- ロスト・スペラー 20
160 :創る名無しに見る名無し[sage]:2019/02/12(火) 18:34:06.72 ID:SSt0q3lj - コバルトゥスも確信までは持っていないが、何と無く彼女の体調不良の原因は察している。
恐らくは、マトラ事ルヴィエラの強大な魔法資質に中てられて、本能的に身を守る対応をしたのだ。 言い方は悪いが、所謂「仮病」、狸寝入りの様な物だ。 魔法資質を抑えて、相手に見付からない様に弱体化した様に振る舞う。 意図して行っている訳では無く、本能的に身に付いた物だから、自分で制御も出来ない。 コバルトゥスはヘルザを慰めた。 「でも、それで助かったとも言える。 もしかしたら君は、俺達より早く予兆を掴んでいるのかも知れない。 魔法資質が優れているのか、それとも他の感覚とのリンクが鋭敏で繊細なのか……。 どちらにしても、上手く利用出来れば、例えば不意打ちを防いだり、活用方法はあると思う」 「私でも、お役に立てるんですか? どんな事でもします!」 「ああ、そう言う事は余り言わない様にしようね。 何でもとか、どんな事でもとか、そう言うのは」 コバルトゥスは苦笑いして、彼女の肩に手を置く。 「これからラント達と合流しに行く。 今はソーシェの森に居るらしい」 「ソーシェの森?」 「……魔女の婆さんの家だよ」 「ええっ、そんな遠くに……って、あっ、ネーラさんか!」 遠隔地に瞬間移動する魔法をヘルザは知っていた。
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161 :創る名無しに見る名無し[sage]:2019/02/12(火) 18:35:04.67 ID:SSt0q3lj - コバルトゥスとヘルザはレノックの助力で、空を旅してソーシェの森に飛んだ。
フテラとテリアを失い、一行は再びウィローの住家に戻される。 そこで全員で改めて、反逆同盟と戦う旅の危険に就いて、話し合う事となった。 ラントロックは正直に、マトラが自分達を襲った理由を語る。 「マトラは俺達を裏切り者として始末しようとしていた。 今回は逃げられたけど、次は分からない。 ヘルザ、それでも未だ俺と来るかい?」 ヘルザは即断で肯いた。 「私も裏切り者なんだし……。 私にも出来る事があるなら。 どんなに危険でも良いよ」 次にラントロックはコバルトゥスとリベラを見る。 「小父さんと義姉さんも、良いの? 俺達と一緒に居ると、又マトラに狙われるかも知れない」 リベラは強気に答えた。 「だからって、家族を見捨てる人が居るの? 余計に放って置けないでしょう」 コバルトゥスも続いて頷く。 「敵の親玉が向こうから出向いてくれるなら、好都合じゃないか」 ラントロックは何だか嬉しくなって、含羞みながら答えた。 「有り難う、皆」
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162 :創る名無しに見る名無し[sage]:2019/02/12(火) 18:35:36.81 ID:SSt0q3lj - それを見ていたネーラは、ラントロックに改めて水を詰めた小瓶を渡す。
「主の力になりたいと思っているのは、私も同じだよ。 フテラとテリアの事は残念だったけど、私の力が必要になったら、何時でも呼んでくれ」 ラントロックは小瓶を受け取りつつ、この場に残る彼女が心配で言った。 「ネーラさんこそ大丈夫なのかい? もし、ここにマトラが現れたら……」 「私には水鏡の魔法があるから大丈夫。 海でも川でも、どこにでも逃げられる」 遣り取りを傍で聞いていたウィローは眉を顰める。 「私が大丈夫じゃないんだけどね……」 リベラは申し訳無さそうに、彼女に言う。 「ウィローさんも私達と一緒に行きませんか?」 「ヘッ、冗談だよ。 若い子には付いて行けないさ。 私も旧い魔法使いの一人、自分の事は自分で何とかするさね」 ウィローは苦笑いして断った。 こうして一行は再び反逆同盟と戦う決意を新たにする。 人の姿を失って逃走してしまったフテラとテリアも探しながら……。
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