- ロスト・スペラー 20
603 :創る名無しに見る名無し[sage]:2019/07/16(火) 18:47:11.41 ID:OX9zjsbc - ヘリオクロスは俯き加減で言う。
「僕ハ……屹度、臆病ナンダナト思イマス。 コウナッテシマウ前ノ僕モ」 「ああ、だから無理すんなよ」 「ソレデモ僕ハ、皆サント一緒ニ居マス。 コウシテ会エタノモ何カノ縁デス。 皆一緒デ居マショウ。 反逆同盟ヲ打チ倒スマデハ……」 「その後は、どうするんだ?」 ヴェロヴェロの問に、ヘリオクロスは自信の無さそうな声で言った。 「ヤッパリ、皆撒ラ撒ラニナッチャウンデスカネ……?」 「そりゃ何時までも皆仲良く一緒にって訳には行かねえだろうな。 今は皆、目的があって一緒に居るだけだ。 何時か、それぞれの道を見付けて歩く事になる」 「僕ニハ何モアリマセン……」 小声で零したヘリオクロスを、ヴェロヴェロは慰める。 「まぁ、そんな物だろう。 俺だって今後の事なんか、何も決めちゃいねえんだ。 でも、何とかなるさ。 そう言う気持ちで居なきゃ、後ろ向いてばっかじゃ、どう仕様も無えぜ」 「ヴェロサンハ強イデスネ……」 「そうでも無えよ。 雑な持ち上げ方すんな」 何時の間にか、外は雨になっていた。 それぞれの思いを胸に、囮作戦の日を迎える。
|
- ロスト・スペラー 20
604 :創る名無しに見る名無し[sage]:2019/07/16(火) 18:47:55.43 ID:OX9zjsbc - 翌日、雨は止む所か益々激しくなっており、囮作戦は一旦中止になった。
雨の中では、獣も濡れるのを嫌がって出歩かないのだ。 しかし、ヴェロヴェロは提案する。 「今こそヴェラとか言う奴を探す好機じゃないか?」 「どうして?」 アジリアの疑問に彼は淡々と答える。 「雨が降っていれば、獣は出歩かない。 それは詰まり、監視の目が緩むって事だろう?」 「向こうから来るのを待つんじゃなくて、こっちが奴を探しに出向くって訳かい?」 「ああ、この雨なら、どこか屋根のある所で休んでいる筈」 「しかし、『この雨』だよ」 蛙のヴェロヴェロと亀のコラルは、雨を問題にしないが、他の者達は違う。 アジリアもヤクトスも雨に濡れるのは好きでは無い。 序でに、ニャンダコーレも。 ビシャラバンガは目的の為ならば、多少の事は苦では無い性格なので、気にしない。 こう言う時はビシャラバンガが意見の纏め役を買って出るべきなのだが、彼は人の和に疎かった。 ヴェロヴェロが熱弁を振るう。 「雨が何だよ。 俺達は何の為に、この街に来たんだ?」 「自棄に張り切ってるじゃないか?」 一体どうした事だと、アジリアはヴェロヴェロの態度に驚いた。
|
- ロスト・スペラー 20
605 :創る名無しに見る名無し[sage]:2019/07/16(火) 18:48:40.77 ID:OX9zjsbc - そこでヘリオクロスが彼に加勢する。
「僕モ今ノ内ニ叩クベキダト思イマス。 今ナラ妖獣モ少ナイデスカラ、戦イモ楽ニナルデショウ」 「ヘリオス、あんたも雨は一等苦手だったじゃないか? どう言う風の吹き回しだい?」 「今ハ、ソウ言ウ事ヲ言ッテル場合ジャ無イッテ事デス」 2対1で押されているアジリアに、今度はニャンダコーレが加勢した。 「コレ、コレ、落ち着くのだ、コレ。 急いては事を仕損じると、コレ、言うだろう。 コレ、一応魔導師会にも断りを入れておかなければ、コレ、私達だけで奴と戦うのでは無いのだ」 ヴェロヴェロもヘリオクロスも彼に説得される。 だが、ここで話が落ち着き掛けていたのに、ビシャラバンガが口を挟む。 「こちらから打って出るのは、妙案だとは思う」 「ビシャラバンガ、コレしかし、ヴェラが今どこに居るのか絞り込む必要があるのだぞ、コレ。 闇雲に市内を歩き回るのでは無く、コレ、土地勘のある者を頼るのだ。 それは、コレ、やはり魔導師会か都市警察の者だろう」 「連中が協力してくれるか?」 ビシャラバンガは魔導師会や都市警察の手を借りるのに、否定的だった。 ニャンダコーレは彼を説得する。 「今は雨だ、コレ。 魔導師会や都市警察の見回りも少なかろう」
|