- ロスト・スペラー 20
739 :創る名無しに見る名無し[sage]:2019/09/06(金) 19:25:04.08 ID:X6On0u4a - ニャンダコーレは訝って、黒騎士に問い掛けた。
「悪魔の作り出した道具が、コレ、騎士の真似事か?」 「……何とでも言え」 「コレ、貴方には自我がある様に見える。 盲目的な忠誠心は、コレ、悪魔には珍しく無いのだが……。 貴方の態度は、コレ、それとは違うな?」 「私はルヴィエラ様の忠実な下僕。 それ以上でも、それ以下でも無い」 黒騎士は大剣を構えて、緩りとした歩みでビシャラバンガに迫る。 ニャンダコーレはビシャラバンガに警告した。 「コレ、幾ら相手をしても限が無いぞ、コレ」 「何か妙案でもあるのか?」 ビシャラバンガの問い掛けに、ニャンダコーレは少し考える。 「ルヴィエラの配下は明かりに弱いと言うが、コレ……」 「済まんな。 己には己を強くする事しか出来ぬ」 「ニャ、それは仕方が無い事。 斯く言う私も、原始的な魔法を幾つか使えるだけで、コレ、明かりを灯す等と言う芸当は、 コレ、出来ないのだから」 ビシャラバンガとニャンダコーレは冷や汗を掻いた。 手詰まり感が強い。
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740 :創る名無しに見る名無し[sage]:2019/09/06(金) 19:26:20.29 ID:X6On0u4a - それでもビシャラバンガには未だ試していない事がある。
最後の巨人魔法、『翼ある者<プテラトマ>』だ。 魔力の翼で相手の魔力を吸収すると同時に、自分の魔力として放出する魔法。 「溜める」と「放つ」が基本の巨人魔法の究極。 それによって黒騎士の魔力を枯渇させられるのでは無いかと、ビシャラバンガは考えていた。 「……ニャンダコーレ、奥の手を使う」 「コレ、奥の手とは?」 「翼だ、翼を使う。 翼が見えたら、俺から離れろ。 2体同時に仕留める」 ビシャラバンガは背後を一瞥した。 復活した漆黒の獣が、接近している。 「……ビシャラバンガ、コレ、無理はするな」 「多少は無理をしないと勝てない相手だろう。 肉を切らせて骨を断つ。 とにかく、他に妙案が無いなら大人しく見ていろ」 ビシャラバンガは全身の力を抜いて、棒立ちになった。 これにニャンダコーレは慌てる。 「コ、コレ、どう言う積もりなのだ!? ビシャラバンガ!」 「喧しいぞ、狼狽えるな。 心静かに待つのだ」 ビシャラバンガは魔力を纏ってもいない。
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741 :創る名無しに見る名無し[sage]:2019/09/06(金) 19:27:02.07 ID:X6On0u4a - 黒騎士と漆黒の獣は、無防備なビシャラバンガを見て、一気に距離を詰め、襲い掛かった。
「ギャニャーーーーッ!! ビシャラバンガーー!!」 ニャンダコーレはビシャラバンガの背に爪を立てたが、彼は微動だにしない。 その儘、黒騎士の剣を左の肩口に受け、右の首には漆黒の獣の牙が立つ。 「コレ、離れろっ!!」 ニャンダコーレはビシャラバンガの首に食い付いた漆黒の獣の目を、自らの鋭い爪で引っ掻いたが、 少しも怯ませられなかった。 「くっ、やはり打撃は通じないのか、コレ……!」 「狼狽えるなと言っているだろう、ニャンダコーレ」 ビシャラバンガの声は変わらず落ち着いている。 見れば、黒騎士の剣は振り抜かれる事無く、肩口で止まっている。 漆黒の獣の牙も同じだ。 深く突き立っているが、食い破る様な事は無い。 出血も心做しか少ない。 ビシャラバンガは大きな両の手の平で、確りと黒騎士と漆黒の獣の頭を掴んだ。 「行くぞ!! 見ろ、これが己の技だ!」 ビシャラバンガの背中から、魔力の翼が生える。 「コ、コレが翼!!」 ニャンダコーレは目を見張り、直ぐに彼の背中から飛び降りて、数身の距離を取った。
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