- ロスト・スペラー 20
233 :創る名無しに見る名無し[sage]:2019/03/09(土) 18:52:32.01 ID:V/zhJaqi - それからマールティン市の殆どの商店の店主等が集まり、ワーロックに要求した。
「とにかく食べ物が優先だ」 「出来れば、薄紙や洗剤も頼む。 日用品も足りないんだよ」 「魔力路が止められているのも何とかして貰いたい。 真面に使えるのは水道しか無い」 全員に一遍に迫られて、ワーロックは後退しながら言う。 「取り敢えず、皆さんで話し合って、優先順位の高い物を上から順に紙に書いて下さい。 それを仕入れて来るので。 出来れば、具体的な商品名で書いて貰えると嬉しいです」 それを聞いた各店の店主等は、顔を突き合わせて話し合った。 「何は無くとも食料だ。 日持ちするのが良い」 「次は日用品で」 「それは良いけど、品目も絞らないと」 その間にワーロックは、店内の空きだらけ陳列棚の様子を魔法で紙に転写する。 ああだ、こうだと話し合いは続いて、2角後に漸く結論が出る。 最初にワーロックと話した食品店の店主が、皆を代表して注文書を提出した。 「取り敢えずは、これで頼む。 戻って来るまで、どの位掛かりそうなんだ?」 「往復で半日って所です。 今からなら夕方か夜になります。 それまでに次に頼む物を決めておいて下さい」 「ああ、分かった」 こうしてワーロックは注文書を手にマールティン市を出る。
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234 :創る名無しに見る名無し[sage]:2019/03/09(土) 18:54:54.04 ID:V/zhJaqi - 外壁の見張りをしていた執行者達は、浅りとワーロックを外に出してくれた。
深刻な物資の不足は全員が心配している事だった。 (こんな時でもゲヴェールトは出て来ないのか……) やはりゲヴェールトは人を操っているだけなのだと、ワーロックは確信する。 自らは表に出ず、人々を思い通りに操る様な存在を許しては行けないと、彼は固く心に決めた。 ワーロックは急ぎ足で道を引き返す。 そして道を監視していた執行者に呼び止められた。 「あっ、おい、待て! 中の様子は、どうだった? 反逆同盟の連中は?」 「反逆同盟の者には会えませんでした。 それより、これから商品を仕入れに行きたいのですが」 「いや、それは駄目だ。 何の為に態々交通を規制していると思ってるんだ?」 「分かっていますけど、あの儘では市民は飢え死にしてしまいますよ。 どうやら洗脳を解く積もりは無いみたいですから。 どれだけ市民を困窮させて追い詰めても、逃げ出す事はありません。 今の儘では徒に市民を苦しめるだけです」 「……あんた、洗脳されてはいないよな?」 執行者達はワーロックがゲヴェールトに洗脳されているか疑い出す。 それは仕方の無い事だとワーロックは認めて、堂々と反論する。 「市内では水も食料も一切取っていません。 疑うんだったら、検査して貰っても良いですよ。 でも、市内に物資を運び込む事だけは許可して下さい。 これを見て下さい」
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235 :創る名無しに見る名無し[sage]:2019/03/09(土) 18:56:54.97 ID:V/zhJaqi - ワーロックは紙に転写した食品店内の様子を見せた。
「買い占めもあったんでしょうが、こう言う状況なんですよ。 洗脳される者を増やしたくないなら、市内に入らなければ良いだけでしょう。 上と交渉して貰えませんか?」 「……分かった、貴重な情報だ。 あんたの要求は伝えておく」 「頼みましたよ。 私は品物を仕入れて、もう一度ここに戻って来ます。 それまで返事を貰っておいて下さい」 執行者と別れた彼は高速移動魔法を使って、最寄りのタハデラ市に移動する。 そこで荷運び用の騾馬を2頭借り、仲卸業者を回って、注文された品を購入する。 騾馬に荷物を積み込んだら、マールティン市に向けて再出発。 タハデラ市内での諸々の準備に2角を費やしたが、時間的には余裕がある。 問題は執行者が許可を取っているか否かだ。 騾馬を連れて戻って来たワーロックを、やはり執行者達が呼び止める。 「早かったな」 「そりゃ急ぎましたからね。 積み荷の検査をするんですか?」 「ああ、いや、それ以前に未だ本部から返答が無いんだ」 執行者の返答にワーロックは露骨に不満を顔に表した。 お役所仕事で返答が遅いのは理解出来るが、余りにも危機感が足りない。
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