- 【チャイナ・パニック2】海棠的故事
494 :創る名無しに見る名無し[sage]:2019/12/31(火) 13:27:22.52 ID:wrrct0BI - 「待った?」
火炎樹のたもとでメイファンに声を掛けられ、ズーローはにっこりと微笑み返した。 「ううん、今起きたとこ」
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495 :創る名無しに見る名無し[sage]:2019/12/31(火) 13:37:38.30 ID:wrrct0BI - 「ところでそんな大きな猫いないよ、メイファン。アハハハ」
「うん、私もそう思ったー。ウフフフ」 メイファンはなるべくこの世界の住人に見つからないよう、大きな猫に姿を変えていた。 「大きすぎるってぇー。まるでイノシシー」 「やだーズーローったらぁ。キャハハハ」 「しかも近く寄るととんでもなくきくらげ臭いしー」 「それレディに言う言葉じゃないー。モホホホ」 「じゃ、今日も……」 「うん、ズーロー。しよ?」 「しなーい」 「おい」メイファンの口調が変わる。「この私が稽古つけてやるって言ってんだ。大人しくヤらせろ」 「お?」ズーローが何かに気づき、声を上げた。 「ム?」メイファンも同時に気づき、そちらを向く。 下半身を鹿に変えたルーシェンが、森の中を蹄の音とともにやって来た。
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496 :創る名無しに見る名無し[sage]:2019/12/31(火) 13:53:34.52 ID:wrrct0BI - 【主な登場人物まとめ】
・ユージン(李 玉金)……17歳の人間の少年。生まれつき身体を持たない、金色に光る『気』だけの存在。 口さえ開いていれば誰の身体にでも自由に入れる。入る身体がなければすぐに死んでしまう。 金色の『気』の使い手だが、特に何も出来ない。明るい性格だがダメ人間。それでいて自分は超天才だと信じている。 妹とともに渦潮に呑まれ、海底世界へやって来た。記憶のほとんどを失くしてしまっている。 現在は植物鹿人間となったルーシェンの身体に入っている。チョウのことが大好き。 ・チョウ(湫)……ユージンが海底世界で出会った同い年の少年。背が低く、年齢よりも幼く見える。髪の色は白。 秋風を司る仙人のたまご。橙色の『気』を使う。火の能力も使える。 言葉遣いが粗野で、放縦なように見えるが、根は意外なほどに真面目。 椿に恋しているが、気持ちを伝えようとは決してしない。特別に仲良くはなったものの、年下の椿から弟扱いされてしまっている。 ユージンを人間だと知りつつ信頼し、海底世界に住むことを許している。 ・椿(チュン)……16歳の赤いおかっぱの少女。元ユージンの妹で人間。今は海底世界の住人。 クスノキの老人に助けられ、名門『樹の一族』の養女となる。薄紅色の『気』が使える。人間の記憶はすべて消されている。 真面目で頑張り屋。ユージン曰く顔はそこそこ可愛いが、小うるさくて地味な女の子。 自分を助けたがために死んでしまった人間の青年を生き返らせようと、霊婆の元から青年の魂を貰って来た。 赤い魚の姿をした魂にランと名前をつけ、溺愛し、いつも連れて歩いている。 人間の魂を育てることは自然の掟を犯す犯罪であり、指名手配されている。 ・ラン(ケ 狼牙)……19歳。ユージンと椿の義兄。赤いイルカに姿を変えた椿を助け、渦潮に呑まれて絶命した。 今は赤い魚の姿をした魂となって、椿に飼われている。 何も食べないが、誰かの愛を受ければ受けるほど急成長する。 ・メイファン(ラン・メイファン)……54歳だが子供のように好奇心旺盛。ユージン達の叔母にあたるが、頑なにおばさんと呼ぶのを禁止している。 元々は身体があったが、自分で自分を殺してしまい、ユージンと同じく身体を持たない『気』だけの存在になってしまった。 元中国全土に名を轟かせた凄腕の殺し屋。ユージンのことを『六百万年に一人の天才』と呼び、調教したがっている。 黒い『気』を操り、自分の身体も含め何でも武器に作り替えてしまえる能力を持つ。ランの母親を15年前に殺した。 現在、姉のララに命じられ、ボディーガードとして四歳児チェンナの身体の中に入っている。 渦潮に呑まれた3人の甥っ子を探して、というより赤い巨大魚を追って海底へ潜った。 ・チェンナ(劉 千【口那】)……ユージンの姉であるメイの娘。ララの大事な大事な孫娘。四歳。意外に強い。 現在、メイファンが身体の中に入っている。 ・ルーシェン(鹿神)……チョウと椿共通の友達で年齢不詳の若者。10回に9回しか本当のことを言わない嘘つき。チョウ曰く根はいい奴。 木の上から落ちて頭を打ち、意識を失ってから植物鹿人間になってしまった。 身体を動かし、食事をしなければ生命維持が出来ないため、ユージンが中に入って世話をしている。 ・ズーロー(祝熱)……チョウの義兄。寝るために生きている。火を司る修行中だが、やる気はない。 秀珀の外見に惚れているが、中身はメイファンのほうが好みらしく、秀珀にメイファンが入ってくれることを望んでいる。 ・クスノキの老人……森をさまよっていた椿が出会った白い長い髭の老人。医術と薬草を司る。 海底世界に迷い込んだ人間は殺され、赤い魚に転生させられることから椿をかばい、海底世界の住人に仕立てた。 見かけによらずアイドルオタク。 寿命をまっとうし、椿に看取られながら逝去した。 ・祝融(ズーロン)……火を司る仙人であり、戦士。チョウとズーローの師匠。髪の毛が炎で出来ている。 ・赤松子(チーソンズ)……雨を司る仙人。見た目はなよなよしていて弱そうだが、祝融と互角の力を持つと言われている。 ・霊婆(リンポー)……死者の魂を司る仙人。一つ目を描いた布で顔を隠している。名前は女性だが性別不明の老人。 『気』の海に浮かぶ島に猫とともに一人で住んでいる。 ・秀珀(ショウポー)……雪の国に住む美女。悪い子の魂を司る。 秘密の目的があって人間界に行きたがっている。
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497 :創る名無しに見る名無し[sage]:2019/12/31(火) 13:59:27.27 ID:wrrct0BI - 「おい」
「おい」 「ユージンじゃないか」メイファンとズーローが口を揃えた。 「あっ、メイファン。ズーロー」 呼ばれて初めて二人に気づき、ユージンはカッポカッポと音を立てやって来た。
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498 :創る名無しに見る名無し[sage]:2019/12/31(火) 14:04:34.26 ID:wrrct0BI - 「椿、見なかった?」
「いや、見てないぜ」 「あ、メイファンは椿のこと知ってたかな」 「は?」メイファンは意味がわからなかった。「知らないわけねーだろ」 「そうなの?」ユージンは不思議そうな顔をすると、また歩き出そうとした。「椿を探してるんだ。じゃ」 「おい、待て」メイファンが呼び止めた。「私のことは思い出したけど妹のことは憶えてないのかよ?」 ユージンの足が止まる。 振り返ると、言った。 「妹?」 「あぁ」 「何言ってんの?」 「はぁ?」 「あんな嫌な子がぼくの妹なわけないじゃない」
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