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ザ・フューズ ◆YGhdY0kduEHV
TRPG系実験室 2

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TRPG系実験室 2
280 :ザ・フューズ ◆YGhdY0kduEHV [sage]:2019/03/19(火) 22:27:10.56 ID:jk+yobKF
眼下を見下ろす。
視線の先で、地中から宙空へと打ち上げられるロックバイン。
既に半壊した岩の鎧。
アダマス合金製の改造人間にすら通じるNo14の火力なら、容易く破壊、制圧可能。

そして――発射されたブレードが、ロックバインの鎧を貫通。
血飛沫が散り、更にそこへ放たれる追撃の電撃。
空気という絶縁体を貫きなおも威力を発揮する電圧。
異能者と言えど、生身の人間。耐えられるはずがない。
むしろ――オーバーキルだ。今の一撃は致命傷にすらなりかねない。

>「・・・サッサト死ンデイタダケナイデショウカ?私モ気ガ長イ方デハナイノデ」

だがNo14は更に、ロックバインへと追撃を加える。
倒れ伏した彼の頭部を何度も踏みつける、金属の踵。
ザ・フューズは地上へと続く階段の途中で足を止めた。

>「アナタタチハ一体ドコノドノタデショウカ?見テノ通リ私ハ忙シイノデ邪魔シナイデ頂ケマスカ?」

右手を眼下のNo14へとかざす。
地上を見下ろす眼差しは、あくまでも冷静。

>「貴方達コイツノ仲間デスネ?ナラ排除シナケレバイケマセンネ」

No14の注意は眼前の二人に向けられている。
エクトプラズム・プレートで拘束し、焼き尽くす――無力化する事は容易い。
そして――

>「・・・私ハ・・・一体ナニヲ・・・?」

No14は、一線を超える事なく正気を取り戻した。
ザ・フューズは右手はそのままに――小さく、嘆息を零した。

それから暫くして、協会の護送部隊と警察が現場に到着。
制圧された二名のヴィランが回収されていった。
ザ・フューズはその過程に目もくれない。
ただマスクに付属された通信機に右手の指を添えて――

>「終わった、な。とりあえずはだけど……そうだ。
  折角だしファイアスターターが運んでた荷物をご開帳してみるか。
  ヤクとかハジキなら大したことないけどどうせもっとヤバイブツなんだろ?」

>「いいのぉ?開けた瞬間ドカンとかなったらあの世で恨むよリジェネレイター」

「『現場の判断』で行うにしては、横着が過ぎるんじゃないか?リジェネレイター」

歩み寄ってきたリジェネレイターの言葉に返す苦言。
本業詐欺師の思考――押収品の検分は研究班の管轄。
その悪戯は言い逃れが困難。高いリスクを伴う。
しかし――言葉とは裏腹に、右手を通信機から離す。
そうしてテーブル代わりのプレートを形成。
左手のケースを上に置く。

「だが……まぁいいだろう。『お前』には借りがある」

その貸しについて、神籬明治には思い当たる節がないだろう。
そしてそれは正常な反応だ。
TRPG系実験室 2
281 :ザ・フューズ ◆YGhdY0kduEHV [sage]:2019/03/19(火) 22:28:00.93 ID:jk+yobKF
>「それにしても一人でヴィランを倒しちまうとは。ザ・フューズ、侮れない奴だ。
  こっちは岩男相手にひぃひぃだったのに。今の内にゴマすっとくかリジェネレイター?」

「……No14の奇襲で、奴は冷静さを欠いていたからな。
 そもそも奴はヴィランである事の、最大の強みを理解していなかった。
 パワーやスピードなど、ヒーローにだってある……私はどちらも持ち合わせてないが」

ともあれリジェネレイターがケースを開く。
溢れる、念の為に展開したシールド越しにも眩い、青白い光。
TRPG系実験室 2
282 :ザ・フューズ ◆YGhdY0kduEHV [sage]:2019/03/19(火) 22:29:21.50 ID:jk+yobKF
>「うわぁ……リジェネレイター、これマジでやばいやつじゃない?
 テスカ子供だからわかんないけど、科学の教科書で似たようなの見たことあるよ。
 これアレでしょ?マイナスドライバーでカタカタやって手が滑って死ぬやつでしょ」

「……あり得ん。核は、ヴィランの間でもご法度だ。
 このメトロポリスを吹き飛ばして、得られる物が何もない。
 ヒーロー、ヴィラン、両方に敵と見なされるだけだ」

一部の例外を除いて、非合法組織が求めるものは支配や繁栄だ。破滅ではない。
そう分かっていても、やや強張ったザ・フューズの声。

>「駄目だ。手も足も出なかった。少なくともそいつを構成している物質は地球には存在しない。
  何のために作られたのか、どう使うのか……。それはヴィラン二人にに聞くしかねぇな。
  生憎二人ともあんな状態だから今すぐには無理だろうけど……」

