- ロスト・スペラー 21
173 :創る名無しに見る名無し[sage]:2020/01/11(土) 18:46:15.24 ID:L1SWExwq - 家の中には若い男女が居た。
2人はルヴァートの弟子、メルベーとルーウィーた。 ティンバー一家を見て、2人は自己紹介をする。 「あ、初めまして。 ティンバー家の皆さんですね? 私はメルベー、そして、こちらが――」 「ルーウィーです」 それに対してティンバー一家も名乗った。 「私はノーブル・ティンバーです。 そして、妻のマージョリーと娘のヘルザ」 メルベーとルーウィーの視線は、ヘルザに集まる。 最初にメルベーが言った。 「この子が例の隔世遺伝の子ですね」 ヘルザは見知らぬ大人が2人も居る事に緊張して身構えている。 メルベーとルーウィーは互いの顔を見合って、小さく笑みを漏らした。 「私達はルヴァートさんの弟子です」 そうメルベーが言うと、ルーウィーも続く。 「元共通魔法使い……。 否、今でも共通魔法使いを止めた積もりは無いけれど。 師匠には劣るけど、緑の魔法が使える。 所謂『多重魔法理論内包者<マルチマジシスト>』だな」
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174 :創る名無しに見る名無し[sage]:2020/01/11(土) 18:46:56.98 ID:L1SWExwq - 聞き慣れない単語に、ヘルザは戸惑った。
「マルチ……?」 「Multi-magic-ist……即ち、『多重』、『魔法主義者』。 Multi-magic-theor-ist(マルチマジックセオリスト)……とも言う。 本来的に共通魔法使いは多重魔法主義者だ。 何故なら、多くの旧い魔法の理論を取り込んでいるから」 ルーウィーの説明にメルベーは呆れる。 「行き成り難しい事を言っても伝わらないでしょう?」 「はは、その内、解る様になるよ。 今は解らなくても、知識として知っているだけで良い。 それが後になって、こう言う事だったんだと解る」 言い合う2人の間に、ルヴァートが割って入った。 「知識の先行は好ましいとは言えないけれどね。 納得、体感、知識は一体の物。 その段階に応じて、少しずつ歩んで行かなくては」 その後、彼は2人の弟子を下がらせる。 「さて、今から私は、お客様と話をしなければならない。 君達2人は少し席を外していてくれ」 メルベーとルーウィーは素直に従い、退席した。 ルヴァートはティンバー一家を台所のテーブルに案内する。 ティンバー一家は両親の間に娘を挟む形で着席し、その対面にルヴァートは座った。
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175 :創る名無しに見る名無し[sage]:2020/01/11(土) 18:47:45.30 ID:L1SWExwq - ルヴァートはティンバー一家に話を促す。
「それでは、お話を伺いましょう。 何か、お力になれれば良いのですが……」 ノーブルとマージョリーは何から聞けば良い者か、お互いに見合う。 最初に口を開いたのは、ノーブル。 「外道魔法使い……と呼ばれる物が、共通魔法社会で生きて行く為に……。 何か助言を頂けないかと」 「具体的に、どんな事で、お困りですか?」 「それは……」 ノーブルは一度ヘルザを見て、こう言う。 「共通魔法を使えない事で……。 いえ、共通魔法に違和感と言うか、嫌悪感があるらしいのですが……」 「ああ、解ります。 御両親は外道魔法を目にした事はありますか?」 ルヴァートの問い掛けに、ティンバー夫妻は再び見合って、首を横に振った。 「いえ、瞭りと目にした事は……ありません」 その答を聞いたルヴァートは、何度も頷いた。 「それでは中々娘さんの気持ちは理解出来ないでしょう。 『異なる魔力の流れ』と言う物が、如何なる物なのか、先ずは解って頂こうと思います」
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