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シリル ◆X4hrf3EOqI
【剣と魔法】ファンタジークエスト【TRPG】

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【剣と魔法】ファンタジークエスト【TRPG】
298 :シリル ◆X4hrf3EOqI [sage]:2019/01/27(日) 18:10:49.31 ID:gnpUnfCw
点々と続く足跡を追った先には巨大な水晶の柱が一本伸びていた。
聳え立つ柱の前に人影。男のようだ。彼こそが神託にあった召喚士なのだろうか。
自ら邪悪なる召喚士と名乗ったその男は高らかな口上と共に攻撃を仕掛けてきた。

召喚士が呼び出したのは最弱の魔物スライムだ。生きたゲル状物質が突貫してくる。
シリルはそれを適当に蹴っ飛ばすとサッカーボールのようにドリブルした。
スライムの王、ロードスライムに比べれば恐れるに足りない。

「こんなものっ――――!」

がっしぼかっ!占いに怯えていた自分が馬鹿のようだ。
この程度の召喚士ハジマーリの街を探せばザラにいそうだ。
魔杖ロアクルスでスライムをゴルフスイングすると面白いように飛んでいく。
それを繰り返してスライム掃除を終えたところでシリルが言った。

「召喚士が召喚するのは召喚獣のはず。
 ただものではなさそうだけど召喚するのがスライムじゃなぁ……」

魔杖の柄で地面を突っつきながらシリルは暇してた。
こんなしょうもない相手に時間を割く必要もあるまい。
彼は自分を闇の軍勢四天王だと思い込んでいる一般人なのだ。たぶん。

「せいっ」

魔杖を振りかぶって召喚士の頭を殴打すると彼はその場に倒れた。
所詮後衛職の体力だ。魔物を呼べても本体は大したことがない。
頭部に大きな瘤ができたかもしれないが、致し方なし。

「さぁ、聖女様。再封印を施して全て終わらせましょう」

「は、はい……分かりました」

何の手応えもないがこれでいいのだろうか――これでいいのだ。
大山鳴動して鼠一匹といった着地点だが、平和的に終われるならそれに越した事もない。
現実は世の創作物のように劇的なんかじゃない。
クライマックスは案外呆気ないものなのだ。
【剣と魔法】ファンタジークエスト【TRPG】
299 :シリル ◆X4hrf3EOqI [sage]:2019/01/27(日) 18:11:45.09 ID:gnpUnfCw
四天王ではなかったが、自称邪悪なる召喚士もまた闇の軍勢の一人に違いなかった。
だが、彼の出自はシリルがなんとなく思った通り掃いて捨てるほどいる初心者召喚士の一人に過ぎない。
彼は力を求めた結果禁術に飲み込まれ、闇の軍勢に憑りつかれてしまった憐れな被害者だった。
闇の軍勢として神託の勇者を倒せば助けてくれると言われ、彼は悪魔に魂を売ったのだ。
だが――レベルの差は歴然で、彼は勇者達に敗北してしまった。

「見事だ。人間では相手にならないようだな……ならば私が相手をしよう」

瞬間、背後のクリスタルの塔が倒壊し、脆く崩れ去っていくのが見えた。
召喚された魔族が放った魔力の塊が水晶の柱を打ち壊したのだ。
諧謔とシリアスの高低差に戸惑いながらシリルは呆気に取られていた。

「自己紹介がまだだったな。私はアスタロト。序列は"公爵"。
 闇の軍勢の一人にして魔王様にお仕えする側近の一人……といったところだ。
 よくやった凡百なる召喚士よ。それでこそ人間を甘言で騙し軍勢に引き入れた甲斐があるというもの」

現れたのは黒竜に跨る魔人。5メートルはあろう巨大な魔族だ。
右手に毒蛇を持ち、天使のような翼を生やした禍々しい威容。

「あ……あの野郎……!なんてことを……!」

「ふ……これが運命だったのだ。諦めるがよい。
 貴様らが神託の勇者か……見るからに脆弱で鬱陶しそうな連中だ」

シリルは額に汗を滲ませ、それを拭う。
力量差が違い過ぎる戦いは何度も経験したが、こればかりはもう……。
奴が地上に上がれば一瞬にしてシャンバラは灰に帰るだろう。
いや――いずれにせよ闇の軍勢が迫ってきている。

「キャトラ……今まで黙ってきたけど、僕は"こうなる運命"だったんだ。
 闇の軍勢と戦い、華々しく死ぬ運命……この戦いにキャトラは巻き込めない。
 逃げて良いよ。無理なんてしなくていいんだ。今なら一か八か逃げ切れるかもしれない」

僕が時間を稼ぐから。
そう言うと、シリルは杖を両手でぎゅっと握りしめて対抗の意志を見せた。
アスタロトはくつくつと嘲笑する。

「……愚かな。よもや勇敢である必要もないというのに。
 跪き命乞いをするなら少しは考えてやるぞ?」


【キャトラ選択:逃げるか?逃げないか?】


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