何にしても、リジェネレイターの相棒ではこの物質の解析は出来ないらしい。
つまり、これ以上この場に留まる理由はもう何もない。

>「今日は助かった。ザ・フューズ、テスカ☆トリポカ……それにNo14。
  また何処かで会おう。その時は今晩の借りを返させてもらう」

「私はお前に何かを貸した覚えはない」

無愛想な返答。

「……が、どうしてもそれを返したいなら、宛先は私じゃなくていい」

一瞬逸れる視線。その先にあるのは――No14。

>「おつかれさま。テスカも帰るね、明日早いんだ。
  14ちゃん。……ありがとう。誰がなんて言おうと、この気持ちは確かなものだよ」

「上申書を書いてやれ。助けられたと思っているならな」

そう言い残すと、ザ・フューズは協会の護送部隊へと振り返る。
ヴィラン二名は既に護送されていったが、ヒーローの戦闘に負傷は付き物。
負傷者の回収、応急手当――それも護送部隊の任務の内だ。
この場合の負傷者とは――つまり、ザ・フューズの事だ。

四肢と肋骨を蹴り砕かれ、肺は破裂し、彼女は本来なら死んでいてもおかしくない重傷人だ。
ただエクトプラズムによって破損した部品を補完しているというだけで。
だがそれも、いつまでも維持は出来ない。
超能力の行使、維持には体力を消耗する。
早急に、医療チームの処置を受ける必要があった。

>「アト、ザ・フューズ!今日ハ色々迷惑ヲカケテシマッテ本当ニゴメンナサイ!次カラハ・・・チャントシマス・・・ノデ」

「そうだな。お前の判断はご立派だったが、もっとやりようがあったはずだ」

>「ミナサン!マタアイマショウ!」

「……次は、もう少し上手くやってくれ」

護送部隊員の一人がザ・フューズを急かす。
彼女はNo14に背を向けて、それきり振り返らなかった。
TRPG系実験室 2
283 :ザ・フューズ ◆YGhdY0kduEHV [sage]:2019/03/19(火) 22:30:06.37 ID:jk+yobKF
数日後、西田結希はメトロポリス内地に所有するマンションの一室にいた。
マンションのオーナーは、彼女の『他人に知られてもいい』稼業の一つだ。

「……例の件はどうなった」

耳元に当てたスマートフォンへ、西田結希は問いかける。
その端末は個人名義――裏稼業用の物ではなく、ヒーロー協会から支給された物だ。

『芳しくないですね。ある日突然爆発するかもしれない車に、好んで乗り込む人間はいません。
 あのロボットを稼働させ続けるのは、協会にとって不要なリスクでしかないです』

「少なくとも三人のヒーローが上申書の提出か、それに相当する証言をしているはずだ」

『No14が次に暴走した時、罪のない人々を狙わないとは限りません。
 たった三人の証言で、その可能性を無視する事は出来ませんよ』

「百人の命を救う為なら、一人の人間を殺していい訳じゃないだろう。
 少なくともヒーロー協会の公式見解として表明出来る思想じゃない」

『アレが人間ならその通りですが、生憎、Np14はロボットです』

「……アイアンハート現象はメトロポリスの至る所で確認されている。
 それらのロボット全てに、人間への不信感を与える事は、不要なリスクだ」

『……確かに、そうかもしれませんが』

「表向きは処分保留。実際はヒーローの装備ないし支援機扱い。
 これなら世論の釣り合いも取れるだろう。この線でもう一度上申書を作成してくれ」

『分かりました。ですが……今度は一体何を企んでるんです?
 私には、そこまでしてアレを保護する必要があるとは思えませんが』

「……あのロボットはそれなりに高性能だ。支援機として手に入れば、今後の活動に役立つ」
TRPG系実験室 2
284 :ザ・フューズ ◆YGhdY0kduEHV [sage]:2019/03/19(火) 22:31:02.35 ID:jk+yobKF
通話を終了。腰掛けたソファの端にスマートフォンを放り捨てる。
そして――その直後に再度響く着信音。
エクトプラズム・プレートでスマホを跳ね上げ、手元へ。

画面を見てみれば、通話をかけてきたのは自身の担当オペレーター。
つい先ほどまで話していたのと、同一人物。
西田が溜息を零して、画面をタップ。

言い忘れる程度の用事なら、チャットで済ませろ。
そう言ってやろうと口を開き――直後、スピーカーから流れる発砲音、破壊音、悲鳴。
TRPG系実験室 2
285 :ザ・フューズ ◆YGhdY0kduEHV [sage]:2019/03/19(火) 22:31:49.97 ID:jk+yobKF
「……坐間?」

返事はない。
数秒後、一際大きな破壊音と共に通話は切れた。
更に数秒後、協会の緊急通達――非常防衛システム起動に伴う自動メッセージ。

西田はすぐさま、ベランダの大窓を開いた。
ヒーローにとって緊急の出動が日常茶飯事。
耐衝撃スーツと、それを隠すビジネススーツは彼女にとって普段着同然。
マスクやアーマーを纏めたケースも常に携行している。
つまり装備は既に万全。

