煽られるようにざわめき、目が赤くつり上がった。
「わぁ、本当にドブス」 無邪気に笑うメイファンの前から秀珀は飛び上がり、大聖堂の高い天井で止まる。 「ネズミどもに食い殺されるがいい」 四方八方から食欲を剥き出しにしたネズミが無数に出現し、メイファンめがけて押し寄せて来た。 「あぁ。なんか殺すのかわいそう」 そう言うなりメイファンは飛び上がり、頭に『気』で作ったプロペラをくっつけて空を飛んだ。 「なんだい、お前は?」秀珀は驚いて大きな口を開けた。「人間が飛べるわけが……」 チェンナの口から波動砲のように黒い光がカッと発射される。 黒い光は避けようのないスピードで秀珀の開けた大きな口へ飛び込んだ。
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543 :創る名無しに見る名無し[sage]:2020/01/11(土) 09:14:16.63 ID:RHtJi0r4 - 残しておいた微量の『気』でチェンナはまだ飛んでいる。
メイファンは秀珀の身体を乗っ取ると、その口を動かして言った。 「ここに赤いおかっぱの娘が来てるだろう。出せ」 「きっ……来てないよ!」 「え〜? ここじゃねーのか。まぁ、いいや。私達も追われてる。ここに泊まらせろ」 とりあえず秀珀の神通力を奪って床のネズミ達を引っ込ませると、メイファンはチェンナを着地させた。 「とりあえず、酒、ある?」
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544 :創る名無しに見る名無し[sage]:2020/01/11(土) 09:23:27.30 ID:RHtJi0r4 - ルーシェンの背に乗りチョウは雪の国の大聖堂にやって来た。
大扉を開けるとチェンナの身体に戻ったメイファンと秀珀が酒を酌み交わし談笑していた。 「あら、チョウくん。また来たの」秀珀が色っぽい顔色で言った。 「よう、少年。ユージンも一緒か」メイファンが明るい笑顔で言った。 「あ……てめーーっ!」チョウが大声を上げる。 「メイファン!」ユージンがルーシェンの口で言った。「また人殺しちゃったの?」
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545 :創る名無しに見る名無し[sage]:2020/01/11(土) 09:34:13.80 ID:RHtJi0r4 - 「まぁ、ガキどももここ来て座れ」メイファンが手招きをする。「酒、飲むか?」
「あら、ダメよぉ」秀珀が笑いながら手をひらひらと動かす。「それじゃ悪い子になっちゃう」 チョウはメイファンに飛びかかり、捕まえるような動作をしたが、途中で足がすくんだ。 首をはねられかけた記憶が強烈に身に染みついていた。 「椿は……ここに来てないか?」飛びかかる代わりにチョウはメイファンに聞いた。 「うん。私もここかと思ったんだが、来てないらしい」 「メイファン」ユージンが言った。「早くあの子捕まえないと、この世界が滅茶苦茶になっちゃうんだ!」 「あら。捕まえられちゃ困るわ」秀珀が言った。「あのお魚さんに、人間界への扉を開けて貰うんだから」
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546 :創る名無しに見る名無し[sage]:2020/01/11(土) 09:43:12.19 ID:RHtJi0r4 - 「そうなんだ、ユージン」メイファンは諭すように言った。「椿の邪魔しちゃダメだぞ」
「椿ちゃんは人間界への扉を開けてくれるのよ」秀珀はうっとりするように言った。「それを通ってメイファンとユージンくんは人間界に帰り、私も……」 秀珀はビクビクンと2回痙攣すると、白目を剥いた。あまりに甘美な想像に逝ってしまったようだった。 「お前」メイファンが秀珀に聞く。「人間界行って何すんの?」 「秘密」 「教えろ」 「しょうがないわね。親友のメイファンだから教えてあげるわ」 秀珀は頬を染めてメイファンに耳打ちした。 「なんだそんなことか」メイファンは呆れたように言った。「くだらねー」
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547 :創る名無しに見る名無し[sage]:2020/01/11(土) 09:54:54.45 ID:RHtJi0r4 - 「とりあえず私と秀珀は、二人とも人間界に行きたい。利害関係が一致して親友になった」
「薄っぺらい親友だね」ユージンは呆れて言った。 「まぁ、人間界への扉が開けば、お前も帰れる。椿の邪魔しちゃダメだぞ」 「ぼくは帰らないよ」 「いや、連れて帰る。ララに怒られるの嫌だからな」 「帰らない。ここに残る」 「お前な……」 「おい!」チョウが口を挟んだ。「勝手なこと言ってんなよ」 「勝手なこと?」メイファンが首を傾げる。 「お前にはどうでもいいかもしんねーが、この世界が滅茶苦茶になるんだぞ?」 「椿はランを人間界に還そうとしてるんだ」メイファンは同情を求めるように言った。「ランが人間界に戻れば、この世界も平和になる。それまでの辛抱だ」
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548 :創る名無しに見る名無し[sage]:2020/01/11(土) 10:04:45.75 ID:RHtJi0r4 - 「ふざけんな!」チョウは怒鳴った。「もう既に水の町が滅茶苦茶だ」
「だから皆に迷惑がかからないよう、急いでランを育ててるんだよ、椿は」メイファンは姪っ子の行いに感心するように言った。 「ちょっとでも駄目だろ! そんなの……」 「考えてもみろ」メイファンは諭す口調でチョウに言った。「椿はランを帰したい、秀珀は山崎賢人に会いに人間界へ行きたい」 「いっ……!」秀珀が声を上げ、顔を赤らめた。「言っちゃ駄目だよぅ〜!」 「私とユージンも人間界に帰りたい」 「ぼくは……」ユージンは突っ込もうとしたが面倒臭くなってやめた。 「これだけの人数が助かるんだぞ? 町の壊滅など安いものだ」 「バカか!?」チョウは呆れて吐き捨てた。
