- ロスト・スペラー 20
498 :創る名無しに見る名無し[sage]:2019/06/12(水) 18:28:20.09 ID:8LAItr7g - 彼女は魔導師会の人間には見えない。
勿論、一般人にも見えない。 そうなると反逆同盟の者か、或いは反逆同盟と戦う側の者か、どちらかだ。 ワーロックは身構える。 彼の反応に、白い法衣の女性は静かに言う。 「それが一般人では無い証拠だ。 私を見て、逃げるでも無く、静かに戦闘の決意をしている」 「貴女は何者なのか?」 ワーロックの問に、彼女は答えない。 「人の質問に、同じ質問をし返すな。 お前が何者か答えてくれたら、答えよう」 ワーロックは数極の思案の後、彼女の要求に応じた。 「私は反逆同盟と戦う者」 「やはり一般人では無かったか……」 「いや、一般人だ。 魔導師では無い」 彼の言い分を白い法衣の女性は本気にしない。 「魔導師では無いだけで、一般人でも無いのだろう?」 「いや、一般人だ。 共通魔法社会で暮らす、1人の共通魔法使いだ」 そうワーロックが言い切ると、白い法衣の女性は、困惑した様に沈黙した。
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499 :創る名無しに見る名無し[sage]:2019/06/12(水) 18:28:58.86 ID:8LAItr7g - 彼女は自信の無さそうな声で、ワーロックの正体に関する考察を披露する。
「詰まり……。 詰まり、こう言う事か? お前は魔導師でも無いのに、独自の判断で反逆同盟と戦おうとしているのか? そんな事を魔導師会が許す訳が無いと、知っていながら?」 「いや、魔導師会と連絡は取っている。 しかし、私は一般人と言うだけだ」 「民間の掃除屋か何か? そんな物があるか知らないが……」 「それも違う。 仕事ではない。 どちらかと言うと、ボランティアだ」 「魔導師会は人手不足なのか……。 それとも……」 「確かに、魔導師会は人手不足だ。 特に外道魔法に関する知識が豊富な人材に関しては」 「お前は民間の研究者か? 外道魔法の?」 「違う。 少し外道魔法使いと交流があるだけの者だ」 散々推理を外した白い法衣の女性は、ワーロックの答に興味を持った。 「お前は共通魔法使いでありながら、外道魔法使いとも知り合いなのか……。 それでは私の話を聞いた事はあるか?」
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500 :創る名無しに見る名無し[sage]:2019/06/12(水) 18:30:39.19 ID:8LAItr7g - そう言いながら彼女はローブのフードを剥いで、目元を覆う『仮面<マスク>』を着けた顔を晒す。
ワーロックは彼女に見覚えが無い。 仮面の女の怪談や昔話は幾つか知っているが、どんな外道魔法使いだとかは聞いた事も無い。 「……貴女は誰なんだ? 全然話を聞いた事も無い」 「未だ何も言うとらんがぞね」 「あ、はい」 仮面の女性は昔話をする様に語り始める。 「石女(うまずめ)の魔法使いの話だ。 呪詛の瞳で見る物を全て石に変える」 「石化の魔眼とか、石化能力を持つ魔物の伝説なら知っているが……」 「言ってみろ」 「『待ち石』の伝説の中に、人に裏切られて魔物になった存在の話がある。 女性の嫉妬だったと記憶している。 彼女は旅人と関係を持って彼を待ち続けていたが、何時まで経っても彼は帰らなかった。 待ち疲れて石になった彼女の前に、旅人が別の女を連れて現れる。 彼は彼女の事を覚えておらず、待ち石になった彼女を他人の様に言う。 その事に怒った彼女は、石の儘で動く怪物となった。 その姿は風雨に晒されて、最早人の姿をしていなかった。 重い石の体を引き摺る、その様は蛇の如く……。 彼女の恐ろしい姿を見た者は、恐怖に駆られて逃げ出した。 その事を彼女は益々恨んで、あらゆる物を石化させる能力を得た。 石になった物は逃れられない」 ワーロックの話を聞いた仮面の女性は、深く頷いて付け加えた。 「『石化<ペトリファイ>』の能力を持つ怪物は、英雄に倒されて大岩に姿を変えた。 その大岩は呪いの能力を持ち続け、女の恨みに応え、恨み持つ女に能力を与えた」
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