ベランダの柵を乗り越え空中へ。
同時に火を噴く、四肢に装備した指向性付与ガジェット。
パイロキネシスの爆炎がザ・フューズの体を急加速。
そして空中に設置したエクトプラズム・プレートに着地。
それを繰り返す事で実現される高速の空中移動。
ザ・フューズは数分で現場上空へと到達。

>「リジェネレイター!ニーズヘグをこっちに引き付けて!
 バリアのせいで敷地の奥の方には地脈が繋げられないから!
 寄ってきた奴を片っ端から爆殺してこ☆」

戦況を俯瞰。
爆炎と、無数の敵性兵器――ニーズヘグの残骸によって描かれた「戦線」がよく見える。
それがテスカ☆トリポカの間合いの境目という事なのだろう。
ザ・フューズは通信機に指を添える。

「こちらザ・フューズ、現場上空に到着した。
 これより近接航空支援を開始する。前に出過ぎるなよ」

協会本部が制圧されている以上、通信は傍受されていると見るべき。
だが事前連絡のない火力支援など、友軍への不意打ちも同然。
炎と地形を操るザ・フューズの攻撃は、特にだ。

まずは周囲に二つ、エクトプラズム・キューブを形成。
対空射撃に対する防壁を展開、維持する為の疑似脳だ。

次に地上へエクトプラズム・プレートを形成。
地面と水平に、小さく何枚も。
つまり破壊困難な移動妨害。

そして――爆撃を開始。
もっともアダマス合金製の装甲は、ザ・フューズの火力では破壊出来ない。
ほんの小さなへこみすら、与える事は叶わない。
エクトプラズム・ブレードも、機銃が主兵装のニーズヘグ相手には火力になり得ない。

故にザ・フューズは――爆破するのではなく、燃やす。
高熱の炎に晒され続ければ、内部の電子部品や弾薬を破損させられる。
既にプレートによって協会内部への退路は封鎖済み。
必然、加熱による機能停止を避ける為には前進する他ない。
つまり、テスカ☆トリポカの間合いへと飛び込んでいく事になる。
これで屋外にあるロボットに関しては問題なく制圧可能――

>「マズハ近クカラ、デスネ【アタックプログラム;アダマスソード】」

ザ・フューズがそう判断した直後の事だった。
協会本部の窓から二人の子供が投げ出され、更にNo14が飛び出したのは。
TRPG系実験室 2
286 :ザ・フューズ ◆YGhdY0kduEHV [sage]:2019/03/19(火) 22:34:09.96 ID:jk+yobKF
「なっ……!」

ザ・フューズは咄嗟にプレートを形成――出来ない。
子供達は既に落下による加速を得ている。
硬質なプレートで無理に受け止めようとすれば、それは救助ではなく、殺傷になる。
どうにか死なせずに済んだとしても、空中で彼らを固定してしまえば、それは射撃の的でしかない。

>「失礼!ソコノオ二人サン!ワタシ達ノ変ワリニ、アノ蜥蜴ノ相手ヲ、マカセマシタヨー!」

それでも結果的には、子供達は無事だった。
No14はニーズヘグの一部を蹴散らすと、そのまま子供達を受け止めて、敷地外まで離脱。
そうして残る機体もテスカ☆トリポカの間合いへ追い込まれ、破壊される。
TRPG系実験室 2
287 :ザ・フューズ ◆YGhdY0kduEHV [sage]:2019/03/19(火) 22:36:55.72 ID:jk+yobKF
「……上空から見た限り、このエリアは確保出来た。まずはここの維持に努めるぞ」

ザ・フューズは地上に降りて、リジェネレイター、テスカ☆トリポカと合流。

「重役出勤してくるヌルいヒーローどもがまだいるはずだ。
 ソイツらが到着したらこの場を任せて、中に踏み込む。それでいいか?」

移動、交戦、制圧、確保、移動。
極めて模範的な制圧戦の段取りを提案するザ・フューズ。
その態度は至って冷静。

「それと」

>「オービット、スカとポカ、援護ゴ苦労デアッタ!」

だが彼女がNo14に視線を向けた瞬間、その声と眼光に、二つの感情が宿る。

「……人の命で博打を打つのは楽しかったか?ブリキ人形」

感情の名は、軽蔑と落胆。
 
「私は、お前のごっこ遊びに付き合うつもりはない。
 前衛はお前が努めろ。役に立つ内は援護はしてやる」

あの二人の子供が無傷でいられたのは、ただの幸運だ。
想定よりも多くの敵性兵器が彼らに反応していたら、
あるいはNo14の乱入に十分な反応が得られなかったら、
協会の防衛システムが停止ではなく奪取、再利用されていたら――あの子供達は、死んでいた。
もっと安全で、もっと上手いやり方があったはずだ。

一体いかなる理由でNo14の態度が変化したのかは、ザ・フューズには分からない。
だが、確実な勝利と己自身を擲ってでも人の命を守ろうとした――ザ・フューズが一流と呼んだヒーローは、ここにはもういない。
いるのは、不確実な勝算を頼りに、人命を危険に晒す――三流以下。
それだけで、彼女が落胆と軽蔑を抱くには十分だった。


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