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549 :創る名無しに見る名無し[sage]:2020/01/11(土) 10:19:24.35 ID:RHtJi0r4 - しかしチョウはそれ以上何も言えなかった。
「あのお魚さん」秀珀が言った。「今、急速に大きくなってるわよ」 「わかるのか?」メイファンが酒を呷りながら聞いた。 「ネズミちゃんが知らせてくれるの。ぐんぐん目に見えて膨らんでるって」 「おい!?」チョウが口を挟む。「それ、椿も一緒か!?」 「いいえ。椿ちゃんはまだお魚さんを探してる。どこにいるかは知らないけど」 「でもなんでそんな急速に?」 メイファンの問いに秀珀は答えた。 「たぶんだけど、椿ちゃんが心配してるからね。離ればなれになって、より強い想いをお魚さんに向けてるから……」 「あぁ」ユージンが言った。「ランは椿の愛を栄養として育つんだもんね」 「しかも成長を促す冷たい水の中に閉じ込めてあるから、本当、素晴らしい勢いで大きくなってくれてるわ」 「は?」チョウが突っ込んだ。「もしかしてアンタ、ランをさらって監禁してる?」
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550 :創る名無しに見る名無し[sage]:2020/01/11(土) 13:55:21.05 ID:RHtJi0r4 - 「あら、だって……」秀珀は善いことをしている人の顔で言った。「出来得る限り早く育てなければいけないでしょ?」
「てめぇ……!」チョウは声を荒らげた。「椿が今、どんな想いでランを探してるか、わかってんのか!」 「だぁ〜かぁらぁ〜」秀珀は尚も善人面で言った。「その想いがお魚さんを育てているのよ、と言ってるでしょ」 「危険な目に遭ってるかもしれねぇんだぞ! 椿を苦しくさせんじゃねぇ!」 「臭っ」メイファンが言った。「臭ぇ、臭ぇ。お前、物凄く臭ぇぞ」
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551 :創る名無しに見る名無し[sage]:2020/01/11(土) 14:03:43.97 ID:RHtJi0r4 - 「お前、名前なんだっけ」
「チョウだよ」 「チョウか。チョウ、お前、物凄く臭ぇぞ」 「なんだよ、それ」 さんざん『きくらげ臭い』と言われてる復讐かな、とユージンはこの時は思った。 「とりあえず」メイファンは鼻をつまみながらチョウに言った。「お前、ちょっとこっち来い」 「は?」 「あっちの部屋、一緒に行こう。付き合え」 「な、なんだよ?」 「話があんだよ、お前だけに」 「俺はねーよ。お前なんかと二人きりになってたまるか」 「椿からお前に伝えてくれって言われてることがあんだよ。それ伝えてやっから、いいから来い」 「椿から?」 チョウはユージンのほうを振り向きもせずにメイファンについて行った。 ユージンはなんだか嫌な予感がして、声をかけた。 「ぼくも行く!」 「お前は来んな」メイファンが目だけで振り向いた。「チョウだけに伝えてくれって言われてんだよ」
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552 :創る名無しに見る名無し[sage]:2020/01/11(土) 14:14:25.38 ID:RHtJi0r4 - 狭い部屋に入ると、すぐまた向こうに扉があった。
次の部屋に入るとまたすぐに扉がある。 メイファンはばたんばたんと扉を開け閉めしながら進む。チョウは黙って後をついて行った。 七回ほど扉を潜るとようやく行き止まりになった。メイファンはついまた扉を開けようとし、壁に手をついて「あっ」と小さく声を出した。
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553 :創る名無しに見る名無し[sage]:2020/01/11(土) 14:25:47.45 ID:RHtJi0r4 - 「椿が……俺に何を言ってた?」
チョウが聞くと、メイファンはニコニコしながら振り返り、言った。 「何も言付かってねーよ」 「は!?」 「私がお前に用があったんだ。騙してごめんなさい」メイファンはバカにするように頭をぺこりと下げた。 「なんだよ」チョウは逃げようとした。「じゃあ、俺、戻るわ」 しかし扉は開かなかった。よく見ると黒い『気』の楔でびっしりと打ちつけられてある。 「お前のこと、殺すね」メイファンはウキウキしながら言った。 「はぁ!? なんだよ、いきなり!? 意味わかんねぇ!」 「お前、人間界の扉開けるの、邪魔しそうだし」 「そりゃ……!」 「それにな、お前殺したらさすがにズーローも殺る気を出してくれるし」 「そりゃ……! ズーロー黙ってるわけねーよ」 「いいね。じゃ、殺そう」メイファンは舌なめずりをした。 「おいおい! ユゥだって黙っちゃいねーぞ!?」 「何? ユージンが本気になってくれるのか?」メイファンは夢見るように目を輝かせた。
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554 :創る名無しに見る名無し[sage]:2020/01/11(土) 14:34:26.11 ID:RHtJi0r4 - 「お前を殺せばいいことづくめだ」メイファンはそう言いながら、手を青竜刀に変えた。
「ころすの?」チェンナが声を出した。「よわいものいじめ、かこわるいよ」 「そんなんじゃない、チェンナ」メイファンは教えた。「ただこのお兄ちゃんの首を持ってズーローに会いに行くだけだ」 「キチガイか、てめぇ!」チョウは橙色の『気』を全開に纏い、指の先から火を放った。 メイファンは蚊を叩くように火を消す。そしてすまなさそうに言った。 「わかってくれ」 「わ、わかるかよ!」 「暇なんだ」 そう言うより早く、メイファンの青竜刀がチョウの首を正確に狙って繰り出された。
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