- 【チャイナ・パニック2】海棠的故事
490 :創る名無しに見る名無し[sage]:2019/12/31(火) 10:04:33.48 ID:+Q5Zjw3X - ルーシェンが背負って来たチョウの様子を見ておばあちゃんは慌てふためいた。
「チョウ! あぁ……クスノキのお爺さんを……早く」 「おじいちゃんは死んじゃったでしょ」ユージンはそう言うと、チョウをベッドに寝かせた。 真っ赤な顔できつく目を閉じ、苦しそうに息を荒くしている。 「お爺さんに貰った薬、なかったかしら」おばあちゃんがバタバタと向こうの部屋で探し物を始めた。 「わたし」椿が言った。「おじいちゃんから術をひとつ授かってるわ」 「治療できるの?」ユージンがすがるように聞く。
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491 :創る名無しに見る名無し[sage]:2019/12/31(火) 10:14:26.16 ID:+Q5Zjw3X - 「おじいちゃんほどじゃないけど……。やってみる」
「お願い!」 「うん」 こくんと頷くと、椿はお辞儀をするように身を屈め、躊躇うことなくチョウの唇に唇を重ねた。 「あっ?」ルーシェンのアホ面でユージンはとぼけた声を出した。「あぁっ? あっ!?」 椿はぴったりと隙間なく閉じた口を通じて何かをチョウの中へ入れているようだった。 椿の接吻を受けながら、チョウは苦しそうに目をきつく閉じ、少しのけ反った。 ゆっくりと唇を離すと、椿は額についたチョウの汗を拭いながら言った。 「自己修復の実をチョウの奥に埋め込んだわ。あとはチョウ次第」 「あ……治るの?」 「だからチョウ次第」そう言うと椿は立ち上がった。「わたし、行くね」
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492 :創る名無しに見る名無し[sage]:2019/12/31(火) 10:28:17.11 ID:+Q5Zjw3X - 「なかったわ!」と言いながらおばあちゃんが駆け込んで来た。
「椿が処置してくれた」ユージンは落ち着かせるように言った。「あとはチョウ次第だって」 「ルーシェン、あんた、ずっと眠ってたかと思ったら急に起き出すんだね」 「とりあえずチョウを暖めないと」 そう言うとユージンはチョウの着物をすべて脱がし始める。 「脱がしたら余計寒いじゃないか」 「濡れてるんだよ。新しいの持って来て」 おばあちゃんがバタバタと向こうの部屋へ行っている間に、ユージンはチョウを下着まですべて脱がせた。 そして暖めるために抱き締めると、顔を寄せる。 「知ってた? ルーシェンって、実は女の子なんだ」ユージンはそう言うと、唇を近づけた。「だから……こうするの、おかしくないよ」 熱いその唇に強く接吻をする。頭が痺れた。 「持って来たよ!」 「……早いね」 ユージンは不満そうにおばあちゃんから新しい着物を受け取った。
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493 :創る名無しに見る名無し[sage]:2019/12/31(火) 10:36:30.95 ID:+Q5Zjw3X - 「ところで椿ちゃんは?」おばあちゃんが聞く。
「帰ったよ」 「帰るわけないだろ。あの子、お尋ね者だよ」 「そうなの?」 「皆があの子を探してる。あの子が連れてる人間の魂を殺せって」 「通報する?」 「まぁ……椿ちゃんはいい子だからねぇ。何か事情があるんだろうけど」 「通報しようよ」 「え?」 「皆で捕まえて、ひどい目に逢わせてやろう」 「ルーシェン……あんた、ちょっと、きくらげ臭いけど……」 「気のせいだよ」 ユージンはチョウに着物を着せ終わると、横に寝転び、またチョウを抱き締めた。 「ぼくが暖める。おばあちゃんはもう寝ていいよ」
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